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番外編 エルダー ボンバー 後編
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静弥は満面の笑みで、洋服を取り出した。
「これに、着替えてね」
嫌な予感しかしないけど、物を見る前から拒否するのは可哀想だろう。
俺は、洋服を広げた。
な、なんだ。これは……。
レザーで出来た、黒のタートルネックのノースリーブと同色のホットパンツ。
首の部分には首輪がついていて、身体の大事なところに穴が空きまくっている。
少年漫画の傷だらけのキャラみたいに、服のあちらこちらに切れ込みがあるのだ。
乳首とか、丸見えになるんじゃねえの。
ダメージジーンズとか、そういう次元の話ではない。
こんな格好で外に出たら、公然わいせつ罪で捕まるだろ……!
まるで貧血でも起こしたかのように、くらっと来た。
「お前、なに、考えてんだよ!」
静弥はスマホを、俺に見せて来た。
画面には、tmitterのとある動画の呟きが映っている。
投稿された文章は『こんなペットは、嫌いですか?』なのに対して、動画に映っているのは際どい格好をした韓国人っぽい男。
俺に渡された服装みたいな服で首輪で繋がれ脚をM字に広げていたり、乳首が見えるように切れ込みがあるグレーのTシャツに穴だらけのジーパン姿で他人の指を舐めまくっていたり、胸板を全面に見せるように白いタンクトップを捲り上げて脚を開いて風呂に浸かっている動画だった。
なんだ、コイツは……。
「晄君に、こういうことして欲しいな。って」
「するかぁ! 仮にコウでもしないし、死ぬかコレするかの二択じゃなきゃしねぇよ!」
「え……。自分用にご主人様の衣装を、買ったんだけどな……」
静弥が、これを着る!?
「めちゃくちゃ見たいです! 喜んで着るから、ちょっと待ってて!」
日本人の最大の特技は、手のひら返しだ。
迷惑系WeeTuberだったへづまりょうをしつこく叩いていた奴が、奈良公園の鹿を救った救世主! とか投稿しているのを見た時は、ゲボを吐きそうになった。
うちの親父なんですけどね。
俺はよだれかけと、オムツを脱ぐ。
それからいそいそと畳んで、タンスの上に元のパジャマと並べて置く。
タンクトップを着てから、下着を付けてからホットパンツを履く。
布面積がよだれかけとオムツよりあるから、人権が適用されてる錯覚を覚える。
感覚、バグりすぎだろ……。
「き、着たよ」
静弥の声に顔を上げると、SMクラブのキャストのような革製の服に痩せ身を包んだ静弥が居た。
この服も、隠せてないだろ! ってツッコミを入れたいくらい、服に穴が空きまくっている。
一昔前に流行った芸名に「ゲイ」を使い、両腕を広げながら「フォー!」って言いながら腰を振っていた芸人みたいだ。
俺が見たい!って言っといてアレだけど、壊滅的に似合っていない。
「……何か言って」
「本当、ごめん。エロいけど、好みじゃない……」
これは、本音だ。確かにエロいのはエロいんだけど、この姿で興奮出来るかと言われたら別だ。
「え……。どんな格好が、好きなの?」
トリニティのインタビュー動画でも「女の子が、どんな服を着てたらキュンとする?」みたいな質問あったけど、マジで似合ってたらわりかしなんでも良いのだ。
港区女子みたいな花柄のプリーツスカートワンピースでも、古着風のエスニックみたいなテイストでも、男と変わらないパーカースタイルでも良いし、天使界隈でも、ロリータでも良い。
静弥に、似合う服つったら……。
「山南原人スタイル?」
あのどこで買ったん? みたいな黒いタートルネックと、グレーのズボンが一番静弥に似合っていると思う。
「え……大分と、趣味変わってるね」
「その服よりは、百倍まともだろ!!」
静弥は無許可で俺を撮影して、ニコニコしている。
「それ、エンスタとかにあげんなよ!」
「虎婆さんに、送るだけだよ」
「やめろ!!」
家族と同じくらい、見せたくない相手だわ!! そもそも勝手に、撮影すんなよ!! って言う当たり前の感覚が、今になって沸いて来た。
静弥は「ああっ」って、カラスが鳴くような声をあげて俺を見つめる。
「どうしよう。雲雀丘君に、送信しちゃった。また、怒られちゃう」
「……なあ」
「え?」
「お前のその姿、雲雀丘に送った?」
「うん」
ファー!! 俺は大御所芸人みたいに前歯を突き出して、横転しかけた。
信じられねぇ!! 自分のそんな姿を、友達と言って良いのか分からない同級生に送るか!?
「なんで、送ったんだよ!」
「忌憚のない意見を、言ってくれると思ってから」
きた? 東西南北の北?
俺がピンと来てないことを察したのか、静弥は
「遠慮のない意見だよ」と、言い換えてくれた。
「ああ……なんて、言われたん?」
「確か『キモ。お前のことヌマクローじゃなくて、キモ太郎って呼ぶことにするわ』って」
「ボロカスかよ! そんな奴に、メッセージ送んな! つかまず、卑猥な画像を送んな!!」
雲雀丘だから良いと思ったんだろうが、あいつはノンケだ。
男のこんな格好、見たくないだろう。
俺にとっては、それよりも沢井の方が問題だ。
お盆に帰省する時に、刻み突きとか喰らわされるんじゃねえの……。
落ち着いたら、丁重に謝ろう。
「沢井にも送んなよ、そう言うの……」
「え? 送ってないよ」
「雲雀丘ーッ!! あ、あんの、スピーカーめ!!」
そうだった! あいつに知られたら、村中の人間に知れ渡ると言うことだ!
きっと沼黒篠塚カップルがSM服着て、SMプレイしてる。くらいに話が、広まるんだ!!
「これからエッチしようって時に、他の男の話しないで」
静弥は唇を小さく尖らせ、視線を落としながらそう言った。
な、なんて可愛いのだろうか? 言い方も、可愛い~! 全てが、可愛い~!
こんなことを言われて、時めかない男は居ない。
「ぽ、ポチャーン……」
「晄君って、インターネットの言葉でしか会話出来ないの? もうちょっと、本読みなよ」
さげすむように、静弥は俺を見た。
「すみませんでした」
*
久しぶりだったからか、ケンカした後だからか、両方なのか。雑談にすらカテゴライズされない話をしたり、何回も唇を重ね合わせたり、二人でお互いの身体を触り合ったりした。
予想通り静弥はぐずぐず泣きながら、何回も「ごめんね」と言う謝罪と「嫌いにならないで」と祈りに、似た懇願をして来た。
そう思うなら言う前に考えろや……って喉まで出かかったけど、ケンカした直後に言って傷付けるのは可哀想だろう。
ガキの頃に培った、コミュニケーションの土台が静弥にはない。
まるで母親にワガママを言って怒らせてしまい、お母さん嫌いにならないでぇ! と、泣いている子供みたいだ。
俺の方が、ママなんじゃねーの……。
今はローションをまとった静弥の指で、後ろをほぐされている。
すっかり手つきが慣れていて、嬉しいやら恥ずかしいやら……。
ベッドの上でハイハイのポーズを取ってる訳だけど、いつまで経っても慣れないし恥ずかしい。
服はホットパンツだけ脱がされた状態で、この格好だから全裸より気恥ずかしさがある。
待てよ。コレ、着衣エロなんじゃ……!?
自分でしたから良い。って言ったのに、静弥は「晄君雑だから、心配なんだよ」と言って譲らなかった。
静弥の指に纏われたローションは、生温い。
山南村の河岸で、ヤった時はキンキンに冷えてやかったのに。
ローション
生ぬるくなり
夏だなぁ
篠塚 晄、心の一句。
静弥の長細い指は、まるで炭鉱で炭を探り当てるかのように俺の中の奥へ奥へと進んでいく。
何回身体を重ねても、気持ちよさに抗えず恥ずかしい声をあげてしまう。
「しょ、しょこ、ヤ、やら……」
マジで赤ちゃんみたいに、舌足らずに話してるじゃねえか。
やっぱり、赤ちゃんかもしれねぇ。
静弥の指の腹で、俺の快楽のツボを強く押されている気がする。
俺のナカを蹂躙するかのように、掻き回されている。
「ン、あっ、はッ……」
指の動きを緩くして欲しい。そうお願いする為に、振り返る。
改めて見ても、絵面やべえな……。
まるで大御所イケメン俳優の隠し子くらい顔が整っている男が、こんな下品な服を着ているインパクトが凄い。
この衝撃は、初めてフェラされた時と同等だと思う。
「晄君、挿れて良い?」
「いいよ! 来いよ!」
「何それ……この間言ってた『やらないか?』のシリーズ?」
まるで暴れ狂っている薬物患者を見るような目で、静弥は俺を見た。
「今のは、珍獣先輩だから! やらないか? はうさぢ!」
「僕からしたら、どっちも汚いインターネットだよ……。晄君、フィルタリング設定しよう?」
今度は一人暮らしを始めた孫を心配して、宅配便にカップラーメンや野菜を詰める老人の顔をし出した。
百面相かよ。
「ガキかよ! やめろ! 俺のケツ穴にお前のチンコ挿れてる時点で、フィルタリング意味ねえから! なんなら、一番現実にフィルターかけるべきだから!」
「ああ……毒と偏見と性欲に塗れた、生活送ってるもんね」
「悪口だろ! そんなこと言うなら、ケツ穴未確定にすんぞ!」
「そっか……僕が悪いね。じゃあ、挿れるね」
「どしたん? 話聞こか? かよ! いいけど!」
言いながら気持ち腰を上げて、静弥が挿れやすくしてやる。
静弥の露出された性器は張り詰めていて、血管も太くなっている。
慣れとは恐ろしいもので、見てもビビらなくなって来た。
最初のうちは、デッカすぎんだろ。とか、ビール瓶か何か? とか、思っていたのに、恐ろしい。
視覚だけじゃなく後ろもすっかり慣れたようで、俺の呼吸に合わせて皮膚を広げて男性器と結び合った。
「あ、いてぇ、しゅきぃ……首も締めてぇ」
俺はMなので一番好きな体位はバックで、ガンガン突かれたい。
だけどケンカした直後だからか、静弥はいつにましても優しい。
挿れるスピードもゆっくりだし、頭を撫でてくれてるし、息遣いもいつもの性欲丸出しな激しいものじゃない。
静弥は「分かった」と短く言って、ホットパンツのポケットから小さなスイッチを取り出した。
何それ? ローターのスイッチ?
俺、何も挿れてないけど……。なんて、思ったのも束の間。
まるで血圧計のベルトのように、首輪が締まり出したのだ。
みるみるうちに、首が締まっていく。
人間がブレーキをかけるところを、遠慮なく締め上げられて俺は嬉しさの余り身体をビクンビクンと跳ねさせた。
締めが違う 圧が違う
違うだろ すべてが他の奴(首輪)とは
「ひギ……おッ!」
ガチで気持ちいい。なんだ、コレ!? ナニコレ!?
「良かった……。付属の首輪じゃ満足出来なさそうだから、通販で買っておいた首輪に付け替えたんだ」
だから、準備に時間かかっていたのか。
やっぱりコイツ、ズレてんな……。
「今後ろからガンガン突かれたら、サイコーに気持ちいい! ハンバーグ捏ねる音鳴らす勢いで、パンパンしてぇ……!」
「晄君……」
静弥の蔑みの視線が、鋭くなっていく。
それからはいつもみたいに激しく突かれ、二人してフィニッシュを迎えた。
射精してから静弥と向き合うように静弥の太ももの上に座り、第二ラウンドを開始する。
騎乗位って、顔だけじゃなく結合部も見えるんじゃ……?
いつもより、奥に入っている気がする。
挿れられてから気が付いたけど、気持ち良いは麻酔みたいなもんだ。
思考力が、奪われていく。
そんな状態で動いてるもんだから、ブレーキなんてない。
静弥、重くないかな? と静弥の顔を見たら、気持ち良さそうに肩を震わせて唇を噛み締めている。
「晄君の奥、気持ち良いよ……」
「言うな、バカぁああ!」
言葉にされると、途端に恥ずかしさが増す。
だけど、腰を振るのは止められない。
気持ちいいには、逆らえないんだなぁ。
人間だもの
ひかを
*
約一週間後。
その日も、朝のワイドショーでは定型文のように「危険な暑さ」「熱中症対策を、しっかりと!」なんて、言っていた。
大学から帰ると、俺宛に郵便物が届いた。
郵便局が提供している荷物を送るサービスで送られて来ていて、段ボールのサイズはかなり小さい。
送り主を見ると、父親からだ。
ロクな予感しねぇ……。
自分の部屋まで荷物を運び、カッターナイフをペン立てから取り出した。
どうせ、AVとかアダルト雑誌だろ。だと思ったけど、それならばレターパックを使えば良い。
レターパックで現金とデスマフィンは送れないが、DVDと雑誌は送れるだろう。
仕送りにしては、箱が小さいし……。
不審に思いながら、おそるおそるカッターナイフで段ボールの封を切り裂く。
封を切り、段ボールを開けると、クッション代わりのぐしゃぐしゃに丸められた新聞紙が目に飛び込んで来た。
うわぁ、これ、絶対に捨てる用の新聞紙じゃん……。
男の雑さを、見た気がする。
新聞紙を掻き分けると、とんでもないものが入っていた。
この間の首輪に、アナルプラグが繋がれている。
しかも、結構デカめ。
ジップロックの外に貼られた正方形の付せんには
「沼黒君に頼まれたから、改造した。器用な父親に、感謝しろ」と、書かれている。
俺は段ボールを蹴飛ばして、静弥の部屋を千本ノックかの如く叩く。
「静弥!! 他人の親父に、何頼んでんだよ!! 魔改造すんな!!」
部屋から出て来た静弥は「つけないの?」とか、舐めた口を聞いて来た。
そんなの、そんなのっ……。
「つけるよ! バーカ!!」
「素直で、大変宜しい」
静弥はそう言って、俺の服を脱がしていく。
え? 今すんの? 小学生なの?
その後どうなったかは、言うまでもない。
クソ限界集落山南村へ居る両親へ 晄は、元気に過ごしてます。
今度、気が向いたら手紙書くね。
エルダー ボンバー 完
「これに、着替えてね」
嫌な予感しかしないけど、物を見る前から拒否するのは可哀想だろう。
俺は、洋服を広げた。
な、なんだ。これは……。
レザーで出来た、黒のタートルネックのノースリーブと同色のホットパンツ。
首の部分には首輪がついていて、身体の大事なところに穴が空きまくっている。
少年漫画の傷だらけのキャラみたいに、服のあちらこちらに切れ込みがあるのだ。
乳首とか、丸見えになるんじゃねえの。
ダメージジーンズとか、そういう次元の話ではない。
こんな格好で外に出たら、公然わいせつ罪で捕まるだろ……!
まるで貧血でも起こしたかのように、くらっと来た。
「お前、なに、考えてんだよ!」
静弥はスマホを、俺に見せて来た。
画面には、tmitterのとある動画の呟きが映っている。
投稿された文章は『こんなペットは、嫌いですか?』なのに対して、動画に映っているのは際どい格好をした韓国人っぽい男。
俺に渡された服装みたいな服で首輪で繋がれ脚をM字に広げていたり、乳首が見えるように切れ込みがあるグレーのTシャツに穴だらけのジーパン姿で他人の指を舐めまくっていたり、胸板を全面に見せるように白いタンクトップを捲り上げて脚を開いて風呂に浸かっている動画だった。
なんだ、コイツは……。
「晄君に、こういうことして欲しいな。って」
「するかぁ! 仮にコウでもしないし、死ぬかコレするかの二択じゃなきゃしねぇよ!」
「え……。自分用にご主人様の衣装を、買ったんだけどな……」
静弥が、これを着る!?
「めちゃくちゃ見たいです! 喜んで着るから、ちょっと待ってて!」
日本人の最大の特技は、手のひら返しだ。
迷惑系WeeTuberだったへづまりょうをしつこく叩いていた奴が、奈良公園の鹿を救った救世主! とか投稿しているのを見た時は、ゲボを吐きそうになった。
うちの親父なんですけどね。
俺はよだれかけと、オムツを脱ぐ。
それからいそいそと畳んで、タンスの上に元のパジャマと並べて置く。
タンクトップを着てから、下着を付けてからホットパンツを履く。
布面積がよだれかけとオムツよりあるから、人権が適用されてる錯覚を覚える。
感覚、バグりすぎだろ……。
「き、着たよ」
静弥の声に顔を上げると、SMクラブのキャストのような革製の服に痩せ身を包んだ静弥が居た。
この服も、隠せてないだろ! ってツッコミを入れたいくらい、服に穴が空きまくっている。
一昔前に流行った芸名に「ゲイ」を使い、両腕を広げながら「フォー!」って言いながら腰を振っていた芸人みたいだ。
俺が見たい!って言っといてアレだけど、壊滅的に似合っていない。
「……何か言って」
「本当、ごめん。エロいけど、好みじゃない……」
これは、本音だ。確かにエロいのはエロいんだけど、この姿で興奮出来るかと言われたら別だ。
「え……。どんな格好が、好きなの?」
トリニティのインタビュー動画でも「女の子が、どんな服を着てたらキュンとする?」みたいな質問あったけど、マジで似合ってたらわりかしなんでも良いのだ。
港区女子みたいな花柄のプリーツスカートワンピースでも、古着風のエスニックみたいなテイストでも、男と変わらないパーカースタイルでも良いし、天使界隈でも、ロリータでも良い。
静弥に、似合う服つったら……。
「山南原人スタイル?」
あのどこで買ったん? みたいな黒いタートルネックと、グレーのズボンが一番静弥に似合っていると思う。
「え……大分と、趣味変わってるね」
「その服よりは、百倍まともだろ!!」
静弥は無許可で俺を撮影して、ニコニコしている。
「それ、エンスタとかにあげんなよ!」
「虎婆さんに、送るだけだよ」
「やめろ!!」
家族と同じくらい、見せたくない相手だわ!! そもそも勝手に、撮影すんなよ!! って言う当たり前の感覚が、今になって沸いて来た。
静弥は「ああっ」って、カラスが鳴くような声をあげて俺を見つめる。
「どうしよう。雲雀丘君に、送信しちゃった。また、怒られちゃう」
「……なあ」
「え?」
「お前のその姿、雲雀丘に送った?」
「うん」
ファー!! 俺は大御所芸人みたいに前歯を突き出して、横転しかけた。
信じられねぇ!! 自分のそんな姿を、友達と言って良いのか分からない同級生に送るか!?
「なんで、送ったんだよ!」
「忌憚のない意見を、言ってくれると思ってから」
きた? 東西南北の北?
俺がピンと来てないことを察したのか、静弥は
「遠慮のない意見だよ」と、言い換えてくれた。
「ああ……なんて、言われたん?」
「確か『キモ。お前のことヌマクローじゃなくて、キモ太郎って呼ぶことにするわ』って」
「ボロカスかよ! そんな奴に、メッセージ送んな! つかまず、卑猥な画像を送んな!!」
雲雀丘だから良いと思ったんだろうが、あいつはノンケだ。
男のこんな格好、見たくないだろう。
俺にとっては、それよりも沢井の方が問題だ。
お盆に帰省する時に、刻み突きとか喰らわされるんじゃねえの……。
落ち着いたら、丁重に謝ろう。
「沢井にも送んなよ、そう言うの……」
「え? 送ってないよ」
「雲雀丘ーッ!! あ、あんの、スピーカーめ!!」
そうだった! あいつに知られたら、村中の人間に知れ渡ると言うことだ!
きっと沼黒篠塚カップルがSM服着て、SMプレイしてる。くらいに話が、広まるんだ!!
「これからエッチしようって時に、他の男の話しないで」
静弥は唇を小さく尖らせ、視線を落としながらそう言った。
な、なんて可愛いのだろうか? 言い方も、可愛い~! 全てが、可愛い~!
こんなことを言われて、時めかない男は居ない。
「ぽ、ポチャーン……」
「晄君って、インターネットの言葉でしか会話出来ないの? もうちょっと、本読みなよ」
さげすむように、静弥は俺を見た。
「すみませんでした」
*
久しぶりだったからか、ケンカした後だからか、両方なのか。雑談にすらカテゴライズされない話をしたり、何回も唇を重ね合わせたり、二人でお互いの身体を触り合ったりした。
予想通り静弥はぐずぐず泣きながら、何回も「ごめんね」と言う謝罪と「嫌いにならないで」と祈りに、似た懇願をして来た。
そう思うなら言う前に考えろや……って喉まで出かかったけど、ケンカした直後に言って傷付けるのは可哀想だろう。
ガキの頃に培った、コミュニケーションの土台が静弥にはない。
まるで母親にワガママを言って怒らせてしまい、お母さん嫌いにならないでぇ! と、泣いている子供みたいだ。
俺の方が、ママなんじゃねーの……。
今はローションをまとった静弥の指で、後ろをほぐされている。
すっかり手つきが慣れていて、嬉しいやら恥ずかしいやら……。
ベッドの上でハイハイのポーズを取ってる訳だけど、いつまで経っても慣れないし恥ずかしい。
服はホットパンツだけ脱がされた状態で、この格好だから全裸より気恥ずかしさがある。
待てよ。コレ、着衣エロなんじゃ……!?
自分でしたから良い。って言ったのに、静弥は「晄君雑だから、心配なんだよ」と言って譲らなかった。
静弥の指に纏われたローションは、生温い。
山南村の河岸で、ヤった時はキンキンに冷えてやかったのに。
ローション
生ぬるくなり
夏だなぁ
篠塚 晄、心の一句。
静弥の長細い指は、まるで炭鉱で炭を探り当てるかのように俺の中の奥へ奥へと進んでいく。
何回身体を重ねても、気持ちよさに抗えず恥ずかしい声をあげてしまう。
「しょ、しょこ、ヤ、やら……」
マジで赤ちゃんみたいに、舌足らずに話してるじゃねえか。
やっぱり、赤ちゃんかもしれねぇ。
静弥の指の腹で、俺の快楽のツボを強く押されている気がする。
俺のナカを蹂躙するかのように、掻き回されている。
「ン、あっ、はッ……」
指の動きを緩くして欲しい。そうお願いする為に、振り返る。
改めて見ても、絵面やべえな……。
まるで大御所イケメン俳優の隠し子くらい顔が整っている男が、こんな下品な服を着ているインパクトが凄い。
この衝撃は、初めてフェラされた時と同等だと思う。
「晄君、挿れて良い?」
「いいよ! 来いよ!」
「何それ……この間言ってた『やらないか?』のシリーズ?」
まるで暴れ狂っている薬物患者を見るような目で、静弥は俺を見た。
「今のは、珍獣先輩だから! やらないか? はうさぢ!」
「僕からしたら、どっちも汚いインターネットだよ……。晄君、フィルタリング設定しよう?」
今度は一人暮らしを始めた孫を心配して、宅配便にカップラーメンや野菜を詰める老人の顔をし出した。
百面相かよ。
「ガキかよ! やめろ! 俺のケツ穴にお前のチンコ挿れてる時点で、フィルタリング意味ねえから! なんなら、一番現実にフィルターかけるべきだから!」
「ああ……毒と偏見と性欲に塗れた、生活送ってるもんね」
「悪口だろ! そんなこと言うなら、ケツ穴未確定にすんぞ!」
「そっか……僕が悪いね。じゃあ、挿れるね」
「どしたん? 話聞こか? かよ! いいけど!」
言いながら気持ち腰を上げて、静弥が挿れやすくしてやる。
静弥の露出された性器は張り詰めていて、血管も太くなっている。
慣れとは恐ろしいもので、見てもビビらなくなって来た。
最初のうちは、デッカすぎんだろ。とか、ビール瓶か何か? とか、思っていたのに、恐ろしい。
視覚だけじゃなく後ろもすっかり慣れたようで、俺の呼吸に合わせて皮膚を広げて男性器と結び合った。
「あ、いてぇ、しゅきぃ……首も締めてぇ」
俺はMなので一番好きな体位はバックで、ガンガン突かれたい。
だけどケンカした直後だからか、静弥はいつにましても優しい。
挿れるスピードもゆっくりだし、頭を撫でてくれてるし、息遣いもいつもの性欲丸出しな激しいものじゃない。
静弥は「分かった」と短く言って、ホットパンツのポケットから小さなスイッチを取り出した。
何それ? ローターのスイッチ?
俺、何も挿れてないけど……。なんて、思ったのも束の間。
まるで血圧計のベルトのように、首輪が締まり出したのだ。
みるみるうちに、首が締まっていく。
人間がブレーキをかけるところを、遠慮なく締め上げられて俺は嬉しさの余り身体をビクンビクンと跳ねさせた。
締めが違う 圧が違う
違うだろ すべてが他の奴(首輪)とは
「ひギ……おッ!」
ガチで気持ちいい。なんだ、コレ!? ナニコレ!?
「良かった……。付属の首輪じゃ満足出来なさそうだから、通販で買っておいた首輪に付け替えたんだ」
だから、準備に時間かかっていたのか。
やっぱりコイツ、ズレてんな……。
「今後ろからガンガン突かれたら、サイコーに気持ちいい! ハンバーグ捏ねる音鳴らす勢いで、パンパンしてぇ……!」
「晄君……」
静弥の蔑みの視線が、鋭くなっていく。
それからはいつもみたいに激しく突かれ、二人してフィニッシュを迎えた。
射精してから静弥と向き合うように静弥の太ももの上に座り、第二ラウンドを開始する。
騎乗位って、顔だけじゃなく結合部も見えるんじゃ……?
いつもより、奥に入っている気がする。
挿れられてから気が付いたけど、気持ち良いは麻酔みたいなもんだ。
思考力が、奪われていく。
そんな状態で動いてるもんだから、ブレーキなんてない。
静弥、重くないかな? と静弥の顔を見たら、気持ち良さそうに肩を震わせて唇を噛み締めている。
「晄君の奥、気持ち良いよ……」
「言うな、バカぁああ!」
言葉にされると、途端に恥ずかしさが増す。
だけど、腰を振るのは止められない。
気持ちいいには、逆らえないんだなぁ。
人間だもの
ひかを
*
約一週間後。
その日も、朝のワイドショーでは定型文のように「危険な暑さ」「熱中症対策を、しっかりと!」なんて、言っていた。
大学から帰ると、俺宛に郵便物が届いた。
郵便局が提供している荷物を送るサービスで送られて来ていて、段ボールのサイズはかなり小さい。
送り主を見ると、父親からだ。
ロクな予感しねぇ……。
自分の部屋まで荷物を運び、カッターナイフをペン立てから取り出した。
どうせ、AVとかアダルト雑誌だろ。だと思ったけど、それならばレターパックを使えば良い。
レターパックで現金とデスマフィンは送れないが、DVDと雑誌は送れるだろう。
仕送りにしては、箱が小さいし……。
不審に思いながら、おそるおそるカッターナイフで段ボールの封を切り裂く。
封を切り、段ボールを開けると、クッション代わりのぐしゃぐしゃに丸められた新聞紙が目に飛び込んで来た。
うわぁ、これ、絶対に捨てる用の新聞紙じゃん……。
男の雑さを、見た気がする。
新聞紙を掻き分けると、とんでもないものが入っていた。
この間の首輪に、アナルプラグが繋がれている。
しかも、結構デカめ。
ジップロックの外に貼られた正方形の付せんには
「沼黒君に頼まれたから、改造した。器用な父親に、感謝しろ」と、書かれている。
俺は段ボールを蹴飛ばして、静弥の部屋を千本ノックかの如く叩く。
「静弥!! 他人の親父に、何頼んでんだよ!! 魔改造すんな!!」
部屋から出て来た静弥は「つけないの?」とか、舐めた口を聞いて来た。
そんなの、そんなのっ……。
「つけるよ! バーカ!!」
「素直で、大変宜しい」
静弥はそう言って、俺の服を脱がしていく。
え? 今すんの? 小学生なの?
その後どうなったかは、言うまでもない。
クソ限界集落山南村へ居る両親へ 晄は、元気に過ごしてます。
今度、気が向いたら手紙書くね。
エルダー ボンバー 完
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エルンストは彼に応える術を探しはじめる。荒れた公爵領を改革し、完璧な伴侶として傍に立つために。
強欲なる花嫁は、総てを手に入れるまで諦めない。
※性描写がある場合には*を付けています。が、後半になると思います。
※ご都合主義のため、整合性は無いに等しいです、雰囲気で読んでください。
※自分の性癖(誤用)にしか配慮しておりません。
※書き溜めたストックが無くなり次第、ノロノロ更新になります。
【連載中/BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。
架月ひなた
BL
異世界に召喚されたけど、即クビ!?
しかも壊した魔法陣を直せと無茶振りされ、住む場所として案内されたところも廃墟のような別邸。
食事は小さなパンのカケラにグラスに三割しか入っていない水のみ。
帰還手段もなくどうやって生きていこうか悩んでいた千颯の前に現れたのは、もふもふ癒し系のホワイトタイガーだった(のち超絶イケメンに変化)。
「名をくれたお前をこれから先ずっと守ると誓おう」
溺愛MAXのもふもふイケメン精霊獣に「駆け落ちするぞ」ともちかけられ、元の世界へ戻る為に旅をする事になった平凡社会人(無自覚チート精霊術師)の契約異世界BLファンタジー。
行方不明になっていた祖父がこの世界で聖女に拉致されたのを知り、探し出して一緒にニホンへと帰るつもりだったが!?
※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。
※ざまあ展開にもなりそうな予感。
※想定文字数10万〜13万文字くらい。
病み墜ちした騎士を救う方法
無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。
死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。
死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。
どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……?
※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です
モブなんかじゃ終わらない!?
MITARASI_
BL
気がつけばそこは、人気BLゲームの世界。
けれど与えられた役割は、攻略対象でも悪役でもない――ただのモブ。
本来なら物語の外でひっそりと生きていくはずだった。
だが、そんな彼の存在が、少しずつ“運命のルート”を揺さぶっていく。
選ばれないはずのモブが紡ぐ、新たな恋の物語。
ゲームの定めを超えて、彼が辿り着く未来とは――。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
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