21 / 34
第19話 **
宗一郎が病院に着いたのは、空のオレンジが消えかかる夕方のことだった。
「涼太くんにヒートが来たって、どういうことですか!?」
「正確にはヒートではなく擬似発情なんですが、体はエフのまま、アルファフェロモンを感じずに本格的なヒートに近い発情を起こしてしまっています。」
困惑しながら説明する笹森医師に宗一郎が詰め寄る。
「薬は、抑制剤は使えないんですかっ?」
「それも考えました。が、今の一色さんのヒートを無理やり薬で抑え込むのは危険だと思います。」
「そんなっ。」
「河野さん、一色さんをパートナーとして助けてあげて下さい。」
宗一郎は笹森に抑制剤を注射され、最後まで性行為をする場合は必ず避妊具を着用するようにと念を押された。
「セックスは強制ではないですよね?」
「はい、もちろんです。一色さんのオメガフェロモンは微量なままで、今河野さんに抑制剤を打ちましたし、理性がなくなるような状態にはならないはずですが、モニターしている一色さんの心臓の状態とフェロモン値によっては部屋に入らせていただきます。ご理解下さい。」
「わかりました。」
──まさかヒートとはな。こんなことなら、あいつとヤるんじゃなかった。
病室から離れる病院スタッフを見送りながら、宗一郎は小さく舌打ちする。
宗一郎が病院からの連絡を受けた場所、それは出張先でも会社でもなく、ベータの愛人の部屋だった。
──流石にまたヤる元気はないが……。まぁ、ペットと戯れるのは悪くないか。
病室から漏れ聞こえる涼太の艶めく嬌声。宗一郎は冷笑をしまい込み、目の前の扉を開けた。
「涼太くんっ!」
理想の恋人を演じ涼太を抱きすくめた宗一郎は、涼太に唇を塞がれ一瞬身を硬くする。
まさか自分を求めるほどヒートに飲まれているとは思っていなかったのだ。
──いいねぇ。楽しめそうだ。
宗一郎は涼太のその甘い舌を絡め取り、自身が主導権を握っていく。
次第に宗一郎のキスのリズムを覚え、それに従い溶け始めた涼太を、宗一郎がベッドに押し倒した。
「涼太くん、こんなに汚して……。」
宗一郎がそう言いながら涼太の腹に溢れた白濁を広げるように撫でまわす。
「ゆる……許して……。ん、うん……。」
「いいんだよ。一人で辛かったね。」
涼太は涙の滲む目元に優しくキスを落とす宗一郎に、甘い吐息で誘いねだる。
「体……熱いよ……あ、ああっ!」
「大丈夫、いっぱい感じさせてあげるよ。」
宗一郎の舌がうなじをくすぐり、器用に胸に繋がるコードを避けながら白い肌を指でなぞっていく。
「あん、あ、……ふぅん、ンんっ……。」
「凄いよ、涼太くん。ほら、指でくすぐるだけで、いっぱい垂れてきてる。」
「あ、やっ、ヤダっ……ああんっ……言うなぁ……。」
今度は涼太の愛らしい胸の尖りを嬲り出した宗一郎に、涼太が涙を零しながら訴えた。
「んん?イヤ?」
宗一郎が意地悪く、胸の尖端を爪で引っ掻く。身震いする快感に襲われた涼太は、色をなくし始めた欲望を放ち苦しげに息をした。
「もう、随分と一人でイったんだね。そろそろ限界?」
宗一郎にそう問われ、涼太は必死にコクコクと頷く。
「そう……。でも、奥をまだ可愛がってないね。」
宗一郎の指が涼太の欲で濡らされ、まだ誰も触れていない窄まりに辿り着いた。
「あ、ヤダ、イヤだっ……あ、ああっ、ダメッ!」
そこを暴かれたら、もう二度と後戻りは出来ない……。
その事実に涼太は怯え、逃れようと体をよじる。
そんな涼太の抗いはアルファの力に敵うわけもなく、宗一郎の支配欲を満たしただけだった。
宗一郎の大きな手で、頭の上に持ち上げられた両手首を押さえつけられ、涼太は初めて支配者への恐怖に震える。
宗一郎はそんな涼太を嗜虐的な瞳で微笑んで見下ろし、呪いの言葉を再び口にした。
「言っただろ?逃さないよって……僕の『運命』……。」
「……ッ!あ、あぁぁ!イヤだぁぁっ!」
容赦なく突き入れられた指が、ぬちゅぬちゅといやらしい音を響かせ、抗う理性と快感に溺れる体の間で涼太を引き裂いていく……。
宗一郎は涼太の唇を塞ぎ彼の拒絶を奪うと、自身の唾液を与え涼太にオメガの性を思い出させた。
──どうしよう……気持ちいい……。気持ち、いい……。
涼太の口から漏れる声が、また甘く艶を帯び、その喘ぎは宗一郎を悦ばせ水音を激しくさせる。
──もっと……もっと奥に……。
涼太は胎の最奥まで穿たれる熱を請い始める。
しかし、宗一郎のそれは熱を帯びる気配はなく、涼太の疼きは救いを失くしてしまった。
「ん、ンんっ、あぁんっ!……もっと……もっと……!」
「もっと?どこがいい?」
「奥が……奥に、ほしっ……あぁっ、そこじゃっ……。」
涼太が奥を強請れば強請るほど、宗一郎の指は浅い凝りをいじめてくる。
胸のピンと誘うそこをチロリと舐められ、涼太は大きく背中を反らせた。
「涼太くん、気持ちいいかい?」
泣きながら頷き、宗一郎が自分を求めていないか視線を移す。
──やっぱり、宗一郎さんは責任を感じてるだけで……。俺じゃ、ダメなんだ……。
宗一郎の指が舌が、涼太を絶頂へと誘い、長い快感の余韻の中涼太は意識を手放し始めた。
──この人に、俺は運命じゃ、ないって……教えて、あげ……。
「おやすみ、涼太くん。」
本当は宗一郎も自分を求めてなどいない。
涼太はどうしようもない孤独を抱えて眠りについた。
涼太の乱れる姿を堪能し、十分に愛人の体を楽しんだ宗一郎が、その孤独に気付くはずもない。
ズレ始める思惑──。
動き出した歯車が、予期しない形で伊織を巻き込み始めたことも知らず、宗一郎はただ目の前の「今」を味わい続けていた。
あなたにおすすめの小説
オメガの復讐
riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。
しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。
とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆
妹に奪われた婚約者は、外れの王子でした。婚約破棄された僕は真実の愛を見つけます
こたま
BL
侯爵家に産まれたオメガのミシェルは、王子と婚約していた。しかしオメガとわかった妹が、お兄様ずるいわと言って婚約者を奪ってしまう。家族にないがしろにされたことで悲嘆するミシェルであったが、辺境に匿われていたアルファの落胤王子と出会い真実の愛を育む。ハッピーエンドオメガバースです。
『2度目の世界で、あなたと……』 ― 魔法と番が支配する世界で、二度目の人生を ―
なの
BL
Ωとして生まれたリオナは、政略結婚の駒として生き、信じていた結婚相手に裏切られ、孤独の中で命を落とした。
――はずだった。
目を覚ますと、そこは同じ世界、同じ屋敷、同じ朝。
時間だけが巻き戻り、前世の記憶を持つのは自分だけ。
愛を知らないまま死んだ。今度こそ、本物の愛を知り、自ら選び取る人生を生きる。
これは、愛を知らず道具として生きてきたΩが、初めて出会った温もりに触れ、自らの意思で愛を選び直す物語。
「愛を知らず道具として生きてきたΩが転生を機に、
年上αの騎士と本物の愛を掴みます。
全6話+番外編完結済み!サクサク読めます。
金の野獣と薔薇の番
むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。
彼は事故により7歳より以前の記憶がない。
高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。
オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。
ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。
彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。
その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。
来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。
皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……?
4/20 本編開始。
『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。
(『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。)
※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。
【至高のオメガとガラスの靴】
↓
【金の野獣と薔薇の番】←今ココ
↓
【魔法使いと眠れるオメガ】
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
※画像はpicrewさんよりお借りしました。
隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。
下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。
文章がおかしな所があったので修正しました。
大国の第一王子・αのジスランは、小国の王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。
ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄をするから受け入れてほしいと言われる。
理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、
「必ず僕の国を滅ぼして」
それだけ言い、去っていった。
社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。
泡にはならない/泡にはさせない
玲
BL
――やっと見つけた、オレの『運命』……のはずなのに秒でフラれました。――
明るくてお調子者、だけど憎めない。そんなアルファの大学生・加原 夏樹(かはらなつき)が、ふとした瞬間に嗅いだ香り。今までに経験したことのない、心の奥底をかき乱す“それ”に導かれるまま、出会ったのは——まるで人魚のようなスイマーだった。白磁の肌、滴る水、鋭く澄んだ瞳、そしてフェロモンが、理性を吹き飛ばす。出会った瞬間、確信した。
「『運命だ』!オレと『番』になってくれ!」
衝動のままに告げた愛の言葉。けれど……。
「運命論者は、間に合ってますんで。」
返ってきたのは、冷たい拒絶……。
これは、『運命』に憧れる一途なアルファと、『運命』なんて信じない冷静なオメガの、正反対なふたりが織りなす、もどかしくて、熱くて、ちょっと切ない恋のはじまり。
オメガバースという世界の中で、「個」として「愛」を選び取るための物語。
彼が彼を選ぶまで。彼が彼を認めるまで。
——『運命』が、ただの言葉ではなくなるその日まで。