悪役令嬢なんて呼ばせない!

もげこ

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気付いたら転生してました。

17.家族会議

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書庫で本を読んでいた私とレイモンドをレミが呼びに来た。

「レイモンド様、メリー様、旦那様がお呼びです。旦那様の書斎へ来るように、とのことでございます。」

「はい。」
「はぁい。」

本を片付け、書斎へ向かう。

「お姉様、なんで呼ばれてんだろう?」

「大丈夫よ。そんな不安そうな顔しないの!」

レイモンドが不安そうな顔をしているので、
ほっぺたを両手で挟んでやった。

「ひゃわっ!お姉様??」

驚きと戸惑いで目をウルウルしているレイモンド。

(いやつめ!)

ほっぺたは柔らかく、温かい。
つい出来心で、手をウニョウニョ動かした。

「お、おにぇねひゃま??」

「…あ、ごめん。つい。」

やばい癖になりそうだ。

「メリー様、レイモンド様?旦那様がお待ちですよ?」

レミから声を掛けられ、お父様から呼ばれていることを思い出し、レイモンドの魅惑ほっぺに別れを告げた。

「はい。そうでした。行きましょ!レイモンド。」

レイモンドの手を取り書斎に向かった。



まぁ、私は大体予想が付いているのですが。
朝食後すぐにお父様の書斎に押し掛けて、お願いをしたからだ。

レイモンドの想いを聴き、今のお父様の想いを伝えてやってほしいと。
私の願いに、お父様は笑顔で応えてくれた。

「メリーは本当に良い娘に育ってくれた。ありがとう。そうだね。ちゃんと話さないと思ってたとこだ。時間を作ろう。」

「そうですか。よかった。」

私は満足して部屋からようとすると、お父様はまだ言葉を続けた。

「そうえば、今朝、メリーを起こしに行ったメイドが、空っぽのベッドを見て悲鳴をあげたそうだよ?」

「えっと…。」

「弟想いの素晴らしい娘に、大変言いづらいんだけど、その悲鳴をマリエルに届いて、彼女にある決意をさせたんだ。」

「はぁ。」

「マリエル直々にメリーに淑女の教育をするってさ。」

「あれには、ふか~い理由がありまして…。あれによって家族に平和が来るんだったら、見逃してもらえたりしないかしら?」

「どうだろ?でも、私が止めるのは難しいかな。」

「そう言わずに、ぜひご慈悲を!」

「メリー、君なら、きっと立派な淑女になれる!自慢の娘だから!」

…と、まぁ私のお願いを聞き入れて、急遽時間を作ってくれたのだ。仕事に多忙なお父様のことだ、結構無理をしてもらったのだろう。




レイモンドと二人、書斎の扉に辿り着いた。
繋いだ手を強く握って、扉をノックした。
間を開けずに、中からお父様の返事がきた。

「ねぇ、レイモンド。2人のこと、お父様とお母様って呼んであげなよ、きっと喜ぶよ。どうせ今まで、遠慮して呼ばなかったんでしょ?」

「?!」

私はレイモンドの返事を待たずに扉を開けた。



「どうぞ!入って。」

書斎に入ると、奥の大きな仕事机にお父様が、手前の応接セットにお母様が座っていた。

「座ってて!この書類だけ!すぐ終わるから!」

顔を上げる事なく、忙しくペンを走らせるお父様。私達はお母様の前に座った。レミがすぐに4人分の紅茶とお菓子を用意してくれる。

「出来た!いやぁ~お待たせ!あ、クッキーじゃないか!レイモンド食べたかい?」

「……いえ、食べてません。」

レイモンドはガチガチに固まってて、そんな余裕はない様子。
構わず、クッキーを1つ口に放り込むお父様。それを見たお母様の怖い顔!お父様!空気を読んで!!

「うん。美味しいね。みんな食べればいいのに。」

……。

みんなの沈黙も物ともせず。紅茶を飲むお父様。
静かにティーカップを置いた。

「さて、レイモンド。最初に謝っておかないとね。すまなかった。」

カップを置くと頭を下げた。

「あ、頭を上げてください!」

慌てたレイモンドが立ち上がった。

「色々辛いことがあって、直ぐに養子に来てもらって、しっかり話しも出来ず。君を不安な想いをさせてしまった。ほら、おいで。」

頭を上げたお父様が大きく腕を広げた。
モジモジ戸惑うレイモンドの背中を押してあげた。

「ほら。」

お父様は、おずおずと進むレイモンドを膝に抱き上げた。
突然のことに目を白黒させるレイモンドに静かに語った。

「もっと早く話をする機会を持つべきだった。ねぇ、レイモンド。最近ちゃんと寝れてなかったんじゃ無いかい?何か心配なことがあるのかな?」

「…毎日、美味しいご飯を食べれて、たくさんの新しい服を買ってもらって、ふかふかのベッドで寝れて。噓みたいに幸せです…。」

「ほんと?こんなクマ作っちゃって。」

レイモンドの目の下をそっとなぞる。

「ホントです!…でも、幸せすぎて…、全部、夢なんじゃない、かって…。寝て、起きたら、真っ暗な、あの、部屋なんじゃないかって。…そしたら、寝る、のが、怖くて…。」

最後は絞り出す様だった。レイモンドの目から涙がポロポロ溢れる。

「そうか。怖かったんだね。」

優しくレイモンドの頭をなでるお父様。
コクリとうなずくレイモンド。

「…僕、いらない子だし。今は魔力もないし…。」

きつく握り締められた手にお母様の手が重なる。

「あなたはいらない子なんかじゃない!アースキン家の子になったの!もう怖い思いなんてしなくていいの。幸せになっていいのよ!」

「そうだよ。レイモンドはアースキン家の一員だ。 」

「ほんと?」

「ああ、どんなことがあっても、あの家に戻すようなことはないよ。」

そう言うと、お父様はレイモンドの涙をぬぐってやった。

「あと、魔力の件だけど、あんまり気にしなくていいよ。魔法なんて使えるに越した事は無いけど、使えなくても生きてけるからね。だって、僕もそもそも魔力も弱いし、魔法はからっきしなんだよ。でも、文官としての仕事に魔法は関係無いから。魔導師になりたいなら別だけど、…もしかして、魔導師になりたかったりする?」

「僕は、…お父様のような立派な文官になりたいです。」

「そうか、お父様のような…、それは嬉しいな!」

ほらごらん、「お父様」って呼ばれて感極まってますよ。
お父様も目が潤みかけたが、涙を流すことは無い。

「レイモンド!僕のような立派な文官になりたいなら、大切なのは魔力や魔法じゃなく、こんな時でもクッキーを食べれちゃう度胸とっ。」

そう言うと、また1つクッキーを食べるお父様。

「対応力だ!例えば、泣いたり怒ったり忙しい女性への対応とか…。マリエル。君には涙は似合わないよ。」

今度はお母様の頰に触れ、涙を拭っている。
お父様、お母様から睨まれてますよ?対応仕切れてない様にお見受けしますが。

そんなお父様を見て、深くうなずいたレイモンド。クッキーを1つ食べ。

「そうです!泣かないでください!お母様。」

お口をもぐもぐさせなながら、小さな手をお母様の手に重ね、小首を傾げての「お母様」は爆発的な効果をもたらした。
お母様の目からは止めどなく涙が溢れてきた。

「レイモンド…。」

完全に手中に収めましたね、レイモンド。
これで一安心かと、紅茶に手を伸ばした私に、可愛い天使が満面の笑みを向けている。

「お姉様、ありがとう!!」

(おふ…、まじてんしがいる!)

「どう、いたしまして。」

なんとか返事をした私に、レイモンドは更に笑みを深める。大輪の花がそこに咲く。

「レイモンドはスジがいいな!」

そう言って、お父様がレイモンドの頭を撫で続けている。

学花でのレイモンドのキャラは、お父様の教育の賜物だったのだとしみじみ思いながら、私もクッキーを一つ摘んだ。
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