【完結】フェイクオメガ

水樹風

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Side Story

初夜 **

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「正嗣さん、今日は?」
「そこまで遅くならないと思うが、連絡する。」
「はい。」
「汐音っ、駅まで送って欲しいなら早くしろ!」
「………っ、今行くって!」


 平日の朝。バタバタとした天宮邸。
 涼太は賑やかな風景を嬉しそうに見つめていた。


「伊織くん、気を付けてな。」
「行ってきます、涼太さん。」


 両親の前で頬にキスされ、涼太は照れ隠しに伊織の額を小突く。
 見てみぬ振りをしてくれる両親に感謝しながら、三人を送り出した。



 愛眞会病院を退院して二週間。
 今のところ大きな体調の変化もなく、涼太は穏やかに過ごしていた。


「さて、ひと休みしましょうか?」


 洗濯や掃除を済ませ、香菜子がコーヒーを淹れてくれる。


「涼太くん、昨日言ってた相談って?」


 リビングのカウチにゆったりと身を預け、香菜子はコーヒーの香りを楽しみつつ涼太を見た。


「はい、あの……実は……。」


 ほんのり頬を染めながら涼太が話すと、香菜子は興奮気味に立ち上がる。


「ん、もうっ。涼太くん、これから見に行きましょう!」
「え、こ、これからですか?」
「伊織、喜ぶわよぉ。涼太くんからプロポーズなんて!」
「……はい……。」


 伊織と番って三ヶ月と少し。
 いつも自分のために尽くしてくれる伊織に何か返したいと、涼太はずっと考えていた。
 退院して新しい生活が始まり、涼太は自然と『家族』を感じ、伊織ときちんと夫夫になりたいと思ったのだ。


 ──俺から気持ちをちゃんと伝えたら、伊織くん喜んでくれるかな?


 まだ一人で買い物に出たりすることに不安がある涼太は、香菜子に指輪をどうすればいいか相談してみたのだが、案の定、彼女の行動力は凄まじかった。
 ジュエリーショップでの買い物はもちろん、伊織だけでなく、正嗣や汐音のスケジュール調整までして、相談から五日後、天宮邸で二人きりになれるように全てお膳立てしてくれたのだった。


「涼太くん、頑張ってね。」


 これから帰ると伊織からメッセージが届くと、香菜子は涼太をギュッと抱きしめ、正嗣の出張先へと出かけていった。


「ただいまー。涼太さん?」


 玄関のドアの音に、リビングにいた涼太はそわそわと立ち上がる。
 いつもは玄関まで出てくる涼太からの反応がなく、伊織は不安になりながら廊下を進みリビングへのドアを開けた。


「えっ、………涼太、さん?」
「おかえり、伊織くん……。」


 そこに立つ涼太は、耳まで真っ赤だった。


「どうしたんですか?」
「うん……。伊織くん、こっち座って。」


 伊織は涼太に手を引かれカウチに腰掛ける。
 涼太はテーブルの上に置いてあった箱を手に取ると、おずおずと伊織の隣に座った。


「本当はなんか格好いいこと言って渡せたら良かったんだけど、俺には無理そうだったから……。これ、開けて?」


 涼太に渡された箱の蓋をあけ、伊織は驚きに言葉をなくし口に手を当てる。
 真っ白な箱はフラワーボックスで、中には十二輪の赤いバラと二つの指輪。


「伊織くん、俺と、結婚して下さい。」
「……はい。涼太さん!」


 涼太が震える手で、伊織の左手の薬指に指輪をつける。


「俺にも、つけて。」


 涼太の左手に触れる伊織の手も、ほんの少し震えていて、それが涼太を堪らなくさせた。

 ゆっくりと重なる唇──。


「伊織くん、夕食は?」
「もう、済ませましたよ。」
「ん、ん……じゃあ……。」
「シャワー浴びましょうか?」
「うん。」


 バスルームで蕩けるキスを繰り返し、二人ともギリギリの状態で寝室のベッドに倒れ込んだ。


「伊織くん、お願いが……あるんだけど……。」


 涼太の耳朶を甘噛みしていた伊織が、その言葉に体を横にずらす。


「なんですか?」
「うん……あのさ、今日は、我慢しないで?」
「えっ?」
「いつも伊織くん、俺の体気にして、加減してるだろ?今夜は……しょ、初夜ってことで……うん……。」


 一気に妖艶さを増した伊織の表情。むせ返る程に甘さを増す香り……。


「初夜って……響きがいやらしいですよね……。」
「あんっ。」


 伊織の大きな手が、涼太の内腿を這う。


「いい声。もっと聞かせて。」


 伊織の甘美な囁きに、涼太の後孔からとぷりと蜜が溢れ出た。
 その感触にビクッと体を反らせた涼太の背中に伊織の手が滑り込み、胸を持ち上げるようにしてツンと愛らしく主張するそこを味わい始める。


「あっ、あっ、そこっ……あんっ!」
「ここ、涼太さん、好きでしょ?」


 片方を舌で、片方を指先で弄ばれ、背中までくすぐるように柔く愛撫され、涼太の嬌声が蕩けて響く。


「伊織……あん、伊織くん……キスもして……。」


 涼太の手が伊織の顔を引き寄せた。
 薄く開く濡れた唇。そこから恥ずかしげに見え隠れする涼太の舌先。
 伊織がわざと焦らして下唇を舌でなぞると、涼太は切なそうに身をよじる。


「早くぅ。」
「あぁ、ホント、可愛い!」


 大きく塞がれた口内で、肉厚な伊織の舌が、涼太の思考を焼き切るように甘く焦がしていく……。
 伊織の背中を愛しそうに愛撫していた涼太の手は、彼の屹立に辿りつき、その大きさを確かめるように指を這わせた。


「ちょっ、涼太さんっ。」
「伊織……舐めたい……コレ……。」
「えっ?」

  涼太が伊織を押しやり彼を仰向けにする。


 ──涼太さんが、やらしい……。ヤバいっ。


 クチュクチュと涼太の口が淫らに動き、伊織の熱を更に滾らせていた。


「あっ、涼太さん、もうっ。」


 涼太は余裕をなくす伊織の声にうっとり視線を上げ、更に舌と手で熱杭を愛していく。


「涼太さんっ!出るっ、離しっ……くっ……!」


 伊織の腰が涼太の喉を突き上げる。
 涼太は与えられたそれをゆっくり飲み下すと、とろんと微笑んだ。


「すっごい……濃い……ふふっ。」


 涼太は伊織の顔を覗き込み、唇を指でなぞる。


「気持ちよかった?旦那様?」
「──ッ!!……あぁ、もうっ!」


 涼太を組み敷く伊織の逞しい体……。


「煽った責任、取ってね、奥さん。」


 涼太の小さな蕾を押し広げる長い指。
 二本、三本とあっという間に飲み込んだそこは、やっと与えられた快感に痙攣を繰り返した。


「あぁぁんっ!そこっ、ダメぇ!」
「うん、ここ、気持ちいいですよね。」
「んっ、あ、あぁっ!……伊織、早くっ、奥に……早くっ!」
「んん?」


 胎内なかを蹂躙する指と、胸の尖りを転がす舌先。
 涼太の昂りは雫を溢し続け、もう限界だった。


「あっ、イくっ!ぁああぁ!」


 欲を放ちくたりとベッドに沈み込む涼太の脚を開かせ、その間に入る伊織を見て、涼太は慌てて身じろぐ。


「ま、待って……今、イって……。」
「待ちません。我慢しなくて、いいんでしょ?」
「えっ、まっ………伊織くんっ!あぁーー!」


 グチュッとやけに大きく聞こえた水音。
 穿たれた楔はさっきより熱をはらみ、涼太のはらを擦り上げる。


「めちゃくちゃ吸い付いてくる……。あぁ、トロトロ……。」

  伊織は楔をギリギリまで引き出し一気に奥を突き上げる。
 肌がぶつかり合う音が涼太の喘ぎと混ざり合って、伊織の抽送を激しくさせた。


「あ、あっ、あっ、いいっ!伊織くんっ、あんっ!」
「涼太さん、腰揺れてる。やらし。」


 わざと意地悪に言う伊織に、涼太のナカがキュっと締まる。同時に濃くなる涼太の香り。
 伊織は涼太の片脚を肩に乗せ、深く深く彼を孕ませようとでもするように、その入口を小刻みに突いていく。


「あっ、そこ、好き!」
「奥、トントンするの、いいですか?」
「ん、あんっ!」


 涙目で頷き、次第に余裕なく喘ぎ始める涼太。
 こんなにも素直にただ感じている涼太を見るのは初めてで、伊織の昂りもそろそろ限界だった。


「涼太さん!涼太さん!」
「伊織くんっ!あ、あぁ……来てっ!」


 伊織のラストスパートを感じ、愛しそうに両手を伸ばす涼太。
 二人は体の全てを重ねるように、止めどない幸せを感じて高みを越えた。


「愛してる、俺の旦那様……。」
「俺も……。涼太さん、可愛い過ぎ……。」


 二人の甘い唇は互いにしるしを残し合う。
 今はまだ、蕩ける夜の、ほんの入口……。











 
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