追放された成長スキル持ちと三姉妹冒険者~彼は希望を取り戻し、勇者は没落す~

シトラス=ライス

文字の大きさ
33 / 36

新生活スタート!

しおりを挟む

 バカンスから一週間が経ち、俺たちは平常運転に戻った。

 しかしマインはあの夜を最後に『諸々とありますので暫しのお別れ! さらば!』と言って、どこかへ行ってしまった。

 まぁコンスコン地方の次期領主だし、色々とあるんだろう。

「おー! また載ってる!」

「コン姉見せて! シンにも見せて!」

 コンとシンは今月号の"月刊冒険者野郎ども"を読んでハイテンション。
 そこには剣術大会でのマインの優勝や、その後の事件を解決した三姉妹の活躍が描かれていた。
どうやら、あの場にササフィさんもいたらしく、きっちり記事にしてくれたらしい。
ありがたいことだった。
そのおかげで……

「今日の分の手紙です」

 ポストから大量の封書をもったキュウがやってくる。

 大半は俺への訓練士としての依頼なんだけど……

「なになに……ギシリア教団からの、護衛任務……50万Gか……キュウ、スケジュールは?」

「来週でしたら丸々空いてますね」

 キュウはすかさず、スケジュール帳から予定を教えてくれる。

 こうしてサク三姉妹が有名になったことで、冒険者ギルドを介さず、こうして直接依頼が舞い込んでくるようにもなっていた。

 未だに残っている三姉妹の借金の件もあって、今はこういう依頼を積極的に受けるようにしている。
しかし俺にはまた別の目的があった。

ーー"右腕が甲殻に覆われた魔族"

 奴は昔から、大きな出来事に介入し、悪さをする輩だ。
 こうして大きめの依頼を受け続けていれば、いずれ奴に巡り会う筈。

 ようやく見つけた仇敵……奴に再会してしまった以上、俺は薄っぺらい人生を諦めた。
いつまでも萎びているわけには行かなくなった。
 シオンとサフトの仇を取るため、10年前のあの出来事に決着をつけるために……

「そういえばずっと空き家だったお隣に、とってもお金持ちの方がお引っ越しされているみたいですね?」

「ふーん、そうなんだ」

 玄関戸の向こうから、呼び鈴の音が聞こえてくる。
 多分、今さっきキュウが言っていた、お隣さんのご挨拶かなんかだろう。

「お久しぶりです、トクザ殿!」

「おう、やっぱマインだったか」

 妙にキュウが強調したから、なんとなくそう思っていたけどね。

「はい! 貴方のマイン、僭越ながら本日より隣人となりました! どうぞよろしくお願いいたします!」

「こちらこそ」

「まぁ、本当は同じ屋根の下が良かったのですけどね……」

 マインは残念そうにそういった。
 まぁ、でも、三姉妹が住んでいるから転がり込まれても困ってしまう。

「よぉ、マイン! 久しぶり! さっそくやろうぜ!」

「ええ!?」

 コンにそう言われ、マインは顔を真っ赤に染める。
 無理もない……だってあの夜、俺と終わった後に、マインはコンに相当可愛がれてたもんなぁ……。

「あ、あの、その! やりあうとはいったいどちらを……?」

「ん? んなもん決まってるじゃねぇか!」

 コンは壁に立てかけてあったハルバートを掲げて見せた。
マインはホッとしたような、だけど少し残念そうに息を吐く。

「どうかした?」

「あ、い、いえ!」

「あららー? マインちゃん、今何考えてたのかなぁ?」

「マイマイ、エロエロ」

「ち、違いますっ! トクザ殿、なんとかいってくだされ!!」

 なんだかんだでマインと三姉妹はとっても仲良しだ。
門下生同士が仲がいいことが嬉しいし、これほどやりやすいこともない。

「こ、こんにちは!」

 と、マインの後ろからひょっこりアクトが姿を表す。

「よぉ、アクト久しぶり。てか、お前、俺の家知ってたっけ?」

「ローゼンさんに伺いました! こ、これ、作ったんでお味味どうぞ! 新作のチーズケーキです!」

 アクトは大きな箱を差し出してきた。
 まぁ、こうしてアクトが訪ねてきてくれるのは嬉しいんだけど……
なんでローゼンのやつは、ほいほい俺の住所を他人に教えたりするのかなぁ……

「ごめんください、トクザトレーナー!」

 今度はササフィさんが現れた。

「やぁ。で、ササフィさんはどんな御用件?」

「今日は仕事ではなく個人的な用事で……あの、約束の件……」

「約束?」

「飲みのスケジュールについて……」

 ありゃ? 本気にしててくれたんだ?

「そうだなぁ……キュウ、俺のスケジュールは……」

「空いてません! びっしりです!」

 なんだか妙に怖い、キュウの声が聞こえてきた。
さっきは来週なら空いてるって言ってたような。

「クンクン、クンクン……お前のケーキ、トーさんが食べる前にシンが毒味する!」

「あ、ちょっとぉ! やめてよぉ!!」

 アクトとシンはケーキの入った箱を挟んで揉み合いを始める。

「おっし、マイン! 表でろ! やるぞ!」

「ええ!? い、いや、まずはこんな状況ですのでトクザ殿の助力を……」

 なんだか皆俺を放っておいて、てんやわんやの大騒ぎを始める。

「2時間……いえ、1時間でも良いんです! トクザトレーナーのスケジュールに空きはありませんか!?」

「ありません! あんまりしつこいと、もう取材受けてあげませんよ!?」

「ひーん! それは困りますぅー!」

 ササフィさんはキュウにピシャリとそう言い放たれて涙目だった。

「おらぁー! マイーン!」

「わわ! いきなり全力はやめてくださいよぉー!」

 庭ではマインがコンに追いかけ回されている。

「だから離しなさいよ、チビ!」

「離さない! 毒味はシンの役目ぇー!」

 アクトとシンはボロボロになった箱の奪い合いを続けている。

「なんとか言ってくださいよ先生!」
「なんとか言ってくれよトク兄!」
「なんとか言うトーさん!」
「なんとか説明してくださいトクザトレーナー!」
「なんとかしてくださいトクザさん!」

 5人の声を一斉に浴びて、どうしたら良いかわからない俺だった。

 まぁ、良いかこういうのもたまには……賑やかだし……いや、賑やかすぎるか?

「まっ、みんな仲良くな?」

 こうして俺の新生活がまたスタートしたのである。


⚫️⚫️⚫️


 トクザ邸の屋根の上。
そこにはローゼンの姿があった。
彼女はてんやわんやのトクザ邸の光景を微笑ましそうな笑みを浮かべている。

「シオン、サフト……トクは今、元気で楽しく過ごしているわよ。ようやく貴方達のことを少しずつだけど乗り越えようとしているわ……」

 同じ場にいて、同じ選択を迫られた彼女だからこそ……ローゼンは幸せそうなトクザを見て、胸を熱くしている。

「だから、ずっとずっと見守っていてあげてね。彼がこれからも幸せであり続けられるように……お姉さんからのお願いよ?」

 ローゼンは空へ向かってそう呟くと、飛び去ってゆくのだった。

 10年前に封じた暖かい疼きを、再び胸に感じながら……
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

処理中です...