10 / 48
蒼玉宮3
しおりを挟む
「んぁ……」
鼻から甘い吐息が漏れ、ルクレツィアはいたたまれなくなった。
蒼玉宮の日当たりの良いテラス。ルクレツィアはラファエロの膝に乗せられキスをされている。
舌を絡められ互いの唾液が混じりあい、ぴちゃぴちゃと淫靡な音が響く。
つがいであるラファエロの体液から魔力を摂取するのだと教えられた。いわば栄養摂取のようなもの。けれど、キスを与えられるたびに全身に震えが走るほどの快楽を感じてしまう。きっと今、とてもはしたない顔をしているに違いない。
そんな二人の横では、ユリウスがルクレツィアの手に聖石を当てて魔力を測定していた。
「わずかですが、今日も魔力が観測できましたよ」
ラファエロは名残惜し気にキスをやめたものの、ルクレツィアを膝に乗せたままユリウスに答えた。
「増えているのか」
「微妙ですね。でも数値以外の成果はだいぶはっきりしてきました」
「そうなのですか……?」
確かに寝込むことは減ったけれど、それ以外に成果があるのだろうか。
「そうですとも。この離宮に来てからルクレツィア様のつがい紋がかなりはっきりしてきました。その上、背が伸びて、お体にも丸みが出てきたじゃありませんか」
つがい紋の形はまだぼんやりしているが、それでも色はかなり濃くなりつつある。
それよりも、ルクレツィアは体の成長のことが嬉しかった。自分でもちょっとだけ女性らしくなった気がしているが、人から言われるのは格別だ。
「このまま体が大きくなれば、もっと効率的に魔力を摂取できようになります。頑張ってくださいね」
「はい」
にっこり微笑むルクレツィアの膝裏と腋下に腕を入れ、ラファエロはぎくしゃくとした動作で体をずらした。
「ラファエロ様?」
「いや、何でもない。おまえが愛らしすぎてどうしたらいいかわからないだけだ」
なぜか顔を赤くしている王子を不思議に思いながら、ルクレツィアはガレットに手を伸ばした。
「美味しい」
食べた直後再び唇にキスを受ける。
「美味いな」
見つめあう二人にかまうことなく、ユリウスが別の聖石をルクレツィアの手に当てた。
「まだ属性は現れてないですね」
魔力を探知する聖石にはいくつか種類があって、量を測るものと魔力の属性を見るものが一般的である。通常は石の色や光を見て判断するだけだが、ユリウスが使用している聖石には何かの装置がつけられていて、量を数値化したり色別に強さを比較できるようになっていた。
膝の上にぴょんとミアが乗ってくる。白い毛並みがもふもふの愛猫を撫でながらルクレツィアは尋ねた。
「ユリウス様、質問してもいいですか」
「もちろん」
「王都の施設や魔道障壁に魔力装填する方は、属性によって選ばれているのですか?」
かねてから不思議に思っていたことだ。
「以前はそうでした。しかし今は属性とは無関係に魔力量が重視されています。というのも、僕が開発した魔力変換機というものがあってですね、どんな属性の魔力もただのエネルギーに変えてその時々に必要なシステムに使われるようになりました。多くの人は僕の最大の功績を魔道障壁だと思っていますが、この変換機こそが革新的な発明なんですよ。とはいえ、治水工事などの現場には土属性と水属性の者を集めるのが今でも効率的です」
「この魔力を測る装置もユリウス様が?」
「はい。以前からアイデアがあったものを、貴女に出会ってから急遽完成させました。ラファエロ様が魔力を注ぐ方法・量と、貴女の体内に蓄積される魔力量、そしてつがい紋の関係をいずれ論文にして後世に残す必要がありますから。忌子と呼ばれた者たちが実は王族や高位貴族のつがいだということになれば、王侯貴族の人口低下に歯止めがかかるかもしれません」
ルクレツィアを研究することで、魔力を持たない者たちの生活が変わるなら、こんなに嬉しいことはない。
「貴女がラファエロ様の魔力で満たされ、全属性の魔力持ちになる日が待ち遠しいですね」
「ユリウス様は本気でそうなるとお考えなのですね?」
「もちろんです」
忌子が全属性の魔力持ちになるなんてルクレツィアには信じられないが、天才の名をほしいままにしているユリウスはそう確信しているらしい。
「さあ、もういいだろう。今日は体調もよさそうだ。庭園を歩いてみるか」
二人の話を静かに聞いていたラファエロがルクレツィアを抱いたまま立ちあがった。
「殿下、自分で歩けますので……」
この姿で外に行くのは恥ずかしい。
「殿下ではない、ラファエロだ」
「ラファエロ様、お願いです」
「歩いたり適度に運動することも、ルクレツィア様の健康維持には必要ですよ」
ユリウスの口添えを受けてラファエロはしぶしぶルクレツィアを降ろしてくれた。
傍に控えていたアンナが日よけの傘をさしかけてくれる。
はじめは不安だらけだった離宮での生活を、ルクレツィアは幸福だと感じ始めていた。
鼻から甘い吐息が漏れ、ルクレツィアはいたたまれなくなった。
蒼玉宮の日当たりの良いテラス。ルクレツィアはラファエロの膝に乗せられキスをされている。
舌を絡められ互いの唾液が混じりあい、ぴちゃぴちゃと淫靡な音が響く。
つがいであるラファエロの体液から魔力を摂取するのだと教えられた。いわば栄養摂取のようなもの。けれど、キスを与えられるたびに全身に震えが走るほどの快楽を感じてしまう。きっと今、とてもはしたない顔をしているに違いない。
そんな二人の横では、ユリウスがルクレツィアの手に聖石を当てて魔力を測定していた。
「わずかですが、今日も魔力が観測できましたよ」
ラファエロは名残惜し気にキスをやめたものの、ルクレツィアを膝に乗せたままユリウスに答えた。
「増えているのか」
「微妙ですね。でも数値以外の成果はだいぶはっきりしてきました」
「そうなのですか……?」
確かに寝込むことは減ったけれど、それ以外に成果があるのだろうか。
「そうですとも。この離宮に来てからルクレツィア様のつがい紋がかなりはっきりしてきました。その上、背が伸びて、お体にも丸みが出てきたじゃありませんか」
つがい紋の形はまだぼんやりしているが、それでも色はかなり濃くなりつつある。
それよりも、ルクレツィアは体の成長のことが嬉しかった。自分でもちょっとだけ女性らしくなった気がしているが、人から言われるのは格別だ。
「このまま体が大きくなれば、もっと効率的に魔力を摂取できようになります。頑張ってくださいね」
「はい」
にっこり微笑むルクレツィアの膝裏と腋下に腕を入れ、ラファエロはぎくしゃくとした動作で体をずらした。
「ラファエロ様?」
「いや、何でもない。おまえが愛らしすぎてどうしたらいいかわからないだけだ」
なぜか顔を赤くしている王子を不思議に思いながら、ルクレツィアはガレットに手を伸ばした。
「美味しい」
食べた直後再び唇にキスを受ける。
「美味いな」
見つめあう二人にかまうことなく、ユリウスが別の聖石をルクレツィアの手に当てた。
「まだ属性は現れてないですね」
魔力を探知する聖石にはいくつか種類があって、量を測るものと魔力の属性を見るものが一般的である。通常は石の色や光を見て判断するだけだが、ユリウスが使用している聖石には何かの装置がつけられていて、量を数値化したり色別に強さを比較できるようになっていた。
膝の上にぴょんとミアが乗ってくる。白い毛並みがもふもふの愛猫を撫でながらルクレツィアは尋ねた。
「ユリウス様、質問してもいいですか」
「もちろん」
「王都の施設や魔道障壁に魔力装填する方は、属性によって選ばれているのですか?」
かねてから不思議に思っていたことだ。
「以前はそうでした。しかし今は属性とは無関係に魔力量が重視されています。というのも、僕が開発した魔力変換機というものがあってですね、どんな属性の魔力もただのエネルギーに変えてその時々に必要なシステムに使われるようになりました。多くの人は僕の最大の功績を魔道障壁だと思っていますが、この変換機こそが革新的な発明なんですよ。とはいえ、治水工事などの現場には土属性と水属性の者を集めるのが今でも効率的です」
「この魔力を測る装置もユリウス様が?」
「はい。以前からアイデアがあったものを、貴女に出会ってから急遽完成させました。ラファエロ様が魔力を注ぐ方法・量と、貴女の体内に蓄積される魔力量、そしてつがい紋の関係をいずれ論文にして後世に残す必要がありますから。忌子と呼ばれた者たちが実は王族や高位貴族のつがいだということになれば、王侯貴族の人口低下に歯止めがかかるかもしれません」
ルクレツィアを研究することで、魔力を持たない者たちの生活が変わるなら、こんなに嬉しいことはない。
「貴女がラファエロ様の魔力で満たされ、全属性の魔力持ちになる日が待ち遠しいですね」
「ユリウス様は本気でそうなるとお考えなのですね?」
「もちろんです」
忌子が全属性の魔力持ちになるなんてルクレツィアには信じられないが、天才の名をほしいままにしているユリウスはそう確信しているらしい。
「さあ、もういいだろう。今日は体調もよさそうだ。庭園を歩いてみるか」
二人の話を静かに聞いていたラファエロがルクレツィアを抱いたまま立ちあがった。
「殿下、自分で歩けますので……」
この姿で外に行くのは恥ずかしい。
「殿下ではない、ラファエロだ」
「ラファエロ様、お願いです」
「歩いたり適度に運動することも、ルクレツィア様の健康維持には必要ですよ」
ユリウスの口添えを受けてラファエロはしぶしぶルクレツィアを降ろしてくれた。
傍に控えていたアンナが日よけの傘をさしかけてくれる。
はじめは不安だらけだった離宮での生活を、ルクレツィアは幸福だと感じ始めていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。
雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。
その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。
*相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる