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地雷一刀流 地斬刀
しおりを挟む「ちょ、ちょ、ちょー!! なんでこんなところに巨大魔物がぁー!?」
昨日のようにビーチでジュースを売っていたアクトは、いきなり現れた赤いズンゴックを前にして、腰を抜かししている。
そんな彼女へズンゴックの巨大なハサミが襲いかかる。
「うちの可愛いバイトに手を出すなぁー!」
すると突然、飛び上がった人影が癇癪玉を投げつける。
激しい爆発が沸き起こり、赤いズンゴックは怯んだ。
「アクト、今よ! さっさと逃げなさい!」
「ローゼンさん!? なんでここに!? しかも今のって!?」
「そんなの良いから早くっ! こんなところで死んじゃ、ここまで一生懸命バイトしたり勉強したりした意味がなくなっちゃうわ!」
「ッ!?」
「早くっ!」
「ありがとうございます! ローゼンさんも気をつけて!」
そう言ってアクトはその場から走り去った。
これでビーチからの退避は全て終わったようだ。
「トク、今よ!」
「サンキュー! いけ、お前ら!」
「「「「うわぁぁぁぁーー!!!!」」」」
俺の指示を受けて、三姉妹とマインが赤いズンゴックの背面へ飛び込んだ。
本当は俺も加勢してやりたいが、残念ながら愛刀の湊村正丸は、自宅保管中でここにはない。
だから俺は4人とローゼンに指示を送るしかできない。
正直歯痒いが仕方がない。今はできることをするだけだ!
「キュウとシンでまずは牽制! 左右から足止めをしろ!」
「「了解っ!」」
キュウとシンは俺の指示通りにズンゴックの左右から攻撃を加えた。
左右の視界が悪いズンゴックは突然、攻撃されてたじろいでいる。
「コンとマインで奴の右の鋏を叩き壊せ!」
「だぁぁぁぁ!」
「はぁぁぁぁ!」
コンのハルバートと、マインの太刀がズンゴックの巨大な右の鋏を叩き潰す。
一瞬、マインの横顔が渋く歪んだ気がした。
「これで止めよ! イフリートクナイを喰らいなさい!」
飛び上がったローゼンは火属性魔法を付与したクナイを鋭く放った。
クナイは真っ直ぐ頭部へ向かうが、ズンゴックは寸前で残った右の鋏を掲げて、直撃を防ぐ。
しかしこれで、ズンゴックの脅威である巨大な2本の鋏を部位破壊することができた。
あとは一気呵成に責め立てて、討伐するだけ。
そう考えていた俺の目の前で、突然ズンゴックの体が輝きだす。
その異様な光景に、誰もが息を呑んだ。
「まさか、これって!?」
「魔物が魔法を!? んなの聞いたことねぇぞ!?」
「カニ爪アゲイン!」
すっかり2本の爪が再生した赤いズンゴックは、再び大暴れを始めた。
「ちょっとー! いくら部位破壊しても意味ないんですけどぉ!」
「キュウ姉! 愚痴言う前に弓を射ってくれよ!」
「カニ爪ドーン! カニ爪ドーン!」
三姉妹は奮戦するも、無限に再生する爪の前に焦った様子を見せていた。
「こいつただの変異種じゃないわね……」
ローゼンは鋭い眼差しのまま、適宜周囲を飛び回り、ズンゴックの様々な箇所へ攻撃をしかけている。
まるでその動きは、俺にズンゴックの様子を見せつけるように。
さすがは元相棒だな。よくわかってらっしゃる。
「はぁ、はぁ、はぁ……こ、こんな時に某は……!」
マインは太刀を杖にして体を支えていた。
どうやら体力的にきついらしい。
まぁ、海岸マラソンで息が上がっていたくらいだからな。
今後、マインは重点的に体力を強化してやらないと。
だけどそれは後の話だ。
俺は息の上がったマインへ駆け寄ってゆく。
「ほら、これ飲め」
「ト、トクザ殿……かたじけない……」
マインは俺が渡したメガポーションを一気に煽った。
「まだ行けるな?」
「はい……お恥ずかしいところをみせてしまい申し訳ございません……」
「今後は重点的に体力強化だからな? 良いな?」
「かしこまりました……」
「で、それとは別に聞きたいことがある。昨日、地雷一刀流を収めたって言ってたけど、免許皆伝って認識でOK?」
「は、はい! 奥義は極めております!」
頼もしい返事が返ってきた。
これなら行ける、筈。
「よぉーし! じゃあマインの究極奥義をぶっ放してもらおうか!」
「ええ!? 究極奥義をですか……?」
「できないのか? 免許皆伝なのに?」
「いえ、その……実際伝授していただいてから一度も使ったことがなく、自信が……」
どうもマインは、気弱なところもあるらしい。
まぁ、それだけ慎重ってことで、良いところとして考えておこう。
「大丈夫! タイミングは俺が測るし、みんなもバックアップする。だから自信を持って究極奥義を放って欲しい。どうだ?」
「……」
「お前ならできる! 絶対にできる!」
「……わかりました! 頑張ります!」
「うっし! これで交渉成立! んじゃ、俺も少し加わってくるわ!」
「トクザ殿」
「ん?」
「ありがとうございます。なんだかあなたと一緒にいると、まるで自分が強くなったような……なんでもできるような気がしてなりません」
マインはこれまでの中で、一番素敵な笑顔を見せてくる。
やばい、可愛い……! もしかして俺、若返った?
「と、とりあえず! 行ってくるからかな! ちゃんとタイミング見て使うんだぞ!」
「はい! お気をつけて!
マインの弾んだ声を背中に受けつつ、俺も赤のズンゴックへ向けて駆け出してゆく。
「ローゼン、武器だ! なんか武器よこせ!」
「これしかないわよ!」
ローゼンはクナイを一本と癇癪玉を一つを投げ渡してきた。
俺はすかさず癇癪玉を赤いズンゴックへ投げつける。
大したダメージは見受けられなかったが、注意はこちらへ引けたらしい。
「そらよっ!」
「ZUGO!?」
投げ放ったクナイは鋭く、ズンゴックの脚の節に突き刺さる。
すると巨体がよろけ始めた。
「全員脚だ! 脚の節を狙って、奴をその場に釘付けろぉー!」
「「「「了解ッ!!!!」」」」
三姉妹とローゼンはズンゴックの脚の節を中心に攻撃をし始めた。
巨体を支える8本の足が次々と吹っ飛ばされてゆく。
しかし次の瞬間にはもう、ズンゴックの目が輝きを放ち、破壊された足を再生させ始める。
それでもすぐには動き出せそうにない。
ーーそして背中が強い覇気を感じ取り、泡立った。
「全員退避! 巻き込まれるぞぉ!」
俺の叫びに呼応し、皆は一斉にズンゴックから飛び退いた。
「喰らえっ! 地斬刀!」
【地斬刀】ーー地雷一刀流の奥義の一つ。
収束させた魔力を刃の形に変えて、地面を疾駆させる奥義の一つだ。
マインは太刀へ集めた魔力を地面へ叩き込む。
太刀は砂塵を巻き上げ、金色の魔力の刃が地面に沸き起こった。
「ーーッ!!」
マインは顔をしかめ、一瞬動きを止めてしまっていた。
「ZUGO OOO!!」
タイミング悪く、脚を再生させたズンゴックがマインへ突撃を開始する。
「行かせるかぁー!」
「ZUGO N!!」
俺はクナイを投げつけ、赤いズンゴックを怯ませる。
「今だ! やれ、マイン!」
「だぁぁぁぁぁ!」
マインは気合の声を上げた。
太刀に小柄な体を翻弄されつつも、砂浜へ発生させた魔力の刃へフルスイングを打ち込む。
刃は矢よりも早く地を駆け、そして赤のズンゴックを頭部ごと真っ二つに両断する。
さすがに魔力の発生源らしい頭をやられてしまえば、再生はできないらしい。
辺りにはカニの焼けた香ばしい匂いが立ち込めるのだった。
「はぁ、はぁ、はぁ……で、できた……!」
「やるじゃねぇか、マイン!」
真っ先のコンがマインへ飛びついて、笑顔を浮かべた。
「マインちゃん、すごい! かっこいい! 素敵!」
「マイマイ、グッジョブ!」
「あ、ありがとうございます!」
三姉妹に囲まれて、マインはようやく頬を緩めたのだった。
どうやら本人も多少、自分の技に思うところがあるらしい。
きっと俺と同じことを考えているのだろう。
この点は、要改善箇所だな。
でもなんで、マインは体格に合わない"太刀"なんて使ってるんだろう?
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