悪女は毒花を食む

oro

文字の大きさ
2 / 13

2

しおりを挟む
一瞬心臓が止まるほどの冷水をかけられて、私の意識は現実へと引き戻されました。

…嗚呼、そういえば捕まってしまったのでしたわね。

両手足を手錠で繋がれ、ドレスもズタズタになって…とても淑女らしくありませんわ。
目の前で下卑た笑みを浮かべるのは…嗚呼、麻薬に手を出した悪徳商人でしたわね。名前は忘れてしまいましたけれど。
どうやら私が…いいえ公爵家が近々仕掛けてくるのは分かっていたようです。
一体どこから情報が漏れてしまったのでしょうね。

この部屋…密室のようですけれど、明らかに拷問部屋とでも言うような、殺風景な部屋ですわ。
手錠も手を切り落とさなければ取れないほど頑丈なものでは無いようですし、早く屋敷に帰ってお父様に報告しなければいけませんね。

「このようなお見苦しい姿で申し訳ないのですが、ここは何処なのか教えて頂けませんか?」

目の前にいるのは二人の中年男性。1人の体格はふくよかな肉付きで、もう1人は中肉中背。

「ここは下町で俺が借りてる倉庫だ。住宅街からも離れてるから、お嬢ちゃんが泣き叫んだところで外のヤツらには聞こえねぇよ。」

なるほど…おおよそ屋敷までは歩いて5.6時間と言った所でしょうか。良い情報を頂きました。

「態々お答え頂きありがとうございます。ではお礼と言ってはなんですが…私のを貰っては頂けませんか?」

あざと過ぎず少し官能的な声に、少し涙腺を刺激して眉を下げて涙目で男性達を見上げますの。
経験の少ない男ならばこれだけで十分だと、先生やローズお姉様からは教わっていますわ。

「フヒッ。お嬢ちゃん、よく分かってんじゃねぇか…。」

「おい、罠かもしれないから気をつけろよ!」

ふくよかな男性は見た目の通り欲望に忠実なようですが、中肉中背の男性は少し疑り深いようです。

「罠だなんてそんなッ…!一体この状態の私に何が出来るというのです…?」

儚げに、まるで恥辱に耐える健気な女の子のように上目遣いで説得すれば、男性はうっ、と苦しそうな表情で固まりました。
そう。きっと彼には私が何か仕掛けていると分かっているのでしょう。だって私はあのブラックロペス公爵家の娘なのですから。
なんの策も講じず、まるで馬鹿の一つ覚えのようにナイフを持って特攻し、そう簡単に捕まるわけがないのです。
けれど彼はそこまで分かっていながら、この私の計算し尽くされた言動によって掻き立てられた欲に抗えないのです。
だって人間は自己中心的で欲に素直な生き物なのですから。

「その通りだ!大丈夫。俺が優しくお嬢ちゃんの初めてを奪ってやるからよ。」

「ではどうか…接物から…。私、男性と接物をしたことがありませんの…。」

花も恥じらう乙女のようにそうお願いすれば、男性はまるで餌を貪る豚のように食いついて来ましたわ。
嗚呼、なんて臭くて汚くて下品なのでしょう。
私は自分の唾液を男性の口の中にねじ込むと、まるで初めての接物に苦しむ乙女のように顔を逸らしました。
 
以前ならば吐き気を催す程の嫌悪感を抱いていましたが、慣れというものは恐ろしいですわね。

「んっ…舌が切れてしまいましたわ。」

本当は自分で切ったのですけれどね。
勿論お二人はそんなことには気付かずに、私の舌から滴り落ちる血を情欲を含んだ瞳で見ていました。

さぁほら、早く舐めたいのでしょう?
好きにして良いのですよ。今は、貴方達が私の命を握っているのですから。












案の定街中から離れたこの倉庫には、あの男性が他の貴族から買い取った麻薬が大量に保管してありました。
全てに火がついたのを確認すると、私は屋敷へと歩みを進めます。今頃はあの方達も美味しく焼きあがっていることでしょう。
嗚呼、少しばかり麻薬を頂戴して、ローズお姉様の婚約祝いにお渡しすれば良かったわ。
お姉様は新しいものを好むから、きっと喜んでくれたでしょうに。
勿体ないことをしましたわね。
…まぁそれよりも今は夜が開ける前に家に帰って、この穢れた体を清潔にするのが1番ですわ。
私だって純潔ではありませんけれど、あの様な下卑た人間に接物をされるのはなかなか耐え難いものがあります。
まぁ毒の効きが思ったりも早くて良かったですわ。
もしあのまま接物以上の行為に…なんて、考えただけでも鳥肌が立ちますもの。
けれどこれでこの毒の効果も分かりましたし、また改良が見込めそうですわね。

予想通り5時間程かかって屋敷に着いた頃にはもう日が昇り始めていたので、私はメイドに命じて直ぐに湯浴みをすると自室のベッドへと入りました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

彼女が高級娼婦と呼ばれる理由~元悪役令嬢の戦慄の日々~

プラネットプラント
恋愛
婚約者である王子の恋人をいじめたと婚約破棄され、実家から縁を切られたライラは娼館で暮らすことになる。だが、訪れる人々のせいでライラは怯えていた。 ※完結済。

王子の逆鱗に触れ消された女の話~執着王子が見せた異常の片鱗~

犬の下僕
恋愛
美貌の王子様に一目惚れしたとある公爵令嬢が、王子の妃の座を夢見て破滅してしまうお話です。

よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………

naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます! ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話……… でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ? まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら? 少女はパタンッと本を閉じる。 そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて── アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな! くははははっ!!! 静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。

逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ

朝霞 花純@電子書籍発売中
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。 理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。 逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。 エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。

城内別居中の国王夫妻の話

小野
恋愛
タイトル通りです。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...