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黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活〜怒涛の進学編〜
卒業へ向けて
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驚きとがっかりの混ざったヴィオラの顔があまりに近いので、少し距離を取る。
「…なんでしょう…?」
「……キスしたら起きるかな…って思って…」
「しなくても声かければ起きるって!!」
「したかったぁ!ちょっとでもしたかったぁー!!」
「卒業するまで待てっつってんだろ!?」
「っじゃあ卒業したらしてくれるんですね!?」
「…あ゙っ!!…」
墓穴を掘ったデイビッドの頭の上から更に声がする。
「聞いた?エリック。言質取ったわよ!」
「ハハハ!あと2年でそこまで成長しますかね?無理じゃないですか?!」
「なら賭けてみる?」
「賭けた所でどうやって確認するんです?」
「わかるわよ。ヴィオラは顔に直ぐ出るもの。」
好き勝手言われても反論できず、何か喋れば全て藪蛇になってしまうので、黙っているしか出来ないデイビッドは、午前中の楽しかった記憶が塗り潰されたように、ただただ心労が溜まりげっそりした顔をしていた。
「ほら、早く中に入って下さいよ。貴方宛ての荷物が山程届いているんですからね。」
「お父様が色々送ってくれたみたいなんです。開けてみましょ?!」
騎乗用の装具を脱いで部屋に入ると、大きな木箱や小包などが部屋の真ん中に積まれていた。
甘い香りの漂う木箱を開けると、おが屑の中に真っ赤なリンゴが詰められていて、今年の出来の良さが伺える。
ひとつ取り出し、よく拭いてから素手でふたつに割ると果汁がほとばしる。
ヴィオラに半分差し出すと、嬉しそうに受け取ってかじりついた。
「今年もいい出来だな。」
「甘ぁ~い!シャキシャキで蜜がたっぷり!」
「私も頂いていいかしら?!」
「いっぱい食べて下さい!家のリンゴはそのまま食べるのが一番美味しいんです!」
エリックが綺麗に皮を剥くと、シェルリアーナも一口食べて幸せそうな顔をする。
次の重い箱にはワインの瓶が何本も入っていた。
「わぁ!子爵気前いい~!これは嬉しいですね!?」
「いくつあるんだ…?料理用にしても使い切れねぇな。」
「あ、大丈夫です。僕飲むんで!」
「俺だって別に飲めないわけじゃねぇんだけどな?!」
「だったら飲みましょうよ!飲んで洗いざらい胸の内吐き出して、弱味握らせて下さい。」
「お前には絶対ぇ付き合わねぇよ!!」
他の箱には、ヴィオラのための春先用のケープと刺繍入りのリボンが入っていた。
「お祖母様からのお手紙も!デイビッド様の事もとても心配されてますよ?」
「夏には必ず行こう。それまでに色々用意しなきゃな。」
「お土産いっぱい持って行きたいです!」
ローベル子爵から送られて来た荷物を片付け、お次は運河のメルカートで見つけてきた品を開いていく。
「わぁ!スパイスがたくさん!」
「見たこと無い物ばっかりだわ。」
「このピンク色の石はなんですか?」
「岩塩だ。最近見つかった塩鉱山で採れるんだとよ。この色は絶対流行ると思ってウチも買い付けに行っててな、中でも特に結晶の綺麗な…舐めてみようとするんじゃない!!」
ヴィオラから塩の塊を取り上げると、今日は仕入れ先で見つけた猪の塊肉を焼いて、箱の中で見つけた傷の出来てしまったリンゴで仕立てたソースをかける。
「ヴィオラ。ほら、岩塩削ってみるか?」
「いいんですか!?やってみたいです!」
まるで宝石の原石のようなキラキラしたピンク色の塊に、おろし金を当てて削ると雪のような欠片が落ちて来る。
「そうそう、こんなもんかな。」
「た…楽しい…」
「塩だぞ?!チラッとかかる位にしとけ?」
新作の小さな丸パンは、外はカリカリで中がもちもちに焼き上がり、早くも数が目減りしている。
「コレ美味しいですよ!?いつもの食感と違って、表面も香ばしくていいですね!」
「バター取って!止まんないわコレ。」
「つまみ食いが露骨!!」
熟成した猪は柔らかく、脂とリンゴのソースが良く馴染む。
エルムから入って来た、ブーケの様なフリルのついたレタスも添えてなかなか見栄えの良い昼食になった。
「猪ってこんなに美味しくなるのね。」
「ピリッと胡椒が効いてて、甘酸っぱいソースと良く合います!」
「最近ジビエがレパートリーに増えましたね?」
「今までは偶然だったんだけどよ、その内嫌でも覚えなきゃならなくなりそうなんだよ…」
空から見た新領地には、まだまだ謎と秘密がありそうで、デイビッドは荒れた土地と群れる魔獣を思い出し、また溜め息をついた。
先の騒動で市井を引っ掻き回してしまったので、被害はその取引先にまで及んでしまい、近郊から遠方にまで気を配らなければならない。
本来なら面倒な手紙や訪問を要する所、都合の良いことに学園にはその次期を担う後継者が大勢居るではないか。
何段階ものやり取りをすっ飛ばし、交渉と提案、打診、紹介、更には仮決定にまで持ち込めるこの環境は正直な話美味し過ぎる。
月曜日の領地経営科は、教室ではなく会議室で円座になって行われ、各家の受けた被害とその修復について、全員で意見を出し合い話し合っていた。
3年生が参加を申し出て、卒業を目前にして起きたこの騒動に対し、何としてもここで解決しようと躍起になっている姿が、下級生達に良い刺激になっている。
飛び交う意見とぶつかり合う主張、手を取り合える事もあれば渋られる事もあり、その都度交渉したり別の手を考えたりと、話し合いはどんどん白熱していく。
デイビッドはそれを眺めながら大いに楽しんでいた。
要所で助言を入れるだけで思わぬ方向に加速して行く次世代の思想は、後にこの国そのものを造る要となる。
それが手に取るように分かってしまい、強味に弱味に付け入る隙まで赤裸々に語られ、良い意味で笑いが止まらない。
「課題も消化し切ってたから助かった!この授業も次週で最後かぁ。なんだかんだ楽しかったな?!」
「「「えええぇぇぇ!!??」」」
デイビッドの発言に生徒達が狼狽え出す。
「聞いてないですよ!!」
「まだ一ヶ月あるのに?!」
「進学後の授業の予習に充てるから、特別枠の授業は終わりになるんだよ。」
「そんなぁ!!」
いつも人との別れ際は曖昧にして、いつの間にか居なくなる様にしてきたデイビッドは、面と向かって人に惜しまれる事に慣れていない。
逃げる様に騒ぐ生徒達と別れ、廊下を歩いていると今度は背後から何やら重い足音が聴こえてきた。
気付かない振りをして早足になると、ついに野太い声に名前を呼ばれてしまう。
「デイビッド殿ぉぉ!!」
久々に登場したコールマン卿が、学園の廊下をフルプレートの甲冑装備でガシャガシャけたたましく走って来る。
本人は晴れやかに手を降っているが、周囲の目はドン引きだ。
流石に迷惑なので足を止めコールマン卿に話しかける。
「学舎内で甲冑は流石に不味いのでは…?!」
「ハッ、これは失敬!火急の用故、この様な格好で!ハッハッハッハッ!!」
「次からは気をつけて、それじゃ…」
「デイビッド殿に急ぎご相談がありまして、探しておりました!」
「捕まえないで欲しかった!!」
デイビッドの腕をガッチリ押さえ込んだコールマン卿は、にこにこと別の会議室目指して進んで行く。
珍しくデイビッドが引き摺られる側になり、連れて来られた会議室には、騎士科に出入りしている騎士団と講師と指導教員が並んでいた。
「お連れしました!」
「コールマンご苦労。良く来てくれたな、デイビッド殿。」
「ほう、彼が噂の…」
「騎士のようには見えませんが、コールマン殿によると相当の手練れだとか?」
「本当に?訓練もしていないただの若人にしか見えないが?」
「その腕前は見せて頂けるのですかな?」
「あのスイマセン!なんの話ですか?!」
いきなり値踏みするような視線に晒され、デイビッドは少し身構えた。
するとコールマン卿が真剣な目で身を屈め、デイビッドに話しかけて来た。
「デイビッド殿、実は貴殿に我々からひとつ頼みがあるのだが、どうか聞いては頂けまいか…?」
「内容次第で断っていいなら…」
デイビッドの消極的な反応に、他の騎士達は難色を示したが、コールマン卿は縋るように騎士科が今置かれている状況を説明し出した。
「…なんでしょう…?」
「……キスしたら起きるかな…って思って…」
「しなくても声かければ起きるって!!」
「したかったぁ!ちょっとでもしたかったぁー!!」
「卒業するまで待てっつってんだろ!?」
「っじゃあ卒業したらしてくれるんですね!?」
「…あ゙っ!!…」
墓穴を掘ったデイビッドの頭の上から更に声がする。
「聞いた?エリック。言質取ったわよ!」
「ハハハ!あと2年でそこまで成長しますかね?無理じゃないですか?!」
「なら賭けてみる?」
「賭けた所でどうやって確認するんです?」
「わかるわよ。ヴィオラは顔に直ぐ出るもの。」
好き勝手言われても反論できず、何か喋れば全て藪蛇になってしまうので、黙っているしか出来ないデイビッドは、午前中の楽しかった記憶が塗り潰されたように、ただただ心労が溜まりげっそりした顔をしていた。
「ほら、早く中に入って下さいよ。貴方宛ての荷物が山程届いているんですからね。」
「お父様が色々送ってくれたみたいなんです。開けてみましょ?!」
騎乗用の装具を脱いで部屋に入ると、大きな木箱や小包などが部屋の真ん中に積まれていた。
甘い香りの漂う木箱を開けると、おが屑の中に真っ赤なリンゴが詰められていて、今年の出来の良さが伺える。
ひとつ取り出し、よく拭いてから素手でふたつに割ると果汁がほとばしる。
ヴィオラに半分差し出すと、嬉しそうに受け取ってかじりついた。
「今年もいい出来だな。」
「甘ぁ~い!シャキシャキで蜜がたっぷり!」
「私も頂いていいかしら?!」
「いっぱい食べて下さい!家のリンゴはそのまま食べるのが一番美味しいんです!」
エリックが綺麗に皮を剥くと、シェルリアーナも一口食べて幸せそうな顔をする。
次の重い箱にはワインの瓶が何本も入っていた。
「わぁ!子爵気前いい~!これは嬉しいですね!?」
「いくつあるんだ…?料理用にしても使い切れねぇな。」
「あ、大丈夫です。僕飲むんで!」
「俺だって別に飲めないわけじゃねぇんだけどな?!」
「だったら飲みましょうよ!飲んで洗いざらい胸の内吐き出して、弱味握らせて下さい。」
「お前には絶対ぇ付き合わねぇよ!!」
他の箱には、ヴィオラのための春先用のケープと刺繍入りのリボンが入っていた。
「お祖母様からのお手紙も!デイビッド様の事もとても心配されてますよ?」
「夏には必ず行こう。それまでに色々用意しなきゃな。」
「お土産いっぱい持って行きたいです!」
ローベル子爵から送られて来た荷物を片付け、お次は運河のメルカートで見つけてきた品を開いていく。
「わぁ!スパイスがたくさん!」
「見たこと無い物ばっかりだわ。」
「このピンク色の石はなんですか?」
「岩塩だ。最近見つかった塩鉱山で採れるんだとよ。この色は絶対流行ると思ってウチも買い付けに行っててな、中でも特に結晶の綺麗な…舐めてみようとするんじゃない!!」
ヴィオラから塩の塊を取り上げると、今日は仕入れ先で見つけた猪の塊肉を焼いて、箱の中で見つけた傷の出来てしまったリンゴで仕立てたソースをかける。
「ヴィオラ。ほら、岩塩削ってみるか?」
「いいんですか!?やってみたいです!」
まるで宝石の原石のようなキラキラしたピンク色の塊に、おろし金を当てて削ると雪のような欠片が落ちて来る。
「そうそう、こんなもんかな。」
「た…楽しい…」
「塩だぞ?!チラッとかかる位にしとけ?」
新作の小さな丸パンは、外はカリカリで中がもちもちに焼き上がり、早くも数が目減りしている。
「コレ美味しいですよ!?いつもの食感と違って、表面も香ばしくていいですね!」
「バター取って!止まんないわコレ。」
「つまみ食いが露骨!!」
熟成した猪は柔らかく、脂とリンゴのソースが良く馴染む。
エルムから入って来た、ブーケの様なフリルのついたレタスも添えてなかなか見栄えの良い昼食になった。
「猪ってこんなに美味しくなるのね。」
「ピリッと胡椒が効いてて、甘酸っぱいソースと良く合います!」
「最近ジビエがレパートリーに増えましたね?」
「今までは偶然だったんだけどよ、その内嫌でも覚えなきゃならなくなりそうなんだよ…」
空から見た新領地には、まだまだ謎と秘密がありそうで、デイビッドは荒れた土地と群れる魔獣を思い出し、また溜め息をついた。
先の騒動で市井を引っ掻き回してしまったので、被害はその取引先にまで及んでしまい、近郊から遠方にまで気を配らなければならない。
本来なら面倒な手紙や訪問を要する所、都合の良いことに学園にはその次期を担う後継者が大勢居るではないか。
何段階ものやり取りをすっ飛ばし、交渉と提案、打診、紹介、更には仮決定にまで持ち込めるこの環境は正直な話美味し過ぎる。
月曜日の領地経営科は、教室ではなく会議室で円座になって行われ、各家の受けた被害とその修復について、全員で意見を出し合い話し合っていた。
3年生が参加を申し出て、卒業を目前にして起きたこの騒動に対し、何としてもここで解決しようと躍起になっている姿が、下級生達に良い刺激になっている。
飛び交う意見とぶつかり合う主張、手を取り合える事もあれば渋られる事もあり、その都度交渉したり別の手を考えたりと、話し合いはどんどん白熱していく。
デイビッドはそれを眺めながら大いに楽しんでいた。
要所で助言を入れるだけで思わぬ方向に加速して行く次世代の思想は、後にこの国そのものを造る要となる。
それが手に取るように分かってしまい、強味に弱味に付け入る隙まで赤裸々に語られ、良い意味で笑いが止まらない。
「課題も消化し切ってたから助かった!この授業も次週で最後かぁ。なんだかんだ楽しかったな?!」
「「「えええぇぇぇ!!??」」」
デイビッドの発言に生徒達が狼狽え出す。
「聞いてないですよ!!」
「まだ一ヶ月あるのに?!」
「進学後の授業の予習に充てるから、特別枠の授業は終わりになるんだよ。」
「そんなぁ!!」
いつも人との別れ際は曖昧にして、いつの間にか居なくなる様にしてきたデイビッドは、面と向かって人に惜しまれる事に慣れていない。
逃げる様に騒ぐ生徒達と別れ、廊下を歩いていると今度は背後から何やら重い足音が聴こえてきた。
気付かない振りをして早足になると、ついに野太い声に名前を呼ばれてしまう。
「デイビッド殿ぉぉ!!」
久々に登場したコールマン卿が、学園の廊下をフルプレートの甲冑装備でガシャガシャけたたましく走って来る。
本人は晴れやかに手を降っているが、周囲の目はドン引きだ。
流石に迷惑なので足を止めコールマン卿に話しかける。
「学舎内で甲冑は流石に不味いのでは…?!」
「ハッ、これは失敬!火急の用故、この様な格好で!ハッハッハッハッ!!」
「次からは気をつけて、それじゃ…」
「デイビッド殿に急ぎご相談がありまして、探しておりました!」
「捕まえないで欲しかった!!」
デイビッドの腕をガッチリ押さえ込んだコールマン卿は、にこにこと別の会議室目指して進んで行く。
珍しくデイビッドが引き摺られる側になり、連れて来られた会議室には、騎士科に出入りしている騎士団と講師と指導教員が並んでいた。
「お連れしました!」
「コールマンご苦労。良く来てくれたな、デイビッド殿。」
「ほう、彼が噂の…」
「騎士のようには見えませんが、コールマン殿によると相当の手練れだとか?」
「本当に?訓練もしていないただの若人にしか見えないが?」
「その腕前は見せて頂けるのですかな?」
「あのスイマセン!なんの話ですか?!」
いきなり値踏みするような視線に晒され、デイビッドは少し身構えた。
するとコールマン卿が真剣な目で身を屈め、デイビッドに話しかけて来た。
「デイビッド殿、実は貴殿に我々からひとつ頼みがあるのだが、どうか聞いては頂けまいか…?」
「内容次第で断っていいなら…」
デイビッドの消極的な反応に、他の騎士達は難色を示したが、コールマン卿は縋るように騎士科が今置かれている状況を説明し出した。
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