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「お父様。ライラが参りましたわ。」
「入れ。」
扉の向こうからお父様の低い声が聞こえましたので、私は扉を開けて執務室へと入りました。
「遅くなり申し訳ございません。」
「構わん。」
お辞儀をして顔を上げると、そこには既にローズお姉様を除く他の子供達が揃っておりました。
中には普段王宮で文官として働いているダニエルお兄様もいらっしゃいます。
ダニエルお兄様は遅れてやってきた私の方を向いてウインクをすると、柔らかい笑みを向けて下さいました。
ブラックロペス公爵家の次男であるダニエルお兄様は私の義兄であり、テオの実の兄でもあります。
ライアンお兄様の様に暗殺術に特別秀でている訳ではなく、ダニエルお兄様はその聡明な頭脳を使って人の心を操り、スパイや情報収集などを得意としています。
お母様譲りだというふわふわとした金髪と、タレ目がちな優しい翡翠の瞳。人の良さそうなダニエルお兄様はその秀でた容姿で多くの女性を虜にしていると聞きます。
まぁ私は実際にその光景を見たことがないので分かりませんけれど、その輝かしい容姿を見ていれば想像がつきますわね。
長男のライアンお兄様、次男のダニエルお兄様、そして私、次女のライラと三男のテオ。
この並びは力関係を示すものであり、お父様からの信頼度を表す並びでもあります。
ちなみにローズお姉様はテオの隣に位置づけられていますが、その時はいつも私のことを恨めしそうに睨んでいましたわね。
懐かしいことです。
「先日、ホワイトアウル公爵家の子供、フィンリー・ホワイトアウルとその妹、エレノアが学園からの帰宅途中何者かに誘拐された。」
「まぁ。」
ホワイトアウル公爵家といえば、我が家と共に代々王家に仕えてきた歴史深い公爵家ですわね。
我が公爵家とも表面上は仲良くしておりますけれど、実際は敵対関係と言った方が適切ですわね。
まああちらは公平さと正当性を重んじ、この国の法や裁判を司る白梟。
一方でこちらは法の隙間をかいくぐり、目的のためならば手段を選ばず違法行為も平然と行う黒狼。
まぁ仲良くやるなんて土台無理な話ですわよね。
…というよりその誘拐、お父様が仕組んだことではございませんの?
「向こうはこちらが仕組んだことだと思っているようだが証拠が出てきていない以上、我が公爵家を法の下に裁くことも出来まい。」
嗚呼やはり。お父様も意地が悪いですわね。
あちらの家は、いわば法の番人。その法の番人がなんの証拠もなく我が家を糾弾するとなれば、世間からの信頼も下がってしまうでしょう。
国王の命により、世間体も気にせず手段を問わないやり方が許された我が家に勝てる筈が無いのです。
「それで、俺達は何をすれば良いのです?」
ライアンお兄様の問いに、お父様は底意地が悪そうな邪悪な笑みを浮かべて答えました。
「ライアンとテオは誘拐した犯人及び組織の抹殺、ライラはホワイトアウルの2人の回収を。そしてダニエルは王宮や社交界にて誘拐されたホワイトアウル公爵家の子息達を、我がブラックロペス公爵家が総動員して探し出したという噂を広めろ。」
「なるほど。これは大きな貸しになりますわね。」
「そうだ。」
そう言ってニヤリと笑った顔はまるで悪の親玉のようで、どこかライアンお兄様に似ております。
お父様はきっと、ホワイトアウル公爵家を我が物にしようとしているのでしょう。だからこのような大きな貸しをつくり、こちらに逆らえない状況を作るろうとしているのです。
「そして事態が収拾して間を置いてから、ライラとテオは奴らの通っている学園へと編入させる。奴らの弱みを握れ。話は以上だ。」
まぁ。私が外に、しかも年頃の乙女のように学園に通えるなんて。
それは楽しみですわね。
私達はお父様に挨拶をして執務室から退室しました。
退室すると同時にその場を去っていくライアンお兄様を見送って、その場には私達3人が残りました。
「僕ライラねぇと一緒に学園通えるなんて嬉しい!」
廊下に出るなりテオは嬉しそうに笑って私の腕に絡みついてきました。
そんなにも無邪気に喜んでもらえるなんて、私も嬉しいですわ。
「ふふ。私もテオがいると心強いですわ。一緒に学園生活を満喫しましょうね。」
「うん!」
嗚呼、待ち遠しいですわね。
「ライラ、久しぶりだね。」
背後から掛けられた優しい声に、私は笑顔で振り返りました。
「ダニエルお兄様、お久しぶりでございます。息災…という訳ではなさそうですけれども、お元気そうで何よりですわ。」
「ライラに会えない王宮暮らしは苦痛だけれど、何とかやっているよ。」
ダニエルお兄様はそう言って笑っておりますが、その目元には厚化粧で隠した隈がはっきりと見えております。
きっと向こうでもあまり寝れていないのでしょう。
私はにっこりと微笑むと、いつもの台詞を口にしました。
「積もる話もありますし、今宵はお兄様のお部屋にお邪魔させて頂いてもよろしいですか?」
これが私達にとっての合図でした。
「ああ、是非来ておくれ。」
ダニエルお兄様は優しい笑みを一層深くすると、私の頭を愛でるように撫でて下さいました。
しかしその時、
パシッ
「入れ。」
扉の向こうからお父様の低い声が聞こえましたので、私は扉を開けて執務室へと入りました。
「遅くなり申し訳ございません。」
「構わん。」
お辞儀をして顔を上げると、そこには既にローズお姉様を除く他の子供達が揃っておりました。
中には普段王宮で文官として働いているダニエルお兄様もいらっしゃいます。
ダニエルお兄様は遅れてやってきた私の方を向いてウインクをすると、柔らかい笑みを向けて下さいました。
ブラックロペス公爵家の次男であるダニエルお兄様は私の義兄であり、テオの実の兄でもあります。
ライアンお兄様の様に暗殺術に特別秀でている訳ではなく、ダニエルお兄様はその聡明な頭脳を使って人の心を操り、スパイや情報収集などを得意としています。
お母様譲りだというふわふわとした金髪と、タレ目がちな優しい翡翠の瞳。人の良さそうなダニエルお兄様はその秀でた容姿で多くの女性を虜にしていると聞きます。
まぁ私は実際にその光景を見たことがないので分かりませんけれど、その輝かしい容姿を見ていれば想像がつきますわね。
長男のライアンお兄様、次男のダニエルお兄様、そして私、次女のライラと三男のテオ。
この並びは力関係を示すものであり、お父様からの信頼度を表す並びでもあります。
ちなみにローズお姉様はテオの隣に位置づけられていますが、その時はいつも私のことを恨めしそうに睨んでいましたわね。
懐かしいことです。
「先日、ホワイトアウル公爵家の子供、フィンリー・ホワイトアウルとその妹、エレノアが学園からの帰宅途中何者かに誘拐された。」
「まぁ。」
ホワイトアウル公爵家といえば、我が家と共に代々王家に仕えてきた歴史深い公爵家ですわね。
我が公爵家とも表面上は仲良くしておりますけれど、実際は敵対関係と言った方が適切ですわね。
まああちらは公平さと正当性を重んじ、この国の法や裁判を司る白梟。
一方でこちらは法の隙間をかいくぐり、目的のためならば手段を選ばず違法行為も平然と行う黒狼。
まぁ仲良くやるなんて土台無理な話ですわよね。
…というよりその誘拐、お父様が仕組んだことではございませんの?
「向こうはこちらが仕組んだことだと思っているようだが証拠が出てきていない以上、我が公爵家を法の下に裁くことも出来まい。」
嗚呼やはり。お父様も意地が悪いですわね。
あちらの家は、いわば法の番人。その法の番人がなんの証拠もなく我が家を糾弾するとなれば、世間からの信頼も下がってしまうでしょう。
国王の命により、世間体も気にせず手段を問わないやり方が許された我が家に勝てる筈が無いのです。
「それで、俺達は何をすれば良いのです?」
ライアンお兄様の問いに、お父様は底意地が悪そうな邪悪な笑みを浮かべて答えました。
「ライアンとテオは誘拐した犯人及び組織の抹殺、ライラはホワイトアウルの2人の回収を。そしてダニエルは王宮や社交界にて誘拐されたホワイトアウル公爵家の子息達を、我がブラックロペス公爵家が総動員して探し出したという噂を広めろ。」
「なるほど。これは大きな貸しになりますわね。」
「そうだ。」
そう言ってニヤリと笑った顔はまるで悪の親玉のようで、どこかライアンお兄様に似ております。
お父様はきっと、ホワイトアウル公爵家を我が物にしようとしているのでしょう。だからこのような大きな貸しをつくり、こちらに逆らえない状況を作るろうとしているのです。
「そして事態が収拾して間を置いてから、ライラとテオは奴らの通っている学園へと編入させる。奴らの弱みを握れ。話は以上だ。」
まぁ。私が外に、しかも年頃の乙女のように学園に通えるなんて。
それは楽しみですわね。
私達はお父様に挨拶をして執務室から退室しました。
退室すると同時にその場を去っていくライアンお兄様を見送って、その場には私達3人が残りました。
「僕ライラねぇと一緒に学園通えるなんて嬉しい!」
廊下に出るなりテオは嬉しそうに笑って私の腕に絡みついてきました。
そんなにも無邪気に喜んでもらえるなんて、私も嬉しいですわ。
「ふふ。私もテオがいると心強いですわ。一緒に学園生活を満喫しましょうね。」
「うん!」
嗚呼、待ち遠しいですわね。
「ライラ、久しぶりだね。」
背後から掛けられた優しい声に、私は笑顔で振り返りました。
「ダニエルお兄様、お久しぶりでございます。息災…という訳ではなさそうですけれども、お元気そうで何よりですわ。」
「ライラに会えない王宮暮らしは苦痛だけれど、何とかやっているよ。」
ダニエルお兄様はそう言って笑っておりますが、その目元には厚化粧で隠した隈がはっきりと見えております。
きっと向こうでもあまり寝れていないのでしょう。
私はにっこりと微笑むと、いつもの台詞を口にしました。
「積もる話もありますし、今宵はお兄様のお部屋にお邪魔させて頂いてもよろしいですか?」
これが私達にとっての合図でした。
「ああ、是非来ておくれ。」
ダニエルお兄様は優しい笑みを一層深くすると、私の頭を愛でるように撫でて下さいました。
しかしその時、
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