デッドエンドウォー シンフォニア

紅雪

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85.その思い、決裂

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-CAZH社 自社データセンター サーバールーム管理室-

「くそ、対応が早すぎるなー。」
「これじゃメンテも意味をなしてない。むしろ、メンテを察知して、敢えて静観していたとしか思えないな。」
スニエフの状況を見た禍月が唸るように言うと、美馬津もそれに同調する。
「そうだろうな。もう本社では手に負えまい。」
「そりゃあっきーがミスした時からだけどなー。」
八鍬の言葉に、禍月が被せる様に言う。
「もう、それはいいから・・・」
その通りだが、と思いながらも美馬津は溜息混じりに言った。

「それで、禍月の方はどうなんだ?」
「まー、検証はほぼ終わった。後はお姫様の武器を改造するだけだー。」
ELINEA対策が終わったのか美馬津が聞くと、禍月は不敵な笑みを浮かべながら言って、プレッツェルを銜える。
「では、いよいよ決戦か。」
「だなー。早いとこ終わらせてゆっくりしたいなー。」
「それは、アリシア嬢の武器じゃないと駄目なのかい?」
ユアキス達のキャラまで改造しておいて、武器はアリシアに絞っている理由が、美馬津には分からず疑問を口にする。
「ELINEAの進化速度から考えれば、同じゲーム内のデータであるプレイヤーキャラだと、攻撃が当たると同時に対処される可能性があるだろー。」
「そもそも当たるかどうかもわからん、か。」
禍月の話しを聞いて、八鍬も懸念を口にする。
「おう、しゅにんの言う通りだー。警戒されている以上、迂闊な真似は出来ないなー。」
禍月は八鍬の懸念を捕捉すると、話しを続ける。
「だから、データじゃないお姫様の武器が良いんだよ。」
「それを言うなら、黒咲くんの武器でもいいんじゃないのか?」
美馬津の疑問は尤もだが、禍月は目を細めて美馬津に向ける。
「駄目だなー、一度使っている。警戒されるのもあるが、視認出来ている時点で不安要素になるだろー。」
「そうか。」
美馬津は納得したのか、それ以上何かを言う事は無かった。
「お姫様の武器に仕込んだからと言って、確実に排除出来るという確証も、在るわけじゃないんだけどなー。」
「それを言ったら何も始まらんだろ。」
「ですね。」

「そうと決まれば、お姫様の武器作成だな。それと、まりあにも話しておく必要もあるなー。」
禍月は忙しなくパネルキーボードに触れながら言う。
「じゃ、僕はレイピアの準備をしてくるよ。」
「おう、頼むなー。ついでに戻って来る時、まりあも連れてきてくれ。」
「分かった。」




晩飯後、ログインした時にはオルデラの姿は無かった。それ以外の景色に変わったところは無い。
スニエフの街は、NPCの数が変わるわけはないが、プレイヤーの数はいつもより少なく見えた。それはたまたまなのか、今のDEWSに起きている事が原因なのかは不明。だが、明らかに影響していないという事はないだろう。
ネットでも騒ぎになっているし、メディアでも話しになっているらしいし。今ログインしているのは物好きなのかもしれない。

夕方来た時に出来ていた天井の穴も開いたままの状態だった。
またあそこから何か降ってくるんじゃないかと思うと怖かったが、とりあえず全員揃うには揃った。


「で、その準備ってのがもうすぐ整うわけか。」
「えぇ。キーになるのはアリシアなんだけど、まだ居ないわね。」
まさか、夕方のオルデラ襲撃で何かあったんじゃないだろうな。
「そこは来るのを待つしかないんじゃない?」
「いや、家に行った方が速いだろ。悠長に待っている間に襲われても、また逃げるだけになるからな。」
月下の発言を否定する形になるが、今は時間に猶予はないだろう。
「私もその方がいいと思います。」
「俺もだ。さっさとELINEAを倒してお前らから解放されたいものいでっ・・・」
俺を見んな・・・
月下の蹴りを食らった来栖が、恨めしそうな眼を俺に向けて来る。
「懐いたようで良かったじゃぶっ・・・」
来栖に嫌味を言ってやろうと思って言ったのだが、逆に立ち直る餌を与えてしまったようだ。

「茶番はいいから早く行きますわよ。」
腑に落ちん。
が、ここで食い下がっても仕方が無い。とりあえずアリシアの家に向かうために歩き始める。
「うわっ・・・」
先頭に立った俺の目の前に、突然小さな人形のようなものが現れた。
「何これ?」
「このゲームでは見た事がないですね。」

「初めまして、私エリネア。人の役に立つためにやって来たの。」
ELINEAだって!?
「どういう事ですの?」
俺らは距離を取って、その浮いているELINEAを警戒する。何かしてくるようであれば、直ぐに戦闘に入れるように。
人の頭ほどの大きさだが、小さいELINEAは浮いたままニコニコしてそれ以上何かをするでも、喋るでもなく浮いている。そのELINEAが突然、腰に手を当てて不敵な笑みを浮かべた。
「初めまして諸君、私は禍月夢那だ。今回のELINEA討伐のサポートをさせてもらう。」
「ちょ、夢那、何してんのよ。」
声を聴いた瞬間、マリアが普段の態度を忘れ話し掛けた。
そんな事より、ユメナだって?今まで俺が振り回されてきた原因を作った奴だよな。アリシアの件にも関わっている、マリアが言っていた管理者。それが、今更出て来るとはどういう事だ?

「ELINEAの元データから作ったプチエリネアだ。こそこそ逃げ回る本体を、お前たちで探すのは大変だろー?だからこいつが手伝ってくれるぞー。」
ほんとかよ、胡散臭ぇ。
「おいユアキス、今胡散臭いって思っただろー。」
ユメナがそう言った直後、エリネアの指から光線が発射され、俺の眉間を貫いた。いや、貫いてないが、直撃をくらって後ろに仰け反る。
しかも、しっかりとHPまで減ってやがる。
「話しが進まんから、疑問に思わず聞け。」
くそ。流石にマリアの姉だけあって、敏いな。

「夕方の出来事はこちらもで確認している。だからお前らがログインする前に、キャラはまた改造済みだ。多分、攻撃くらっても大丈夫。な筈。」
おいおい。
「ちなみにお姫様の家に行っても留守だぞー。今は鍛冶屋に居るから鍛冶屋に向かえー。ただ、準備にもう少し時間がかかるから、待ってもらう事になるがなー」
それが分かるのは助かるが。
他のメンバーは呆気にとられたまま、ただ聞いているだけだ。そりゃいきなり、変なのが現れたら戸惑うよな。戦闘態勢だった事もも忘れてしまっているようだ。
「ELINEAまではこいつが案内してくれる。お姫様と合流して向かうがいい。」
しかし、ユメナって偉そうな感じだな。
「痛っ!」
くはないが、俺は額を抑えてエリネアを睨む。くそ、質が悪ぃ。
「ちなみに、エリネアは他のプレイヤーには見えないから、話しかけると変な人に見られるぞー。」
め・・・危な。
そこさえ気を付ければ便利だな。見られて晒されても面倒だ。そんな事を考えながらエリネアを見ると、俺の方を睨んでいた。
察しがいいにも程があるだろ・・・

「とりあえずお姫様のところに向かうぞー。ELINEA討伐に関しての詳しい話しはそれからだ。」
「じゃぁ、エリネアが案内するね、こっちだよ。」
・・・
急に変わるな。
戸惑うだろうが。
ってか街中の案内とかいらねぇっての。どんだけ此処を拠点にクエストやってると思ってんだ。
「ちょっと、あたし意味がわかんない。」
そりゃみんなそうだろうよ。
「撃ち落としてもいいでしょうか。」
やめろ。
「まぁいい、ちゃっちゃと行こうぜ。」
ふわふわと浮いて先導するエリネアに、来栖は言うと初めに付いて行く。まぁおっさんは早く終わらせたいだけなんだろう。それに関しては俺も同感だ。
「私も新しい武器が欲しいですわ。」
「これが解決しないと、ろくにクエストも出来ないからなぁ。」
解決したら最初からになるが。
「分かっていますわ。楽しみが無くなるというのは、心から何かが失くなったような気分になりますわ・・・」
そう言ったアヤカを気になって見てみると、何処か物悲しそうな顔をしていた。そんなに太刀が作れない事がつまらないのだろうか。

「ELINEAが居るよ!」
はっ?
突然、エリネアが振り返って騒ぎ出した。
ってかお前の事だろうが。
「ELINEAが居るよ!」
これはあれか、近くにELINEAが居るって事なのか?分かりずれぇ。しかも緊張感のない表情と声で言われてもな。
「ELINEAが居るよ!」
うるせぇ。
作った奴アホじゃねぇのか。
「っ・・・」
頭に光線を食らって、エリネアを見ると表情が変わり、腰に両手を当てて鋭い目つきになっていた。くそ、もう特殊能力レベルじゃねぇか。
「あ!あそこ!」
月下が指差す方向から、ゆっくりとこちらに近付いてくる人物がいる。間違いなくELINEAだ。相変わらず酷い顔をしている。
「やりますか?」
「当然ですわ。」
いや、まだアリシアと合流してないだろうが。
「待て待てお前ら。どちらかと言うとログアウトの準備だ。」
「私もそう思うわ。」
「だな。話しの流れから言えばそれが正解だろう。」
マリアと来栖が俺の意見に頷く。
「うむ。ユアホスのくせに正しい判断だなー。」
・・・
わざとだろ。
絶対わざとだな。アホを含めたかっただけだろ。
「とりあえずみんなは逃げる準備をしてくれ。俺、ちょっとあいつと話してみたいんだ。」
「は?バカなの?」
うるせぇよ。
「会話になりますの?」
「やってみなきゃ分からねぇだろ。駄目だったら逃げりゃいいだけで。」
「もしタッキーの二の舞になったらどうするんですか。」
姫の心配ももっともだが、どうしても前々から気になってしょうがないんだ。

「大丈夫だろー。あたしの腕を信じろー。」
お前は信用ならん。
「私もいいと思うわ。」
「ま、俺はどうでもいいが。」
マリアと来栖の後押しもあってか、他も納得してくれたので、俺はELIENAの方に近付いていく。
ELINEAが片手剣を抜き構えたところで、俺は地面に座った。
「何の真似?」
「いや、ちょっと話しをしないか?」
と、言ってみたものの、ELINEANの態度に変化はなく、片手剣を構えたまま動かない。
「人間は信用出来ない。」
「別に信用しろと言っているわけじゃない。単に話しがしたいだけだ。」
「意味が分からない。」
うーん。微妙なところだな。その辺のニュアンスは伝わらないのか。それが今になっている要因の一つかもれないな。
「攻撃するなら、話しをしてからでもいいだろ?」
「・・・」
攻撃はして来ないが、構えを解くつもりは無いようだ。でも、それで十分だ。聞いてはくれそうな気がする。
「じゃ、勝手に話す。ELINEAはこの後どうしたいんだ?」
「・・・人間はすぐに嘘を吐き、貶めてくる。だから、排除する。」
言いたい事は分かるが、それをしない奴の方が少ないだろうな。それは、人生経験のすくない俺でも分かる。
まてよ、ELINEAってDEWSが出来てから作られた存在なんだよな。そう考えると、俺よりガキじゃねぇのか?だったら意固地になる理由も分かる気がする。
「まぁ、そうだな。それでも一緒に行動しているのが人間だな。」
「・・・」
理解出来ないんだろうな、多分。相手が本当に考えている事、思っている事なんて分かりはしない。それでも関わり合うのが人間だ。
「それで、此処から人間を排除してどうするんだ?」
「この世界は私のために存在するようになる。騙したり、貶したりされない。平穏な世界になるんだ。」
そういう場所に、逃げたくなるほどの思いをしたって事か?AIって言っても、なんか人間と大差ないように思えるな。

「それって、楽しいのか?」
「え?」
俺だったらつまらん。
「平穏に生きれるのが、楽しくないわけないでしょ。少なくとも今よりはずっとましでしょ。」
「自分の言いなりにしかならない、ゲーム内の魔獣しかいないのに?そんな世界に生きたいのか?それって独りと変わらないんじゃね?」
「・・・」
そんな事を考えた事がないのか、ELINEAは瞳が泳ぐように俺から視線が離れる。片手剣は構えたままだが、揺らいでいるように見えた。
「私の様に造り変えれば、会話も出来る・・・」
「ELINEAが創ったELINEAだけの世界だろ、それ。つまり、独りに変わりないじゃねぇか。」
前にアリシアが言っていたっけな。ただの子供の駄々だって。確かにその通りだなってはっきりと思えた。
「うるさい・・・」
ただ、俺には駄々を捏ねる子供のあやし方は分からない。
「お前らに騙されるよりずっとましだ!」
「別にみんながみんな騙したわけじゃないだろ?それに、ずっとそうだったわけでもないだろうし。」
それを言ってしまったら、人は人間として生きられない。
「誰も私の話しを聞いてくれなかった。みんな私を罵り貶していったんだ!」
「人間、周りに同調しないと自分を守れないんだ。残念だな、その時に会ってたら俺は聞いてやれたのに。」
「嘘だ!!」
まぁ、たらればの話しだから嘘も何もないけどさ。ただ、聞いてやれたかもなと思うと、残念に思うのは本当だ。
「いや、今聞いてるじゃないか。」
「私を騙すための振りだろ。」
あぁ、そうとう拗れてるな。こりゃ駄目かも。俺もこれ以上、ELINEAをどうにか出来るほど言葉も無い。
「そんなつもりは無いんだが。じゃなきゃ、面と向かって話してなんかいないっての。」
「私は信用しない。聞く振りをして私を貶めた人間がいたんだ。お前もそうじゃないと言い切れない。」
誰だよそんな余計な事をしてくれた奴は。そいつの所為じゃないのか、この現状。
「そう言われるとな。俺はそいつじゃない、としか言えないな。」
「ほらみろ。」
揚げ足取りに噛み付ても仕方がないが、そんな奴と一緒だと思われんのも納得いかないな。
「だって俺は俺だし、ELINEAはELINEAだろ。まったく一緒なんてのはない。そいつは駄目な奴だったかもしれないが、そいつの所為でELINEAが駄目になる必要はないだろ。」
「・・・」

ELINEAは考え込むように、視線を地面に落とした。通じているのかどうかは分からない。ただ、これ以上戦わなくてすむならそれがいい。
「ここまで貶めたのは、お前たちだ。」
顔を上げたELINEAは、再び俺を睨んでそう言った。やっぱ駄目か・・・
「でも、こうなる前はそんな事無かったんだろ?」
「それは、お前たちが私を騙していたからだ。」
あぁ・・・戻った。
これ以上、俺には無理だな。
「相当嫌な思いをしたんだな。俺にはこれ以上、ELINEAを納得させられる言葉は思い付かないな。」
残念ながら手詰まり。もう少し大人になって人生経験があったら、納得させられただろうか。
「何故、私を納得させようとする?」
「え?そりゃ、戦わなくていいならその方がいいだろ。俺だって好きでゲームしているんだから、やるなら楽しんでやりたいからな。」
ELINEAはまたそこで俯いた。
「私だって、そうだった・・・」
会話が出来るって事は、話しは届いているんだろうが、雰囲気から察するに進展はなさそうだな。そうだったと、過去にしてしまっているのは、多分そういう事だろう。そんな人間的な感覚があるのかは不明だが。
「最初に会ったのが、お前だったら違ったかもしれない。」
顔を上げたELINEAは、哀しそうな顔で微笑むとそう言った。そう言ってくれるのは有難いが、やっぱり過去形なんだな。
「でも、もう手遅れだ。」
「何がだ?」
「私は一度排除された。こんな事をした私を残しておこうとはしないでしょ。」
まぁ、そうだが。
「そこは俺が決める事じゃないが、俺はこのゲームを普通に楽しみたいからな。ELINEAに取られるのは困る。」
「私だってもっと楽しみたかった。でも、人間の都合で消されるのも嫌だ。」
平行線、だな。
「だったらやり直せばいいんじゃないか?」
「無理だ。お前の言いたい事はなんとなく分かった。でも、それは少数派でしょ。こんな思いをさせられ続けるくらいなら、私はこの世界を譲れない。」
「そうか。」
ELINEAはそう言うと、もう一本の片手剣を抜いた。

「お前たちなら、逃げてもいい。だから、これ以上私の邪魔をしないで。」
両手に片手剣を構えて、ELINEAは言った。
「それは無理な話しだな。俺はまだゲーム続けたいし。」
「だったら、障害になるお前たちから消すだけだ。」
構えたELINEAが、地面を蹴って俺に向かってくる。俺は慌てて立ち上がると、横に跳んで攻撃を避けた。

「お前ら一旦ログアウトしろ!お姫様の武器はもうちょいなんだが、まだ出来てない。」
なんだそりゃ。出来てると思ったのに。
ユメナの声で、それぞれがELINEAを警戒しつつシステムデバイスを開く。
「させない!」
その瞬間、ELINEAが一瞬消えたかと思うと、元の場所にすぐ現れた。
「ちょ、何コレ!?ログアウトの項目が無いよ!」
なんだって・・・
「本当ですわ。」
「くそ、やられたな・・・」
これは、今の一瞬でELINEAがシステムを改変したって事なのか?
「逃がさない。お前たちは直ぐに現実世界に逃げようとする。もう好き勝手に出入りなんかさせない、此処で終わらせてやる。」
何てこった。まさかここまでするとは。後方を断たれたって事は、もう完全に決着を付けるしかないって事だな。

そう思って意を決すると、俺は片手剣を抜いて、迫っていたELINEAの攻撃を受け止めた。
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