9 / 53
9.いってらっしゃい
しおりを挟む
朝食後、僕がいる部屋をカイルさんが訪れた。銀の縁取りのある黒い軍服姿で、腰には剣を差している。
中世の騎士とか物語の中の人のようだ。耳がやはりかわいく思えてしまうけど、キリっとしたカイルさんは本当にかっこいい。女性にモテそうだ。
ソファから小走りで彼の元に近づく。
「ハルカ、俺は仕事にいかなければならない。マリアに頼んであるが、悪いが屋敷から出ないで待っていてくれないか。
報告もかねて王宮に行き、何かわからないか調べてみる。」
「分かりました、大人しくお留守番しておきます。気をつけていってきてください。」
お仕事が何かとか、王宮とかよく分からないけど出勤前に足留めするのは悪いと思い、了承の気持ちだけ伝えた。
後でマリアさんに教えてもらおう。
「一緒にいてやれなくてすまない。」
「いいえ、お仕事頑張ってください。」
「これを。」
カイルさんが僕の首に何かをかけた。手にしてみると、小さなコインみたいなものがついたペンダントだった。コインには百合に似た花と剣がデザインされている。年代物なのか小さな傷がついているが、すごくきれいだ。
「何もないと思うが、御守りだ。何かあればそれを見せろ。」
「ありがとうございます!
あっ僕、お見送りします!」
「いやここでいい。いってくる。」
「はい。いってらっしゃい。」
見上げるとカイルさんが大きな手で僕の前髪を上げた。そしてそこに屈んだカイルさんの唇が当たる。
え?
それがキスだと気付いたのはドアがパタンとしまったしばらく後だった。
こちらの世界のいってきますの挨拶かな。日本人にはハードル高いよ……。
額に手を当てると顔全体が熱かった。僕はマリアさんがノックするまで、その場に立ち尽くした。
中世の騎士とか物語の中の人のようだ。耳がやはりかわいく思えてしまうけど、キリっとしたカイルさんは本当にかっこいい。女性にモテそうだ。
ソファから小走りで彼の元に近づく。
「ハルカ、俺は仕事にいかなければならない。マリアに頼んであるが、悪いが屋敷から出ないで待っていてくれないか。
報告もかねて王宮に行き、何かわからないか調べてみる。」
「分かりました、大人しくお留守番しておきます。気をつけていってきてください。」
お仕事が何かとか、王宮とかよく分からないけど出勤前に足留めするのは悪いと思い、了承の気持ちだけ伝えた。
後でマリアさんに教えてもらおう。
「一緒にいてやれなくてすまない。」
「いいえ、お仕事頑張ってください。」
「これを。」
カイルさんが僕の首に何かをかけた。手にしてみると、小さなコインみたいなものがついたペンダントだった。コインには百合に似た花と剣がデザインされている。年代物なのか小さな傷がついているが、すごくきれいだ。
「何もないと思うが、御守りだ。何かあればそれを見せろ。」
「ありがとうございます!
あっ僕、お見送りします!」
「いやここでいい。いってくる。」
「はい。いってらっしゃい。」
見上げるとカイルさんが大きな手で僕の前髪を上げた。そしてそこに屈んだカイルさんの唇が当たる。
え?
それがキスだと気付いたのはドアがパタンとしまったしばらく後だった。
こちらの世界のいってきますの挨拶かな。日本人にはハードル高いよ……。
額に手を当てると顔全体が熱かった。僕はマリアさんがノックするまで、その場に立ち尽くした。
372
あなたにおすすめの小説
イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね
ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」
オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。
しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。
その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。
「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」
卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。
見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……?
追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様
悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
美人王配候補が、すれ違いざまにめっちゃ睨んでくるんだが?
あだち
BL
戦場帰りの両刀軍人(攻)が、女王の夫になる予定の貴公子(受)に心当たりのない執着を示される話。ゆるめの設定で互いに殴り合い罵り合い、ご都合主義でハッピーエンドです。
無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~
紫鶴
BL
早く退職させられたい!!
俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない!
はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!!
なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。
「ベルちゃん、大好き」
「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」
でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。
ーーー
ムーンライトノベルズでも連載中。
祝福という名の厄介なモノがあるんですけど
野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。
愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。
それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。
ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。
イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?!
□■
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
完結しました。
応援していただきありがとうございます!
□■
第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます
オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。
魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる