拾われた後は

なか

文字の大きさ
33 / 53

33.絡まれました

   少し離れた所から、言い争うような声が聞こえてきた。ちょっとガラの悪い大柄な男が女性に絡んでいるようだった。パシンと音が響き、女性が頬を叩いた。男が大きな声を出し、女性の手首を掴んでいた。周りの人は少し遠巻きに見ている。

   どうしよう、とオロオロしているとカイルさんが立ち上がる。

「ハルカ、絶対ここでじっとしてろ。いいな。」

   僕が頷くと、その騒ぎの方に駆けていった。それからは一瞬だった。その男の手首を掴んで背中側へぐるっと回して拘束し、地面に倒す。背中に片膝を乗せて動けないようにしている。
   僕の方まで歓声と男の呻き声が聞こえたきた。


   カイルさんすごい!
   こんなに強かったんだ。男として憧れるなぁと感心していたら、僕とカイルさんの間に2人の男が立った。
   その人たちを見ると、すぐそばで僕をニヤニヤ見ていた。耳が変なのがバレたのかな、と一瞬ヒヤリとする。

「お嬢ちゃんかわいいね。ひとり?」

   気持ちの悪い猫撫で声に、ぞわりと鳥肌が立つ。

「一緒に来てる人がいるので、」

「えー、今ひとりでいたでしょ。そんな薄情な奴ほっとしてさ、俺たちとあっちいこうよ。」

  断っても去る気配がない。なにこれカツアゲでもされるのかな。僕お金持ってないんだけど。

「いえ、結構ですから。痛っ。」

   そう言ってる途中にぐいっと強く腕を引かれ、無理矢理立たされる。手を振りほどこうと体を捻って暴れると、頭のリボンが少しズレてしまう。

「何これ、ニセモノ?亜種?ま、珍しくてもかわいいからいーや、ほら、あっちいこうよ。」

   ズルズルと引きずられそうになり、泣きたくなったが、必死で抵抗する。

「離せっ。」

「その汚い手を離せ。」

   カイルさんの声がしたと思ったら、僕の腕を握っていた男が倒れた。次の瞬間、驚いているもう1人の男の腹にカイルさんの足がめり込む。倒れた2人を足蹴にすると、動かなくなった。
   大丈夫かな、かすかにピクピクしてるけど。

「ハルカ!大丈夫かっ。」

  フードを被せられ、縦に抱き上げられる。顔が近くに見えて安心する。

「はい、ありがとうございます。」

   ちょっと強く握られたから痣になってるかもしれないけど、関節も痛くないし平気だろう。

「大佐、申し訳ありません!お連れの方に怪我は有りませんか。」

  フードからのぞくと、軍服を着た人が倒れた男達を縄で縛っていた。警備担当なのだろうか、もう1人がカイルさんに近づく。

「ご苦労様。大丈夫のようだ。ただ酔っ払いが増える時間だ。気をぬくな。応援が必要なら呼ぶように。」

「はっ。」

  キリッとした返事。軍は警察みたいな仕事もあるらしい。
   お祭りの日なのに大変だな。カイルさんは降ろしてくれなさそうだから、そのままでぺこりと頭を下げてみた。

「お仕事、お疲れ様です。ありがとうございます。」

「俺たちは帰るが、よろしくな。」

   カイルさん、ごみ!と言うと、テーブルの上にまとめておいた袋を片手で取り、そのまま歩き出す。
   直立不動の警備の人たちに、首に手を回して捕まったままだったけど、一応さようなら、とだけ挨拶してその場を離れた。
   

感想 15

あなたにおすすめの小説

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

神子の余分

朝山みどり
BL
ずっと自分をいじめていた男と一緒に異世界に召喚されたオオヤナギは、なんとか逃げ出した。 おまけながらも、それなりのチートがあるようで、冒険者として暮らしていく。 途中、長く中断致しましたが、完結できました。最後の部分を修正しております。よければ読み直してみて下さい。

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

噂の冷血公爵様は感情が全て顔に出るタイプでした。

春色悠
BL
多くの実力者を輩出したと云われる名門校【カナド学園】。  新入生としてその門を潜ったダンツ辺境伯家次男、ユーリスは転生者だった。  ___まあ、残っている記憶など塵にも等しい程だったが。  ユーリスは兄と姉がいる為後継者として期待されていなかったが、二度目の人生の本人は冒険者にでもなろうかと気軽に考えていた。  しかし、ユーリスの運命は『冷血公爵』と名高いデンベル・フランネルとの出会いで全く思ってもいなかった方へと進みだす。  常に冷静沈着、実の父すら自身が公爵になる為に追い出したという冷酷非道、常に無表情で何を考えているのやらわからないデンベル___ 「いやいやいやいや、全部顔に出てるんですけど…!!?」  ユーリスは思い出す。この世界は表情から全く感情を読み取ってくれないことを。いくら苦々しい表情をしていても誰も気づかなかったことを。  寡黙なだけで表情に全て感情の出ているデンベルは怖がられる度にこちらが悲しくなるほど落ち込み、ユーリスはついつい話しかけに行くことになる。  髪の毛の美しさで美醜が決まるというちょっと不思議な美醜観が加わる感情表現の複雑な世界で少し勘違いされながらの二人の行く末は!?    

【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。 処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。 なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、 婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・ やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように 仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・ と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ーーーーーーーー この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に 加筆修正を加えたものです。 リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、 あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。 展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。 続編出ました 転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668 ーーーー 校正・文体の調整に生成AIを利用しています。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね

ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」 オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。 しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。 その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。 「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」 卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。 見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……? 追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様 悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。