悪役令嬢なんて呼ばせない!

もげこ

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気付いたら転生してました。

9.対策と方針と新たなる課題

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私、メリーラントは大変悩んでいます。
最近、3日と空けず、シャロンが遊びに来るんです。
遊ぶといっても、書庫で本を読むことがほとんどですが。

今日もいつも通り、隣で本を読むシャロン。
漆黒の瞳み、サラサラと音がしそうな、烏の濡れ羽色の髪。対象的に陶器のような白い肌…。分厚い本に向かう真剣な顔は、可愛らしさより美しさを感じる。
そろそろこの光景にも慣れてきた。

さて、このままでいいのだろうか?

できるだけ接点は持ちたく無かったが、庭で遭遇してから、私の想いとは裏腹に話が進み、いつの間にか、シャロンが遊びに来ることが定着している。

こうして一緒に本を読んだり、たまには庭でお茶をしたり(だいぶ前に館外外出禁止令は解けている)しているのだから、嫌われては無いはず。むしろ好意を持たれている気がする。

こんな設定、ゲームであったっけ?

ゲーム内で過去について触れられることも多少ある。ただ、その中に、今の私とシャロンの関係は無かった気がするのだ(エメラルドちゃんに夢中で見逃したのか?)。

そもそも、ゲームは学園に入学してからがスタートだし。
エメラルドちゃんに嫉妬し、嫌がらせをするメリーだが、実は、メリーが勝手に物凄い魔力をもっているシャロンへ熱を上げていただけ。
シャロンにとってメリーは面倒くさい奴の1人でしか無く、ストーリーがどんな進み方をしても、シャロンとメリーの仲が深まることも、結ばれることは無かったはず。

恋人のエメラルドちゃんをいじめていたからこそ、シャロンの逆鱗に触れ、悪業が白昼の元にさらされ、処刑されるのだ。
ということは、エメラルドちゃんの恋路の邪魔をせず、もちろんいじめずにしていれば、シャロンの逆鱗に触れることなく、処刑されることもないだろう。単純だが、ゲームもスタートしていないし、やれることも無いように思い付かない。

今は、下手にシャロンを遠ざけるより、友達でいる方が安全な気もする……。

「何?飽きたの?」

「へっ!?」

「さっきから僕の方見てるから。」

先ほどから、シャロンの視線は本のまま。
見てたこと気付いてたのね。

「何読んでるのかなぁ~と思いまして…。」

「南地方の文化と慣習について。」

「それ、面白い?」

「うん。」

「そっかぁ。」

南地方の文化を学ぶ6歳児……。

よしっ!対応方法がわからないので、現状維持で!!



***



シャロンへの方針が決まった矢先、新たな敵?が現れた。


その日はシャロンも来ておらず、部屋で一人スクワットをしていた。
ドレスでの動きは制限がされるし、走り回ることも出来ない毎日に、身体が鈍ってしまいそうだからだ。

扉がノックされる、

「はぁい。どぉぞ~。」

「失礼します。お嬢様、旦那様が応接に来るようにと仰せです……何されてるんです!?」

「へ?お庭の先が見えそうで見えないから、ちょっと背伸びしたりしゃがんだりしてるだけよ~。」

「また、変な体操でもしているのかと思いましたよ。」

先日、腕立て伏せや腹筋をしているところをレミに見られ、はしたないとお叱りを受けたばかりだ。

「変な体操って…。応援に呼ばれるなんて、お客様かしら?」

首を傾げつつ応接に行く。



「メリー、そちらに座りなさい。」

お父様にいわれるまま、お母様の横に座ると、正面には、見たことの無い男の子が座っていた。

緩くウェーブのかかった金色の髪。焦茶の瞳。口を真一文字に結び、痩せた小さな身体を強張らせている。まるで警戒している仔犬の様だ。

「レイモンドだ。今日から我が家の一員になる。メリー、君に弟ができたんだ。」

「レイモンド、君のお姉さんになる、メリーラントだ。」

お父様?今、何と??弟って言いました?レイモンドって…。


レイモンドといえば、攻略キャラにいましたね。
金色の髪をなびかせる優男。誰にでも優しく、常に微笑みを絶やさず、そして常に周りに女の子を絶やさず…。
物腰柔らかな対応からか、女子ウケが大変よろしい設定。

パズルゲームで「魅力」をあげて、エメラルドちゃんと2人きりにさせるのが大変だったけ…。

えっと確か、メリーラントの義弟で……。あら、メリーさん義弟いましたね。てかこの子やっぱり、攻略キャラのレイモンドだ。

「…、メリーラントです。よろしく。」

「レイモンドです。よろしくお願いします。」

硬い小さい声で挨拶をする男の子に、女の子を虜にするにこやかな笑みは無い。

「2人とも緊張しているね。ま、これから仲良く、当家を盛り上げていっておくれ!さて、レイモンド。長旅で疲れただろ?ひとまず、部屋へ行くといい。マリエル頼めるかい?」

「はい。レイモンド行きますよ。」

お母様がレイモンドを連れ部屋を出た。メイドが小さいカバンを1つ持ち、後を追う。

相変わらず急な展開に、思考が付いていけません。
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