婚約破棄?私、貴方の婚約者ではありませんけれど

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自惚れ アレックス視点

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突然会場に入ってきたのは我が父である国王と愚かな娘、アイリーンの父でありながら国王の補佐役を務めているヒメネス公爵。そして数ヶ月前に即位したという隣国の王、シーザー・キャメロン。
一体なぜ隣国の王が来ているのだ?
そんな疑問が生まれたが、すぐに理由は分かった。
なんたって私は次期国王。そんな私とあの女、アイリーンの婚約パーティーに隣国からの来賓としてやって来たのだろう。

しかし残念なことに婚約パーティーは行われない。
私とアイリーンはつい先程婚約を破棄したのだから。
あの女、顔や容姿は申し分ないのだが如何せん性格が醜い。男爵令嬢のソフィアを見下すだけでなく、この俺が折角側室にしてやろうとしたのにそれすら拒否をしたのだ。
俺の顔に泥を塗った罪は重い。
だから俺は国外追放を命じた。王家たるもの、そこらの有象無象に舐められている様では困るからな。打首じゃあなかっただけ感謝して欲しい位だ。
きっと父上も私の功績を聞けば、私を国王として認め王位継承権を譲ってくれるだろう。

隣国の王、シーザーは何故か真っ直ぐにアイリーンの元へと向かっていく。
そしてあろうことか、彼女の腰を抱いているのだ。
あの距離はただの友人で済むものではない。
婚約を破棄して早々に他の男を侍らすとは、これも父上に報告すれば更に私の株が上がるだろう。

「アレックス!一体何があったのだ。」

普段は温和な父上が珍しく焦っている。その後ろにいるヒメネス公爵は怪訝な表情を隠そうともしない。
何故だ?嗚呼、私がたった今行った婚約破棄を知らないからか。ならば教えてやらねば。

「父上。聞いて下さい!私はあの憎きアイリーンと婚約破棄をしてみせたのです!あやつは「この愚か者が!」…父上?」

今。父上はなんと言った?
愚か者?この私のことをそう言ったのか。
何故だ!?私はソフィアとの真実の愛を貫く為に正しいことをした。ただ自分の爵位を笠に着て弱者を見下すあの女を国外追放してやったのだ。
感謝されることはあれど、このように怒鳴られる筋合いはない。

「そなたがアイリーンと婚約破棄したのか?」

私達親子の間に入ってきたのは、湧いてきた怒りが一瞬で冷えてしまう程冷たい声。
私だから分かる。声の主は怒っている。
私と父上は、その声の主の方へ振り返った。

「そなた如きが、私のアイリーンと婚約していたのか?」

そこに立っているのは、アイリーンの腰を抱いたシーザー陛下。
漆黒の髪から覗く瑠璃色の瞳は、まるで射抜かれそうな程冷たく鋭い。
それにしても…私のアイリーン…だと?
その女はつい先程まで私の女だったはずでは。
…嗚呼、分かった。シーザー陛下はこの機に乗じて、アイリーンに手を出したのか。つまり、私のお陰で陛下はあの傲慢女を手に入れることが出来たと。
ならば私は、それ相応の謝礼を貰うべきだろう。

「ぇ、ええ。たった今婚約破棄しましたがね。しかしあなたは私が婚約破棄したお陰でその傲慢な尻軽女と婚約することが出来たのです。是非感謝を頂戴したいものですね。」

私は胸を張って自分の手柄を主張した。
会場は静まり返っていたが、きっと皆納得して異論を唱える必要が無いと考えているのだろう。

大国である隣国の陛下と対等に話す勇敢な私の姿は、父上にも好印象を与えたことだろう。
ちらりと隣に立つ父上を見ればその表情は青白く、今にも失神しそうなものだった。
嗚呼、父上には刺激が強すぎたかもしれない。
やはり私こそが次期国王に相応しい。巷では第2王子が王位を継ぐなどと言われているが、あやつはまだ幼い上に私より出来が悪い。

「アイリーンが傲慢な尻軽女…か。」

「随分と酷い言われようですわ。私達、婚約者でもなんでもないと言うのに。」

また一段と声のトーンが下がる陛下に流石の私でもまずいと感じた。なにか間違ったことを言っただろうか。
しかしその隣に立つアイリーンは、まるで気にしないという風にコロコロ笑いながら衝撃の発言をした。

私とアイリーンは婚約者ではない?確かに今しがた婚約破棄をしたから婚約者ではないが…。

「成程。国王よ。そなた、息子の教育を間違えたな。」

シーザー陛下はそう言って笑っている。が、真っ赤な唇からちらちらと覗かせる犬歯は今にも頭を食いちぎってきそうな程恐ろしい。
私は次期国王でありながら、いつの間にか腰が抜けてしまっていた。
しかしその私の頭も、気が付くと床に押し付けられている。これは…。

「父上!なぜ私が土下座などと「黙っていろ!!本当に申し訳ありません。シーザー陛下。こやつは王位を継がぬため、教育に手を抜いてしまっていたのです。どうか私に免じてこの不肖の息子を許して下さい。」…父上!?」

私が王位を継ぐことは無い!?どういうことだ!!
それになぜ私は父上と共にシーザー陛下とアイリーンに土下座をさせられているのだ!
謝るのはむしろあっち側だろう。

「王族でありながら己の責も全うせず、忠実な臣下を貶めるとはな。それに今も、なぜ自分がこのような状況に立っているのか分かっていないようだぞ?」

シーザー陛下は、父上と私の形だけの謝罪を嘲笑い、一蹴した。
仮にも国の代表である父上がこんなにも簡単に頭を下げるなど…見損なった。それに私まで巻き添えを食らっているのだ。

「そうです父上!何故私は王位を継ぐことが出来ないのですか!」

私以上に相応しい人間などいないはずなのに!
私の必死な訴えを、父上は今までに無いほど冷たい視線で跳ね返した。

「黙れ!幼少の頃より教育をサボり臣下を蔑ろにし、己の欲望のままに行動する貴様などとうに王位継承権を剥奪しておるわ!」

…は?
突然の宣言に、私の頭は真っ白になる。
何故?何故こうなったのだ。父上が私の教育を止めたのは、私が教育を受ける必要が無いほど完璧な人間だと思っているからだと思っていた。けれど実際は…見捨てられていたのか?

「今回の件でもほとほと愛想が尽きた!そもそも貴様とヒメネス公爵令嬢は婚約などしていないというのに、貴様と言う奴は!」

私とアイリーンが婚約してないだと?
では何故、この婚約パーティーは…。

「この婚約パーティーは、私とシーザー陛下のものですわ。我が国にとって、大変利益のあるものだったのですが…ヒメネス家は国外追放を言い渡されてしまったので、もうそれも関係ないですわね。」


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