【完結】フェイクオメガ

水樹風

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第27話 **

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 伊織の帰国から一ヶ月──。
 間に二日間ほどの軽いヒートを起こしたものの、涼太にとっては久しぶりに、心も体も軽く穏やかな時間が流れていた。


「涼太さんは、ここを出たらどこで暮らしたいですか?」
「えっ?なに?急に……。」


 療養施設内の涼太の部屋。
 涼太のため十日間の休暇を取った伊織が、朝から彼の元を訪れていた。


「これで番になったら、弱めの抑制剤を使えるようになるって先生言ってたでしょ?そしたら退所も出来るじゃないですか?」


 涼太に番となれるだけのしっかりとしたヒートを起こさせるため、伊織は昨夜から抑制剤を飲んでいない。
 そう、この休暇は涼太と番うためのヒート休暇だった。


「ま、まだわからないよ……。抑制剤だって飲めるようになるって言われただけだし……。」


 明らかに朝から浮かれている伊織とは反対に、時間が過ぎれば過ぎるほど緊張していく涼太……。
 夜には抑制剤の効果が切れるからと、夕方二人は早目に食事を済ませ、交代でシャワーを浴びた。
 二人ともバスローブ姿で全てが準備万端なこの状況に、涼太の心臓は破裂しそうなほどに早鐘を打っていく。


 ──伊織くん、髪乾かしてくれてるだけなのに……。今からこんなんで、俺……どうしよう……!?


 前回のヒートの時も伊織は側にいたのだが、涼太の衰弱が激しかったため、彼は涼太のを手伝っただけだった。
 ベッドの上で涼太の細い柔らかな髪にドライヤーを当てながら、彼の緊張を解こうと話しかけた伊織だったが、カチコチのまま俯いている年上の恋人が段々とおかしくなってくる。
 ドライヤーのスイッチを切った後、急に後ろで吹き出した伊織に涼太は怪訝な顔で振り返った。


「な、何?なんで笑ってるんだよ?」
「だって、涼太さん、石みたいにカチカチで……。」
「……っ!う、うるさいっ。」
「涼太さん、一応聞きますけど、童貞じゃないですよね?」


 笑い過ぎて涙目の伊織に揶揄からかわれ、涼太が伊織の胸をドンッと叩く。


「バカにしすぎだっ!」
「アハハッ、ごめんなさいっ……。ごめんなさいって……!」


 そのままポカポカと伊織を叩き続けていた涼太の手首を彼が捕まえると、涼太はふいにぽすっと伊織の肩口に頭を付けた。


「……でも俺、ちゃんと抱かれるのは、今夜が初めて……だよ……?」
「えっ!?」


 伊織は小さく呟いた涼太の顔を覗き込もうとするが、涼太は耳まで赤くして伊織にしがみつく。


「俺が抱かれるのは、伊織くんだけだから。」
「──ッ!?ああ、もうっ!涼太さん、ズルいっ!」


 伊織の我慢も、もう限界だった。
 伊織は抱きついている涼太の耳朶を甘噛みすると、彼を優しく押し倒す。


「あっ……。……伊織くん、俺、そろそろかも……。」


 伊織をうっとりと見上げる涼太の瞳が艶やかに潤み、呼吸が甘みを帯びてきた。


「俺の匂いで感じてきました?」
「うん……。甘くて……体が、ジンジンする……。」
「はぁ、俺もたまんないです……。涼太さん、いい?」


 涼太がオメガとして放ち始めたフェロモンを感じ、荒々しい息遣いになり始めた伊織が、初めてキスしたあの夜と同じ野生をさらけ出す。
 涼太はそんな伊織のバスローブの腰紐を解き、顕になった逞しい体を撫で上げた。


「伊織くんの体、格好いいな……。」
「気に入りました?」


 蕩けながら頷く涼太のローブをはだけさせ、伊織がピッタリと覆い被さる。
 直接感じるお互いの肌の熱さが、二人だけの香りを体の奥まで染み込ませ、涼太のはらを疼かせた。


「あ、あぁぁ……早くっ。伊織くん、早くぅ。」
「早く?なんですか?」


 意地悪に焦らして脇腹に手を這わせる伊織。
 涼太は答えるのももどかしそうに、自分から伊織の唇を奪いにいった。
 必死に自分を求める甘く拙い舌。伊織はそれを吸い上げながら、耳に直接響く水音を堪能し、涼太の体のラインを確かめるようにツーっと指を動かしていく。


「あっ、やっ!もっと、ちゃんと……あんっ!」


 涼太が切なそうに背中を反らせ、伊織は待ちかねたようにつき上がった胸の愛らしい尖りを口に含む。


「ひゃんっ、あ、あぁ、……ダメっ、んんっ……。」
「ダメ?ダメじゃないでしょ?」
「ん、うぅんっ!」


 涼太は快感に耐えようと自身の指を噛みしめた。


「あ、ほら、涼太さん。声我慢しないで。こんな傷つけちゃダメですよ。」


 伊織が涼太の手を口から離させ、歯型のくっきり付いた指をしゃぶる。


「あんっ。だって、伊織くんが……、こんなに、気持ちよくするからぁ……!」


 涙を滲ませて抱きつく涼太に、伊織の理性は完全に本能に飲み込まれた。


「あなたは、本当に……っ!どんだけ煽るんですかっ!!」
「あ、あ、そんなっ、あぁん!」


 刺激を欲していた涼太の反対側の胸に伊織の舌が熱を与え、痛いほどに敏感になっていた屹立をすっかり包む大きな手は、クチュクチュとはしたない音を響かせる。


「い、おり、くんっ!ふぅん、……あ、ん……。」


 涼太の声が柔らかく蕩け、彼は必死に枕を掴みながら腰を揺らめかせた。


「あぁん、気持ちいい……!あ、もうっ!あんっ、……ッ!!」


 可愛らしく体をよじり、胸まで白濁を飛ばした涼太が荒い息で伊織を見つめる。


「伊織くん、……俺だけ気持ちいいの、ヤダよぉ……。」
「うん。そうですね。ここ、もうトロトロだし……。」


 伊織はその指をオメガの蜜で濡らすと、糸をひくほどに蕩けたそれを涼太に見せつけた。
 涼太は僅かに恥じらいながらも脚を開き、その蜜が溢れる小さな蕾を伊織に差し出す。


「涼太さんてば、こんないやらしく誘って……。」


 そう言って伊織は甘美な微笑みを見せると、ぷつんと躊躇いなく長い中指をそこに突き入れた。


「うん、ンんっ、もっと、ほしっ……あっ……。」
「んん?一本じゃ、物足りない?」


 ほんの少しその胎内なかを確かめただけで薬指も増やし、伊織はグチュグチュと吸い付く内側の襞を擦り上げていく。
 涼太はあまりの快感に声も出せずに身悶え、その刺激から逃れようと体をずり上げた。


「ああ、ダメ。ほら、腰を逃さないで。」


 伊織は容赦なく涼太を捕え、淫美な水音と共に快感の凝りをいじめ続ける。
 再び欲が弾けそうだった昂りまで舐め上げられ、堪えきれずに熱を垂れ流す蜜口を舌先で弄られると、涼太は泣きながら伊織に訴えた。


「ひゃぁぁん!ダメ、イっちゃう、イくっ!伊織くん、ヤダぁ!」
「大丈夫、見せて。」


 グチュッと指を最後まで挿し込んだ伊織が、涼太の耳を舐め支配者アルファの言葉を囁く。


「涼太、イって。」
「あ、あぁぁーーーッ!!」


 途端に伊織の指を食いちぎりそうなほどに涼太のはらは痙攣し、爪先から頭のてっぺんまで絶頂が駆け抜けた。
 その絶頂が呼び込むように、体中を快感が飲み込みいつまでも終わらず痺れさせる。


「出さずにイけたんですね。いい子。」


 額にキスを落とす伊織の首に抱きつくと、涼太は体を起こし伊織の太い楔に手を伸ばした。


「お願い、これ……ほし……。奥、欲しいよぉ……。」
「ごめんなさい、涼太さん。今あげるから、泣かないで。」


 涼太の頬を流れる涙にキスする伊織に甘い吐息を溢した涼太は、自分からベッドにうつ伏せになり腰を突き上げた。
 伊織アルファの熱を待ち焦がれ、更にオメガを見せつけるように蜜を纏わせる後孔。
 伊織はもう手加減など出来ず、涼太のなまめかしい腰を掴むとその熱杭を深く穿った。


「伊織くんっ!あぁぁぁっ!」


 涼太の胎内なかはその熱を逃さないようにとうねって絡みつき、奥へ奥へと導いていく。


「あぁ、凄い、涼太さんっ!あ、あ、涼太さんっ!」


 パチュパチュと突き上げられる快感は、涼太の言葉を奪い、伊織を誘い続ける嬌声だけが淫らにもれ響いた。
 伊織が涼太の体を抱き起こし、二人とも膝立ちになって深く求め続ける。


「涼太さんっ、愛してる!俺の、運命っ!」


 最奥まで楔が穿たれ二人がピッタリと1つになった時、涼太が振り向き、喘ぎ声の隙間で愛しそうに伊織の頭を撫でた。


「あん、あっ、……噛んで……伊織……。」


 二人のその刹那──。
 時が止まったように大切なその痛みと鉄の香りを二人の中に刻み、涼太の苦しみエフを解放していく……。
 涼太の中で放たれた全てを満たす伊織の熱さ。
 二人はその幸せを確かめ合いながら、時がわからなくなるまで愛しさを求め続けたのだった──。













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