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三十七話
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何か雲雀丘 深優と、話したい。話して彼のことを、断片的にでも知りたい。
「雲雀丘君って、mbti診断なに?」
ウィダーインゼリーを飲み干し、クラッチバッグの中のレジ袋にしまいながら言う静弥。
「今流行ってんの、ラブタイプだろ。INTJ」
「え、僕と一緒」
そう言って、嬉しそうに微笑む静弥。
「……今日から、違うのになろうかな」
「違うのに、なれるの? 僕、何回やっても建築家だったよ」
「その時の心理状態とか、環境とかで変わるのが普通らしいよ。つまり、お前は異常」
「……」
今度は風船が萎むように、落ち込み出す静弥。
「ギャグ! ジョークだから! 間に受けんな!」
「……うん」
信号はいつの間にか青へ変わっていて、車が建物を追い越して行く。
雲雀丘は、細く短い息を吐きながら言った。
「長旅になるし、遠慮せずに寝てて良いよ」
「……え」
「寝てても、怒らないし」
そう言って、雲雀丘は音楽配信アプリの再生を止めた。
静弥は「お言葉に甘えて」と言って、瞼をゆっくりと落とす。
横目でちらりと、静弥を一瞥する雲雀丘。
(どうして人は、好きになれる男を選べないんだろうね。沼黒のことを、一番分かんない篠塚に走るの残酷。沼黒の行動が、間違ってるって言われる破滅の道なのに……まあ、実際キモい訳だけど)
滑らかな肌。影を落とす程の長い睫毛。見る者をそちら側へ引き摺り込む、闇夜の髪。
誰の人生だって、狂わせられるだろう。自分と、違って。
*
今から約一時間前。
沢井 蒼真は大学の休み時間にスマートフォンの通知を見るなり、声を上げて驚いた。
周りの学生達の視線が集まり、蒼真は思わず頭を下げた。
まず、昔の恋人が見つかったこと。
数ヶ月間音信不通だったことはとある可能性が頭を過ったが、蒼真は考えないことにした。
二つ目は、雲雀丘 深優から送られて来た数件のエンスタグラムのアカウント。
一つ目のアカウントは、港区で定期的に開催されているパーティーの広報アカウントだ。
少しアカウントを覗くだけでも、怪しい写真が、たくさんあった。
みんなハイブランドの服でめかし込み、何処を見ているのか分からない瞳の笑顔の集合写真。
豪華絢爛なパーティー会場で、天谷市あたりに居そうな人の良さそうな寿司職人が寿司を握っている動画。
薬物患者がハイになった時のような瞳で、ワインボトルを抱えているソムリエの写真。
(う、胡散臭い……! まさか、雲雀丘君、このパーティーに行く気なの? あ。彼が一番胡散臭いから、大丈夫か)
蒼真は友人に対して、謎の安心感と安全を覚えて胸を撫で下ろす。
二つ目のアカウントは「トリニティ」のコウが、エンスタグラムでよくタグ付けをしているパーティー会場に出入りしている若者のアカウントだった。
ありとあらゆるパーティーに出向いているみたいで、服装はもれなくハイブランド。
コウとコメントも送り合っているみたいだから、アンテナに引っかかるのは分かる。
三つ目のアカウントが、一番謎だった。
地下アイドルをやっている女の子、詩片(うたかた) しずく。ユニット名は、I♡Shadow。メンバーカラーは、黄色。
(しずくなのに、青系じゃないんだ……)
雲雀丘が言うからにはコウのストーリーで度々登場して気になるから、ちょっと調べて。と言うことだった。
ただ単にコウを、推してるだけじゃないのか? と思ったが、雲雀丘が言うのだ。
(彼のこう言う勘、当たるから嫌なんだよ……)
幸い次の授業はなく、大学生風に言うなら空きコマだ。
蒼真は大学のパソコンルームに、移動することにした。
雲雀丘からは『調べてくれたお礼に、スタバのフラペチーノ奢るから。大学の生協で、アマギフカード3000円分買って来てシリアルの写真送って。PeyPeyに送金しといたから』と、メッセージが続いていた。
蒼真はため息を、吐いた。
「僕は、劇場版名探偵コナンの哀ちゃんじゃないだよ……」
*
大学のパソコンルームに、蒼真は着いた。
室内には十名ほどの学生が居て、各々課題をしていたり調べ物をしている。
同じ学部の女子が席に座りiPadでイラストを描いてたので、小さく会釈をしておく。
出入り口に近い廊下側の席を陣取り、荷物を横の椅子に置いてから椅子に腰をかける。
蒼真はパソコンの電源ボタンを押して、学校側から割り振られたユーザーIDとパスワードを入力してパソコンにログインした。
移動中に「I♡Shadow」の公式エンスタグラムや詩片 しずく個人の公式アカウントを見ていた。
「I♡Shadow」は、女性五人ユニットの池袋を拠点にしているアイドルグループらしい。
ファンを光としてアイドルは光を支える影がユニットコンセプトだからか、衣装は女性アイドルにしては珍しく黒地かグレー地が多い。
詩片 しずくは、姫カットにさらさらストレートな黒髪のロングヘアー。
身長は百五十センチメートルで、体重は三十八キログラムと書いてある。スリーサイズまで、公式プロフィールに載っていた。
好きなものはプリキュアに、雪見だいふくと書いてある。
アイドルにしては宣材写真の化粧が薄く、蒼真がはどの層をターゲットにしているのか察してしまった。
そんな幼い印象を受ける彼女の座っている写真は、脚を開いていることが多い。
コメント欄を流し見すると詩片 しずくがなんでかは知らないが炎上しているらしい。と、言うのは分かった。
パソコンが起動するまでの間に、蒼真はスマートフォンでtmitterで炎上理由を調べることにした。
検索バーに「詩片しずく」と打ち込むと、サジェストに「炎上」「匂わせ」「パパ活」「みる 不仲」と、出て来た。
とりあえず一番上の炎上を、タップしてみることにする。
『詩片 しずくちゃん、これで炎上何回目? 今回は、トリニティ?の子と匂わせって、アイドルが一番しちゃ駄目でしょう。どんだけ貢いだと思ってんの?』
『トリニティのコウと付き合ってるのは、多分デマだよ。詩片 しずくちゃん、男の人が苦手って言ってたもん。青のファンの炎上工作だよ』
『前からみると不仲説で焚き火は燃えてたけど、今回のは擁護できないカナ!?清純ぶってるけど、やっぱりヤンキーみたいな男が良いんじゃん(泣)』
何故地下アイドルを検索してるのに、同級生が話題に上げられてるんだ?
蒼真はスマートフォンの画面をスクロールして、更に調べる。
『あの画像、言い逃れ出来ないよな。そら炎上するわ。同棲確定じゃん。しずくん推しだったけど、降りるわ。詩片 しずく推しても配信者のデート代になるだけだよ~』
一旦スクロールする手を止めて、詩片 しずくのアカウントへ飛ぶ蒼真。
メディア欄を見てみると、ライブの様子やオフショットが載せられている。
(あの画像って、なんだろう?)
そう思いつつメディア欄を遡っていくと、詩片 しずくが手作り夕飯を映している写真が目についた。
メニューはチキン南蛮に、かぼちゃスープに、サラダに、ご飯。
なんてことないメニューだが、しずくの向かい側に全く同じメニューが置かれている。
しずくの投稿にコウファンからのリプライが大量にぶら下がり、蒼真からは見えない引用ポストもたくさんついている。
『このお茶碗とお箸、コウ君のですよね? 付き合ってるんですか?』
『低学歴匂わせブスアイドル、早く引退してくださーい笑笑笑』
『前のグループでは男受けしない髪型だったのに、露骨すぎ。性格悪すぎだろ。消えろよ』
蒼真は詩片 しずく側の怒りとコウ側のファン怒りの投稿で、地球温暖化が進んでいるのではないか? と、錯覚すら覚え始めた。
(なんだろう? 引っかかるな)
国民的推理アニメの主人公のように、蒼真の心に引っかかりが生まれる。
料理を作った写真ならば、自分のだけ映せば良い。
こんなにがっつり写り込んでいるものを、上げているのだから「わざと見せている」と考えた方が自然だ。
それならば晄が食べている様子の身体の一部を写して、マウントを取るのが普通ではないか?
蒼真が逡巡していると、静弥からメッセージが入った。
『雲雀丘君に、意地悪言われてます』と、だけ。
蒼真は、静かに頷く。
「うん。プロに聞こう」
そして軽く経緯と、詩片 しずくの投稿を静弥へ共有した。
丁度パソコンが立ち上がったので、蒼真は大手検索エンジンに「I♡Shadow 詩片しずく +5ch」と打ち込んだ。
(あんな毒電波みたいな掲示板見たくないけど、炎上ごとならあそこだよね……)
*
大手匿名掲示板を見て得られた情報は
・詩片 しずくがパパ活をしているのは間違いないこと(別名義で登録されているパパ活用アプリのプロフィールページの画像まで、貼られていた)
・最近詩片 しずくが、韓国系コスメのwebCMに出たのは案件ではないのか? と言う噂
・メンバーカラー青の 「砂糖(さとう) みる」と、不仲説はどうやら本当っぽいこと
・元々詩片 しずくはプリキュアの青色の子を好きになりがちで、メンバーカラーを青志望だったが砂糖 みるに取られたこと
・砂糖 みるははっきりものを言うキャラで、しずくのダンスを「しずくんは運動音痴だから、どんな曲も練習始めたての頃は盆踊りみたいなの!」って大口を開けながら生配信のネットラジオで笑ったことがあり、詩片 しずく本人は泣き出した。それが理由で、同じユニット内にも関わらずファン同士の派閥争いがあるらしい。
蒼真はこの動画を見て、砂糖 みるは上手く接することは出来るが、仲良くは出来ないタイプだと思った。
尤も自分が今見ている掲示板はあくまで「詩片 しずく」の交流板なので、彼女の擁護が多く砂糖 みる叩きが多い。
砂糖 みるの掲示板なら「仮にもプロが、生配信中に泣くなよ」とか「みるの性格、分かってるだろ。そう言うキャラなんだよ」とか「パパ活してる女が、こんな繊細な訳ないだろ。計算計算」とか、砂糖 みる擁護の詩片 しずく叩きが多いのだろう。
ネットも現実もーー誰側に立つかで視え方が違うのは、一緒らしい。
自分は毒電波を浴びているのに、静弥から返事はない。
蒼真の頭にとある可能性が、過った。
(沼黒君、パーティー界隈に行くとか言い出すんじゃ……)
慌ててメッセージアプリを開き、深優にメッセージを送信する蒼真。
『君はパーティー界隈行っても良いけど、沼黒君は連れて行かないで』
すぐに既読アイコンがつき、深優からメッセージが返って来た。
『あいつ、言い出したら、聞かないだろ。俺が約束したんは、日野駅まで届けることだし、それ以上は知らん。さわっちが、説得しなよ』
自分の言葉で、暴走する相手に説得なんて無理に決まっている。蒼真は、頭を抱えた。
『無理だよ。そうだ。君が、パーティー界隈行って来て。得意でしょ?』
『さわっちは、俺のこと嫌いなん?』
ラリーが続くことから、信号待ち中かトイレ休憩中か何かだろう。
『チンダーで初めて会った人と出来るんだから、やれるでしょう? 君のこと、カス柱かクズ柱って呼んで良い?』
『ひど笑笑笑』
蒼真の頭の中で気になる写真があったが、それは確証を得られていないので黙っていることにした。
「雲雀丘君って、mbti診断なに?」
ウィダーインゼリーを飲み干し、クラッチバッグの中のレジ袋にしまいながら言う静弥。
「今流行ってんの、ラブタイプだろ。INTJ」
「え、僕と一緒」
そう言って、嬉しそうに微笑む静弥。
「……今日から、違うのになろうかな」
「違うのに、なれるの? 僕、何回やっても建築家だったよ」
「その時の心理状態とか、環境とかで変わるのが普通らしいよ。つまり、お前は異常」
「……」
今度は風船が萎むように、落ち込み出す静弥。
「ギャグ! ジョークだから! 間に受けんな!」
「……うん」
信号はいつの間にか青へ変わっていて、車が建物を追い越して行く。
雲雀丘は、細く短い息を吐きながら言った。
「長旅になるし、遠慮せずに寝てて良いよ」
「……え」
「寝てても、怒らないし」
そう言って、雲雀丘は音楽配信アプリの再生を止めた。
静弥は「お言葉に甘えて」と言って、瞼をゆっくりと落とす。
横目でちらりと、静弥を一瞥する雲雀丘。
(どうして人は、好きになれる男を選べないんだろうね。沼黒のことを、一番分かんない篠塚に走るの残酷。沼黒の行動が、間違ってるって言われる破滅の道なのに……まあ、実際キモい訳だけど)
滑らかな肌。影を落とす程の長い睫毛。見る者をそちら側へ引き摺り込む、闇夜の髪。
誰の人生だって、狂わせられるだろう。自分と、違って。
*
今から約一時間前。
沢井 蒼真は大学の休み時間にスマートフォンの通知を見るなり、声を上げて驚いた。
周りの学生達の視線が集まり、蒼真は思わず頭を下げた。
まず、昔の恋人が見つかったこと。
数ヶ月間音信不通だったことはとある可能性が頭を過ったが、蒼真は考えないことにした。
二つ目は、雲雀丘 深優から送られて来た数件のエンスタグラムのアカウント。
一つ目のアカウントは、港区で定期的に開催されているパーティーの広報アカウントだ。
少しアカウントを覗くだけでも、怪しい写真が、たくさんあった。
みんなハイブランドの服でめかし込み、何処を見ているのか分からない瞳の笑顔の集合写真。
豪華絢爛なパーティー会場で、天谷市あたりに居そうな人の良さそうな寿司職人が寿司を握っている動画。
薬物患者がハイになった時のような瞳で、ワインボトルを抱えているソムリエの写真。
(う、胡散臭い……! まさか、雲雀丘君、このパーティーに行く気なの? あ。彼が一番胡散臭いから、大丈夫か)
蒼真は友人に対して、謎の安心感と安全を覚えて胸を撫で下ろす。
二つ目のアカウントは「トリニティ」のコウが、エンスタグラムでよくタグ付けをしているパーティー会場に出入りしている若者のアカウントだった。
ありとあらゆるパーティーに出向いているみたいで、服装はもれなくハイブランド。
コウとコメントも送り合っているみたいだから、アンテナに引っかかるのは分かる。
三つ目のアカウントが、一番謎だった。
地下アイドルをやっている女の子、詩片(うたかた) しずく。ユニット名は、I♡Shadow。メンバーカラーは、黄色。
(しずくなのに、青系じゃないんだ……)
雲雀丘が言うからにはコウのストーリーで度々登場して気になるから、ちょっと調べて。と言うことだった。
ただ単にコウを、推してるだけじゃないのか? と思ったが、雲雀丘が言うのだ。
(彼のこう言う勘、当たるから嫌なんだよ……)
幸い次の授業はなく、大学生風に言うなら空きコマだ。
蒼真は大学のパソコンルームに、移動することにした。
雲雀丘からは『調べてくれたお礼に、スタバのフラペチーノ奢るから。大学の生協で、アマギフカード3000円分買って来てシリアルの写真送って。PeyPeyに送金しといたから』と、メッセージが続いていた。
蒼真はため息を、吐いた。
「僕は、劇場版名探偵コナンの哀ちゃんじゃないだよ……」
*
大学のパソコンルームに、蒼真は着いた。
室内には十名ほどの学生が居て、各々課題をしていたり調べ物をしている。
同じ学部の女子が席に座りiPadでイラストを描いてたので、小さく会釈をしておく。
出入り口に近い廊下側の席を陣取り、荷物を横の椅子に置いてから椅子に腰をかける。
蒼真はパソコンの電源ボタンを押して、学校側から割り振られたユーザーIDとパスワードを入力してパソコンにログインした。
移動中に「I♡Shadow」の公式エンスタグラムや詩片 しずく個人の公式アカウントを見ていた。
「I♡Shadow」は、女性五人ユニットの池袋を拠点にしているアイドルグループらしい。
ファンを光としてアイドルは光を支える影がユニットコンセプトだからか、衣装は女性アイドルにしては珍しく黒地かグレー地が多い。
詩片 しずくは、姫カットにさらさらストレートな黒髪のロングヘアー。
身長は百五十センチメートルで、体重は三十八キログラムと書いてある。スリーサイズまで、公式プロフィールに載っていた。
好きなものはプリキュアに、雪見だいふくと書いてある。
アイドルにしては宣材写真の化粧が薄く、蒼真がはどの層をターゲットにしているのか察してしまった。
そんな幼い印象を受ける彼女の座っている写真は、脚を開いていることが多い。
コメント欄を流し見すると詩片 しずくがなんでかは知らないが炎上しているらしい。と、言うのは分かった。
パソコンが起動するまでの間に、蒼真はスマートフォンでtmitterで炎上理由を調べることにした。
検索バーに「詩片しずく」と打ち込むと、サジェストに「炎上」「匂わせ」「パパ活」「みる 不仲」と、出て来た。
とりあえず一番上の炎上を、タップしてみることにする。
『詩片 しずくちゃん、これで炎上何回目? 今回は、トリニティ?の子と匂わせって、アイドルが一番しちゃ駄目でしょう。どんだけ貢いだと思ってんの?』
『トリニティのコウと付き合ってるのは、多分デマだよ。詩片 しずくちゃん、男の人が苦手って言ってたもん。青のファンの炎上工作だよ』
『前からみると不仲説で焚き火は燃えてたけど、今回のは擁護できないカナ!?清純ぶってるけど、やっぱりヤンキーみたいな男が良いんじゃん(泣)』
何故地下アイドルを検索してるのに、同級生が話題に上げられてるんだ?
蒼真はスマートフォンの画面をスクロールして、更に調べる。
『あの画像、言い逃れ出来ないよな。そら炎上するわ。同棲確定じゃん。しずくん推しだったけど、降りるわ。詩片 しずく推しても配信者のデート代になるだけだよ~』
一旦スクロールする手を止めて、詩片 しずくのアカウントへ飛ぶ蒼真。
メディア欄を見てみると、ライブの様子やオフショットが載せられている。
(あの画像って、なんだろう?)
そう思いつつメディア欄を遡っていくと、詩片 しずくが手作り夕飯を映している写真が目についた。
メニューはチキン南蛮に、かぼちゃスープに、サラダに、ご飯。
なんてことないメニューだが、しずくの向かい側に全く同じメニューが置かれている。
しずくの投稿にコウファンからのリプライが大量にぶら下がり、蒼真からは見えない引用ポストもたくさんついている。
『このお茶碗とお箸、コウ君のですよね? 付き合ってるんですか?』
『低学歴匂わせブスアイドル、早く引退してくださーい笑笑笑』
『前のグループでは男受けしない髪型だったのに、露骨すぎ。性格悪すぎだろ。消えろよ』
蒼真は詩片 しずく側の怒りとコウ側のファン怒りの投稿で、地球温暖化が進んでいるのではないか? と、錯覚すら覚え始めた。
(なんだろう? 引っかかるな)
国民的推理アニメの主人公のように、蒼真の心に引っかかりが生まれる。
料理を作った写真ならば、自分のだけ映せば良い。
こんなにがっつり写り込んでいるものを、上げているのだから「わざと見せている」と考えた方が自然だ。
それならば晄が食べている様子の身体の一部を写して、マウントを取るのが普通ではないか?
蒼真が逡巡していると、静弥からメッセージが入った。
『雲雀丘君に、意地悪言われてます』と、だけ。
蒼真は、静かに頷く。
「うん。プロに聞こう」
そして軽く経緯と、詩片 しずくの投稿を静弥へ共有した。
丁度パソコンが立ち上がったので、蒼真は大手検索エンジンに「I♡Shadow 詩片しずく +5ch」と打ち込んだ。
(あんな毒電波みたいな掲示板見たくないけど、炎上ごとならあそこだよね……)
*
大手匿名掲示板を見て得られた情報は
・詩片 しずくがパパ活をしているのは間違いないこと(別名義で登録されているパパ活用アプリのプロフィールページの画像まで、貼られていた)
・最近詩片 しずくが、韓国系コスメのwebCMに出たのは案件ではないのか? と言う噂
・メンバーカラー青の 「砂糖(さとう) みる」と、不仲説はどうやら本当っぽいこと
・元々詩片 しずくはプリキュアの青色の子を好きになりがちで、メンバーカラーを青志望だったが砂糖 みるに取られたこと
・砂糖 みるははっきりものを言うキャラで、しずくのダンスを「しずくんは運動音痴だから、どんな曲も練習始めたての頃は盆踊りみたいなの!」って大口を開けながら生配信のネットラジオで笑ったことがあり、詩片 しずく本人は泣き出した。それが理由で、同じユニット内にも関わらずファン同士の派閥争いがあるらしい。
蒼真はこの動画を見て、砂糖 みるは上手く接することは出来るが、仲良くは出来ないタイプだと思った。
尤も自分が今見ている掲示板はあくまで「詩片 しずく」の交流板なので、彼女の擁護が多く砂糖 みる叩きが多い。
砂糖 みるの掲示板なら「仮にもプロが、生配信中に泣くなよ」とか「みるの性格、分かってるだろ。そう言うキャラなんだよ」とか「パパ活してる女が、こんな繊細な訳ないだろ。計算計算」とか、砂糖 みる擁護の詩片 しずく叩きが多いのだろう。
ネットも現実もーー誰側に立つかで視え方が違うのは、一緒らしい。
自分は毒電波を浴びているのに、静弥から返事はない。
蒼真の頭にとある可能性が、過った。
(沼黒君、パーティー界隈に行くとか言い出すんじゃ……)
慌ててメッセージアプリを開き、深優にメッセージを送信する蒼真。
『君はパーティー界隈行っても良いけど、沼黒君は連れて行かないで』
すぐに既読アイコンがつき、深優からメッセージが返って来た。
『あいつ、言い出したら、聞かないだろ。俺が約束したんは、日野駅まで届けることだし、それ以上は知らん。さわっちが、説得しなよ』
自分の言葉で、暴走する相手に説得なんて無理に決まっている。蒼真は、頭を抱えた。
『無理だよ。そうだ。君が、パーティー界隈行って来て。得意でしょ?』
『さわっちは、俺のこと嫌いなん?』
ラリーが続くことから、信号待ち中かトイレ休憩中か何かだろう。
『チンダーで初めて会った人と出来るんだから、やれるでしょう? 君のこと、カス柱かクズ柱って呼んで良い?』
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