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39.それはやめろ、瓦解
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-イルセーヌ とある民家前のテーブル-
「ところでお嬢様。」
「何かしらエメラ?」
イルセーヌの街で、住処の前に設えた木製テーブルで寛ぐ二人。アリシアが優雅にティーカップを口に運んで、一口飲んだところでエメラが声を掛けた。ゆっくりとソーサーの上にカップを戻したアリシアは、満足気に微笑みながらエメラに何事かと尋ねる。
「お嬢様はこの場所に来て、それなりに長いですよね。」
「言われてみればそうですわね。バートラント家から出て生活するなんて、思っても見ませんでしたわ。」
「そうですね、逞しくなられて。本来であれば、テルメスタ家に嫁がれていた筈ですのに。」
「嫌な事を思い出させないで。テルメスタ家に行くくらいでしたら、今の生活の方が遥かにましですわ。」
アリシアは思い出したのか、苦虫を噛み潰したような表情になる。
「私も、お嬢様にまたこうしてお会い出来て、嬉しく思ってます。」
「テルメスタ家に行っていたら、滅多に会えませんものね。」
「えぇ、本当に。」
アリシアはそう言うと、カップを持って口に運ぶ。エメラもその言葉に同意しながら、しみじみと空を見上げていた。
が、エメラははっとしたようにアリシアに向き直る。
「そうではなくてですね。」
「どうしたのかしら?急に大きな声をだして。」
「この場所に来てから長いんですから、リュステニア王国へ帰る手掛かりはどれくらい見つかっているのかを聞きたいのです。つい生活に馴染んでしまいそうになっていましたよ。」
エメラの言葉で、アリシアはカップを置こうとした動作が止まる。
暫しの沈黙が流れると、エメラの表情に呆れが浮かび始めた。
「前にも言いましたが、何一つ知りませんわ。」
「それ、本当に冗談じゃないんですよね?」
「えぇ、わたくし、嘘は付きませんもの。」
胸を張って言える事か!
と、エメラは全力で言いたかったが、仮にも主の娘。沸々とくる怒りをなんとか堪えて、会話を続けようとする。
「せめて、連絡手段でも見つかれば、ルーデリオ様に安否を伝えられるのですが。」
エメラにとって、今一番気掛かりなのはルーデリオの事だった。
アリシアが生きている事は分かったが、今度は自分が居なくなった事で、二人分の安否をルーデリオは抱え込んでしまう事になっただろうと思えば。貴族の主であるルーデリオが一従者に対して、そこまで心労を重ねるかと言われれば疑問かも知れない。だが、アリシアが居なくなって自分を責めていたエメラを、気遣ってくれたルーデリオは嘘ではないと思っているからこそ、エメラはそう思っていた。
アリシアは嫌がっていた婚姻から逃げられ、気ままに生活しているからいいが、ルーデリオはそうはいかない。そんな事を考えると、エメラは早く現状を伝えたいと思うばかりだった。
不謹慎だとは思うが、アリシアがこの状態だと知ってしまっては、正直アリシアよりもルーデリオに付いている方が良かったとさえ、エメラは思うようになっていた。当然、見つかった当初は嬉しくてたまらなかったし、ルーデリオの心配も解消されると思ったからだ。
「確かにエメラの言う通りですわ。あまりお父様を心配させるわけにも、いきませんわね。」
「お嬢様・・・」
「エメラの話しでは、お父様の体調も芳しくないようですし、せめて安否だけでも伝える方法を探しましょう。」
「はい。」
アリシアとてルーデリオに心配を掛けたかったわけではない。現在の生活に馴染んでいたとはいえ、元の場所に帰りたいと思っている事には変わりもない。
テルメスタ家へ嫁ぐ事から逃れられた事は僥倖だったが、まさか知らない土地に来る事は予想外だった。それによりルーデリオに心労を掛ける事も。アリシアにとっては破談になりさえすれば良かっただけなのだが、まさかこの様な事態になるとは思ってもみなかったのだ。それに加えエメラも同様の事象に巻き込まれたとなれば、心配せずにはいられない。
「そうと決まれば、ユアキスですわ。」
「あの・・・何故そこへ辿り着くのですか。」
「そもそも、わたくし独りで出歩けないところが問題なのです。」
「確かに、言われてみればそうですね・・・」
この土地の状況について、エメラも理解はし始めていた。外を歩けば魔獣が存在し、それと戦う人たちが居るということ。街と街の間はそれなりに距離があり、戦う術が無ければ危険だという事も。
「それに、現状で有益な情報は得られていないのが現実ですわ。ユアキス達は、次の場所に向かうようですし。」
「つまり、彼らに新たな土地に連れて行ってもらうわけですね。」
「そうですわ。」
納得したエメラに、アリシアも頷いて見せる。
「しかし、来てから思いましたが、おかしな土地ですよね。」
「えぇ、わたくしもそう思っています。」
「まず食料を分けてもらう事が、変わっています。」
「・・・そうですの?」
エメラの言葉に首を傾げたアリシア。流石のエメラも呆れた視線を送るが、本人には届いていないようだ。
「普通は、手に入れる代償として通貨を支払うものです。」
「・・・」
エメラもそれを責めるつもりは無い。バートラント家は娘に甘いとは思っていたが、その付けがこれだろうとは思ったが。
貴族令嬢であり、何不自由なく暮らして来ているのだ。一般教養よりも、貴族の嗜みを優先で教えられる。この歳になって買い物をしたことが無いというのも珍しくは無かった。
おそらく、召し物ですら仕立て屋が来て、縫製したものを納められていると思っているに違いない。実際は仕上がった衣装に対し、受け取った使用人が支払っているなど、考えもしないのだろう。
「つまり、対価を支払って物を手に入れるのが当たり前であり、バートラント家も例外ではいという事ですわね。」
「その通りです。」
エメラが肯定すると、アリシアは得意げに鼻を鳴らしたが、当たり前の事なのでその態度は無視しておく。
「それに、街の住人に違和感を感じます。」
「そうかしら?」
その事についても、疑問を持っていないようだったアリシアに、エメラは多少呆れたが態度には出さずに話しを続ける。
「生活範囲で関わる人は、会話が出来るのですが、そうでない場合決まった事しか言いません。それに、通りを歩く通行人でも不自然な人が居ます。」
「あまり気にしてはいませんでしたが、言われてみれば確かにおかしいところがありますわね。」
エメラにとって、不自然さを議論するつもりは無かった。今は、違和感があるという状況を共有できればいいと。そもそも、答えに辿り着くためには情報が不足し過ぎているため、議論にすらならないと思っているからだ。
「とりあえず、連絡手段でもと思っているのですが・・・」
「見つからない可能性が高いですわ。」
「!!」
真面目な顔をして、自分が考えている事と同じ内容を、アリシアの口から出て来るなどエメラは思ってもいなかった。そのため、驚きに目を見開いてアリシアに視線を固定してしまった。
「エメラ、失礼過ぎですわ。」
「これは失礼しましたお嬢様。まさか、お嬢様がそこまで思慮を巡らせているとは・・・」
「エメラ、わたくしの事を馬鹿にしたいのですか?」
「度々失礼しました・・・」
本当のところ、エメラはアリシアは何も考えずに日々を過ごしていると思い込んでいた。馬鹿にするつもりがあったわけではない。近いような事は思いはしたが。
ただ、それを態度に出してしまった事にバツが悪く目を逸らしてしまう。
「それでお嬢様、そう思った理由はなんでしょうか?」
「エメラも体験したから分かるでしょうが、まずこの場所は言葉が通じなかったのですわ。」
アリシアがそれに気付いたのは前からではない。単にエメラと話していてその可能性に至っただけで。つまりエメラの予想は間違っていたわけではなく、上手く誤魔化されているだけだった。
「確かにそうです。」
「にも関わらずです、突然言葉が通じるようになりましたわ。それ以前に、わたくし達が体験した不可解な現象。一番の理由はそれだと思いますの。」
「はい、私も同じ考えです。」
リュステニア王国から突如違う土地へと移動させられた。そんな事象が起きては疑わざるを得ないのは当たり前だ。
アリシアにとって、当時はパニックでありそんな事を考える余裕など無かった。帰りたいと思わない日は無かったものの、生活に慣れこの場所にも馴染んで来てしまっていたため、エメラ程の思慮までは至らなくなったのが現状である。
「つまり此処は、まったく知らない土地と考える方が自然です。」
「そうですわ。イズ・クーレディア大陸を知らない人ばかりというのも、そもそも大陸を知らないと考えれば辻褄が合いますわ。」
「はい。または、違う世界か・・・」
「その考えは突飛し過ぎではありませんこと?わたくし達は御伽噺の住人ではありませんわ。」
「流石に、無理がありましたね。」
そう言うとエメラは苦笑した。アリシアもやれやれという態度をすると、ソーサーからカップを持ち上げて口に運ぶ。
「となると、次にすべき事ですが。」
「ほら言ったでしょう?ユアキスですわ。」
エメラは、アリシアが何も考えずに言っているものだと思っていた発言が、実は得心のいくものだったとここで理解した。
「確かにそうですね。彼らが道を切り開いてくれるなら、新たな手掛かりに繋がるかもしれない。」
「そういう事ですわ。」
得意げに胸を反らすアリシアだが、エメラはまだ希望があるという状況に安堵して見てはいなかった。帰る手掛かりすら無く、途方に暮れかけていたが、まだ光明はあるのだと思えば。
「それで、早速向かいますか?」
「あの場所、暗くて嫌いですわ。」
以前、後ろから付いていった場所を思い出すと、アリシアは嫌そうな顔をする。
「いや、我が儘を言っている場合じゃないと思いますが。」
エメラがそう言って立ち上がると、アリシアも重い腰を上げるように立ち上がった。
俺は再び、オルデラの居る場所まで戻ってきた。
漆黒の甲冑は初めから白い闘気のようなものを纏っている。
前回、あっさり全滅させられた事を考えると、その姿に緊張する。
いや、オルデラは関係ないな。勝てるかどうかってところで緊張しているだけだ。
たまに、先に進みたいだけなのに、こんなに強いやつ相手にさせんなよ。って思う事もある。
ストーリーとしては、先遣隊がこっちの腕試しという事にになっているが、俺にはイヤな奴としか思えない。
「勝てるかな。」
「まぁ、その為に準備してきたわけだし。」
「あっさりやられたら苦労した甲斐もなくなります。」
タッキーの苦笑いに、俺と姫が呆れて答える。やる事はやったんだし、後は全力でぶつかるだけだ。
「弱気すぎですわ。むしろ、私のとっては既に取るに足らない相手ですわ。」
ほう・・・戦ってもいないのに取るに足らないのか。その自信はどっから来るんだか。
「考えてもしょうがないわ。」
マリアがそう言うと、真っ先に小太刀二刀を抜刀する。緊張どころか、いつもの柔らかい笑みを浮かべたままなのが、彼女の不思議なところだ。
いや、マイペースな性格と言った方がいいか。
「考えてもしょうがないだろ、何しろこの面子だ。」
「そだね。」
俺が言うと、タッキーも笑顔で応じた。
「絶対馬鹿にしてんでしょ、後で蹴るよ。リアルで。」
「やめろ・・・」
もともと緊張感のあるメンバー何て居やしない。そこが気軽でいいのかもしれない。俺も片手剣を抜くと、オルデラに向かって歩き出す。
ある程度の距離が詰まると抜身の大剣を肩に抱え、オルデラが戦闘態勢に入る。
オルデラの初撃は決まっている。それが開戦の合図になっているのかもしれない。その初撃、突進からの打ち下ろしを回避して、俺たちは戦闘に入った。
衝撃波を大きく跳躍して避けたアヤカ、マリア、月下がオルデラに向かっていく。オルデラはすぐに大剣を振り上げ、アヤカとマリアを狙いに行った。
そこへ、衝撃波を避けた状態の空中から、姫が閃光矢を放つ。
オルデラは察知すると、大剣の軌道を変えて矢を弾いた。間髪入れず、タッキーが撃った爆炎弾を、オルデラは大剣を持っていない方の手で受け止める。
弾かれた閃光矢が炸裂し、光を撒き散らすと同時に爆炎弾も破裂するが、オルデラにはダメージをほぼ与えていないし、目眩ましの効果も与えられていない。
爆炎弾が破裂した直後、姫の放った閃光矢が再度オルデラを襲う。大剣を振り切り、もう片方の手も爆炎弾を受け止めている状態なら、防ぎようが無いだろう。
顔面の前で炸裂した閃光は、オルデラを一瞬眩ませた。そこへタッキーの爆炎弾が頭部へ直撃、オルデラがよろめくと、既に間合いの詰め終わっているアヤカとマリアの連撃が開始された。
装備を作っている間、ただ作っていたわけじゃない。
戦い方をいろいろと考えたり、話したりしたんだ。
その成果が出ているんだろう、前回みたいにはいかない。
オルデラは異常な程、こちらの攻撃に対する反応が速い。それは攻撃だけでなく、状態異常を与える攻撃に対してもだ。だったら、それを上回る攻撃をすればいい。単純だが、効果は見ての通りだ。
俺も黙って見ているわけじゃない。アヤカ達が攻撃に入る直前に、攻撃力増加の薬をパーティ全体へ使うと、オルデラとの間合いを詰めている。
その前に、跳躍した月下が、タッキーの撃った炸裂弾ごと、オルデラの頭上から槍斧を叩きつける。オルデラの肩から上で弾ける爆音の中、俺は滑り込むようにオルデラの懐に潜り込んでいく。
ちょうどそこへ、姫が放った火矢が飛来する。俺は勢いを殺さずに身体を回転させながら、火矢を片手剣で巻き込みながらの回転切り。そのままオルデラの背後へと突き抜ける。
オルデラは直後に、炎の竜巻に包まれた。
嵐焔舞、というらしい。
そのオルデラに対し、連撃を叩き込んでいた残り二人の攻撃が終わりを迎える。最後の一撃はアヤカの唐竹と、マリアの両手の交差した振り下ろしだが、交錯した6本の剣閃は光量が増え、打ち付けるような轟音と共にオルデラを弾き飛ばした。
六花剣衝、そんな名前のSSSだった気がする。確かに、6枚の花弁が開いてオルデラを吹っ飛ばしたように見える。
「オルデラも大した事ないですわ。」
吹っ飛んだオルデラを見ながら、アヤカが得意げに言った。
「練習した甲斐、あったわねぇ。」
こんな状況でもマリアの態度に変化はない。それは、装備を作るためにいろいろクエストに行っていた時もだった。悪いヤツには思えないが、読めない態度はちょっと気にはなっている。
「げぇ・・・今ので1割も減ってないよぉ・・・」
脱力するタッキーの声に、そう言えばと思って俺もオルデラの体力を見るが、タッキーの言うように大して減っていない。
「まぁ、LV8の時もそうですし、そんな簡単には勝てないでしょう。」
むしろ強く無かったら、こんな苦労は初めからしていない。
「よーしタッキー、もういっちょ脳天に食らわしてやろう。」
「そだね。」
槍斧を肩に担いで言った月下の笑顔は、楽しんでいるようだった。それにあてられてか、タッキーも笑顔を見せる。
なんて言っている間に、態勢を立て直したオルデラが、こっちに向かって突進を開始。
「やべっ!」
「うわぁっ。」
それから20分ほどで、オルデラの体力は半分くらいになっていた。アイテムもまだ余裕がある、今のまま行けば勝てるだろう。
が、油断して操作ミスとかしないように気を付けないとな。
「くっ・・・」
そんな事を考えた瞬間、アヤカの一撃でオルデラが背後へ跳躍。追い打ちをしようとしたアヤカとマリアだが、着地したオルデラが剣を横凪に払い、衝撃波を発生させたので止まった。
「いいねぇ、これくらい出来なきゃ資格すら無いとこだったぜ。」
始まったよ・・・
前もあったよな、確か。
「じゃ、俺も本気になっかな。」
剣を頭上に掲げながら言うオルデラ。足元から湧き上がる、白い闘気のようなものが、真紅へと変化していく。
げぇ・・・
嫌気はさすが、ここまで来たんだ。こっちも負けるつもりはない。もう一回戦いたくなんてないしな。
「いやぁ、予想はしてたけどさぁ、当たって欲しくないよね。」
「本当にそうです。」
そりゃ、みんなそう思うわ。
「今更本気になったところで、私の勝ちは揺るぎませんわ。」
「まぁ此処まで来れば、動きも把握出来てきたものね。」
それ、お前らだけな。
「あたしも、今やられると暫く悔しくてたまらなくなりそう。」
「それはゲーム内だけにしてくれよ。」
「だから勝つんでしょ!」
負けたらリアルで俺の精神が削られそうだよ・・・
「ユアキス、お待たせしましたわ!」
「微力ながら、加勢致します。」
・・・
は?
「ってなんでお前が此処に居るんだぁぁぁぁっ!!!」
突如聞こえた声、レイピアを構え勇ましく立っている貴族令嬢に視線が集中する。声を発したその貴族令嬢は、凛々しくさえ見えた事だろう。こんな状況でなければ。
俺の絶叫も、その存在感には勝てずに空しく響き渡った。
その虚しさと共に、今までの状況が、大きな音を立てて瓦解していくような気がした。
「ところでお嬢様。」
「何かしらエメラ?」
イルセーヌの街で、住処の前に設えた木製テーブルで寛ぐ二人。アリシアが優雅にティーカップを口に運んで、一口飲んだところでエメラが声を掛けた。ゆっくりとソーサーの上にカップを戻したアリシアは、満足気に微笑みながらエメラに何事かと尋ねる。
「お嬢様はこの場所に来て、それなりに長いですよね。」
「言われてみればそうですわね。バートラント家から出て生活するなんて、思っても見ませんでしたわ。」
「そうですね、逞しくなられて。本来であれば、テルメスタ家に嫁がれていた筈ですのに。」
「嫌な事を思い出させないで。テルメスタ家に行くくらいでしたら、今の生活の方が遥かにましですわ。」
アリシアは思い出したのか、苦虫を噛み潰したような表情になる。
「私も、お嬢様にまたこうしてお会い出来て、嬉しく思ってます。」
「テルメスタ家に行っていたら、滅多に会えませんものね。」
「えぇ、本当に。」
アリシアはそう言うと、カップを持って口に運ぶ。エメラもその言葉に同意しながら、しみじみと空を見上げていた。
が、エメラははっとしたようにアリシアに向き直る。
「そうではなくてですね。」
「どうしたのかしら?急に大きな声をだして。」
「この場所に来てから長いんですから、リュステニア王国へ帰る手掛かりはどれくらい見つかっているのかを聞きたいのです。つい生活に馴染んでしまいそうになっていましたよ。」
エメラの言葉で、アリシアはカップを置こうとした動作が止まる。
暫しの沈黙が流れると、エメラの表情に呆れが浮かび始めた。
「前にも言いましたが、何一つ知りませんわ。」
「それ、本当に冗談じゃないんですよね?」
「えぇ、わたくし、嘘は付きませんもの。」
胸を張って言える事か!
と、エメラは全力で言いたかったが、仮にも主の娘。沸々とくる怒りをなんとか堪えて、会話を続けようとする。
「せめて、連絡手段でも見つかれば、ルーデリオ様に安否を伝えられるのですが。」
エメラにとって、今一番気掛かりなのはルーデリオの事だった。
アリシアが生きている事は分かったが、今度は自分が居なくなった事で、二人分の安否をルーデリオは抱え込んでしまう事になっただろうと思えば。貴族の主であるルーデリオが一従者に対して、そこまで心労を重ねるかと言われれば疑問かも知れない。だが、アリシアが居なくなって自分を責めていたエメラを、気遣ってくれたルーデリオは嘘ではないと思っているからこそ、エメラはそう思っていた。
アリシアは嫌がっていた婚姻から逃げられ、気ままに生活しているからいいが、ルーデリオはそうはいかない。そんな事を考えると、エメラは早く現状を伝えたいと思うばかりだった。
不謹慎だとは思うが、アリシアがこの状態だと知ってしまっては、正直アリシアよりもルーデリオに付いている方が良かったとさえ、エメラは思うようになっていた。当然、見つかった当初は嬉しくてたまらなかったし、ルーデリオの心配も解消されると思ったからだ。
「確かにエメラの言う通りですわ。あまりお父様を心配させるわけにも、いきませんわね。」
「お嬢様・・・」
「エメラの話しでは、お父様の体調も芳しくないようですし、せめて安否だけでも伝える方法を探しましょう。」
「はい。」
アリシアとてルーデリオに心配を掛けたかったわけではない。現在の生活に馴染んでいたとはいえ、元の場所に帰りたいと思っている事には変わりもない。
テルメスタ家へ嫁ぐ事から逃れられた事は僥倖だったが、まさか知らない土地に来る事は予想外だった。それによりルーデリオに心労を掛ける事も。アリシアにとっては破談になりさえすれば良かっただけなのだが、まさかこの様な事態になるとは思ってもみなかったのだ。それに加えエメラも同様の事象に巻き込まれたとなれば、心配せずにはいられない。
「そうと決まれば、ユアキスですわ。」
「あの・・・何故そこへ辿り着くのですか。」
「そもそも、わたくし独りで出歩けないところが問題なのです。」
「確かに、言われてみればそうですね・・・」
この土地の状況について、エメラも理解はし始めていた。外を歩けば魔獣が存在し、それと戦う人たちが居るということ。街と街の間はそれなりに距離があり、戦う術が無ければ危険だという事も。
「それに、現状で有益な情報は得られていないのが現実ですわ。ユアキス達は、次の場所に向かうようですし。」
「つまり、彼らに新たな土地に連れて行ってもらうわけですね。」
「そうですわ。」
納得したエメラに、アリシアも頷いて見せる。
「しかし、来てから思いましたが、おかしな土地ですよね。」
「えぇ、わたくしもそう思っています。」
「まず食料を分けてもらう事が、変わっています。」
「・・・そうですの?」
エメラの言葉に首を傾げたアリシア。流石のエメラも呆れた視線を送るが、本人には届いていないようだ。
「普通は、手に入れる代償として通貨を支払うものです。」
「・・・」
エメラもそれを責めるつもりは無い。バートラント家は娘に甘いとは思っていたが、その付けがこれだろうとは思ったが。
貴族令嬢であり、何不自由なく暮らして来ているのだ。一般教養よりも、貴族の嗜みを優先で教えられる。この歳になって買い物をしたことが無いというのも珍しくは無かった。
おそらく、召し物ですら仕立て屋が来て、縫製したものを納められていると思っているに違いない。実際は仕上がった衣装に対し、受け取った使用人が支払っているなど、考えもしないのだろう。
「つまり、対価を支払って物を手に入れるのが当たり前であり、バートラント家も例外ではいという事ですわね。」
「その通りです。」
エメラが肯定すると、アリシアは得意げに鼻を鳴らしたが、当たり前の事なのでその態度は無視しておく。
「それに、街の住人に違和感を感じます。」
「そうかしら?」
その事についても、疑問を持っていないようだったアリシアに、エメラは多少呆れたが態度には出さずに話しを続ける。
「生活範囲で関わる人は、会話が出来るのですが、そうでない場合決まった事しか言いません。それに、通りを歩く通行人でも不自然な人が居ます。」
「あまり気にしてはいませんでしたが、言われてみれば確かにおかしいところがありますわね。」
エメラにとって、不自然さを議論するつもりは無かった。今は、違和感があるという状況を共有できればいいと。そもそも、答えに辿り着くためには情報が不足し過ぎているため、議論にすらならないと思っているからだ。
「とりあえず、連絡手段でもと思っているのですが・・・」
「見つからない可能性が高いですわ。」
「!!」
真面目な顔をして、自分が考えている事と同じ内容を、アリシアの口から出て来るなどエメラは思ってもいなかった。そのため、驚きに目を見開いてアリシアに視線を固定してしまった。
「エメラ、失礼過ぎですわ。」
「これは失礼しましたお嬢様。まさか、お嬢様がそこまで思慮を巡らせているとは・・・」
「エメラ、わたくしの事を馬鹿にしたいのですか?」
「度々失礼しました・・・」
本当のところ、エメラはアリシアは何も考えずに日々を過ごしていると思い込んでいた。馬鹿にするつもりがあったわけではない。近いような事は思いはしたが。
ただ、それを態度に出してしまった事にバツが悪く目を逸らしてしまう。
「それでお嬢様、そう思った理由はなんでしょうか?」
「エメラも体験したから分かるでしょうが、まずこの場所は言葉が通じなかったのですわ。」
アリシアがそれに気付いたのは前からではない。単にエメラと話していてその可能性に至っただけで。つまりエメラの予想は間違っていたわけではなく、上手く誤魔化されているだけだった。
「確かにそうです。」
「にも関わらずです、突然言葉が通じるようになりましたわ。それ以前に、わたくし達が体験した不可解な現象。一番の理由はそれだと思いますの。」
「はい、私も同じ考えです。」
リュステニア王国から突如違う土地へと移動させられた。そんな事象が起きては疑わざるを得ないのは当たり前だ。
アリシアにとって、当時はパニックでありそんな事を考える余裕など無かった。帰りたいと思わない日は無かったものの、生活に慣れこの場所にも馴染んで来てしまっていたため、エメラ程の思慮までは至らなくなったのが現状である。
「つまり此処は、まったく知らない土地と考える方が自然です。」
「そうですわ。イズ・クーレディア大陸を知らない人ばかりというのも、そもそも大陸を知らないと考えれば辻褄が合いますわ。」
「はい。または、違う世界か・・・」
「その考えは突飛し過ぎではありませんこと?わたくし達は御伽噺の住人ではありませんわ。」
「流石に、無理がありましたね。」
そう言うとエメラは苦笑した。アリシアもやれやれという態度をすると、ソーサーからカップを持ち上げて口に運ぶ。
「となると、次にすべき事ですが。」
「ほら言ったでしょう?ユアキスですわ。」
エメラは、アリシアが何も考えずに言っているものだと思っていた発言が、実は得心のいくものだったとここで理解した。
「確かにそうですね。彼らが道を切り開いてくれるなら、新たな手掛かりに繋がるかもしれない。」
「そういう事ですわ。」
得意げに胸を反らすアリシアだが、エメラはまだ希望があるという状況に安堵して見てはいなかった。帰る手掛かりすら無く、途方に暮れかけていたが、まだ光明はあるのだと思えば。
「それで、早速向かいますか?」
「あの場所、暗くて嫌いですわ。」
以前、後ろから付いていった場所を思い出すと、アリシアは嫌そうな顔をする。
「いや、我が儘を言っている場合じゃないと思いますが。」
エメラがそう言って立ち上がると、アリシアも重い腰を上げるように立ち上がった。
俺は再び、オルデラの居る場所まで戻ってきた。
漆黒の甲冑は初めから白い闘気のようなものを纏っている。
前回、あっさり全滅させられた事を考えると、その姿に緊張する。
いや、オルデラは関係ないな。勝てるかどうかってところで緊張しているだけだ。
たまに、先に進みたいだけなのに、こんなに強いやつ相手にさせんなよ。って思う事もある。
ストーリーとしては、先遣隊がこっちの腕試しという事にになっているが、俺にはイヤな奴としか思えない。
「勝てるかな。」
「まぁ、その為に準備してきたわけだし。」
「あっさりやられたら苦労した甲斐もなくなります。」
タッキーの苦笑いに、俺と姫が呆れて答える。やる事はやったんだし、後は全力でぶつかるだけだ。
「弱気すぎですわ。むしろ、私のとっては既に取るに足らない相手ですわ。」
ほう・・・戦ってもいないのに取るに足らないのか。その自信はどっから来るんだか。
「考えてもしょうがないわ。」
マリアがそう言うと、真っ先に小太刀二刀を抜刀する。緊張どころか、いつもの柔らかい笑みを浮かべたままなのが、彼女の不思議なところだ。
いや、マイペースな性格と言った方がいいか。
「考えてもしょうがないだろ、何しろこの面子だ。」
「そだね。」
俺が言うと、タッキーも笑顔で応じた。
「絶対馬鹿にしてんでしょ、後で蹴るよ。リアルで。」
「やめろ・・・」
もともと緊張感のあるメンバー何て居やしない。そこが気軽でいいのかもしれない。俺も片手剣を抜くと、オルデラに向かって歩き出す。
ある程度の距離が詰まると抜身の大剣を肩に抱え、オルデラが戦闘態勢に入る。
オルデラの初撃は決まっている。それが開戦の合図になっているのかもしれない。その初撃、突進からの打ち下ろしを回避して、俺たちは戦闘に入った。
衝撃波を大きく跳躍して避けたアヤカ、マリア、月下がオルデラに向かっていく。オルデラはすぐに大剣を振り上げ、アヤカとマリアを狙いに行った。
そこへ、衝撃波を避けた状態の空中から、姫が閃光矢を放つ。
オルデラは察知すると、大剣の軌道を変えて矢を弾いた。間髪入れず、タッキーが撃った爆炎弾を、オルデラは大剣を持っていない方の手で受け止める。
弾かれた閃光矢が炸裂し、光を撒き散らすと同時に爆炎弾も破裂するが、オルデラにはダメージをほぼ与えていないし、目眩ましの効果も与えられていない。
爆炎弾が破裂した直後、姫の放った閃光矢が再度オルデラを襲う。大剣を振り切り、もう片方の手も爆炎弾を受け止めている状態なら、防ぎようが無いだろう。
顔面の前で炸裂した閃光は、オルデラを一瞬眩ませた。そこへタッキーの爆炎弾が頭部へ直撃、オルデラがよろめくと、既に間合いの詰め終わっているアヤカとマリアの連撃が開始された。
装備を作っている間、ただ作っていたわけじゃない。
戦い方をいろいろと考えたり、話したりしたんだ。
その成果が出ているんだろう、前回みたいにはいかない。
オルデラは異常な程、こちらの攻撃に対する反応が速い。それは攻撃だけでなく、状態異常を与える攻撃に対してもだ。だったら、それを上回る攻撃をすればいい。単純だが、効果は見ての通りだ。
俺も黙って見ているわけじゃない。アヤカ達が攻撃に入る直前に、攻撃力増加の薬をパーティ全体へ使うと、オルデラとの間合いを詰めている。
その前に、跳躍した月下が、タッキーの撃った炸裂弾ごと、オルデラの頭上から槍斧を叩きつける。オルデラの肩から上で弾ける爆音の中、俺は滑り込むようにオルデラの懐に潜り込んでいく。
ちょうどそこへ、姫が放った火矢が飛来する。俺は勢いを殺さずに身体を回転させながら、火矢を片手剣で巻き込みながらの回転切り。そのままオルデラの背後へと突き抜ける。
オルデラは直後に、炎の竜巻に包まれた。
嵐焔舞、というらしい。
そのオルデラに対し、連撃を叩き込んでいた残り二人の攻撃が終わりを迎える。最後の一撃はアヤカの唐竹と、マリアの両手の交差した振り下ろしだが、交錯した6本の剣閃は光量が増え、打ち付けるような轟音と共にオルデラを弾き飛ばした。
六花剣衝、そんな名前のSSSだった気がする。確かに、6枚の花弁が開いてオルデラを吹っ飛ばしたように見える。
「オルデラも大した事ないですわ。」
吹っ飛んだオルデラを見ながら、アヤカが得意げに言った。
「練習した甲斐、あったわねぇ。」
こんな状況でもマリアの態度に変化はない。それは、装備を作るためにいろいろクエストに行っていた時もだった。悪いヤツには思えないが、読めない態度はちょっと気にはなっている。
「げぇ・・・今ので1割も減ってないよぉ・・・」
脱力するタッキーの声に、そう言えばと思って俺もオルデラの体力を見るが、タッキーの言うように大して減っていない。
「まぁ、LV8の時もそうですし、そんな簡単には勝てないでしょう。」
むしろ強く無かったら、こんな苦労は初めからしていない。
「よーしタッキー、もういっちょ脳天に食らわしてやろう。」
「そだね。」
槍斧を肩に担いで言った月下の笑顔は、楽しんでいるようだった。それにあてられてか、タッキーも笑顔を見せる。
なんて言っている間に、態勢を立て直したオルデラが、こっちに向かって突進を開始。
「やべっ!」
「うわぁっ。」
それから20分ほどで、オルデラの体力は半分くらいになっていた。アイテムもまだ余裕がある、今のまま行けば勝てるだろう。
が、油断して操作ミスとかしないように気を付けないとな。
「くっ・・・」
そんな事を考えた瞬間、アヤカの一撃でオルデラが背後へ跳躍。追い打ちをしようとしたアヤカとマリアだが、着地したオルデラが剣を横凪に払い、衝撃波を発生させたので止まった。
「いいねぇ、これくらい出来なきゃ資格すら無いとこだったぜ。」
始まったよ・・・
前もあったよな、確か。
「じゃ、俺も本気になっかな。」
剣を頭上に掲げながら言うオルデラ。足元から湧き上がる、白い闘気のようなものが、真紅へと変化していく。
げぇ・・・
嫌気はさすが、ここまで来たんだ。こっちも負けるつもりはない。もう一回戦いたくなんてないしな。
「いやぁ、予想はしてたけどさぁ、当たって欲しくないよね。」
「本当にそうです。」
そりゃ、みんなそう思うわ。
「今更本気になったところで、私の勝ちは揺るぎませんわ。」
「まぁ此処まで来れば、動きも把握出来てきたものね。」
それ、お前らだけな。
「あたしも、今やられると暫く悔しくてたまらなくなりそう。」
「それはゲーム内だけにしてくれよ。」
「だから勝つんでしょ!」
負けたらリアルで俺の精神が削られそうだよ・・・
「ユアキス、お待たせしましたわ!」
「微力ながら、加勢致します。」
・・・
は?
「ってなんでお前が此処に居るんだぁぁぁぁっ!!!」
突如聞こえた声、レイピアを構え勇ましく立っている貴族令嬢に視線が集中する。声を発したその貴族令嬢は、凛々しくさえ見えた事だろう。こんな状況でなければ。
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