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83.イメージが変わってきた、混沌
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-CAZH社 自社データセンター サーバールーム管理室-
管理室のドアが開くと、禍月は眠そうな顔を入って来た人物に向ける。眠そうな顔ではあるが、送られる視線は冷めていた。
「朝帰りどころか昼帰りとは、随分と楽しそうだなー。」
多少なりとも普段の疲れ切った表情よりも、ましになっている美馬津の顔を見て、禍月は恨めしそうに言った。
「いや、色々と事情があってね。」
美馬津はそんな禍月の態度を気にした風もなく答える。
「本社に戻りたければいつでも戻っていいぞー。」
美馬津の態度が何となく気に入らない禍月は、嫌味を言ってみるが本人に響いてる感じはしなかった。その態度を見ると、不満そうに銜えたプレッツェルを上下に揺らす。
「まぁそう言うなって。良いものを手に入れたんだ。」
美馬津は鞄を漁りながら言い、目的のものを見つけると禍月に向かって見せる。親指と人差し指で摘まんだそれは、記憶媒体だと禍月にもすぐに分かった。
「何が入ってるんだー?」
一応聞いてやると言った態度で禍月が聞くと、美馬津は得意げに口の端を少し上げた。その態度に禍月は、銜えていたプレッツェルを齧り折る。
「そんな顔をするなって、もったいぶって悪かったよ。実はELINEAの元データを手に入れたんだ。」
「なに!?」
「あ・・・」
美馬津が言った瞬間、禍月は驚きに片目を大きくすると同時に椅子から飛び起きて、美馬津の手から記憶媒体を奪った。
「水守か・・・」
早速データを確認し始める禍月を見ながら、八鍬が呟くように言う。
「えぇ。ELINEA対策として禍月に頑張ってもらってますが、僕に出来る事はそれくらいしかないなと思って。」
「美馬津同様、私も何か出来るわけではない。」
美馬津も禍月に目を向けて言うと、八鍬も同意した。
「いやぁ、普段の監視だけでも十分役に立ってるぞー。」
集中しているようだが、二人の会話が聞こえた禍月は振り返らずに言う。その言葉に、八鍬と美馬津は顔を見合わせて苦笑した。禍月に関して言えば、発言に裏表があるタイプではなく、言いたい事ははっきり言う。だから、二人に気を遣ったわけではなく、言葉通りなのだろうと思えば。
「それで、データを貰うだけならばこんな時間になる必要はないだろう?」
禍月が自分の作業に集中しているため、話し掛けずにおくとして、美馬津の事をもう少し突いてやろうと、八鍬は多少意地の悪い顔をして言った。
「あ、まぁその、そうなんですが・・・」
まさか八鍬からも言われるとは思わなかった美馬津は、顔を逸らして口ごもる。
「まぁいい。プライベートに関してはどうでも・・・美馬津、これはなんだ?」
八鍬が突然険しい表情をしてディスプレイを注視する。美馬津もその雰囲気に、気持ちを切り替えて同じ画面に目をやった。
「これ、まずくないですか?」
スニエフの街を表示しているディスプレイの中では、魔獣がプレイヤーを追い回していた。当然、街中で武器を使えないプレイヤーは逃げ惑うしかない。
突然の事だったのか、ログアウトするという行為もせずに逃げ回るプレイヤーは、高速で動いた後の魔獣に攻撃され、その姿は消失していく。
「ゲームどころか、会社が傾く・・・では済みそうにないな。」
「まさか、ここまでするとは・・・」
美馬津も険しい表情をしながら、その光景を見つめた。八鍬の言う通り、目の前で襲われているプレイヤーが、現実での肉体に影響が出ているのであればと思うと。
「どうやら時間はなさそうだなー。」
同じく自席でディスプレイに目をやっていた禍月が、その光景を見ながら呟いた。
「危険を冒してまでログインする阿呆はいるだろうが、直ぐにでも拡散されログインするユーザーは減るだろうなー。」
既に監視しているディスプレイからは目を離し、自分の作業に戻って言う禍月を、八鍬と美馬津は複雑な思いで見た。この状況を何とか出来るとしたら、禍月だろうという期待と、何も出来ない自分の歯痒さとで。
「そうなると、必然的に狙われる確率は上がるよなー。」
「これ以上、彼らに危険を強いる事は難しいかもな。」
腕を組んで唸るように言う八鍬に、禍月は手を止めて振り向いた。
「温い事を言うなー。今放置すれば、お姫様はどうなる?進化するELINEAがいつまでも放置すると思っているのか?そうすれば、いよいよ本当に人殺しだなー。」
「・・・」
禍月の言葉に、八鍬も美馬津も視線を落として何も言わなかった。二人がどんな思いなのか禍月には興味も無く、言うだけ言って二人の仕種を見る前に、自分の作業に戻っていた。
外はもう寒くて、屋上には居られないから、俺は学内の休憩スペースに来ていた。学食というものは無いが、小さな売店と、弁当やらパンの販売業者が並んで食糧を提供している。
俺は既にパンを買い終わっているが、それでも各店舗の前には未だに列が出来ていた。
その光景を見ているわけじゃないが、何と無しに周囲を見たりしていると、たまにこちらを気にするような視線に出くわす。それは、俺を気にしているのではなく、俺の正面に座っているお嬢様が気になっているのだろう。
若しくは、その前に広げられている重箱に入った料理にか。
「今日も行くか?」
「当たり前ですわ。」
ELINEAの攻撃を食らわなくなったとは言え、不安は拭い去れない。もしかしたら、と思ってしまうから。そんな中、ログインする意味はあるのだろうかと。
だが、聞いておいてなんだが、俺も止めるつもりはない。今は何も出来なくとも、中島を元に戻す方法、以前のように普通にプレイする方法、それはゲームの中にあるんじゃないかという思いは変わってないからだ。
「怖気付きましたの?」
「まさか。」
綺迦の問いに笑って答える。
「ただ、不安はどうしても出て来るもんだろ。」
それも怖気付くに含まれるのかどうか不明だが、人間はそんな器用じゃない気がする。だから、在っても当然なんだと、俺は思った。
「在ったとしても、自分がどうするかですわ。」
「あぁ。」
綺迦の言う通りだと思い頷く。いくら考えたところで答えが出るわけでもなく、今は出来る事をやるしかない。
どちらかと言えば、止めてしまった方が不安だ。綺迦や中島に、どんな顔を向ければいいのか分からない。それは家の中でも一緒だろう。ヒナの態度も変わりそうだが、それ以上に親父の顔を見れるかどうか。
そんな事を考えてしまう。
「なぁ綺迦。」
「なんですの?」
ジャーマンを食い終え、焼きそばパンを齧ってから綺迦に話し掛ける。当の本人はジャーマンに齧りつこうとしていたのを中断され、若干目を細めて返事をした。
タイミングが悪くて悪かったよ。
「連絡先・・・交換しないか?」
今思い立ったわけじゃない。前から考えていたんだが、なかなか言い出せずにいただけだ。友達なら話しの流れで聞く事は可能だが、異性に対して言ったのは初めてだ。だから、どう切り出していいのかも良く分からない。
「何故私が、晶社と?」
令嬢である自分が、何故一般人如きと交換しなければならないのか。
そんな風に聞こえる。
綺迦自身はそんな事を思っているか、思っていないのか不明だが、やはりそこに壁は存在したのか?ゲームを一緒にプレイしているし、こうして昼飯も一緒に食べている。どこかで、そんな壁は存在しないんじゃないかと思っていた。
それは、俺の気のせいだったのか・・・
「まぁ、いいですわ。」
言った事を後悔し始めたところで、綺迦が言った。落としていた視線を上げると、顔を逸らしている綺迦が目に入る。その表情は別に不満そうには見えなかったのは、俺の気のせいだろうか。
そんな事を思っている間に、綺迦は上着のポケットから携帯を取り出しテーブルの上に乗せた。
いや、乗せただけじゃどうにもならねぇよ。
「アプリ開いてくれよ。」
乗せたはいいが、こっちを見ようとしない綺迦に言うと、向き直って首を傾げる。あれか、お嬢様はそんなものは使わないから知らないってやつか。
「会話用のアプリ、入れてないのか?」
「入れてませんわ。」
やっぱりそうか。
綺迦はそう言うと、視線を下に落とした。
「家からの連絡用で持たされているだけですわ。好きに使っていいと言われていますが、他に使い道がありませんわ。」
余計な事を言ったのかもしれない。
綺迦の態度をみてそんな事を思ったが、本人がどう捉えているかは分からない。だが良いと言って携帯を出したのだから、望んでいないわけじゃないのだろう。
「じゃ、まずアプリをインストールするところからだな。」
「任せますわ。」
いや、自分でやれよ・・・
と、突っ込みたかったが、ただ持っているだけの状態なら、知らない可能性の方が高いか。しかし、本当に家からの連絡だけで、それ以外触らないのだろうか。
俺なんかゲームしているのもあるが、暇さえあれば手にしてしまうんだが。
仕方が無いので綺迦の携帯を手にして、デスクトップを表示しようとするが、電源ボタンを押しても反応しない。
「電源、切ってるのか?」
「ち・・・違いますわ。私に向けなさい。」
思い出したように否定すると、綺迦は少し顔を逸らして言った。普段使わないから、操作方法もろくに知らないんじゃないのか?
まぁ、それはいいとして言われたように携帯の画面を向ける。
「開きなさい。」
はっ?
言って聞くようなもんじゃないだろ。そう思って携帯の画面を見ると、認証画面が起動していた。
「私の決められた言葉と声紋じゃないと、起動しないのですわ。」
・・・セキュリティ固いな。
しかも命令。
「もう一度。」
綺迦が促すので、もう一度携帯を綺迦に向ける。そこへ顔を近づけて、直ぐに離した。
「起動しましたわ。」
携帯の画面を見ると、確かにデスクトップが表示されていた。
「何なんだ?」
「虹彩認証ですわ。」
確かに、携帯にはそんな機能が備わってはいるが、実際に使ってる奴を初めて見たよ。言われるまでそんな機能がある事すら忘れていた。
俺はアプリ名を携帯に向かって言い、続けてインストールと言う。後は携帯の方で勝手に探しに行ってインストールしてくれので待つだけだ。それほど重いアプリでもないので、インストール自体も直ぐに終わるだろう。
綺迦の前に携帯を戻すと、焼きそばパンの続きに齧りつく。
「しかし、おっさんの材料集めも飽きたな・・・」
まだそんなにやっているわけじゃないが、一度やったクエストであり、その素材が必要ないというところが、飽きる原因だろうな。しかもおっさんの場合、武器を全部作ろうとするから何度も同じクエストに付き合わされる。
今まで一人でやってきたんだから、進める方を優先してもいいよな。
「えぇ。戦闘に噛みごたえがありませんわ。」
まぁ、俺はそこを求めてはいないが。
「やはり、そろそろイヴェルカではなくて?」
それも求めてない。
「綺迦は太刀を作りたいだけだろ。」
「太刀を作る以外に何がありますの?」
うん、そうだった。
そういうヤツだったよ。
「お、インストール終わったぞ。」
綺迦の前に置いた携帯を見て言う。後は連絡先に俺の番号を入れれば、って結局全部俺がやるのかよ。
「終わったぞ。もう使えるから、試しにメッセージ送ってくれよ。」
アプリの会話画面を表示したまま綺迦の方に携帯を置く。戸惑ったように携帯の画面を見ると、恥ずかしそうに顔を逸らした。
いや、メッセージ入れるだけだろ・・・
「い、今じゃなくても、何時でも出来ますわ。」
おっけー。
そんな事だろうと思ったよ。
「ほら。」
俺は自分の携帯画面を綺迦に見せる。そこにはさっき綺迦が言った[い、今じゃなくても、何時でも出来ますわ。]というメッセージが表示されている。
「ど、どういう事ですの?」
「あぁ、音声入力にしておいた。」
驚きと不服が混じったような態度で聞いて来るので、答えたら睨まれた。まぁ、勝手にやったのは悪かったけどさ。
「まぁいいですわ。それより、何故私の連絡先を?」
俺は前から考えていたけど、綺迦にとっては今初めて聞いたんだから、そう思うよな。
「何かあった時のためにというか、ほら、DEWS内も危険だしさ。」
という理由はおまけみたいなものなんだが。その話しに綺迦は俺を真っすぐ見据えて来る。言い訳染みている、と思われているんだろうか。
「いや、本当は単に綺迦と連絡先を交換したかっただけだ。」
別に隠すつもりがあったわけじゃない。単に、そう言うのが恥ずかしいだけだった。
「そう。気が向いたら連絡してあげますわ。」
俺の言葉に目を逸らしてそう言った綺迦の顔は、少しだけだが微笑んでいるように見えた。
-都内某所 鳳隆院家-
現鳳隆院グループの頂点に立つのはこの家の当主でもある龍明(りゅうめい)となっている。一代で財を築いた父親の宗源(そうげん)は既に隠居しており、相談役という肩書で別の地に居を構えていた。表舞台に出る事も殆どなく、相談役としての役目であれば場所を選ばないため、本人の希望もあって都心から離れているのが現状であり、前線から追いやられたわけではない。
龍明は私室から夜の街に目を向けていた。と言っても、遠目に建物の灯りが見えるだけなのだが。
邸宅から門までは広い庭を挟むため、街の灯りは肉眼では遠い。庭にある灯りはそれほど多くなく、門から邸宅まで誘導するための道灯りのみだ。
龍明はその景色を見ながら、机に置かれたグラスからブランデーを口に一口含む。ブランデーは常温のストレート。その香りを楽しみながら葉巻に火を点ける。
(初めは親父の真似事だったが、この嗜みも当たり前になったな。)
ふとそんな事を思い笑みを浮かべる。この時代になっても、受け継いだ変わらぬ行動に対して。
葉巻の煙を口に含み吐き出したところで、部屋のドアがノックされる。
(来たか・・・)
「入れ。」
龍明は言うと、窓枠の淵に腰を乗せ、ドアの方に身体を向ける。
「何用でしょう、お父様。」
促され入って来た綺迦が、ドアを閉めると口を開いた。
「分かっているだろう。」
「はい。」
何のために呼ばれたのか問うた綺迦だったが、龍明に呼ばれる理由など知れていた事だった。
「予定通り綾慈(りょうじ)は私の配下として参画する。何れは私の後を継ぐことになるだろう。その時の話しは覚えているな。」
「はい。」
「ならいい。」
龍明は頷くと、葉巻を銜えて吸い込むと上方に向かい紫煙を吐き出す。
「お前の我儘は聞いてやった。今後の身の振りの予定も変わらない。」
「はい。」
綺迦は分かっていた事だと思っても、龍明からそらした目は何処か虚ろだった。それは鳳隆院という家に生を受けた事に対しての、諦めの様に。
「5月には向こうに行ってもらう。支店には雑談ベースで軽く伝えてはいる。環境に慣れつつ、仕事の内容もある程度把握してもらうつもりだ。」
「はい。」
「まぁ、支店に関しては綾慈も通った道だ。支店長も良く知っているからさして困らんだろう。」
「はい。」
「大学の願書も既に提出してある。合否に関しては年が明けてからになるが、問題ないだろう。9月からは並行して大学にも行ってもらうが、大学を優先して支店の方は時間のある時で構わない。」
「はい。」
龍明の話しに、綺迦は人形のようにその言葉だけを繰り返す。
「それで、1年だけ普通の高校に通いたいという戯れは、何か糧になるものは得られたのか?」
「はい。」
綺迦の返事に、それまで淡々と話していた龍明も顔を顰めた。だが、直ぐに表情を戻すと、先ほどまでのように身体を窓の方に向けた。
「それならいい。年明けには準備も含め、いろいろある。今のように時間を作れなくなっていく。それを言いたかっただけだ。」
「承知しております。」
「話しは以上だ。」
「はい、失礼します。」
綺迦は一礼すると、龍明の私室を後にした。龍明は閉められたドアに目を向けると溜息を吐き、机からブランデーを手に取ると口に含んだ。
自室に戻った綺迦は、早速MHDを装着してDEWSを始めようとする。が、直ぐに寝台から起き上がると携帯を手に取った。認証を解除してから、会話アプリを起動する。
「ログイン出来ませんわ。」
-少し前-
「おいおい、街の中まで魔獣が入り込んでじゃねぇか。これもELINEAの仕業か?」
「夢那に聞かないと分からないけど、他に考えられないわね。」
隣に居たマリアに聞いてみるが、返ってきた答えははっきりとしない。だが、街の中に魔獣が入る事はないため、十中八九ELINEAが何かしらしたんだろう。
ってか、まさかログインしていきなりこの状況は無いだろ。下手をすればログインと同時に強制ログアウトさせられ、身体に何か影響が出る可能性だってある。
「って、来たばっかなのに緊急メンテかよ!」
「今日は何も出来そうにないわね。」
街の状況を見ていると、目の前に緊急メンテナンスの告知が流れる。赤字でいきなり表示されるため心臓に悪い。
結構吃驚するんだよな。
「しょうがねぇ、出るか。」
そうマリアに向かって言ったが、当の本人は返事をするでもなく凄い勢いで走り出した。
「おい・・・」
マリアの進行方向を見ると、プレイヤーが尻餅をついたような状態になっていた。その前には高速移動した魔獣が現れる。
「くそ!」
間に合わないだろうが、俺も慌ててそっちに向かって走り出す。
倒れたプレイヤーの前に人型で虎の魔獣が、腕を振り上げ鋭い爪を振り下ろした。間一髪間に合ったマリアが小太刀で受け、もう片方の手で攻撃する。
「早くログアウトして。」
魔獣が怯んだ隙に、マリアがプレイヤーに言うと、こくこくと頷いてシステムデバイスを慌てて開いた。そのあたりで追いついた俺は、魔獣に追撃を行う。
「マリアが気付くのが早くて良かったよ。」
「私も、気付けて良かった。それより、私たちも早くログアウトしよ。」
「あぁ。」
魔獣を牽制しつつ、俺とマリアはなんとかログアウトした。
俺やマリアはもうチートキャラなんで、街中でも魔獣に対処できるが、一般プレイヤーは何も出来ないんだよな。街中でプレイヤーが襲われる光景なんて今まで見た事なんてない、だから目の当たりにしてしまうと、DEWS自体が混沌としてきたような気さえした。
そう思うと、今後DEWSの行先が不安になる。何も解決しないまま、終わったりしないだろうなと。
部屋に戻って少しすると、携帯がメッセージを受信した。早速綺迦からのメッセージだったが、
[ログイン出来ませんわ。]
まぁ、緊急メンテだしな。というか、ログインしなくて正解だよ。
[緊急メンテに入ったからな。いつ終わるか不明。]
[それじゃ、仕方がありませんわね。]
[ゲーム内の状況が悪化したのが原因だと思うんだが、その辺は明日話すよ。]
[分かりましたわ。]
連絡先を交換したはいいが、何を話していいか分からない。
[じゃぁまた明日。おやすみ。]
だから、終わらせてしまった。
[お・・・おやすみ・・・]
どんな顔をして送って来たのかは分からないが、反応があった事に少し嬉しくなった。昼間、頑張って言ってみて良かったなと、今になって思えてきた。
-DEWS内 メルフェア付近-
「もう少し・・・もう少しで、この世界は私のために・・・」
街道から少し外れた草原で、ELINEAは空に手を伸ばして呟いた。その表情は、この世界に戻って来て以来、初めて見せる穏やかなものだった。
管理室のドアが開くと、禍月は眠そうな顔を入って来た人物に向ける。眠そうな顔ではあるが、送られる視線は冷めていた。
「朝帰りどころか昼帰りとは、随分と楽しそうだなー。」
多少なりとも普段の疲れ切った表情よりも、ましになっている美馬津の顔を見て、禍月は恨めしそうに言った。
「いや、色々と事情があってね。」
美馬津はそんな禍月の態度を気にした風もなく答える。
「本社に戻りたければいつでも戻っていいぞー。」
美馬津の態度が何となく気に入らない禍月は、嫌味を言ってみるが本人に響いてる感じはしなかった。その態度を見ると、不満そうに銜えたプレッツェルを上下に揺らす。
「まぁそう言うなって。良いものを手に入れたんだ。」
美馬津は鞄を漁りながら言い、目的のものを見つけると禍月に向かって見せる。親指と人差し指で摘まんだそれは、記憶媒体だと禍月にもすぐに分かった。
「何が入ってるんだー?」
一応聞いてやると言った態度で禍月が聞くと、美馬津は得意げに口の端を少し上げた。その態度に禍月は、銜えていたプレッツェルを齧り折る。
「そんな顔をするなって、もったいぶって悪かったよ。実はELINEAの元データを手に入れたんだ。」
「なに!?」
「あ・・・」
美馬津が言った瞬間、禍月は驚きに片目を大きくすると同時に椅子から飛び起きて、美馬津の手から記憶媒体を奪った。
「水守か・・・」
早速データを確認し始める禍月を見ながら、八鍬が呟くように言う。
「えぇ。ELINEA対策として禍月に頑張ってもらってますが、僕に出来る事はそれくらいしかないなと思って。」
「美馬津同様、私も何か出来るわけではない。」
美馬津も禍月に目を向けて言うと、八鍬も同意した。
「いやぁ、普段の監視だけでも十分役に立ってるぞー。」
集中しているようだが、二人の会話が聞こえた禍月は振り返らずに言う。その言葉に、八鍬と美馬津は顔を見合わせて苦笑した。禍月に関して言えば、発言に裏表があるタイプではなく、言いたい事ははっきり言う。だから、二人に気を遣ったわけではなく、言葉通りなのだろうと思えば。
「それで、データを貰うだけならばこんな時間になる必要はないだろう?」
禍月が自分の作業に集中しているため、話し掛けずにおくとして、美馬津の事をもう少し突いてやろうと、八鍬は多少意地の悪い顔をして言った。
「あ、まぁその、そうなんですが・・・」
まさか八鍬からも言われるとは思わなかった美馬津は、顔を逸らして口ごもる。
「まぁいい。プライベートに関してはどうでも・・・美馬津、これはなんだ?」
八鍬が突然険しい表情をしてディスプレイを注視する。美馬津もその雰囲気に、気持ちを切り替えて同じ画面に目をやった。
「これ、まずくないですか?」
スニエフの街を表示しているディスプレイの中では、魔獣がプレイヤーを追い回していた。当然、街中で武器を使えないプレイヤーは逃げ惑うしかない。
突然の事だったのか、ログアウトするという行為もせずに逃げ回るプレイヤーは、高速で動いた後の魔獣に攻撃され、その姿は消失していく。
「ゲームどころか、会社が傾く・・・では済みそうにないな。」
「まさか、ここまでするとは・・・」
美馬津も険しい表情をしながら、その光景を見つめた。八鍬の言う通り、目の前で襲われているプレイヤーが、現実での肉体に影響が出ているのであればと思うと。
「どうやら時間はなさそうだなー。」
同じく自席でディスプレイに目をやっていた禍月が、その光景を見ながら呟いた。
「危険を冒してまでログインする阿呆はいるだろうが、直ぐにでも拡散されログインするユーザーは減るだろうなー。」
既に監視しているディスプレイからは目を離し、自分の作業に戻って言う禍月を、八鍬と美馬津は複雑な思いで見た。この状況を何とか出来るとしたら、禍月だろうという期待と、何も出来ない自分の歯痒さとで。
「そうなると、必然的に狙われる確率は上がるよなー。」
「これ以上、彼らに危険を強いる事は難しいかもな。」
腕を組んで唸るように言う八鍬に、禍月は手を止めて振り向いた。
「温い事を言うなー。今放置すれば、お姫様はどうなる?進化するELINEAがいつまでも放置すると思っているのか?そうすれば、いよいよ本当に人殺しだなー。」
「・・・」
禍月の言葉に、八鍬も美馬津も視線を落として何も言わなかった。二人がどんな思いなのか禍月には興味も無く、言うだけ言って二人の仕種を見る前に、自分の作業に戻っていた。
外はもう寒くて、屋上には居られないから、俺は学内の休憩スペースに来ていた。学食というものは無いが、小さな売店と、弁当やらパンの販売業者が並んで食糧を提供している。
俺は既にパンを買い終わっているが、それでも各店舗の前には未だに列が出来ていた。
その光景を見ているわけじゃないが、何と無しに周囲を見たりしていると、たまにこちらを気にするような視線に出くわす。それは、俺を気にしているのではなく、俺の正面に座っているお嬢様が気になっているのだろう。
若しくは、その前に広げられている重箱に入った料理にか。
「今日も行くか?」
「当たり前ですわ。」
ELINEAの攻撃を食らわなくなったとは言え、不安は拭い去れない。もしかしたら、と思ってしまうから。そんな中、ログインする意味はあるのだろうかと。
だが、聞いておいてなんだが、俺も止めるつもりはない。今は何も出来なくとも、中島を元に戻す方法、以前のように普通にプレイする方法、それはゲームの中にあるんじゃないかという思いは変わってないからだ。
「怖気付きましたの?」
「まさか。」
綺迦の問いに笑って答える。
「ただ、不安はどうしても出て来るもんだろ。」
それも怖気付くに含まれるのかどうか不明だが、人間はそんな器用じゃない気がする。だから、在っても当然なんだと、俺は思った。
「在ったとしても、自分がどうするかですわ。」
「あぁ。」
綺迦の言う通りだと思い頷く。いくら考えたところで答えが出るわけでもなく、今は出来る事をやるしかない。
どちらかと言えば、止めてしまった方が不安だ。綺迦や中島に、どんな顔を向ければいいのか分からない。それは家の中でも一緒だろう。ヒナの態度も変わりそうだが、それ以上に親父の顔を見れるかどうか。
そんな事を考えてしまう。
「なぁ綺迦。」
「なんですの?」
ジャーマンを食い終え、焼きそばパンを齧ってから綺迦に話し掛ける。当の本人はジャーマンに齧りつこうとしていたのを中断され、若干目を細めて返事をした。
タイミングが悪くて悪かったよ。
「連絡先・・・交換しないか?」
今思い立ったわけじゃない。前から考えていたんだが、なかなか言い出せずにいただけだ。友達なら話しの流れで聞く事は可能だが、異性に対して言ったのは初めてだ。だから、どう切り出していいのかも良く分からない。
「何故私が、晶社と?」
令嬢である自分が、何故一般人如きと交換しなければならないのか。
そんな風に聞こえる。
綺迦自身はそんな事を思っているか、思っていないのか不明だが、やはりそこに壁は存在したのか?ゲームを一緒にプレイしているし、こうして昼飯も一緒に食べている。どこかで、そんな壁は存在しないんじゃないかと思っていた。
それは、俺の気のせいだったのか・・・
「まぁ、いいですわ。」
言った事を後悔し始めたところで、綺迦が言った。落としていた視線を上げると、顔を逸らしている綺迦が目に入る。その表情は別に不満そうには見えなかったのは、俺の気のせいだろうか。
そんな事を思っている間に、綺迦は上着のポケットから携帯を取り出しテーブルの上に乗せた。
いや、乗せただけじゃどうにもならねぇよ。
「アプリ開いてくれよ。」
乗せたはいいが、こっちを見ようとしない綺迦に言うと、向き直って首を傾げる。あれか、お嬢様はそんなものは使わないから知らないってやつか。
「会話用のアプリ、入れてないのか?」
「入れてませんわ。」
やっぱりそうか。
綺迦はそう言うと、視線を下に落とした。
「家からの連絡用で持たされているだけですわ。好きに使っていいと言われていますが、他に使い道がありませんわ。」
余計な事を言ったのかもしれない。
綺迦の態度をみてそんな事を思ったが、本人がどう捉えているかは分からない。だが良いと言って携帯を出したのだから、望んでいないわけじゃないのだろう。
「じゃ、まずアプリをインストールするところからだな。」
「任せますわ。」
いや、自分でやれよ・・・
と、突っ込みたかったが、ただ持っているだけの状態なら、知らない可能性の方が高いか。しかし、本当に家からの連絡だけで、それ以外触らないのだろうか。
俺なんかゲームしているのもあるが、暇さえあれば手にしてしまうんだが。
仕方が無いので綺迦の携帯を手にして、デスクトップを表示しようとするが、電源ボタンを押しても反応しない。
「電源、切ってるのか?」
「ち・・・違いますわ。私に向けなさい。」
思い出したように否定すると、綺迦は少し顔を逸らして言った。普段使わないから、操作方法もろくに知らないんじゃないのか?
まぁ、それはいいとして言われたように携帯の画面を向ける。
「開きなさい。」
はっ?
言って聞くようなもんじゃないだろ。そう思って携帯の画面を見ると、認証画面が起動していた。
「私の決められた言葉と声紋じゃないと、起動しないのですわ。」
・・・セキュリティ固いな。
しかも命令。
「もう一度。」
綺迦が促すので、もう一度携帯を綺迦に向ける。そこへ顔を近づけて、直ぐに離した。
「起動しましたわ。」
携帯の画面を見ると、確かにデスクトップが表示されていた。
「何なんだ?」
「虹彩認証ですわ。」
確かに、携帯にはそんな機能が備わってはいるが、実際に使ってる奴を初めて見たよ。言われるまでそんな機能がある事すら忘れていた。
俺はアプリ名を携帯に向かって言い、続けてインストールと言う。後は携帯の方で勝手に探しに行ってインストールしてくれので待つだけだ。それほど重いアプリでもないので、インストール自体も直ぐに終わるだろう。
綺迦の前に携帯を戻すと、焼きそばパンの続きに齧りつく。
「しかし、おっさんの材料集めも飽きたな・・・」
まだそんなにやっているわけじゃないが、一度やったクエストであり、その素材が必要ないというところが、飽きる原因だろうな。しかもおっさんの場合、武器を全部作ろうとするから何度も同じクエストに付き合わされる。
今まで一人でやってきたんだから、進める方を優先してもいいよな。
「えぇ。戦闘に噛みごたえがありませんわ。」
まぁ、俺はそこを求めてはいないが。
「やはり、そろそろイヴェルカではなくて?」
それも求めてない。
「綺迦は太刀を作りたいだけだろ。」
「太刀を作る以外に何がありますの?」
うん、そうだった。
そういうヤツだったよ。
「お、インストール終わったぞ。」
綺迦の前に置いた携帯を見て言う。後は連絡先に俺の番号を入れれば、って結局全部俺がやるのかよ。
「終わったぞ。もう使えるから、試しにメッセージ送ってくれよ。」
アプリの会話画面を表示したまま綺迦の方に携帯を置く。戸惑ったように携帯の画面を見ると、恥ずかしそうに顔を逸らした。
いや、メッセージ入れるだけだろ・・・
「い、今じゃなくても、何時でも出来ますわ。」
おっけー。
そんな事だろうと思ったよ。
「ほら。」
俺は自分の携帯画面を綺迦に見せる。そこにはさっき綺迦が言った[い、今じゃなくても、何時でも出来ますわ。]というメッセージが表示されている。
「ど、どういう事ですの?」
「あぁ、音声入力にしておいた。」
驚きと不服が混じったような態度で聞いて来るので、答えたら睨まれた。まぁ、勝手にやったのは悪かったけどさ。
「まぁいいですわ。それより、何故私の連絡先を?」
俺は前から考えていたけど、綺迦にとっては今初めて聞いたんだから、そう思うよな。
「何かあった時のためにというか、ほら、DEWS内も危険だしさ。」
という理由はおまけみたいなものなんだが。その話しに綺迦は俺を真っすぐ見据えて来る。言い訳染みている、と思われているんだろうか。
「いや、本当は単に綺迦と連絡先を交換したかっただけだ。」
別に隠すつもりがあったわけじゃない。単に、そう言うのが恥ずかしいだけだった。
「そう。気が向いたら連絡してあげますわ。」
俺の言葉に目を逸らしてそう言った綺迦の顔は、少しだけだが微笑んでいるように見えた。
-都内某所 鳳隆院家-
現鳳隆院グループの頂点に立つのはこの家の当主でもある龍明(りゅうめい)となっている。一代で財を築いた父親の宗源(そうげん)は既に隠居しており、相談役という肩書で別の地に居を構えていた。表舞台に出る事も殆どなく、相談役としての役目であれば場所を選ばないため、本人の希望もあって都心から離れているのが現状であり、前線から追いやられたわけではない。
龍明は私室から夜の街に目を向けていた。と言っても、遠目に建物の灯りが見えるだけなのだが。
邸宅から門までは広い庭を挟むため、街の灯りは肉眼では遠い。庭にある灯りはそれほど多くなく、門から邸宅まで誘導するための道灯りのみだ。
龍明はその景色を見ながら、机に置かれたグラスからブランデーを口に一口含む。ブランデーは常温のストレート。その香りを楽しみながら葉巻に火を点ける。
(初めは親父の真似事だったが、この嗜みも当たり前になったな。)
ふとそんな事を思い笑みを浮かべる。この時代になっても、受け継いだ変わらぬ行動に対して。
葉巻の煙を口に含み吐き出したところで、部屋のドアがノックされる。
(来たか・・・)
「入れ。」
龍明は言うと、窓枠の淵に腰を乗せ、ドアの方に身体を向ける。
「何用でしょう、お父様。」
促され入って来た綺迦が、ドアを閉めると口を開いた。
「分かっているだろう。」
「はい。」
何のために呼ばれたのか問うた綺迦だったが、龍明に呼ばれる理由など知れていた事だった。
「予定通り綾慈(りょうじ)は私の配下として参画する。何れは私の後を継ぐことになるだろう。その時の話しは覚えているな。」
「はい。」
「ならいい。」
龍明は頷くと、葉巻を銜えて吸い込むと上方に向かい紫煙を吐き出す。
「お前の我儘は聞いてやった。今後の身の振りの予定も変わらない。」
「はい。」
綺迦は分かっていた事だと思っても、龍明からそらした目は何処か虚ろだった。それは鳳隆院という家に生を受けた事に対しての、諦めの様に。
「5月には向こうに行ってもらう。支店には雑談ベースで軽く伝えてはいる。環境に慣れつつ、仕事の内容もある程度把握してもらうつもりだ。」
「はい。」
「まぁ、支店に関しては綾慈も通った道だ。支店長も良く知っているからさして困らんだろう。」
「はい。」
「大学の願書も既に提出してある。合否に関しては年が明けてからになるが、問題ないだろう。9月からは並行して大学にも行ってもらうが、大学を優先して支店の方は時間のある時で構わない。」
「はい。」
龍明の話しに、綺迦は人形のようにその言葉だけを繰り返す。
「それで、1年だけ普通の高校に通いたいという戯れは、何か糧になるものは得られたのか?」
「はい。」
綺迦の返事に、それまで淡々と話していた龍明も顔を顰めた。だが、直ぐに表情を戻すと、先ほどまでのように身体を窓の方に向けた。
「それならいい。年明けには準備も含め、いろいろある。今のように時間を作れなくなっていく。それを言いたかっただけだ。」
「承知しております。」
「話しは以上だ。」
「はい、失礼します。」
綺迦は一礼すると、龍明の私室を後にした。龍明は閉められたドアに目を向けると溜息を吐き、机からブランデーを手に取ると口に含んだ。
自室に戻った綺迦は、早速MHDを装着してDEWSを始めようとする。が、直ぐに寝台から起き上がると携帯を手に取った。認証を解除してから、会話アプリを起動する。
「ログイン出来ませんわ。」
-少し前-
「おいおい、街の中まで魔獣が入り込んでじゃねぇか。これもELINEAの仕業か?」
「夢那に聞かないと分からないけど、他に考えられないわね。」
隣に居たマリアに聞いてみるが、返ってきた答えははっきりとしない。だが、街の中に魔獣が入る事はないため、十中八九ELINEAが何かしらしたんだろう。
ってか、まさかログインしていきなりこの状況は無いだろ。下手をすればログインと同時に強制ログアウトさせられ、身体に何か影響が出る可能性だってある。
「って、来たばっかなのに緊急メンテかよ!」
「今日は何も出来そうにないわね。」
街の状況を見ていると、目の前に緊急メンテナンスの告知が流れる。赤字でいきなり表示されるため心臓に悪い。
結構吃驚するんだよな。
「しょうがねぇ、出るか。」
そうマリアに向かって言ったが、当の本人は返事をするでもなく凄い勢いで走り出した。
「おい・・・」
マリアの進行方向を見ると、プレイヤーが尻餅をついたような状態になっていた。その前には高速移動した魔獣が現れる。
「くそ!」
間に合わないだろうが、俺も慌ててそっちに向かって走り出す。
倒れたプレイヤーの前に人型で虎の魔獣が、腕を振り上げ鋭い爪を振り下ろした。間一髪間に合ったマリアが小太刀で受け、もう片方の手で攻撃する。
「早くログアウトして。」
魔獣が怯んだ隙に、マリアがプレイヤーに言うと、こくこくと頷いてシステムデバイスを慌てて開いた。そのあたりで追いついた俺は、魔獣に追撃を行う。
「マリアが気付くのが早くて良かったよ。」
「私も、気付けて良かった。それより、私たちも早くログアウトしよ。」
「あぁ。」
魔獣を牽制しつつ、俺とマリアはなんとかログアウトした。
俺やマリアはもうチートキャラなんで、街中でも魔獣に対処できるが、一般プレイヤーは何も出来ないんだよな。街中でプレイヤーが襲われる光景なんて今まで見た事なんてない、だから目の当たりにしてしまうと、DEWS自体が混沌としてきたような気さえした。
そう思うと、今後DEWSの行先が不安になる。何も解決しないまま、終わったりしないだろうなと。
部屋に戻って少しすると、携帯がメッセージを受信した。早速綺迦からのメッセージだったが、
[ログイン出来ませんわ。]
まぁ、緊急メンテだしな。というか、ログインしなくて正解だよ。
[緊急メンテに入ったからな。いつ終わるか不明。]
[それじゃ、仕方がありませんわね。]
[ゲーム内の状況が悪化したのが原因だと思うんだが、その辺は明日話すよ。]
[分かりましたわ。]
連絡先を交換したはいいが、何を話していいか分からない。
[じゃぁまた明日。おやすみ。]
だから、終わらせてしまった。
[お・・・おやすみ・・・]
どんな顔をして送って来たのかは分からないが、反応があった事に少し嬉しくなった。昼間、頑張って言ってみて良かったなと、今になって思えてきた。
-DEWS内 メルフェア付近-
「もう少し・・・もう少しで、この世界は私のために・・・」
街道から少し外れた草原で、ELINEAは空に手を伸ばして呟いた。その表情は、この世界に戻って来て以来、初めて見せる穏やかなものだった。
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