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82.何故そこまで敵にしたい、仲間
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「何故来たの?」
「呼んだのは水守だろ?」
カウンターに座り向き合うでもなく独り言の様に言った水守に対し、美馬津も同様に見もせずに疑問を返す。その視線は猪口に注がれた日本酒に落としていた。
「答える気も無いくせにって意味よ。」
「それこそ、呼ばなきゃいいだろ。」
暫しの沈黙の後、水守はビールを呷ってから面白く無さそうに言うと、美馬津も表情こそ変えないが不満気に返す。
「言ってる事、おかしいわよ?」
「お互い様だろ。」
頬を膨らませ気味に言った水守の一言に、美馬津は苦笑して言った。こんな不毛な会話をしに来たわけではないのだが、その不毛な会話が何処か可笑しいと思えて。
「可能性。」
「在ると思うか?」
「在るか無いかじゃないわ。私の期待。」
水守はそこで初めて美馬津に顔を向けると、空になったグラスを揺らしながら弱々しく微笑んで見せた。
水守の仕種を見た店主が、新しいビールのグラスを無言でカウンターに置くと、空きグラスを回収していった。美馬津は店主が去ると、水守に呆れた顔を向ける。
「ELINEAの事だろう?」
「分かってるじゃない。」
「今本社は大変な事になってるんだろうね。」
「他人事みたいに言わないでよ。と言っても、私はこの件が片付いたら出ていくしかないんだけどね。」
美馬津はそれを聞くと、猪口の中身を飲み干して新しく注いだ。辞める辞めないはさておき、ELINEAの計画が頓挫した時点で、水守はどのみち進退を求められる立場ではあった。ただ、それを悪化させたのは間違いなく自分だと美馬津は分かっている。
「関係ない、とは言わないがそれ以上は言えないな。」
それでも、内容を話してしまえば渦中に引き摺り込んでしまう事だけは避けたかった。自分の責任だと謝りはしたかったが、死という危険を付き纏わせたくは無かったからだ。
「肝心な事は言わないのね。」
「肝心だから言えないんだ。」
美馬津がそう言い返すと、水守は寂しそうな顔をしながらビールを呷る。
「危険でもいいのよ。私は・・・知りたい。」
「・・・」
小さな声で言った水守の言葉に、美馬津は何も答えず苦い顔をした。
「あきが気にしているのは、そこじゃないの?」
「分かってるなら、それ以上は聞かないでくれよ。」
「分かってるなら?あきは私の気持ちを分かってないくせに。」
「そんな事は・・・」
真っ直ぐに向けられる水守の視線から、美馬津は顔を背けて猪口の日本酒を流し込むと、新たに注いだ。
「そんなに危険な事なの?」
口を噤む美馬津に、水守は静かに聞いたが、美馬津は無言のまま答えようとはしない。
「命までは関わらない、わよね?」
流石にそこまでは思いながらも続けて聞いた水守に、美馬津はゆっくりと首を横に振った。
「何で、そんな危険な事を・・・」
「下手をすれば、だけどね。だが、もう後には引けないんだ。」
「どうしても、言えないの?」
少しの沈黙を破って、水守は諦め切れずにもう一度聞く。だが、美馬津はゆっくりと頷くだけだった。
「それで、呼んだ理由は?」
「ELINEAを何とかしたいのよ。何か知っているんじゃないか、何とかする方法を知っているんじゃないか、そう思ったのよ。」
現状に起因する立場でありながら、まだ解決に至れていない事に美馬津は苦慮する。知っているには知っているが、その方法に関しては禍月任せだ。
(いや、出来る事はあるな・・・)
美馬津はそう思うと水守の方へ顔を向ける。
「まだ明確ではないんだけどね・・・」
「あるの!?方法。」
歯切れの悪い美馬津など気にせず、水守はその話しに食いついた。
「いや、あるとは言い切れないんだが・・・」
「こっちは八方塞がりなのよ、確定でないにしろその方法を教えてよ。」
「それは、出来ない。」
身体を前のめりに近付けてくる水守に、美馬津は顔を逸らした。
「そればっかりね。」
「仕方がないだろう。ただ、こっちもELINEAは何とかしないと問題が片付かないんだ。だから、ELINEAに関しては任せておいてくれないか?」
「へぇ、ELINEAが問題になってるのね。」
水守は口の端を少し上げて言う。その笑みは美馬津が口にした情報に対し、多少なりとも情報が垣間見えたからだったのだが。
ただ、ELINEAが問題になっているという情報だけでは、美馬津が何をしているのか皆目見当も付かない。水守にとって内容云々よりも、単に美馬津の口から片鱗が零れた事が楽しかったのかもしれない。
「な、なんだよ・・・」
水守の態度に美馬津は戸惑う。
「別に。そうなんだなって思っただけよ。」
「そうだ、それよりELINEAの事で頼みたい事があるんだ。」
先ほども思ったが、美馬津は自分にとって出来る事をしようと思って話しを切り出す。実際の対策については禍月がやるにしろ、それを助長出来るのは自分だけだろうと思って。
「何も教えてくれないくせに?」
「もうそれは勘弁してくれ。ただ、ELINEAをどうにかするために必要な事なんだ。」
水守は直ぐに答えずに、グラスのビールを飲み干すと店主に向かって空きグラスを振って見せる。
「みっちゃん、そろそろ日本酒にするかい?」
「そうね。今日はあきも居るしそうしようかな。」
「あいよ。」
「おい・・・」
快活に返事をする店主を横目に、美馬津は冷めた視線を水守に向ける。
「いいでしょ。で、何をすればいいの?」
水守は猪口に日本酒を注ぎながら、美馬津の頼みとは何かを聞いた。
「対策の検証をしているんだが、それなりの結果を確認するためにどうしてもELINEAと同等のデータが欲しい。まぁつまり、ELINEAのデータが欲しいんだ。」
「どうしよっかなぁ。」
猪口の中身を呷った水守は、空になった猪口をぶらぶらさせながら悪戯っぽい笑みを美馬津に向ける。
「その方がお互いのためだろう。」
「私はどっちにしろ、会社には居られないんだけど?」
「そう言われると・・・」
笑みを浮かべたまま首を傾げて言う水守から、美馬津は顔を背けて不貞腐れたように言う。それを言われてしまっては、もう何も言えないじゃないかと。
「ふふ、冗談。」
「・・・」
本当に冗談かどうか、美馬津にはその判断は出来なかった。現に、ELINEAの件で社を辞する事になった水守がどう感じているのか、今の酔った状態なら尚更だった。
「いいわよ、但し・・・」
新しく猪口に注いだ日本を一口飲むと、水守は美馬津の顔を見る。その表情は先ほどまでの悪戯っぽさは消えていた。
「朝まで付き合いなさい。」
「いや、僕はまだ仕事が・・・」
「じゃ、渡さない。」
「そういう問題じゃないだろう。」
水守の我儘で左右する現状ではない。既にゲームが正常に機能していない現状なのだから。その一因が自分にあったとしてもと思って言う。
むしろ、それがあるからこそ美馬津は、尚更その思いが強かったのかもしれない。
「今の私にはそれが全てなのよ。」
切なそうな顔をして言う水守にとっての現状は、そうなのだろうと思うと美馬津は言葉に詰まる。だからと言って、放置できるものでもないというのは分かっているが。
「そもそも酔って仕事も何もないでしょう?」
「それは、大丈夫だけど、今度じゃダメなのか?」
「ダメ。」
目を細めて不貞腐れた様に言う水守に、美馬津は無言で溜息を吐いた。
「分かったよ・・・」
「そう。じゃぁこの後は何処に行こうかなぁ。」
「お手柔らかに頼むよ。」
嬉しそうに言う水守を見ると、美馬津は懐かしいような思いが込み上げた事に、苦笑しながら言った。
「敵ですわ・・・」
DEWSにログインして、メンバーも揃いつつある頃、アリシアが合流して来て開口一番にそう言った。
その表情は険しく、既にレイピアの柄に手を掛けて戦闘態勢に移行している。一瞬ELINEAでも現れたのかと思って周囲を見渡すが、現れたようには見えなかった。であれば、この街中の何処に敵なんか居るのか?
疑問に思いながらアリシアの睨む視線の先を追っていく。
・・・確かに敵かもしれん。
視線の先に居る来栖を見てふと思ったが、とりあえずアリシアには説明しておこうか。
「どう見ても胡散臭いのは分かるがな、アリシア。」
「おいコラ!」
来栖の抗議は無視する事にして、アリシアに話そうとするが、その視線は来栖に向けられたまま警戒は解いていない。レイピアの柄に掛けた手もそうだ。
「手短にお願いしますわ。」
どう見てもプレイヤーなんだが、何故ここまで過剰に反応した・・・
「アレな、一応仲間だ。」
「アレとか一応とか、もう少し言葉を選べねぇのか。」
うるせぇ。
「やはり敵ですのね。」
言ってねぇ!
聞けよ。
「・・・今、仲間と聞こえたような気がしますわ。わたくしを騙そうという魂胆ですの?」
素直に受け取れよ。
そんなに来栖を敵にしたいのか。
「真面目な話し、ELINEA対策にタッキーの抜けた穴を埋めるために居るんだ。マリアの知り合いでもあるし、怪しい奴じゃないぞ。」
と、説明しているのに何故か悔しそうな顔をするアリシア。
どんだけ・・・
ん、そう言えば今気付いたが、来栖はマリアの知り合いなんだよな。って事は、アリシアが何なのか知っている可能性もあるな。
とは言え、今はマリアも居るから聞くに聞けないか。機会があったら聞いてみるか。
「ってか、そいつも仲間なのか?」
?
アリシアの事を知らない?
「ん、あぁ。そうだ。」
って事は、聞く聞かない以前の問題だな。てっきり知っているものかと思ったよ。
「人数制限超えてるじゃねぇか。」
そう言えば、そんなのもあったな。アリシアの存在が当たり前すぎて考えすらしなかったよ。
「問題ない。アリシアはパーティに加わるわけじゃないから。」
「どういう事だ?」
と聞かれてもなぁ。そんな事を今まで聞かれた事も無いし、考えた事も無い。そういうものだと受け入れてしまっているから。
「俺にも分かんね。」
マリアに聞けば何か分かるかも知れないが、答えはしないだろう。
「なんだそりゃ。まぁいいか、戦力としては使えるんだ・・・」
来栖がそう言った瞬間、喉元にレイピアの剣先が突き付けられる。アリシアが鋭い眼光とともに抜剣したようだが、気が付かなかった。
「誰に向かって言っておりますの?」
口を噤んだ来栖が、困ったように俺の方を見た。仕方が無い。
「その辺にしとけ、来栖は事情を知らないんだ。」
不満を隠そうともせずにアリシアがレイピアを引くと、俺は来栖の方に向き直る。
「アリシアは十分過ぎるほどの戦力になっている。パーティに加わらなくても、何故かダメージが加算される。」
「まじか、確かにそりゃ楽になるな。」
納得してくれたのはいいが、逆に俺は納得出来ない部分がある。
自分で言っていて違和感を感じた。これに関しても考えた事は無いが、口にするとおかしな事を言っていると感じてしまう。
パーティを組む理由は戦闘が楽になるからだ。単純に一人で攻撃するより六人で攻撃した方が敵のHPを減らせるわけで。
逆に考えればパーティ外のプレイヤーがその戦闘に参加する事は出来ない。同じクエストをやっていたとしても、パーティとしてそれぞれ戦闘しているらしいから重なる事はない。
その前提で考えれば、何故アリシアは俺たちの戦闘に参加出来ているのか?という疑問が出て来る。ダメージや報酬に関してはその延長線上でしかないから後の疑問だろう。
そう考えながら、いつの間にかアリシアを見ていたようだ。気付くと俺に対して首を傾げている。
もしかすると、ユメナあたりが何かをしたのかも知れないが。考えても答えは出ないか。
ほんと、こんな事ばっかりだな。
何も分かりはしない。
「そうとなれば、さくさく俺の材料集めを進めようか。」
調子のいいおっさんだな。
「嫌ですわ。」
「・・・」
即答したアリシアの言葉に、来栖はなんとも言えない表情で口を開けたまま硬直した。まさか断られるとは思わなかったのだろう。
俺も思ってなかったが。
アリシア的に来栖が気に入らないのか、受け入れられないのか、その辺はよく分からないが、今後の事も考えれば許容してもらうしかない。
「来栖の材料集めはついでだ、ELINEAに遭遇が前提のな。だから、そう言わず付き合ってくれないか?」
腑に落ちない顔の来栖は放置して、アリシアに言うと、腕を組んで顔を逸らした。
「仕方がありませんわね。」
本音を言えば面倒だ。なんで俺がこんな事をしなければならないのか。ただゲームをしたいだけなのに。
でも、そう言っていられない状況だってのも分かってるつもりだ。
「お出でなすったか。」
クエストに出発して、1つ目のクエストが終わったところだ。次のクエストの情報を確認し始めた時に、来栖が声を発する。
その視線の先に、全員が目を向けると、ゆっくり近付いて来るELINEAの姿があった。AIとは言うが、白くなった顔の表情は、以前より目付きが鋭くなったように見える。
たが、その鋭さとは別で、憔悴したような顔は、何処か虚ろなようにも感じた。
「わたくしの出番ですわ。」
アリシアがレイピアを抜いてELINEAの方に剣先を向ける。だが、今回はそう簡単にやられはしない。何とか全員ログアウトするまでの時間は稼げるだろう。
「俺が引き付けておく、お前ら先に逃げろ。」
・・・
俺が言おうとしたんだが、ライフルを構えた来栖に先を越された。
まぁ、いいか。逃げろと言われても、どちらかと言えば待っていたんだ。なんのために継続を捨てて今を選んだのか。試しもせずに逃げる事なんて、出来るわけがない。
いや、それは俺だけじゃないか、おそらくこのメンバーにそれを言ったところで聞きはしないだろう。
「いや、逃げるのは改造された自分のキャラがどんなものか、ある程度試してからだ。」
来栖に言って周囲を見ると、予想通りみんな頷いた。
「物好きな奴らだな。」
「おっさんに言われたくない。」
月下が来栖に蹴りを入れるのを見ていたアリシアの顔に、若干苛立ちが見えた。
「何をしていますの?早く逃げなさい!」
レイピアを構えたアリシアが声を大きくした。そう言えば、アリシアには説明がまだだったな。
「田舎娘は黙って見ているといいですわ。」
「辺・・・いえ、何か策があるといいますの?」
何時もの争いが始まるかと思いきや、言うのを止めたアリシアが俺に聞いて来た。
「あぁ。多分、もうタッキーのような状態にはならないと思う。それを確かめたいんだ。」
「分かりましたわ。」
一応、納得はしてくれたようだが、レイピアを構えたままいつでも動ける状態でアリシアは待機した。
その中、アヤカは太刀を構えながらELINEAに歩いていく。
ELINEAは警戒する事もなく、いつも通りこちらにゆっくり歩いて近付いて来ると、右手で片手剣を抜いた。同時に、姿が霞んで消える。
(何処だ?)
と、疑問に思うのも一瞬。アヤカの次に前に出ていた俺の前に現れる。何か気に入らない事でもあるのか、狙うのは俺なんだな。
だが、来るのは分かっているわけだから、避けるくらいならなんとかなる。何度も同じ事をされれば慣れるっての。首を薙いで来たELINEAの攻撃を、態勢を低くして避けながら距離を取る。
避けられた事に動揺するでもなく、ELINEAの姿がまた霞む。
次に現れたのは姫の前だったが、それを読んでいたのか、ELINEAの片手剣をアヤカの太刀が受け止めた。
(おぉ、マジで受けてやがる。)
最初に狙われた俺がやればよかった話しなんだが、ちょっとびびって避けたからな。その辺は黙っておこう。
片手剣を受け止められたELINEAは、一瞬目を見開いた。逆にアヤカは不敵な笑みを浮かべる。
ELINEAの表情の変化は一瞬で、間髪入れずに今度は左手で片手剣をを抜くと、アヤカの胴に向かって横凪を放つ。アヤカは右手を太刀から離すと、その片手剣を掴んで止めた。そこで初めてELINEANの表情が、あからさまに驚きへと変化した。
「な・・・」
「胴ががら空きですわ!」
その隙を逃さず、アヤカがELINEAの胴に前蹴りを叩き込む。ELINEAの身体が宙に浮くと、その顔に向かって光の軌跡が迸った。
ELINEAの顔に光が着弾すると、後方に頭部が弾ける。そのまま凄い勢いで回転して地面に叩き付けられた。そこへアヤカが追い打ちの斬撃を放つが、ELINEAは跳ね起きて俺たちと距離を取った。
「いやぁ、プレイヤーを攻撃しているようで、いい気分じゃねぇな。」
その声に振り向くと、来栖がライフルを構えていた。ELINEAの頭部を直撃したのは、来栖の攻撃なのは分かっているが、ニヤついている表情は言っている事と噛み合ってはいない。
しかし、アヤカもよく手で受け止めようとか思ったな。マリアの話しからすれば、キャラ自体を改造したらしいから、理屈的には可能なんだろう。だが、それを試そうという気にはならない。俺だったら武器で受け止めるのが精々だ。
アヤカはそこまで理解して行動した・・・わけないよな。
「お前たちは・・・何なんだ・・・」
目を吊り上げこちらを睨みながらELINEAは小さく漏らした。
「ただのプレイヤー。」
「おぃ、ただのじゃねぇだろ。」
うるさいおっさんだな。
「嘘だ!そんなわけない。ただのプレイヤーにこんな事は出来ない!」
「私と貴女では覚悟が違いますわ。」
叫ぶELINEAを冷めた目で見据えるアヤカが、太刀の剣先を向けて言う。その覚悟とはなにか、俺にもよく分からないが、タッキーの事を含め現状に立っている事であるならば、それは同感だ。
「そうです。駄々を捏ね、醜くこの世界にしがみ付き醜態を晒す、どこぞの出来損ないとは違います。」
最近気づいた事がある。ヒナの言葉はきついと思っていたが、悠美の方がきついんじゃないかと。きついと言うより、心を折りに来てんじゃないかって気さえする時がある。
「だまれぇっ!!」
ELINEAは怨嗟が渦巻くような表情で叫ぶと、両手の片手剣を握りなおしてまた姿が霞む。姫に言われた事が気に食わないのか、一直線に向かって来たようで、目の前で両手の片手剣を振り被った。
だが姫は動く事もせずに、身体で受け止めると、憐れむように笑みを浮かべた。
「これ以上は止めた方がいいわ!説明したでしょう。」
再度、来栖の銃弾でELINEAの頭が弾けると同時に、マリアが言う。言われてみれば、これ以上関わっても進展はない。現状の確認は出来たのだから。
姫の矢でELINEAが吹き飛ばされるのを見た俺は、メンバーに向かって頷く。これで解散だと。
吹き飛ばされたELINEAを警戒しつつログアウトしようとするが、ELINEAは直ぐに態勢を立て直してまた姿が、霞む前にアリシアの突きに頭部を捉えられ、真横に吹っ飛んでいった。
「早く、今のうちですわ!」
「アリシア、助かったよ。」
そう言った俺に、微笑んで頷くアリシアを見ながら、俺はログアウトした。
「呼んだのは水守だろ?」
カウンターに座り向き合うでもなく独り言の様に言った水守に対し、美馬津も同様に見もせずに疑問を返す。その視線は猪口に注がれた日本酒に落としていた。
「答える気も無いくせにって意味よ。」
「それこそ、呼ばなきゃいいだろ。」
暫しの沈黙の後、水守はビールを呷ってから面白く無さそうに言うと、美馬津も表情こそ変えないが不満気に返す。
「言ってる事、おかしいわよ?」
「お互い様だろ。」
頬を膨らませ気味に言った水守の一言に、美馬津は苦笑して言った。こんな不毛な会話をしに来たわけではないのだが、その不毛な会話が何処か可笑しいと思えて。
「可能性。」
「在ると思うか?」
「在るか無いかじゃないわ。私の期待。」
水守はそこで初めて美馬津に顔を向けると、空になったグラスを揺らしながら弱々しく微笑んで見せた。
水守の仕種を見た店主が、新しいビールのグラスを無言でカウンターに置くと、空きグラスを回収していった。美馬津は店主が去ると、水守に呆れた顔を向ける。
「ELINEAの事だろう?」
「分かってるじゃない。」
「今本社は大変な事になってるんだろうね。」
「他人事みたいに言わないでよ。と言っても、私はこの件が片付いたら出ていくしかないんだけどね。」
美馬津はそれを聞くと、猪口の中身を飲み干して新しく注いだ。辞める辞めないはさておき、ELINEAの計画が頓挫した時点で、水守はどのみち進退を求められる立場ではあった。ただ、それを悪化させたのは間違いなく自分だと美馬津は分かっている。
「関係ない、とは言わないがそれ以上は言えないな。」
それでも、内容を話してしまえば渦中に引き摺り込んでしまう事だけは避けたかった。自分の責任だと謝りはしたかったが、死という危険を付き纏わせたくは無かったからだ。
「肝心な事は言わないのね。」
「肝心だから言えないんだ。」
美馬津がそう言い返すと、水守は寂しそうな顔をしながらビールを呷る。
「危険でもいいのよ。私は・・・知りたい。」
「・・・」
小さな声で言った水守の言葉に、美馬津は何も答えず苦い顔をした。
「あきが気にしているのは、そこじゃないの?」
「分かってるなら、それ以上は聞かないでくれよ。」
「分かってるなら?あきは私の気持ちを分かってないくせに。」
「そんな事は・・・」
真っ直ぐに向けられる水守の視線から、美馬津は顔を背けて猪口の日本酒を流し込むと、新たに注いだ。
「そんなに危険な事なの?」
口を噤む美馬津に、水守は静かに聞いたが、美馬津は無言のまま答えようとはしない。
「命までは関わらない、わよね?」
流石にそこまでは思いながらも続けて聞いた水守に、美馬津はゆっくりと首を横に振った。
「何で、そんな危険な事を・・・」
「下手をすれば、だけどね。だが、もう後には引けないんだ。」
「どうしても、言えないの?」
少しの沈黙を破って、水守は諦め切れずにもう一度聞く。だが、美馬津はゆっくりと頷くだけだった。
「それで、呼んだ理由は?」
「ELINEAを何とかしたいのよ。何か知っているんじゃないか、何とかする方法を知っているんじゃないか、そう思ったのよ。」
現状に起因する立場でありながら、まだ解決に至れていない事に美馬津は苦慮する。知っているには知っているが、その方法に関しては禍月任せだ。
(いや、出来る事はあるな・・・)
美馬津はそう思うと水守の方へ顔を向ける。
「まだ明確ではないんだけどね・・・」
「あるの!?方法。」
歯切れの悪い美馬津など気にせず、水守はその話しに食いついた。
「いや、あるとは言い切れないんだが・・・」
「こっちは八方塞がりなのよ、確定でないにしろその方法を教えてよ。」
「それは、出来ない。」
身体を前のめりに近付けてくる水守に、美馬津は顔を逸らした。
「そればっかりね。」
「仕方がないだろう。ただ、こっちもELINEAは何とかしないと問題が片付かないんだ。だから、ELINEAに関しては任せておいてくれないか?」
「へぇ、ELINEAが問題になってるのね。」
水守は口の端を少し上げて言う。その笑みは美馬津が口にした情報に対し、多少なりとも情報が垣間見えたからだったのだが。
ただ、ELINEAが問題になっているという情報だけでは、美馬津が何をしているのか皆目見当も付かない。水守にとって内容云々よりも、単に美馬津の口から片鱗が零れた事が楽しかったのかもしれない。
「な、なんだよ・・・」
水守の態度に美馬津は戸惑う。
「別に。そうなんだなって思っただけよ。」
「そうだ、それよりELINEAの事で頼みたい事があるんだ。」
先ほども思ったが、美馬津は自分にとって出来る事をしようと思って話しを切り出す。実際の対策については禍月がやるにしろ、それを助長出来るのは自分だけだろうと思って。
「何も教えてくれないくせに?」
「もうそれは勘弁してくれ。ただ、ELINEAをどうにかするために必要な事なんだ。」
水守は直ぐに答えずに、グラスのビールを飲み干すと店主に向かって空きグラスを振って見せる。
「みっちゃん、そろそろ日本酒にするかい?」
「そうね。今日はあきも居るしそうしようかな。」
「あいよ。」
「おい・・・」
快活に返事をする店主を横目に、美馬津は冷めた視線を水守に向ける。
「いいでしょ。で、何をすればいいの?」
水守は猪口に日本酒を注ぎながら、美馬津の頼みとは何かを聞いた。
「対策の検証をしているんだが、それなりの結果を確認するためにどうしてもELINEAと同等のデータが欲しい。まぁつまり、ELINEAのデータが欲しいんだ。」
「どうしよっかなぁ。」
猪口の中身を呷った水守は、空になった猪口をぶらぶらさせながら悪戯っぽい笑みを美馬津に向ける。
「その方がお互いのためだろう。」
「私はどっちにしろ、会社には居られないんだけど?」
「そう言われると・・・」
笑みを浮かべたまま首を傾げて言う水守から、美馬津は顔を背けて不貞腐れたように言う。それを言われてしまっては、もう何も言えないじゃないかと。
「ふふ、冗談。」
「・・・」
本当に冗談かどうか、美馬津にはその判断は出来なかった。現に、ELINEAの件で社を辞する事になった水守がどう感じているのか、今の酔った状態なら尚更だった。
「いいわよ、但し・・・」
新しく猪口に注いだ日本を一口飲むと、水守は美馬津の顔を見る。その表情は先ほどまでの悪戯っぽさは消えていた。
「朝まで付き合いなさい。」
「いや、僕はまだ仕事が・・・」
「じゃ、渡さない。」
「そういう問題じゃないだろう。」
水守の我儘で左右する現状ではない。既にゲームが正常に機能していない現状なのだから。その一因が自分にあったとしてもと思って言う。
むしろ、それがあるからこそ美馬津は、尚更その思いが強かったのかもしれない。
「今の私にはそれが全てなのよ。」
切なそうな顔をして言う水守にとっての現状は、そうなのだろうと思うと美馬津は言葉に詰まる。だからと言って、放置できるものでもないというのは分かっているが。
「そもそも酔って仕事も何もないでしょう?」
「それは、大丈夫だけど、今度じゃダメなのか?」
「ダメ。」
目を細めて不貞腐れた様に言う水守に、美馬津は無言で溜息を吐いた。
「分かったよ・・・」
「そう。じゃぁこの後は何処に行こうかなぁ。」
「お手柔らかに頼むよ。」
嬉しそうに言う水守を見ると、美馬津は懐かしいような思いが込み上げた事に、苦笑しながら言った。
「敵ですわ・・・」
DEWSにログインして、メンバーも揃いつつある頃、アリシアが合流して来て開口一番にそう言った。
その表情は険しく、既にレイピアの柄に手を掛けて戦闘態勢に移行している。一瞬ELINEAでも現れたのかと思って周囲を見渡すが、現れたようには見えなかった。であれば、この街中の何処に敵なんか居るのか?
疑問に思いながらアリシアの睨む視線の先を追っていく。
・・・確かに敵かもしれん。
視線の先に居る来栖を見てふと思ったが、とりあえずアリシアには説明しておこうか。
「どう見ても胡散臭いのは分かるがな、アリシア。」
「おいコラ!」
来栖の抗議は無視する事にして、アリシアに話そうとするが、その視線は来栖に向けられたまま警戒は解いていない。レイピアの柄に掛けた手もそうだ。
「手短にお願いしますわ。」
どう見てもプレイヤーなんだが、何故ここまで過剰に反応した・・・
「アレな、一応仲間だ。」
「アレとか一応とか、もう少し言葉を選べねぇのか。」
うるせぇ。
「やはり敵ですのね。」
言ってねぇ!
聞けよ。
「・・・今、仲間と聞こえたような気がしますわ。わたくしを騙そうという魂胆ですの?」
素直に受け取れよ。
そんなに来栖を敵にしたいのか。
「真面目な話し、ELINEA対策にタッキーの抜けた穴を埋めるために居るんだ。マリアの知り合いでもあるし、怪しい奴じゃないぞ。」
と、説明しているのに何故か悔しそうな顔をするアリシア。
どんだけ・・・
ん、そう言えば今気付いたが、来栖はマリアの知り合いなんだよな。って事は、アリシアが何なのか知っている可能性もあるな。
とは言え、今はマリアも居るから聞くに聞けないか。機会があったら聞いてみるか。
「ってか、そいつも仲間なのか?」
?
アリシアの事を知らない?
「ん、あぁ。そうだ。」
って事は、聞く聞かない以前の問題だな。てっきり知っているものかと思ったよ。
「人数制限超えてるじゃねぇか。」
そう言えば、そんなのもあったな。アリシアの存在が当たり前すぎて考えすらしなかったよ。
「問題ない。アリシアはパーティに加わるわけじゃないから。」
「どういう事だ?」
と聞かれてもなぁ。そんな事を今まで聞かれた事も無いし、考えた事も無い。そういうものだと受け入れてしまっているから。
「俺にも分かんね。」
マリアに聞けば何か分かるかも知れないが、答えはしないだろう。
「なんだそりゃ。まぁいいか、戦力としては使えるんだ・・・」
来栖がそう言った瞬間、喉元にレイピアの剣先が突き付けられる。アリシアが鋭い眼光とともに抜剣したようだが、気が付かなかった。
「誰に向かって言っておりますの?」
口を噤んだ来栖が、困ったように俺の方を見た。仕方が無い。
「その辺にしとけ、来栖は事情を知らないんだ。」
不満を隠そうともせずにアリシアがレイピアを引くと、俺は来栖の方に向き直る。
「アリシアは十分過ぎるほどの戦力になっている。パーティに加わらなくても、何故かダメージが加算される。」
「まじか、確かにそりゃ楽になるな。」
納得してくれたのはいいが、逆に俺は納得出来ない部分がある。
自分で言っていて違和感を感じた。これに関しても考えた事は無いが、口にするとおかしな事を言っていると感じてしまう。
パーティを組む理由は戦闘が楽になるからだ。単純に一人で攻撃するより六人で攻撃した方が敵のHPを減らせるわけで。
逆に考えればパーティ外のプレイヤーがその戦闘に参加する事は出来ない。同じクエストをやっていたとしても、パーティとしてそれぞれ戦闘しているらしいから重なる事はない。
その前提で考えれば、何故アリシアは俺たちの戦闘に参加出来ているのか?という疑問が出て来る。ダメージや報酬に関してはその延長線上でしかないから後の疑問だろう。
そう考えながら、いつの間にかアリシアを見ていたようだ。気付くと俺に対して首を傾げている。
もしかすると、ユメナあたりが何かをしたのかも知れないが。考えても答えは出ないか。
ほんと、こんな事ばっかりだな。
何も分かりはしない。
「そうとなれば、さくさく俺の材料集めを進めようか。」
調子のいいおっさんだな。
「嫌ですわ。」
「・・・」
即答したアリシアの言葉に、来栖はなんとも言えない表情で口を開けたまま硬直した。まさか断られるとは思わなかったのだろう。
俺も思ってなかったが。
アリシア的に来栖が気に入らないのか、受け入れられないのか、その辺はよく分からないが、今後の事も考えれば許容してもらうしかない。
「来栖の材料集めはついでだ、ELINEAに遭遇が前提のな。だから、そう言わず付き合ってくれないか?」
腑に落ちない顔の来栖は放置して、アリシアに言うと、腕を組んで顔を逸らした。
「仕方がありませんわね。」
本音を言えば面倒だ。なんで俺がこんな事をしなければならないのか。ただゲームをしたいだけなのに。
でも、そう言っていられない状況だってのも分かってるつもりだ。
「お出でなすったか。」
クエストに出発して、1つ目のクエストが終わったところだ。次のクエストの情報を確認し始めた時に、来栖が声を発する。
その視線の先に、全員が目を向けると、ゆっくり近付いて来るELINEAの姿があった。AIとは言うが、白くなった顔の表情は、以前より目付きが鋭くなったように見える。
たが、その鋭さとは別で、憔悴したような顔は、何処か虚ろなようにも感じた。
「わたくしの出番ですわ。」
アリシアがレイピアを抜いてELINEAの方に剣先を向ける。だが、今回はそう簡単にやられはしない。何とか全員ログアウトするまでの時間は稼げるだろう。
「俺が引き付けておく、お前ら先に逃げろ。」
・・・
俺が言おうとしたんだが、ライフルを構えた来栖に先を越された。
まぁ、いいか。逃げろと言われても、どちらかと言えば待っていたんだ。なんのために継続を捨てて今を選んだのか。試しもせずに逃げる事なんて、出来るわけがない。
いや、それは俺だけじゃないか、おそらくこのメンバーにそれを言ったところで聞きはしないだろう。
「いや、逃げるのは改造された自分のキャラがどんなものか、ある程度試してからだ。」
来栖に言って周囲を見ると、予想通りみんな頷いた。
「物好きな奴らだな。」
「おっさんに言われたくない。」
月下が来栖に蹴りを入れるのを見ていたアリシアの顔に、若干苛立ちが見えた。
「何をしていますの?早く逃げなさい!」
レイピアを構えたアリシアが声を大きくした。そう言えば、アリシアには説明がまだだったな。
「田舎娘は黙って見ているといいですわ。」
「辺・・・いえ、何か策があるといいますの?」
何時もの争いが始まるかと思いきや、言うのを止めたアリシアが俺に聞いて来た。
「あぁ。多分、もうタッキーのような状態にはならないと思う。それを確かめたいんだ。」
「分かりましたわ。」
一応、納得はしてくれたようだが、レイピアを構えたままいつでも動ける状態でアリシアは待機した。
その中、アヤカは太刀を構えながらELINEAに歩いていく。
ELINEAは警戒する事もなく、いつも通りこちらにゆっくり歩いて近付いて来ると、右手で片手剣を抜いた。同時に、姿が霞んで消える。
(何処だ?)
と、疑問に思うのも一瞬。アヤカの次に前に出ていた俺の前に現れる。何か気に入らない事でもあるのか、狙うのは俺なんだな。
だが、来るのは分かっているわけだから、避けるくらいならなんとかなる。何度も同じ事をされれば慣れるっての。首を薙いで来たELINEAの攻撃を、態勢を低くして避けながら距離を取る。
避けられた事に動揺するでもなく、ELINEAの姿がまた霞む。
次に現れたのは姫の前だったが、それを読んでいたのか、ELINEAの片手剣をアヤカの太刀が受け止めた。
(おぉ、マジで受けてやがる。)
最初に狙われた俺がやればよかった話しなんだが、ちょっとびびって避けたからな。その辺は黙っておこう。
片手剣を受け止められたELINEAは、一瞬目を見開いた。逆にアヤカは不敵な笑みを浮かべる。
ELINEAの表情の変化は一瞬で、間髪入れずに今度は左手で片手剣をを抜くと、アヤカの胴に向かって横凪を放つ。アヤカは右手を太刀から離すと、その片手剣を掴んで止めた。そこで初めてELINEANの表情が、あからさまに驚きへと変化した。
「な・・・」
「胴ががら空きですわ!」
その隙を逃さず、アヤカがELINEAの胴に前蹴りを叩き込む。ELINEAの身体が宙に浮くと、その顔に向かって光の軌跡が迸った。
ELINEAの顔に光が着弾すると、後方に頭部が弾ける。そのまま凄い勢いで回転して地面に叩き付けられた。そこへアヤカが追い打ちの斬撃を放つが、ELINEAは跳ね起きて俺たちと距離を取った。
「いやぁ、プレイヤーを攻撃しているようで、いい気分じゃねぇな。」
その声に振り向くと、来栖がライフルを構えていた。ELINEAの頭部を直撃したのは、来栖の攻撃なのは分かっているが、ニヤついている表情は言っている事と噛み合ってはいない。
しかし、アヤカもよく手で受け止めようとか思ったな。マリアの話しからすれば、キャラ自体を改造したらしいから、理屈的には可能なんだろう。だが、それを試そうという気にはならない。俺だったら武器で受け止めるのが精々だ。
アヤカはそこまで理解して行動した・・・わけないよな。
「お前たちは・・・何なんだ・・・」
目を吊り上げこちらを睨みながらELINEAは小さく漏らした。
「ただのプレイヤー。」
「おぃ、ただのじゃねぇだろ。」
うるさいおっさんだな。
「嘘だ!そんなわけない。ただのプレイヤーにこんな事は出来ない!」
「私と貴女では覚悟が違いますわ。」
叫ぶELINEAを冷めた目で見据えるアヤカが、太刀の剣先を向けて言う。その覚悟とはなにか、俺にもよく分からないが、タッキーの事を含め現状に立っている事であるならば、それは同感だ。
「そうです。駄々を捏ね、醜くこの世界にしがみ付き醜態を晒す、どこぞの出来損ないとは違います。」
最近気づいた事がある。ヒナの言葉はきついと思っていたが、悠美の方がきついんじゃないかと。きついと言うより、心を折りに来てんじゃないかって気さえする時がある。
「だまれぇっ!!」
ELINEAは怨嗟が渦巻くような表情で叫ぶと、両手の片手剣を握りなおしてまた姿が霞む。姫に言われた事が気に食わないのか、一直線に向かって来たようで、目の前で両手の片手剣を振り被った。
だが姫は動く事もせずに、身体で受け止めると、憐れむように笑みを浮かべた。
「これ以上は止めた方がいいわ!説明したでしょう。」
再度、来栖の銃弾でELINEAの頭が弾けると同時に、マリアが言う。言われてみれば、これ以上関わっても進展はない。現状の確認は出来たのだから。
姫の矢でELINEAが吹き飛ばされるのを見た俺は、メンバーに向かって頷く。これで解散だと。
吹き飛ばされたELINEAを警戒しつつログアウトしようとするが、ELINEAは直ぐに態勢を立て直してまた姿が、霞む前にアリシアの突きに頭部を捉えられ、真横に吹っ飛んでいった。
「早く、今のうちですわ!」
「アリシア、助かったよ。」
そう言った俺に、微笑んで頷くアリシアを見ながら、俺はログアウトした。
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