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第61話 知の天使様は余分な知識がある分色々と意地悪でした
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仰向けに押し倒された俺は、思いきり後頭部を床に打ち付けてしまい、一瞬目の前に火花が飛ぶ。
痛みを堪えながら薄っすら目を開けると――。
「ナオヤ……」
アウロラが真剣な表情で俺の左半身を抑え、
「大人しくしろ」
ゼアルが俺の右半身を抑えながら、上気した瞳で俺を見つめていた。
ここまで完璧に抑え込まれていては、逃走など不可能。言いくるめる事も無理だろう。
何よりも、ほんの少しだけ直夜自身期待している部分もあった。
「ま、待……」
「い、イイ事してあげるから、ね」
アウロラにそう言われただけで、全身から力が抜けていき、抵抗する気力が萎えていく。
もう無理だった。
魅力的すぎる提案を前に、理性何て吹き飛んでしまっていた。
二人の顔がどんどん近づいてくる。
俺はそれをただ茫然と見ている事だけしかできなくて……。
「んっ」
マシュマロよりも柔らかく、太陽の光よりも熱いアウロラの唇が左頬に押し当てられる。
「ナオヤ……」
緊張で力が入っているからか、少し硬めの唇が俺の右頬をついばんでいく。
右のゼアルも、左のアウロラも。どちらがどちらとも、麻薬の様に俺の頭を快楽と幸福で満たしてくれる。
「あ……」
何と言えばいいのか、何を考えればいいのか、全く分からない。
俺の脳は自らが発した熱でぐつぐつに煮えたぎり、正常な思考なんて絶対に出来ない状態だ。
俺の思考を占めるものはたった一つ。
目の前に居る二人の女性という至上のご馳走を、思う様喰らい尽くしたいという事だけだった。
だが、俺の両手は封じられているし、両側からキスされている為頭を動かすことも出来ない。
俺はただその場に寝転がって、世界最高の幸福を甘受することしかできなかった。
やがて二人がどちらからともなく顔を離す。
二人共に、どうだった? と心配そうな顔で俺の事を覗き込んでくる。
最高だ、と返したかったが、感動で震える口は意味のある言葉を紡ぎ出すことはなかった。
そのまま俺たちは見つめ合い…………一分経ち、二分経ち、三分くらい経ったところで、なんとな~く、まさかな~という思考が忍び寄って来る。
見つめ合ったまま、更に時間が経つと、茹で上がっていた俺の脳みそも少しだけだが冷えてきて、ある程度冷静に物事が見える様になってきた。
…………もしかしなくても、これで終わり?
こ、この先とか……無いの?
いや、キスしてもらっただけでも年齢=彼女居ない歴な俺としては滅茶苦茶嬉しい事なのだが、期待していたことがことだけに、少し落差が激しいというか物足りないというか……。
「おやおや~、ナオヤ様。どうされましたか? まるで物足りないなぁとでも思ってらっしゃるようなお顔をされてますね」
忍び笑いと共に、アウロラ達とは反対方向からヴァイダの首がにょきっと視界の中に生えてくる。
彼女は意地の悪そうな笑みを称え、俺の思っていたことをズバリ言い当ててしまう。
「い、いやいや、そんな事は在りませんの事よ?」
「ですがナオヤ様の神器は発射準備完了されてらっしゃいますよ」
おい天使ゴルァ! アンタの父親が作った物を下ネタに使ってくんじゃねえ!
泣いて悲しむぞ!
「つか透視してんの!?」
「はい、それはもうばっちりと」
「いやぁぁぁぁっ!!」
もうお婿に行けない……。
「さっきから何の話してんだ、お前らは」
ゼアルが不機嫌そうに鼻を鳴らす。
彼女は発情とか言い出したりするところを見るに、そういった事への知識は非常に少ないのだろう。もしかしたら、エスから始まる行為について、まったく知識が無いのかもしれなかった。
「そ、そうね。まったく分からないわ!」
あ。アウロラは絶対知ってるなコレ。
露骨に視線を逸らして知らないふりをしてやがる。
「ちなみにアウロラ様はナオヤ様と同じ様に、身も心も準備万端ですよ」
「ぶほっ!」
「――――っ!!」
もし人間が湯沸かし器になれるのであれば、今のアウロラは絶対に火山を噴火させられるだろうというぐらいの勢いで熱く、真っ赤になると、
「いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
なんて言いながら、顔を両手で覆って俺の上から飛退き、そのまま敷いてあった寝具に頭から突っ込んで行く。
「違うの違うの違うのぉぉぉっ!! 私そんなにエッチな娘じゃないもんんんっ!!」
「ちなみに結婚するのに必要な好感度を100としますと、アウロラ様がナオヤ様へ抱いている好意は240程度になります」
「やぁめてぇぇぇぇっ!!」
「おい、ヴァイダお前……」
さすがに見かねたゼアルが、助け舟を出そうとして……。
「ゼアルさんは280くらいですよ。ナオヤ様の事を好きすぎですね」
逆に撃墜されてしまう。まさに藪蛇といったところだ。
「うゃわぁぁぁぁっ!!」
第二段のロケットが発射され、同じ様に寝具の中に突っ込んで行く。
都合二つのお尻がこちらに向くことになってしまい、俺はそれ以上彼女達を見る事を止めた。
「まったくそういう感情を知らなかった分激しいですね、ゼアルさんは」
絶対わざとだこの悪魔。
滅茶苦茶この状況を楽しんでやがる。
しかしこの天使、他人の心の中も魔法で読んでしまえるのか!?
「いいえ、顔の表情や、脳神経のどこが強く反応しているか等を見て判別しているだけにすぎませんよ」
俺は考えただけだというのに、ヴァイダはかなり的確にその問いへの答えを口にする。
さすがは神の知を受け継いだ天使もうね……。
こんな事に使うんじゃねえ……というか使わないでくださいお願いします。
「私、こんなに楽しいのは久しぶりです!」
「うわぁ、良い笑顔」
ホントにもう滅茶苦茶いい笑顔で、会ったばかりの印象は地味目な美人さんって感じだったのに、今は誰もが思わず振り返るほどの美人さんって感じだった。
笑顔ひとつで人の印象ってここまで変わるのかと驚くばかりだ。
俺はため息をついた後に、よっこらせと言いながら、気持ち俺の分身を手で隠す様にして立ち上がる。
「で~あ~……俺の何を見たかったんですか?」
それを言った瞬間、ヴァイダの顔から笑顔が消え――しかし消えたのも一瞬で、もう一度笑顔が灯る。
「それを言ってしまったら減点ですよ。最後まで気付いてないふりをしてください」
ゼアルとアウロラを煽って焚きつけたのはヴァイダだ。
そして色々と冗談を飛ばしながら会話に交じって茶化しまくっていたのに、いざ事が進み始めれば静かに推移を見守り、動かないとなるとカンフル剤を撃ち込む。
目的があると考える方が自然だった。
「ゼアルさんがあれほどご興味を持ってらっしゃったナオヤ様。私も興味が湧いたのですよ」
「そうですか」
及第点は取れたのだろうか。それは分からないが、それ以上突っこんで聞くような無粋な事をすれば、確実に落第だろう。
「ちなみに今一番興味があるのは、天使と人間の間に子どもは産まれるのか、ですね」
「ゼアルとしろと!?」
「したくないのですか?」
「したいよ! じゃない、そういう話じゃなくって!」
思わず本音が駄々洩れになってしまい、俺は後悔と引っ掻き回されたストレスで頭を掻きむしる。
この絶対に自分が負けない位置に居て、他人を弄りまくる天使に出来る事は一つ。
「ええっと、とにかく……お願いします手加減してください」
俺は素直に頭を下げた。
「双方が望む方向へ加速しているのだからいいではありませんか」
「俺たちの速度で進めさせてくださいお願いします」
関係が一気に進み過ぎては俺の体と心がもたない。
それよりゼアルのこの勢いでそういう事をしてしまうと……守護の塔が失楽園になりかねなかった。
「仕方ありませんね~。それじゃあ少しだけ手加減してあげますよ」
「助かります」
「今度ゼアルに性知識を教えてさしあげるだけにしておきます」
「思いっきりアクセル踏んでんじゃねえか!」
まさか本当にゼアルと俺で子作り実験企んでねえだろうな!?
俺が更に突っ込もうとした瞬間――。
痛みを堪えながら薄っすら目を開けると――。
「ナオヤ……」
アウロラが真剣な表情で俺の左半身を抑え、
「大人しくしろ」
ゼアルが俺の右半身を抑えながら、上気した瞳で俺を見つめていた。
ここまで完璧に抑え込まれていては、逃走など不可能。言いくるめる事も無理だろう。
何よりも、ほんの少しだけ直夜自身期待している部分もあった。
「ま、待……」
「い、イイ事してあげるから、ね」
アウロラにそう言われただけで、全身から力が抜けていき、抵抗する気力が萎えていく。
もう無理だった。
魅力的すぎる提案を前に、理性何て吹き飛んでしまっていた。
二人の顔がどんどん近づいてくる。
俺はそれをただ茫然と見ている事だけしかできなくて……。
「んっ」
マシュマロよりも柔らかく、太陽の光よりも熱いアウロラの唇が左頬に押し当てられる。
「ナオヤ……」
緊張で力が入っているからか、少し硬めの唇が俺の右頬をついばんでいく。
右のゼアルも、左のアウロラも。どちらがどちらとも、麻薬の様に俺の頭を快楽と幸福で満たしてくれる。
「あ……」
何と言えばいいのか、何を考えればいいのか、全く分からない。
俺の脳は自らが発した熱でぐつぐつに煮えたぎり、正常な思考なんて絶対に出来ない状態だ。
俺の思考を占めるものはたった一つ。
目の前に居る二人の女性という至上のご馳走を、思う様喰らい尽くしたいという事だけだった。
だが、俺の両手は封じられているし、両側からキスされている為頭を動かすことも出来ない。
俺はただその場に寝転がって、世界最高の幸福を甘受することしかできなかった。
やがて二人がどちらからともなく顔を離す。
二人共に、どうだった? と心配そうな顔で俺の事を覗き込んでくる。
最高だ、と返したかったが、感動で震える口は意味のある言葉を紡ぎ出すことはなかった。
そのまま俺たちは見つめ合い…………一分経ち、二分経ち、三分くらい経ったところで、なんとな~く、まさかな~という思考が忍び寄って来る。
見つめ合ったまま、更に時間が経つと、茹で上がっていた俺の脳みそも少しだけだが冷えてきて、ある程度冷静に物事が見える様になってきた。
…………もしかしなくても、これで終わり?
こ、この先とか……無いの?
いや、キスしてもらっただけでも年齢=彼女居ない歴な俺としては滅茶苦茶嬉しい事なのだが、期待していたことがことだけに、少し落差が激しいというか物足りないというか……。
「おやおや~、ナオヤ様。どうされましたか? まるで物足りないなぁとでも思ってらっしゃるようなお顔をされてますね」
忍び笑いと共に、アウロラ達とは反対方向からヴァイダの首がにょきっと視界の中に生えてくる。
彼女は意地の悪そうな笑みを称え、俺の思っていたことをズバリ言い当ててしまう。
「い、いやいや、そんな事は在りませんの事よ?」
「ですがナオヤ様の神器は発射準備完了されてらっしゃいますよ」
おい天使ゴルァ! アンタの父親が作った物を下ネタに使ってくんじゃねえ!
泣いて悲しむぞ!
「つか透視してんの!?」
「はい、それはもうばっちりと」
「いやぁぁぁぁっ!!」
もうお婿に行けない……。
「さっきから何の話してんだ、お前らは」
ゼアルが不機嫌そうに鼻を鳴らす。
彼女は発情とか言い出したりするところを見るに、そういった事への知識は非常に少ないのだろう。もしかしたら、エスから始まる行為について、まったく知識が無いのかもしれなかった。
「そ、そうね。まったく分からないわ!」
あ。アウロラは絶対知ってるなコレ。
露骨に視線を逸らして知らないふりをしてやがる。
「ちなみにアウロラ様はナオヤ様と同じ様に、身も心も準備万端ですよ」
「ぶほっ!」
「――――っ!!」
もし人間が湯沸かし器になれるのであれば、今のアウロラは絶対に火山を噴火させられるだろうというぐらいの勢いで熱く、真っ赤になると、
「いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
なんて言いながら、顔を両手で覆って俺の上から飛退き、そのまま敷いてあった寝具に頭から突っ込んで行く。
「違うの違うの違うのぉぉぉっ!! 私そんなにエッチな娘じゃないもんんんっ!!」
「ちなみに結婚するのに必要な好感度を100としますと、アウロラ様がナオヤ様へ抱いている好意は240程度になります」
「やぁめてぇぇぇぇっ!!」
「おい、ヴァイダお前……」
さすがに見かねたゼアルが、助け舟を出そうとして……。
「ゼアルさんは280くらいですよ。ナオヤ様の事を好きすぎですね」
逆に撃墜されてしまう。まさに藪蛇といったところだ。
「うゃわぁぁぁぁっ!!」
第二段のロケットが発射され、同じ様に寝具の中に突っ込んで行く。
都合二つのお尻がこちらに向くことになってしまい、俺はそれ以上彼女達を見る事を止めた。
「まったくそういう感情を知らなかった分激しいですね、ゼアルさんは」
絶対わざとだこの悪魔。
滅茶苦茶この状況を楽しんでやがる。
しかしこの天使、他人の心の中も魔法で読んでしまえるのか!?
「いいえ、顔の表情や、脳神経のどこが強く反応しているか等を見て判別しているだけにすぎませんよ」
俺は考えただけだというのに、ヴァイダはかなり的確にその問いへの答えを口にする。
さすがは神の知を受け継いだ天使もうね……。
こんな事に使うんじゃねえ……というか使わないでくださいお願いします。
「私、こんなに楽しいのは久しぶりです!」
「うわぁ、良い笑顔」
ホントにもう滅茶苦茶いい笑顔で、会ったばかりの印象は地味目な美人さんって感じだったのに、今は誰もが思わず振り返るほどの美人さんって感じだった。
笑顔ひとつで人の印象ってここまで変わるのかと驚くばかりだ。
俺はため息をついた後に、よっこらせと言いながら、気持ち俺の分身を手で隠す様にして立ち上がる。
「で~あ~……俺の何を見たかったんですか?」
それを言った瞬間、ヴァイダの顔から笑顔が消え――しかし消えたのも一瞬で、もう一度笑顔が灯る。
「それを言ってしまったら減点ですよ。最後まで気付いてないふりをしてください」
ゼアルとアウロラを煽って焚きつけたのはヴァイダだ。
そして色々と冗談を飛ばしながら会話に交じって茶化しまくっていたのに、いざ事が進み始めれば静かに推移を見守り、動かないとなるとカンフル剤を撃ち込む。
目的があると考える方が自然だった。
「ゼアルさんがあれほどご興味を持ってらっしゃったナオヤ様。私も興味が湧いたのですよ」
「そうですか」
及第点は取れたのだろうか。それは分からないが、それ以上突っこんで聞くような無粋な事をすれば、確実に落第だろう。
「ちなみに今一番興味があるのは、天使と人間の間に子どもは産まれるのか、ですね」
「ゼアルとしろと!?」
「したくないのですか?」
「したいよ! じゃない、そういう話じゃなくって!」
思わず本音が駄々洩れになってしまい、俺は後悔と引っ掻き回されたストレスで頭を掻きむしる。
この絶対に自分が負けない位置に居て、他人を弄りまくる天使に出来る事は一つ。
「ええっと、とにかく……お願いします手加減してください」
俺は素直に頭を下げた。
「双方が望む方向へ加速しているのだからいいではありませんか」
「俺たちの速度で進めさせてくださいお願いします」
関係が一気に進み過ぎては俺の体と心がもたない。
それよりゼアルのこの勢いでそういう事をしてしまうと……守護の塔が失楽園になりかねなかった。
「仕方ありませんね~。それじゃあ少しだけ手加減してあげますよ」
「助かります」
「今度ゼアルに性知識を教えてさしあげるだけにしておきます」
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