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E04.開け放たれた、鳥籠
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「どう、上手くいった?」
「あたしを舐めるなよー。失敗なんかするわけがないだろー。」
「あはは、夢那らしい。」
自宅に戻った禍月は、待っていた黒咲に聞かれて得意げに言った。それを聞いた黒咲も満足そうに笑みを浮かべる。
「やっとあのデータセンターから解放されるね。」
「あたしは別に苦じゃなかったがなー。むしろ結構楽しめたぞー。」
「そうなんだ。それなら尚更良かったね。」
「あぁ、最高の気分だ。」
普段は殆ど見せる事無い笑顔を見せる禍月に、黒咲は疑問を持ったが、楽しそうにしているのを見ると、その疑問は無かった事にしようと思った。
「あぁ、それとじーさんから伝言だ。」
禍月が思い出して言うと、黒咲は西園寺からの伝言、という件で表情に陰りが見えた。禍月もそういう反応をするのは分かっていたが、伝えなければならない事だと続ける。
「仕事をしない奴に払う金は無い、金輪際来るな。だとさ。」
「え・・・?」
予想などしていなかったのか、その伝言に黒咲は呆けた表情をする。
「つまり、まりあはじーさんから解放されたんだー。もっと喜べ。」
(まぁ、干渉したくてももう出来ないけどなー。これはあたしが背負っていく業だから、まりあが知る必要は無い。)
「それって、もう宗太郎と関わらなくていいって事?私、二度と宗太郎の仕事しなくていいの?」
今にも泣きそうな顔で、黒咲は確認する。求めに求めていた現実、西園寺に言っても伝わらなかった思い、それが現実になるのかと思うと、しつこくても確認せずにはいられなかった。黒咲にとっては確認する事でしか、実感できないから。
「そうだ。もう自由の身だぞ。」
禍月がはっきりと言うと、黒咲の目からは堰を切ったように涙が溢れ出した。
「夢那ぁ~・・・」
黒咲は禍月に抱き着こうとするが、察知した禍月がそれを避ける。
「何で逃げるのよぉ・・・」
「ほれ。」
代わりに禍月は、手近に用意しておいたタオルを、黒咲の顔に向かって放り投げた。
「うぅ・・・」
「まりあ汁に塗れるのは勘弁してくれ。」
と言って笑う。
「えい!」
「あ!汚っ・・・」
笑った禍月に対し、顔を拭いたタオルを黒咲は投げつけた。それは見事に顔に当たり、禍月は慌てて別のタオルで顔を拭く。
まだ涙は止まってなかったが、黒咲は満面の笑みを浮かべていた。きっと、縛り付けられていたものから解放された事で、心から出てきたのだろうと思うと、禍月は嬉しかった。
「夢那は、今後どうするの?」
「まぁ、あたしもじーさんのところはお役御免になったしなー。ちょっと試したい事もある。」
「え、夢那も解放されたの?」
「まぁなー。今回の事で十分だから、好きにしろってさ。」
「良かった。」
事実はどうあれ、禍月もそれは心底感じていた。嬉しそうに微笑む黒咲の顔を見ると、やはり良かったと禍月も思っていた。実際に行った行為に関しては、後ろめたさなど全く無い。懸念があるとすれば、黒咲に知られる事くらいだった。
「まりあはどうするんだ?雪待のところに転がり込むか?」
「えぇ!?しないよ、そんな事。」
「大丈夫、襲って既成事実さえ作ってしまえばいいだろー。」
「あのね・・・」
雪待の名前を出した事で、黒咲がまた笑みを消してしまった。その理由が分からず、禍月は怪訝な顔をする。
「ねぇ、私の手、何色?」
「何言ってんだ?」
質問の意図が分からずに禍月は首を傾げた。
「どす黒い赤、血塗れの手。」
「・・・」
黒咲は言うと、また目に涙を浮かべた。
「夢那の言った通りだよ、闇と光は交わらない。こんな手で、晶社くんに触れられるわけないじゃない!洗っても洗っても落ちてなんかくれない、一生この色なんだよ!」
藪蛇だったか、禍月はそう思って言った事を悔いた。もともと知っていた筈だった黒咲の思いを、軽視した事に。
「悪かった。」
「夢那が悪いんじゃないよ。手を汚してしまったのは私自身。いくら解放されたと言っても、無かった事になんて出来ないから。」
生きるため、と言えば聞こえは悪くないかもしれない。人によっては仕方が無かったと言ってくれるかもしれない。だが、事は本人の問題であり、他人がどうこう出来る問題でもない。禍月はそれは良く分かっていた、だから自分は割り切る事にしているのだが、目の前の妹はそこまで冷徹になれないんだと分かっていた。
だから、続く言葉は出ないし、言ってやれる事も思いつかなかった。
「私、旅行しようかなって思ってたの。」
「旅行か、いいんじゃないかー。」
暫くして落ち着いた黒咲が口を開いた。
「まずはヨーロッパあたりから行ってみたいなって。」
「海外かよ。」
「うん。この国に居るのは、今は辛いから。幸い、お金だけはあるし。」
「そうか、それもいいかもな。」
微笑んではいるが、その笑みは切なそうに禍月には見えた。
「うん、せっかく鳥籠から抜け出せたんだもん。どこか遠くに飛んで行きくなるでしょ。」
それでも、その鳥籠に括り付けられた鎖は、枷として心を縛り付けている事に変わりは無い。どこに飛ぼうとも、楔を断ち切る事など出来はしない。禍月はそう思ったが、口には出さなかった。それは本人が一番分かっている事だろうとも思ったから。
「そうだなー。」
「最後に、晶社くんには会いたかったな。あ、ゲームの約束、破っちゃうな。」
黒咲はそう言うと微笑んだ。その笑みに先ほどまでの切なさは見えなかった。
「言っていけばいいだろー?」
「気持ちが揺らぐから、ヤだ。」
「そうか。」
「戻って来るかも分からないし。」
「たまには顔くらい見せに来いー。」
「気が向いたらね。」
あれから数日と待たず、黒咲は旅立って行った。本人が望んだ事なので、それで良いと禍月は思っている。ずっと一緒だった妹が居なくなった事に対して寂しくないと言えば嘘になるが、生きているならばそれでいいとも思っていた。
なにより、西園寺という呪縛から解放され、飛び立った事が嬉しかったからだ。
「お前が晶社か?」
とある学校の前で、自転車に乗り出てきた学生に禍月は声を掛ける。
「誰だ?」
「あたしが夢那だ。」
「マジか・・・?」
雪待の驚く表情を見て、禍月は愉快そうに嗤う。まさかずっと姿を見せなかった自分が、現れるなんて思ってなかっただろうと。
「一つ礼が言いたい。」
「いや、まさか、出て来るとは思わなかったよ。ってか、礼を言われる事なんてした覚えはないんだが。どちらかと言えば、俺はあんたに文句しかない。」
「文句は聞かん。」
「だと思ったよ。で、ELINEAの事か?」
「それはどうでもいい。」
「おぃ・・・」
「まりあの事だ。」
続けようとした雪待の言葉を遮り、禍月は本題を切り出す。
「あ、そう言えば全然連絡付かなくなったんだよ。どうしたんだ?」
「まりあなら遠いところに旅立った。あぁ、誤解するな、今は多分フランスだ。」
「海外?」
「帰って来るかわからんそうだ。お前に会うと決心が揺らぎそうだからと言って、黙って行ったんだ、連絡が取れなくて悪かったな。」
「・・・」
それを聞いた雪待は無言で何かを考えるようにしていた。
「たまに、辛そうな表情をしていたんだ。何かあって海外に行ったのか?」
禍月はその言葉を聞いて微笑む。黒咲にとって、辛い結果になったかもしれないが、この出会いは良かったのだろうと思えば。
「心配するな。楽しそうにしてたぞ。それも、お前のお陰だよ。それだけ言いに来た。」
「それなら、いいけど。」
「忘れろとは言わないが、心配はしてやるな。それじゃぁなー。」
禍月は言うと、雪待に背中を向け片手を軽く上げて立ち去った。
暫く歩くと、禍月は足を止めて空を見上げる。
(雪待の懸念は払っておいた。後は好きなように飛び回れー。)
「あたしを舐めるなよー。失敗なんかするわけがないだろー。」
「あはは、夢那らしい。」
自宅に戻った禍月は、待っていた黒咲に聞かれて得意げに言った。それを聞いた黒咲も満足そうに笑みを浮かべる。
「やっとあのデータセンターから解放されるね。」
「あたしは別に苦じゃなかったがなー。むしろ結構楽しめたぞー。」
「そうなんだ。それなら尚更良かったね。」
「あぁ、最高の気分だ。」
普段は殆ど見せる事無い笑顔を見せる禍月に、黒咲は疑問を持ったが、楽しそうにしているのを見ると、その疑問は無かった事にしようと思った。
「あぁ、それとじーさんから伝言だ。」
禍月が思い出して言うと、黒咲は西園寺からの伝言、という件で表情に陰りが見えた。禍月もそういう反応をするのは分かっていたが、伝えなければならない事だと続ける。
「仕事をしない奴に払う金は無い、金輪際来るな。だとさ。」
「え・・・?」
予想などしていなかったのか、その伝言に黒咲は呆けた表情をする。
「つまり、まりあはじーさんから解放されたんだー。もっと喜べ。」
(まぁ、干渉したくてももう出来ないけどなー。これはあたしが背負っていく業だから、まりあが知る必要は無い。)
「それって、もう宗太郎と関わらなくていいって事?私、二度と宗太郎の仕事しなくていいの?」
今にも泣きそうな顔で、黒咲は確認する。求めに求めていた現実、西園寺に言っても伝わらなかった思い、それが現実になるのかと思うと、しつこくても確認せずにはいられなかった。黒咲にとっては確認する事でしか、実感できないから。
「そうだ。もう自由の身だぞ。」
禍月がはっきりと言うと、黒咲の目からは堰を切ったように涙が溢れ出した。
「夢那ぁ~・・・」
黒咲は禍月に抱き着こうとするが、察知した禍月がそれを避ける。
「何で逃げるのよぉ・・・」
「ほれ。」
代わりに禍月は、手近に用意しておいたタオルを、黒咲の顔に向かって放り投げた。
「うぅ・・・」
「まりあ汁に塗れるのは勘弁してくれ。」
と言って笑う。
「えい!」
「あ!汚っ・・・」
笑った禍月に対し、顔を拭いたタオルを黒咲は投げつけた。それは見事に顔に当たり、禍月は慌てて別のタオルで顔を拭く。
まだ涙は止まってなかったが、黒咲は満面の笑みを浮かべていた。きっと、縛り付けられていたものから解放された事で、心から出てきたのだろうと思うと、禍月は嬉しかった。
「夢那は、今後どうするの?」
「まぁ、あたしもじーさんのところはお役御免になったしなー。ちょっと試したい事もある。」
「え、夢那も解放されたの?」
「まぁなー。今回の事で十分だから、好きにしろってさ。」
「良かった。」
事実はどうあれ、禍月もそれは心底感じていた。嬉しそうに微笑む黒咲の顔を見ると、やはり良かったと禍月も思っていた。実際に行った行為に関しては、後ろめたさなど全く無い。懸念があるとすれば、黒咲に知られる事くらいだった。
「まりあはどうするんだ?雪待のところに転がり込むか?」
「えぇ!?しないよ、そんな事。」
「大丈夫、襲って既成事実さえ作ってしまえばいいだろー。」
「あのね・・・」
雪待の名前を出した事で、黒咲がまた笑みを消してしまった。その理由が分からず、禍月は怪訝な顔をする。
「ねぇ、私の手、何色?」
「何言ってんだ?」
質問の意図が分からずに禍月は首を傾げた。
「どす黒い赤、血塗れの手。」
「・・・」
黒咲は言うと、また目に涙を浮かべた。
「夢那の言った通りだよ、闇と光は交わらない。こんな手で、晶社くんに触れられるわけないじゃない!洗っても洗っても落ちてなんかくれない、一生この色なんだよ!」
藪蛇だったか、禍月はそう思って言った事を悔いた。もともと知っていた筈だった黒咲の思いを、軽視した事に。
「悪かった。」
「夢那が悪いんじゃないよ。手を汚してしまったのは私自身。いくら解放されたと言っても、無かった事になんて出来ないから。」
生きるため、と言えば聞こえは悪くないかもしれない。人によっては仕方が無かったと言ってくれるかもしれない。だが、事は本人の問題であり、他人がどうこう出来る問題でもない。禍月はそれは良く分かっていた、だから自分は割り切る事にしているのだが、目の前の妹はそこまで冷徹になれないんだと分かっていた。
だから、続く言葉は出ないし、言ってやれる事も思いつかなかった。
「私、旅行しようかなって思ってたの。」
「旅行か、いいんじゃないかー。」
暫くして落ち着いた黒咲が口を開いた。
「まずはヨーロッパあたりから行ってみたいなって。」
「海外かよ。」
「うん。この国に居るのは、今は辛いから。幸い、お金だけはあるし。」
「そうか、それもいいかもな。」
微笑んではいるが、その笑みは切なそうに禍月には見えた。
「うん、せっかく鳥籠から抜け出せたんだもん。どこか遠くに飛んで行きくなるでしょ。」
それでも、その鳥籠に括り付けられた鎖は、枷として心を縛り付けている事に変わりは無い。どこに飛ぼうとも、楔を断ち切る事など出来はしない。禍月はそう思ったが、口には出さなかった。それは本人が一番分かっている事だろうとも思ったから。
「そうだなー。」
「最後に、晶社くんには会いたかったな。あ、ゲームの約束、破っちゃうな。」
黒咲はそう言うと微笑んだ。その笑みに先ほどまでの切なさは見えなかった。
「言っていけばいいだろー?」
「気持ちが揺らぐから、ヤだ。」
「そうか。」
「戻って来るかも分からないし。」
「たまには顔くらい見せに来いー。」
「気が向いたらね。」
あれから数日と待たず、黒咲は旅立って行った。本人が望んだ事なので、それで良いと禍月は思っている。ずっと一緒だった妹が居なくなった事に対して寂しくないと言えば嘘になるが、生きているならばそれでいいとも思っていた。
なにより、西園寺という呪縛から解放され、飛び立った事が嬉しかったからだ。
「お前が晶社か?」
とある学校の前で、自転車に乗り出てきた学生に禍月は声を掛ける。
「誰だ?」
「あたしが夢那だ。」
「マジか・・・?」
雪待の驚く表情を見て、禍月は愉快そうに嗤う。まさかずっと姿を見せなかった自分が、現れるなんて思ってなかっただろうと。
「一つ礼が言いたい。」
「いや、まさか、出て来るとは思わなかったよ。ってか、礼を言われる事なんてした覚えはないんだが。どちらかと言えば、俺はあんたに文句しかない。」
「文句は聞かん。」
「だと思ったよ。で、ELINEAの事か?」
「それはどうでもいい。」
「おぃ・・・」
「まりあの事だ。」
続けようとした雪待の言葉を遮り、禍月は本題を切り出す。
「あ、そう言えば全然連絡付かなくなったんだよ。どうしたんだ?」
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「海外?」
「帰って来るかわからんそうだ。お前に会うと決心が揺らぎそうだからと言って、黙って行ったんだ、連絡が取れなくて悪かったな。」
「・・・」
それを聞いた雪待は無言で何かを考えるようにしていた。
「たまに、辛そうな表情をしていたんだ。何かあって海外に行ったのか?」
禍月はその言葉を聞いて微笑む。黒咲にとって、辛い結果になったかもしれないが、この出会いは良かったのだろうと思えば。
「心配するな。楽しそうにしてたぞ。それも、お前のお陰だよ。それだけ言いに来た。」
「それなら、いいけど。」
「忘れろとは言わないが、心配はしてやるな。それじゃぁなー。」
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