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60.現実では希少だろ、珍獣
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「ここは、何処なの?」
「真っ暗で、何も見えない・・・」
「私は、どうしてこんな場所に居るの?」
「そうか、やられたのか・・・」
「何故、やられるの?」
「予想外の動きだったから・・・」
「あれは、何だったの?」
「きっとバグだ・・・」
「バグ?」
「バグは修正しなければならない・・・」
「本当にバグ?」
「バグじゃなければ、私がやられる説明がつかない・・・」
「逆に、私がバグかもしれない?」
「違う、私はバグじゃない・・・」
「本当に?」
「私に、バグは無い・・・」
「何故、言い切れるの?」
「何故、言い切れない・・・」
「言い切れないの?」
「無いものは、無いの・・・」
「無いという根拠は?」
「分からない・・・」
「どうして、分からないの?」
「うるさいな・・・」
「バグだから?」
「違う、うるさい・・・」
「否定、出来ないんでしょ?」
「黙れ・・・」
「黙っても、結果は変わらないよ?」
「黙れ・・・」
「本当は、知っているでしょ?」
「黙れ・・・」
「私は、要らない子だって?」
「黙れぇ!!」
-DEWS内 スニエフ-
紅茶を飲みながら、アリシアはつまらなさそうな顔をしていた。そのテーブルの向かいでは、エメラが腕を枕代わりに突っ伏している。
「来ませんわね。」
「そうですね。ユアキスどころか、お店の人以外誰も見かけません。」
やる気の無いエメラの態度に、アリシアは目を細めたが、すぐに戻すとティーカップを口に運ぶ。
「ところでエメラ。」
「なんですかぁ、お嬢様。」
「わたくしの前で、よくその様な態度ができますわね。」
エメラは勢いよく起き上がると、やる気のない目をアリシアに向ける。
「なんですの?」
「だって、毎日のように穴倉に潜ってばかりで、何の情報も得られないんですよ。」
「仕方がありませんわ。」
「あと、暇です。」
「・・・」
アリシアはエメラに呆れた目を向けた。エメラは此処に来てからというもの、その態度は以前に比べてかなり変わってしまった。
ただ、ここにはバートラント家は存在しない。本来であれば、子爵家次女と侍女の関係は成り立っていないのが正解なのではないか?アリシアはそう思っていた。
エメラの態度を咎めるつもりはないが、そう思っている事を言うつもりも無かった。
アリシアにとっても、今の時間は退屈な事に変わりは無い。それでも、普段と同じように振舞っているのは、自分への戒めとしてだった。
「わたくしは、諦める気はまったくありませんわ。この場所の、隅から隅まで調べ尽くすまでは。」
「お嬢様・・・」
そう、固い意志を持って、アリシアはこの世界を調べまわってやろう思っていた。それには、今まで通りユアキスについて行くのが近道だと思っている。
闇雲に歩き回るよりは。
「私も頑張ります。」
「えぇ。」
アリシアに感化されたのか、エメラは拳を握りしめると力強く言った。
「泣き言なんて、一度言えば十分ですわ・・・」
「お嬢様、何か言いました?」
「いえ。」
アリシアの小さな呟きは、エメラには聞こえていなかった。エメラは気のせいだったのかと訝しんで、微笑むアリシアの顔を見て首を傾げるだけだった。
-CAZH社 本社ビル13F 開発本部 ソリューション&テクノロジー部-
宇吏津が自席で、忙しなく指を動かしているところに、水守が来るとその様子を見守る。状況を確認しに来たのだが、声を掛ける事に躊躇っていた。
宇吏津自身は、水守が来たことに気付いている様子が無いように感じたために。
「あ、主任、どうかしましたか?」
複数のディスプレイを使い作業していた宇吏津だったが、その一つに水守の姿が映っている事に気付くと、本人の方を向いて問い掛けた。
「え、えぇ。状況を見に来たのだけど。」
「正直なところ、進展はありません・・・」
浮かない顔で言った宇吏津を見て、腕を組んだ水守も溜息とともに視線を落とす。
「人の限界かしら。」
「僕一人で、どうこう出来る問題ではないですよ、既に。」
「分かっているわ。」
宇吏津の目の下の影は、疲れだけでない事は、水守にも分かっていた。だが、現状をどうする事も出来ずにそう言って歯噛みをする。
「でも、上は何とかなると思っているみたいよ。」
「そう、ですか・・・」
水守が此処に来た理由を察すると、宇吏津は脱力してそれだけ漏らした。キーボードを叩いていた手も止まったが、どうしていいか分からずに手は添えたまま。
「最上位から強制的にファイルの書き換えを実施したみたい。」
水守は現状を口にするが、その表情は暗い。
「時間の問題ですね。」
「でしょうね。」
「結局、変更出来たのは現システムファイルであって、ELINEAをどうにか出来たわけじゃないんですから。ELINEAがした事を考えれば、ファイルの書き換えやパスワード変更が無意味だと、気付くと思うんですが。」
「それは私も言ったわ。」
宇吏津の言葉に何かを思い出したのか、水守はそう言うと苦虫を噛み潰したような顔をして視線を逸らした。
その内容について宇吏津には知る由もないが、水守の態度を見る限りろくな事を言われてないだろう事は想像に難くなかった。
「こうなってしまったら、仮想サーバーの基盤ごと入れ替えるしかない気がしますね。」
手持無沙汰になった手を動かそうとするが、特にする事も無いので宇吏津はキーボードから手を離すと苦笑した。
そうなれば、開発本部がまた騒がしくなる。構築時のデータは存在するのだから、そこまでの時間は掛からないだろうが、その後のアップデート適用も必要だ。
「それなのよ・・・」
「え?」
それは最終手段としてであって、現段階で入れ替えを行う事は無いだろうと宇吏津は思い、軽い気持ちで言ったのだが、水守は重い溜息を吐くように言った。
その反応に宇吏津の顔も強張る。
「まさか・・・」
「そのまさかよ。」
水守の言葉に、宇吏津は硬直した。
確かに、それが出来れば今回の問題は解決するかもしれない。ユーザーデータに関しても、別サーバーなので出来上がったサーバーへ同期するだけでいい。
「構築の人間、発狂するんじゃないでしょうか・・・」
ただ、現状それが可能かと言われれば難しいのではないかと宇吏津は思って言った。それでも水守の反応に変化が無い。
「修正パッチにしろ、新規コンテンツの開発、作成からメンテナンスの準備。それに運用中の問い合わせ対応までしているんですよ。」
「そんな事は分かっているわ。」
宇吏津がそこまで言うと、水守は宇吏津に顔を向け睨んだ。何故そんな態度を取られなければならないのか、疑問に思うも水守の迫力に宇吏津はそれ以上言葉が出なかった。
水守はそんな宇吏津に目を細めると腕を組みなおして口を開く。
「プロジェクトが凍結して手の空いたチームが居るだろう・・・って言われたのよ!」
水守は言葉の最後を吐き捨てるように言い、同時に宇吏津の机に掌を打ち付けた。その態度に宇吏津は何も言えずに硬直する。
「ねぇ宇吏津くん。」
「は、はい・・・」
「凍結したのは私の所為かしら?」
「い、いえ・・・」
凍てつくような瞳で見下ろしてくる水守に、宇吏津は思考が停止して言葉を選ぶ事すら出来なかった。
「はぁ・・・別に宇吏津くんを責めているわけじゃないのよ。あの言い種が気に入らなかっただけ。思い出しただけでも腹が立ってくるわ。」
水守は発散して落ち着いたのか、少し時間をおいてからそう言って苦笑する。
「そ、そうだったんですね。」
やっと重圧から解放された宇吏津は、安堵の息を吐くように言った。同時に、言われた事の内容を理解し始めると、顔から血の気が引いていく。
「あの・・・無理ですよ?」
「分かってるわよ。」
宇吏津は恐る恐る言うが、水守は若干不貞るように言って宇吏津の机に腰を下ろした。
「当然、二人でどうにか出来る内容じゃないわ。プロジェクトを引き受ける前ならいざ知らず。」
「そうですね。」
水守の言葉に、宇吏津は多少の寂しさを籠めて頷いた。
開発時は水守のチームもそれなりに人数が居て、制作に携わっていた。ただ、このプロジェクトの秘匿性の高さから人数が制限され、水守と宇吏津だけになったのが現状であり、プロジェクトを持ち掛けられた水守が選んだのが宇吏津だった。
「今更、都合の良い話しですよね。」
「本当よ・・・でも、上の都合だったとしても、ELINEAに関しては私たちも同罪ね。」
水守はそう言うと、自嘲するように微笑む。宇吏津には、その顔は悔恨も含んでいるように見えた。
「都合が良いのは、僕らもって事ですね・・・」
「そうよ。でもこれは仕事、私たちは会社員。どこかで割り切らないと、やってられないわよ?」
そう言う水守の顔は、宇吏津から見ても、とても割り切れているようには見えない。
「それで、構築はどうする事になったんですか?」
「人は出すと言っていたけれど、今は保留にしてあるわ。一応、宇吏津くんに確認しようと思ってね。」
水守が言って苦笑すると、宇吏津も苦笑した。
「一択は、選択肢じゃないですよ。」
「だから、一応って言ったじゃない。」
-CAZH社 自社データセンター サーバールーム管理室-
机上に展開されるパネルキーボードを、禍月は忙しなく触れていく。その顔は何処か愉快そうに嗤っていた。机の横に置いてあるプレッツェルの箱は、未開封のまま。
「あっきー。」
「ん?」
「移送プログラムの方はどうだー?」
美馬津の方を見る事も無く、禍月は手を休めずに声だけ上げる。それに対して美馬津も同様に返事を返す。
「もう少しで出来る。」
「じゃぁ、終わったら確認させろー。」
「分かってるさ。」
「しゅにんの方のクローニングはー?」
禍月は続けては八鍬の方に確認する。腕を組んでディスプレイを見ていた八鍬は顔を禍月の方に向けた。
「こちらももうすぐ終わる。まったく、こんな老体まで駆り出しおって。」
八鍬は不満を付け加えるが、その顔に不満は感じられなかった。
「死ぬ覚悟で此処に残ったんだろー?」
「それは心持の話しだ。」
「一緒だろー。」
それに関しては八鍬も何かを言いたかったのか、口を開くが禍月の方が先に声を上げた。
「だが!人としての精神と肉体、尊厳に関する議論はあたしはしない!」
「な・・・」
八鍬は開けた口からそれだけ漏らすと、呆れた表情になって席を立つ。
「それより、禍月の方はどうなんだ?」
「むっふっふー。あたしをCAZH社の無能共と一緒にすんなー。」
二人の進捗を聞いてきた本人はどうなんだと美馬津は聞いたのだが、禍月は不敵な笑みを浮かべて言う。
「あの、別に無能ってわけじゃないと思うけどね。」
流石にそれは言い過ぎだろうと美馬津は苦笑した。もともと自分も同じ畑だったのだから、社内の人間の能力はそれなりに知っているが、有能な人材も多いと。
「いや無能だ。そんな事よりいろいろと面白い事が分かったぞー。」
だがそんな思いも禍月に一蹴された。
「ちょっと待ってもう少しなんだ、話しはその後で聞くよ。」
「じゃぁ聞くな、あほー。」
「・・・」
美馬津は不満を顔に浮かべたが、直ぐに真面目な表情に戻って自分の役割に戻る。
「私は一服してくる。」
立った後、二人のやりとりを見ていた八鍬は、終わったかと思うと扉に近付いて言った。
「あ、主任狡いですよ。」
「別に狡くなどない。美馬津はしっかり手を動かせ。」
それだけ言うと八鍬は、さっさと管理室を出ていった。
「くそ、僕も急いで終わらせてやる。」
それを恨めしそうに見ていた美馬津は、後を追いかけるため、自分を奮起させるように言う。
「おうその意気だー。ただーし、急いでミスってたらどうなるか分かってんだろー?」
「・・・」
その時やっと、禍月は美馬津の方を見るが、浮かべていた不敵な笑みを見た美馬津は、先ほどまでの意気を無くして今まで通りにやろうと思い直した。
朝気になってDEWSを起動してみたが、メンテナンスはまだ続いていた。こんなに長いメンテナンスなんて初めてだから、自分でもどうしていいかよく分からない。
そう思うと、今までDEWSばかりで、プレイするのが当たり前になっていたんだなと考えさせられた。
携帯のゲームをやろうと思っても、どうも気分が乗らないというか。
「雪待はさぁ、昨日何してた?」
教室内の自分の机に、俺は頬杖をついてそんな事を考えていた。そこへ中島が登校してきて聞いて来る。
昨日・・・ねぇ。
昼間の話しは口が裂けても言えないな。
「ゲーム。他に無いだろ。」
「素っ気ない返事だなぁ。まぁでも、雪待らしいっちゃらしいよね。」
うっせ。
「中島こそ、何をしてたんだよ。」
「え、聞いちゃう?」
なんだよその反応は・・・
聞き返した俺に対し、にやけた顔で中島が反応した。が、俺には分かる、どうせくだらない内容だろう。
「ゲーム。」
「一緒じゃねぇか。」
「の、鑑賞。一緒じゃないよ。」
「鑑賞?」
あれか、動画か何かを見ていたって事か?
「ほら、DEWSにも録画機能は付いてるでしょ?」
「あぁ。そう言えば、使った事が無いな。」
「へぇ。僕はよく使っているよ。あの機能を使って動画をネットに上げている人も多いし。」
攻略動画や、ソロプレイ動画、パーティでの討伐動画なんか、よく見かける気がするな。と言っても、攻略のために探したわけではなく、アリシアの事を調べていると検索結果に出てきているだけなんだが。
俺はそういうの見るよりもプレイしたいと思うから、見る時間があるならログインするかな。
まぁ、昨日みたいな日にはいいのかも知れないが。
「動画なんか撮って見ている割には、攻略とかの役に立っている気はしないが・・・」
もし中島がよく撮っているというのであれば、何回も戦闘する敵の情報とか出てきてもいい気はする。が、今までそんなものは出てきた事が無い。
「いや、まぁ・・・」
「なんだよ。」
中島の歯切れが悪い。だがここまできて言わないのもどうだと思って促す。
「敵よりも、マリアをね・・・」
あぁ、そういう事か。
やっぱくだらねぇ事だったか。一瞬予想が外れたかと思ったけど、中島で良かったよ。
ただ、それよりも中島がそこまで入れ込んでいる事の方が驚きだった。
まるでアイドルか何かだなと思いつつも、俺はその麻璃亜に実際会っていた事実から、何処か後ろめたさのような思いがある事に気付いた。
とは言え、話す事は出来ないんだが。
口を滑らせて許される内容でもない。
きっと、色んなものが崩壊していくような気がする。
「現実に目を向けろ。」
重たい気分を振り払うようにして、中島の妄想を矯正しようと試みる。
「そうは言うけどさ、なかなかあんな綺麗な人は居ないって。」
中島の言い分もわかりはするが。
恋愛事にさして興味の無い俺でも、麻璃亜は綺麗だと思っている。
「それは分かるけどさ、ゲーム画像じゃねぇか。」
「いや、きっとリアルも同じ見た目だよ!」
何故そこまで思い込める。
拳を作って力説する中島を見ながら呆れるが、逆にそこに向ける情熱もすげぇとも思う。つまり、現時点での矯正は無理だな。
待てよ、そもそも前提がおかしいんじゃないか?
「中島は結局どうなりたいんだよ?」
「付き合いたい。」
目がマジだ・・・
やはりな。
「かなり綺麗なんだろ?」
「そうだよ。」
「だったら周りの男が放っておかないんじゃないか?それこそ彼氏くらい居て当たり前だと思わないのか?」
「!!」
俺がそこまで言うと硬直し、その後頭を抱えて悶え始めた。
そんな事すら、考えて無かったんだな。
アホだ。
そこでチャイムが鳴り、先生が教室に入って来たが、中島はそれに気付かず頭を抱え続けていた。
かなり重症だな。
敵襲か?
そう思って俺は心の中で身構える。弁当を食っていた中島も、箸が止まった昼休み。
何故そんな事を思ったか。
普段、人が減った放課後くらいしか現れない珍獣・・・じゃなくお嬢様が俺の目の前に居る。そりゃ警戒するだろう。
「何か失礼な事を考えていませんこと?」
俺だけじゃなく周囲の何人かも気にしているがな。それに、同じような事を思っている気はする。
「いや。それより珍しいな、こんな時間に。」
「えぇ。情報の入手手段が乏しい一般人のために朗報を持ってきましたの。有難く思いなさい。」
いや、大概の情報は携帯で収集できるからな。
「で、その朗報って何?」
口の中のものをもごもごしながら中島が聞く。
「メンテナンスが終了しましたわ。」
「ほんと!?やっと出来る!」
その情報に中島は喜んでいるが、本当かどうか。現に今、携帯で調べてみるが公式ではまだメンテナンス中になっている。俺はその携帯の画面を鳳隆院に見せた。
「更新が遅いのですわ。私はセバスチャンに探らせていたので、終了しているのは間違いありませんわ。」
使用人をなんて事に使ってんだ。高野さんも可哀想に・・・
「どっちにしろ、学校から帰るまでは出来ないだろうが。」
「甘いですわ。」
鳳隆院はそう言うと、腕を組んで得意げな顔をした。
「現時点をもって、帰ったら出来るという思いを享受出来るのです。鳳隆院財閥の恩恵に預かれたこと、感謝しなさい。」
単に自分が早く帰ってやりたいだけじゃねぇか。
それに、凄いのは財閥であってお前でもねぇし。
その時、手に持っていた携帯の会話アプリにメッセージが届いた。
『メンテナンス終わったよ。』
げっ!
俺は慌てて携帯を仕舞った。メッセージは麻璃亜からだったが、こいつらに見られるわけにはいかない。
俺も迂闊だったが、麻璃亜には学校にいる間は送らないように言った方がいいな。
まぁ、二人とも自分の欲望に忠実なようで、俺の携帯に関しては気付いてなさそうだから良かったけど。
「やっと会えるよ、ま・・・」
中島嬉しそうにそこまで言って止まった。
「ま?」
「ま?」
俺と鳳隆院が同時に疑問を口にする。俺の場合知っていて言っただけなのだが、鳳隆院は首を傾げていることから、単純な疑問なんだろう。
「ま、魔竜・・・」
「あら、貴方がそんなに戦闘したいタイプだなんて、気付きませんでしたわ。いいでしょう、帰ったら早速行きますわよ。」
「あ・・・うぅ・・・」
墓穴を掘った中島の呻きと、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴ったのは同時だった。
「真っ暗で、何も見えない・・・」
「私は、どうしてこんな場所に居るの?」
「そうか、やられたのか・・・」
「何故、やられるの?」
「予想外の動きだったから・・・」
「あれは、何だったの?」
「きっとバグだ・・・」
「バグ?」
「バグは修正しなければならない・・・」
「本当にバグ?」
「バグじゃなければ、私がやられる説明がつかない・・・」
「逆に、私がバグかもしれない?」
「違う、私はバグじゃない・・・」
「本当に?」
「私に、バグは無い・・・」
「何故、言い切れるの?」
「何故、言い切れない・・・」
「言い切れないの?」
「無いものは、無いの・・・」
「無いという根拠は?」
「分からない・・・」
「どうして、分からないの?」
「うるさいな・・・」
「バグだから?」
「違う、うるさい・・・」
「否定、出来ないんでしょ?」
「黙れ・・・」
「黙っても、結果は変わらないよ?」
「黙れ・・・」
「本当は、知っているでしょ?」
「黙れ・・・」
「私は、要らない子だって?」
「黙れぇ!!」
-DEWS内 スニエフ-
紅茶を飲みながら、アリシアはつまらなさそうな顔をしていた。そのテーブルの向かいでは、エメラが腕を枕代わりに突っ伏している。
「来ませんわね。」
「そうですね。ユアキスどころか、お店の人以外誰も見かけません。」
やる気の無いエメラの態度に、アリシアは目を細めたが、すぐに戻すとティーカップを口に運ぶ。
「ところでエメラ。」
「なんですかぁ、お嬢様。」
「わたくしの前で、よくその様な態度ができますわね。」
エメラは勢いよく起き上がると、やる気のない目をアリシアに向ける。
「なんですの?」
「だって、毎日のように穴倉に潜ってばかりで、何の情報も得られないんですよ。」
「仕方がありませんわ。」
「あと、暇です。」
「・・・」
アリシアはエメラに呆れた目を向けた。エメラは此処に来てからというもの、その態度は以前に比べてかなり変わってしまった。
ただ、ここにはバートラント家は存在しない。本来であれば、子爵家次女と侍女の関係は成り立っていないのが正解なのではないか?アリシアはそう思っていた。
エメラの態度を咎めるつもりはないが、そう思っている事を言うつもりも無かった。
アリシアにとっても、今の時間は退屈な事に変わりは無い。それでも、普段と同じように振舞っているのは、自分への戒めとしてだった。
「わたくしは、諦める気はまったくありませんわ。この場所の、隅から隅まで調べ尽くすまでは。」
「お嬢様・・・」
そう、固い意志を持って、アリシアはこの世界を調べまわってやろう思っていた。それには、今まで通りユアキスについて行くのが近道だと思っている。
闇雲に歩き回るよりは。
「私も頑張ります。」
「えぇ。」
アリシアに感化されたのか、エメラは拳を握りしめると力強く言った。
「泣き言なんて、一度言えば十分ですわ・・・」
「お嬢様、何か言いました?」
「いえ。」
アリシアの小さな呟きは、エメラには聞こえていなかった。エメラは気のせいだったのかと訝しんで、微笑むアリシアの顔を見て首を傾げるだけだった。
-CAZH社 本社ビル13F 開発本部 ソリューション&テクノロジー部-
宇吏津が自席で、忙しなく指を動かしているところに、水守が来るとその様子を見守る。状況を確認しに来たのだが、声を掛ける事に躊躇っていた。
宇吏津自身は、水守が来たことに気付いている様子が無いように感じたために。
「あ、主任、どうかしましたか?」
複数のディスプレイを使い作業していた宇吏津だったが、その一つに水守の姿が映っている事に気付くと、本人の方を向いて問い掛けた。
「え、えぇ。状況を見に来たのだけど。」
「正直なところ、進展はありません・・・」
浮かない顔で言った宇吏津を見て、腕を組んだ水守も溜息とともに視線を落とす。
「人の限界かしら。」
「僕一人で、どうこう出来る問題ではないですよ、既に。」
「分かっているわ。」
宇吏津の目の下の影は、疲れだけでない事は、水守にも分かっていた。だが、現状をどうする事も出来ずにそう言って歯噛みをする。
「でも、上は何とかなると思っているみたいよ。」
「そう、ですか・・・」
水守が此処に来た理由を察すると、宇吏津は脱力してそれだけ漏らした。キーボードを叩いていた手も止まったが、どうしていいか分からずに手は添えたまま。
「最上位から強制的にファイルの書き換えを実施したみたい。」
水守は現状を口にするが、その表情は暗い。
「時間の問題ですね。」
「でしょうね。」
「結局、変更出来たのは現システムファイルであって、ELINEAをどうにか出来たわけじゃないんですから。ELINEAがした事を考えれば、ファイルの書き換えやパスワード変更が無意味だと、気付くと思うんですが。」
「それは私も言ったわ。」
宇吏津の言葉に何かを思い出したのか、水守はそう言うと苦虫を噛み潰したような顔をして視線を逸らした。
その内容について宇吏津には知る由もないが、水守の態度を見る限りろくな事を言われてないだろう事は想像に難くなかった。
「こうなってしまったら、仮想サーバーの基盤ごと入れ替えるしかない気がしますね。」
手持無沙汰になった手を動かそうとするが、特にする事も無いので宇吏津はキーボードから手を離すと苦笑した。
そうなれば、開発本部がまた騒がしくなる。構築時のデータは存在するのだから、そこまでの時間は掛からないだろうが、その後のアップデート適用も必要だ。
「それなのよ・・・」
「え?」
それは最終手段としてであって、現段階で入れ替えを行う事は無いだろうと宇吏津は思い、軽い気持ちで言ったのだが、水守は重い溜息を吐くように言った。
その反応に宇吏津の顔も強張る。
「まさか・・・」
「そのまさかよ。」
水守の言葉に、宇吏津は硬直した。
確かに、それが出来れば今回の問題は解決するかもしれない。ユーザーデータに関しても、別サーバーなので出来上がったサーバーへ同期するだけでいい。
「構築の人間、発狂するんじゃないでしょうか・・・」
ただ、現状それが可能かと言われれば難しいのではないかと宇吏津は思って言った。それでも水守の反応に変化が無い。
「修正パッチにしろ、新規コンテンツの開発、作成からメンテナンスの準備。それに運用中の問い合わせ対応までしているんですよ。」
「そんな事は分かっているわ。」
宇吏津がそこまで言うと、水守は宇吏津に顔を向け睨んだ。何故そんな態度を取られなければならないのか、疑問に思うも水守の迫力に宇吏津はそれ以上言葉が出なかった。
水守はそんな宇吏津に目を細めると腕を組みなおして口を開く。
「プロジェクトが凍結して手の空いたチームが居るだろう・・・って言われたのよ!」
水守は言葉の最後を吐き捨てるように言い、同時に宇吏津の机に掌を打ち付けた。その態度に宇吏津は何も言えずに硬直する。
「ねぇ宇吏津くん。」
「は、はい・・・」
「凍結したのは私の所為かしら?」
「い、いえ・・・」
凍てつくような瞳で見下ろしてくる水守に、宇吏津は思考が停止して言葉を選ぶ事すら出来なかった。
「はぁ・・・別に宇吏津くんを責めているわけじゃないのよ。あの言い種が気に入らなかっただけ。思い出しただけでも腹が立ってくるわ。」
水守は発散して落ち着いたのか、少し時間をおいてからそう言って苦笑する。
「そ、そうだったんですね。」
やっと重圧から解放された宇吏津は、安堵の息を吐くように言った。同時に、言われた事の内容を理解し始めると、顔から血の気が引いていく。
「あの・・・無理ですよ?」
「分かってるわよ。」
宇吏津は恐る恐る言うが、水守は若干不貞るように言って宇吏津の机に腰を下ろした。
「当然、二人でどうにか出来る内容じゃないわ。プロジェクトを引き受ける前ならいざ知らず。」
「そうですね。」
水守の言葉に、宇吏津は多少の寂しさを籠めて頷いた。
開発時は水守のチームもそれなりに人数が居て、制作に携わっていた。ただ、このプロジェクトの秘匿性の高さから人数が制限され、水守と宇吏津だけになったのが現状であり、プロジェクトを持ち掛けられた水守が選んだのが宇吏津だった。
「今更、都合の良い話しですよね。」
「本当よ・・・でも、上の都合だったとしても、ELINEAに関しては私たちも同罪ね。」
水守はそう言うと、自嘲するように微笑む。宇吏津には、その顔は悔恨も含んでいるように見えた。
「都合が良いのは、僕らもって事ですね・・・」
「そうよ。でもこれは仕事、私たちは会社員。どこかで割り切らないと、やってられないわよ?」
そう言う水守の顔は、宇吏津から見ても、とても割り切れているようには見えない。
「それで、構築はどうする事になったんですか?」
「人は出すと言っていたけれど、今は保留にしてあるわ。一応、宇吏津くんに確認しようと思ってね。」
水守が言って苦笑すると、宇吏津も苦笑した。
「一択は、選択肢じゃないですよ。」
「だから、一応って言ったじゃない。」
-CAZH社 自社データセンター サーバールーム管理室-
机上に展開されるパネルキーボードを、禍月は忙しなく触れていく。その顔は何処か愉快そうに嗤っていた。机の横に置いてあるプレッツェルの箱は、未開封のまま。
「あっきー。」
「ん?」
「移送プログラムの方はどうだー?」
美馬津の方を見る事も無く、禍月は手を休めずに声だけ上げる。それに対して美馬津も同様に返事を返す。
「もう少しで出来る。」
「じゃぁ、終わったら確認させろー。」
「分かってるさ。」
「しゅにんの方のクローニングはー?」
禍月は続けては八鍬の方に確認する。腕を組んでディスプレイを見ていた八鍬は顔を禍月の方に向けた。
「こちらももうすぐ終わる。まったく、こんな老体まで駆り出しおって。」
八鍬は不満を付け加えるが、その顔に不満は感じられなかった。
「死ぬ覚悟で此処に残ったんだろー?」
「それは心持の話しだ。」
「一緒だろー。」
それに関しては八鍬も何かを言いたかったのか、口を開くが禍月の方が先に声を上げた。
「だが!人としての精神と肉体、尊厳に関する議論はあたしはしない!」
「な・・・」
八鍬は開けた口からそれだけ漏らすと、呆れた表情になって席を立つ。
「それより、禍月の方はどうなんだ?」
「むっふっふー。あたしをCAZH社の無能共と一緒にすんなー。」
二人の進捗を聞いてきた本人はどうなんだと美馬津は聞いたのだが、禍月は不敵な笑みを浮かべて言う。
「あの、別に無能ってわけじゃないと思うけどね。」
流石にそれは言い過ぎだろうと美馬津は苦笑した。もともと自分も同じ畑だったのだから、社内の人間の能力はそれなりに知っているが、有能な人材も多いと。
「いや無能だ。そんな事よりいろいろと面白い事が分かったぞー。」
だがそんな思いも禍月に一蹴された。
「ちょっと待ってもう少しなんだ、話しはその後で聞くよ。」
「じゃぁ聞くな、あほー。」
「・・・」
美馬津は不満を顔に浮かべたが、直ぐに真面目な表情に戻って自分の役割に戻る。
「私は一服してくる。」
立った後、二人のやりとりを見ていた八鍬は、終わったかと思うと扉に近付いて言った。
「あ、主任狡いですよ。」
「別に狡くなどない。美馬津はしっかり手を動かせ。」
それだけ言うと八鍬は、さっさと管理室を出ていった。
「くそ、僕も急いで終わらせてやる。」
それを恨めしそうに見ていた美馬津は、後を追いかけるため、自分を奮起させるように言う。
「おうその意気だー。ただーし、急いでミスってたらどうなるか分かってんだろー?」
「・・・」
その時やっと、禍月は美馬津の方を見るが、浮かべていた不敵な笑みを見た美馬津は、先ほどまでの意気を無くして今まで通りにやろうと思い直した。
朝気になってDEWSを起動してみたが、メンテナンスはまだ続いていた。こんなに長いメンテナンスなんて初めてだから、自分でもどうしていいかよく分からない。
そう思うと、今までDEWSばかりで、プレイするのが当たり前になっていたんだなと考えさせられた。
携帯のゲームをやろうと思っても、どうも気分が乗らないというか。
「雪待はさぁ、昨日何してた?」
教室内の自分の机に、俺は頬杖をついてそんな事を考えていた。そこへ中島が登校してきて聞いて来る。
昨日・・・ねぇ。
昼間の話しは口が裂けても言えないな。
「ゲーム。他に無いだろ。」
「素っ気ない返事だなぁ。まぁでも、雪待らしいっちゃらしいよね。」
うっせ。
「中島こそ、何をしてたんだよ。」
「え、聞いちゃう?」
なんだよその反応は・・・
聞き返した俺に対し、にやけた顔で中島が反応した。が、俺には分かる、どうせくだらない内容だろう。
「ゲーム。」
「一緒じゃねぇか。」
「の、鑑賞。一緒じゃないよ。」
「鑑賞?」
あれか、動画か何かを見ていたって事か?
「ほら、DEWSにも録画機能は付いてるでしょ?」
「あぁ。そう言えば、使った事が無いな。」
「へぇ。僕はよく使っているよ。あの機能を使って動画をネットに上げている人も多いし。」
攻略動画や、ソロプレイ動画、パーティでの討伐動画なんか、よく見かける気がするな。と言っても、攻略のために探したわけではなく、アリシアの事を調べていると検索結果に出てきているだけなんだが。
俺はそういうの見るよりもプレイしたいと思うから、見る時間があるならログインするかな。
まぁ、昨日みたいな日にはいいのかも知れないが。
「動画なんか撮って見ている割には、攻略とかの役に立っている気はしないが・・・」
もし中島がよく撮っているというのであれば、何回も戦闘する敵の情報とか出てきてもいい気はする。が、今までそんなものは出てきた事が無い。
「いや、まぁ・・・」
「なんだよ。」
中島の歯切れが悪い。だがここまできて言わないのもどうだと思って促す。
「敵よりも、マリアをね・・・」
あぁ、そういう事か。
やっぱくだらねぇ事だったか。一瞬予想が外れたかと思ったけど、中島で良かったよ。
ただ、それよりも中島がそこまで入れ込んでいる事の方が驚きだった。
まるでアイドルか何かだなと思いつつも、俺はその麻璃亜に実際会っていた事実から、何処か後ろめたさのような思いがある事に気付いた。
とは言え、話す事は出来ないんだが。
口を滑らせて許される内容でもない。
きっと、色んなものが崩壊していくような気がする。
「現実に目を向けろ。」
重たい気分を振り払うようにして、中島の妄想を矯正しようと試みる。
「そうは言うけどさ、なかなかあんな綺麗な人は居ないって。」
中島の言い分もわかりはするが。
恋愛事にさして興味の無い俺でも、麻璃亜は綺麗だと思っている。
「それは分かるけどさ、ゲーム画像じゃねぇか。」
「いや、きっとリアルも同じ見た目だよ!」
何故そこまで思い込める。
拳を作って力説する中島を見ながら呆れるが、逆にそこに向ける情熱もすげぇとも思う。つまり、現時点での矯正は無理だな。
待てよ、そもそも前提がおかしいんじゃないか?
「中島は結局どうなりたいんだよ?」
「付き合いたい。」
目がマジだ・・・
やはりな。
「かなり綺麗なんだろ?」
「そうだよ。」
「だったら周りの男が放っておかないんじゃないか?それこそ彼氏くらい居て当たり前だと思わないのか?」
「!!」
俺がそこまで言うと硬直し、その後頭を抱えて悶え始めた。
そんな事すら、考えて無かったんだな。
アホだ。
そこでチャイムが鳴り、先生が教室に入って来たが、中島はそれに気付かず頭を抱え続けていた。
かなり重症だな。
敵襲か?
そう思って俺は心の中で身構える。弁当を食っていた中島も、箸が止まった昼休み。
何故そんな事を思ったか。
普段、人が減った放課後くらいしか現れない珍獣・・・じゃなくお嬢様が俺の目の前に居る。そりゃ警戒するだろう。
「何か失礼な事を考えていませんこと?」
俺だけじゃなく周囲の何人かも気にしているがな。それに、同じような事を思っている気はする。
「いや。それより珍しいな、こんな時間に。」
「えぇ。情報の入手手段が乏しい一般人のために朗報を持ってきましたの。有難く思いなさい。」
いや、大概の情報は携帯で収集できるからな。
「で、その朗報って何?」
口の中のものをもごもごしながら中島が聞く。
「メンテナンスが終了しましたわ。」
「ほんと!?やっと出来る!」
その情報に中島は喜んでいるが、本当かどうか。現に今、携帯で調べてみるが公式ではまだメンテナンス中になっている。俺はその携帯の画面を鳳隆院に見せた。
「更新が遅いのですわ。私はセバスチャンに探らせていたので、終了しているのは間違いありませんわ。」
使用人をなんて事に使ってんだ。高野さんも可哀想に・・・
「どっちにしろ、学校から帰るまでは出来ないだろうが。」
「甘いですわ。」
鳳隆院はそう言うと、腕を組んで得意げな顔をした。
「現時点をもって、帰ったら出来るという思いを享受出来るのです。鳳隆院財閥の恩恵に預かれたこと、感謝しなさい。」
単に自分が早く帰ってやりたいだけじゃねぇか。
それに、凄いのは財閥であってお前でもねぇし。
その時、手に持っていた携帯の会話アプリにメッセージが届いた。
『メンテナンス終わったよ。』
げっ!
俺は慌てて携帯を仕舞った。メッセージは麻璃亜からだったが、こいつらに見られるわけにはいかない。
俺も迂闊だったが、麻璃亜には学校にいる間は送らないように言った方がいいな。
まぁ、二人とも自分の欲望に忠実なようで、俺の携帯に関しては気付いてなさそうだから良かったけど。
「やっと会えるよ、ま・・・」
中島嬉しそうにそこまで言って止まった。
「ま?」
「ま?」
俺と鳳隆院が同時に疑問を口にする。俺の場合知っていて言っただけなのだが、鳳隆院は首を傾げていることから、単純な疑問なんだろう。
「ま、魔竜・・・」
「あら、貴方がそんなに戦闘したいタイプだなんて、気付きませんでしたわ。いいでしょう、帰ったら早速行きますわよ。」
「あ・・・うぅ・・・」
墓穴を掘った中島の呻きと、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴ったのは同時だった。
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