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気付いたら転生してました。
16.月夜の姉弟
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レイモンドが弟となり、3週間ほど経った。
今朝も家族皆が揃っての食事だ。
「そういえば、レイモンド。最近、遅くまで明かりが点いている様だけど?」
「もうしわけありません。えっと、あの…。」
「レイモンド、別に怒っている訳ではないよ。」
「はい。もうしわけありません…。」
「謝らなくてもいいのよ?レイモンド。」
「…はい。」
恐縮しっぱなしのレイモンドに、
お父様もお母様も、心配そうにしているが言葉を告げずにいる。
(レイモンド、大丈夫かなぁ。)
***
ふと目が覚めた。
辺りは真っ暗で、まだ夜中の様子。
しばらくすると、暗闇に目が慣れてきて辺りが見えてきた。
いつもは、一度寝ると朝までぐっすりなので、真っ暗な部屋はちょっと新鮮。
(外はどうだろう?)
窓に近寄り、カーテンを開けてみた。
月の光が差し込んできて、思っていたより明るい。
(ほわ~キレイ~!)
しばらく月に見惚れていた。
コトッ
物音がした。
隣のレイモンドの部屋から聞こえてきたようだ。
(レイモンド、まだ起きてる?)
先日の朝食でのやり取りを思い出し、私は部屋を出た。
暗い廊下に隣の部屋のドアから光が漏れている。
コンコンコン
「レイモンド?私よメリー。入ってもいい?」
しばらくして、扉が開いた。
「…お姉様、どうしました?」
やっぱり、起きていたようだ。
レイモンドに構わず、部屋に入る。
「ちょっと目が覚めちゃったの。」
「そうなんですね。僕も一度目が覚めてから、中々寝付け無くって。」
「…レイモンド、嘘付かないで。」
レイモンドの笑顔が困ったように歪む。
そっと、その頰に触れる。冷たかった。
「最近ちゃんと寝てないでしょ?クマが出来ちゃってるわよ。」
「…。そうですね、寝不足かもしれません。」
「何か辛いことや不安なことがあるの?」
「そんな!無いです!毎日、僕にはもったいないぐらい……。」
「そう?私にはとっても辛そうに見える。」
レイモンドは泣き出しそうだ。
私はレイモンドの手を引いてベッドに連れて行く。
「とりあえず、寝ない?夜だし!」
「はい?」
「私も一緒に寝るから!寝付けるまでお話しでもしましょ?ほらほら、ベッド入って。」
「へ?お姉様も一緒に!?」
押し切られ様に、ベッドに入るレイモンド。
「明かり消すね~。」
私が明かりに向かおうとすると、レイモンドの震える手が私を止めた。
「全部消さないで…。真っ暗やだ…。」
「そっか…。それなら。」
閉められたカーテンを開けて、明かりを消していく。
「お、お月様?」
「そうよ。これならどう?」
全ての明かりを消したが、月明かりが差込み、部屋がほんのり明るい。
「大丈夫。」
「よかった!」
私もベッドに入る。
「真っ暗ダメなんだ、…あ、ダメなんです!」
「前から思ってたんだけど、タメ口でもいいのよ?」
「タメ口?」
「えっと、丁寧な言葉使い…とか?って、レイモンド、手も冷たい!」
タメ口発言を誤魔化すためにもレイモンドの手を握ったが、思った以上に冷たくてびっくりしてしまった。
「お姉様の手、あったかい……。」
「レイモンドが冷た過ぎるのよ。……暗いのが怖いの?」
「……前に、兄達に怪我をさせてしまった時、真っ暗な部屋に閉じ込められて。扉が開いた時、ああ、殺されるって思ったんだ……。」
ポツポツと話し出すレイモンド。
「真っ暗になると、あの時の事を思い出すんだ。眠って、次に目を覚ましたら、じつはあの真っ暗な部屋に戻ってるんじゃないか、って…。怖いんだ。」
「そっか…。でも、もう大丈夫よ!もう誰もあなたを閉じ込めたりしない。」
握った手に力込める。
「でも……。魔法も使えない僕なんて。実は間違いだったって追い出されちゃったりしてね……。」
そう悲しそうに微笑むレイモンド。思わずレイモンドを抱きしめた。
「そんな訳ないじゃないっ!お父様もお母様もあなたのことをとっても心配してるのよ?追い出したりしないし……もう、大丈夫だから。あなたは、レイモンド・アースキン、私の可愛い弟なんだから!」
「お姉様……。」
「もう、大丈夫だから。」
すすり泣く声が聞こえたので、優しく背中をさすってやっていると、気付けば、静かな寝息に変わっていた。
レイモンドは不安だったんだ。
その不安、ちょっとわかる。
私だって、メリーラントとして目覚めてしばらく、混乱してばかりで、エメラルドちゃんを愛し過ぎて、夢を見てるんじゃないかと思った。
次目が覚めたら、前の世界に戻ってるんじゃないか。
ご飯と味噌汁で朝ごはんを済ませて、遅刻しそうになりながら、仕事へ行くんじゃないか。
エメラルドちゃんのスチルを眺めてニヤニヤする毎日に戻るんじゃないか……。
レイモンドと違うのは、前の世界もメリーとしての今も、私は虐げられていないし、楽しい毎日であることだ。どちらの世界も戻りたくないとは思わない。
何より、幼くして命の危機すら感じたレイモンドには、"なるようになる!"なんて、楽観視できないのかと思う。
うん!ここは一つ、お姉様が一肌脱いじゃいましょう!
今朝も家族皆が揃っての食事だ。
「そういえば、レイモンド。最近、遅くまで明かりが点いている様だけど?」
「もうしわけありません。えっと、あの…。」
「レイモンド、別に怒っている訳ではないよ。」
「はい。もうしわけありません…。」
「謝らなくてもいいのよ?レイモンド。」
「…はい。」
恐縮しっぱなしのレイモンドに、
お父様もお母様も、心配そうにしているが言葉を告げずにいる。
(レイモンド、大丈夫かなぁ。)
***
ふと目が覚めた。
辺りは真っ暗で、まだ夜中の様子。
しばらくすると、暗闇に目が慣れてきて辺りが見えてきた。
いつもは、一度寝ると朝までぐっすりなので、真っ暗な部屋はちょっと新鮮。
(外はどうだろう?)
窓に近寄り、カーテンを開けてみた。
月の光が差し込んできて、思っていたより明るい。
(ほわ~キレイ~!)
しばらく月に見惚れていた。
コトッ
物音がした。
隣のレイモンドの部屋から聞こえてきたようだ。
(レイモンド、まだ起きてる?)
先日の朝食でのやり取りを思い出し、私は部屋を出た。
暗い廊下に隣の部屋のドアから光が漏れている。
コンコンコン
「レイモンド?私よメリー。入ってもいい?」
しばらくして、扉が開いた。
「…お姉様、どうしました?」
やっぱり、起きていたようだ。
レイモンドに構わず、部屋に入る。
「ちょっと目が覚めちゃったの。」
「そうなんですね。僕も一度目が覚めてから、中々寝付け無くって。」
「…レイモンド、嘘付かないで。」
レイモンドの笑顔が困ったように歪む。
そっと、その頰に触れる。冷たかった。
「最近ちゃんと寝てないでしょ?クマが出来ちゃってるわよ。」
「…。そうですね、寝不足かもしれません。」
「何か辛いことや不安なことがあるの?」
「そんな!無いです!毎日、僕にはもったいないぐらい……。」
「そう?私にはとっても辛そうに見える。」
レイモンドは泣き出しそうだ。
私はレイモンドの手を引いてベッドに連れて行く。
「とりあえず、寝ない?夜だし!」
「はい?」
「私も一緒に寝るから!寝付けるまでお話しでもしましょ?ほらほら、ベッド入って。」
「へ?お姉様も一緒に!?」
押し切られ様に、ベッドに入るレイモンド。
「明かり消すね~。」
私が明かりに向かおうとすると、レイモンドの震える手が私を止めた。
「全部消さないで…。真っ暗やだ…。」
「そっか…。それなら。」
閉められたカーテンを開けて、明かりを消していく。
「お、お月様?」
「そうよ。これならどう?」
全ての明かりを消したが、月明かりが差込み、部屋がほんのり明るい。
「大丈夫。」
「よかった!」
私もベッドに入る。
「真っ暗ダメなんだ、…あ、ダメなんです!」
「前から思ってたんだけど、タメ口でもいいのよ?」
「タメ口?」
「えっと、丁寧な言葉使い…とか?って、レイモンド、手も冷たい!」
タメ口発言を誤魔化すためにもレイモンドの手を握ったが、思った以上に冷たくてびっくりしてしまった。
「お姉様の手、あったかい……。」
「レイモンドが冷た過ぎるのよ。……暗いのが怖いの?」
「……前に、兄達に怪我をさせてしまった時、真っ暗な部屋に閉じ込められて。扉が開いた時、ああ、殺されるって思ったんだ……。」
ポツポツと話し出すレイモンド。
「真っ暗になると、あの時の事を思い出すんだ。眠って、次に目を覚ましたら、じつはあの真っ暗な部屋に戻ってるんじゃないか、って…。怖いんだ。」
「そっか…。でも、もう大丈夫よ!もう誰もあなたを閉じ込めたりしない。」
握った手に力込める。
「でも……。魔法も使えない僕なんて。実は間違いだったって追い出されちゃったりしてね……。」
そう悲しそうに微笑むレイモンド。思わずレイモンドを抱きしめた。
「そんな訳ないじゃないっ!お父様もお母様もあなたのことをとっても心配してるのよ?追い出したりしないし……もう、大丈夫だから。あなたは、レイモンド・アースキン、私の可愛い弟なんだから!」
「お姉様……。」
「もう、大丈夫だから。」
すすり泣く声が聞こえたので、優しく背中をさすってやっていると、気付けば、静かな寝息に変わっていた。
レイモンドは不安だったんだ。
その不安、ちょっとわかる。
私だって、メリーラントとして目覚めてしばらく、混乱してばかりで、エメラルドちゃんを愛し過ぎて、夢を見てるんじゃないかと思った。
次目が覚めたら、前の世界に戻ってるんじゃないか。
ご飯と味噌汁で朝ごはんを済ませて、遅刻しそうになりながら、仕事へ行くんじゃないか。
エメラルドちゃんのスチルを眺めてニヤニヤする毎日に戻るんじゃないか……。
レイモンドと違うのは、前の世界もメリーとしての今も、私は虐げられていないし、楽しい毎日であることだ。どちらの世界も戻りたくないとは思わない。
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