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間違いなくトップシークレットです
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私が顔を背けたあと、彼は苦渋を滲ませた低い声で言った。
「ここ最近はどう押さえても、ハルミに発情している自分がいた」
「え?」
「気がつくと、ハルミにキスしたくなるんだ。この部屋に入ってきたときから、すでに箍が外れている。ふとすれば、すぐに君に触れたくなって……理性がぶっ飛びそうになっているんだ。かなり我慢をしている状況だとも言える」
「課長……」
「ハルミに対してだけ、発情期が続いている……んだと思う」
弱り切っている声なんて、今まで聞いたことがない。
ゆっくりと背けていた顔を戻し、課長を見上げる。
「だが、俺の秘密はキチンと話しておきたかった。何も言わずに君に無理を強いるのはフェアじゃない。それに……もしできることなら、俺のすべてを愛してもらいたい。受け入れてもらいたい。そう願っている」
彼は耳まで真っ赤だ。そして顔には陰りも見えるし、自身に対しても困惑している様子だ。本当に辛いんだろう。
私と付き合い出してから、そんな状況が続いているというのか。
かなり我慢をしていたということだ。それでも、ここまで超初心者の私に合わせてくれていた。そこに、彼の優しさと誠実さを感じて胸がジンとする。
恥ずかしさで顔を真っ赤にさせ、だけど隠しもせずに私にすべて打ち明けてくれた。それが嬉しい。
はっきり言って、夢物語みたいな内容だ。彼もおとぎ話みたいだと言っていたが、その通りだと思う。
神様の子孫などと言われれば、誰だって耳を疑う。その点は、課長だってわかっているはずだ。
それなのに、私にすべてを話してくれた。笑われて信じてもらえないかもしれない。そんな不安を抱きながら、それでも私に話してくれた。
そういえば、笑うことなく神妙な面持ちで聞いていた私に対して「幸せだ」と課長は言っていた。
信じてもらえないだろうと半ば諦めながらも、それでもハルミならと願いつつ告白してくれたはずだ。
だからこそ、「幸せだ」という言葉が彼の口から出てきたのだろう。信じてくれた、それが彼にとって嬉しかったのだ。
課長にとってはかなりの賭けのはず。話自体信じてもらえないこともあるだろうし、話を信じたとしても彼のそんな体質を受け入れてもらえるかわからない。
それでも彼は告白することを選んだ。そういうところが、課長らしい。
こんなこと、隠していたってわからなかったかもしれない。
私は処女だ。「エッチってこんなもんだよ」などと言って、うまく丸め込むことだって簡単だったはず。
それなのに、敢えて私にカミングアウトしてくれたのは、私を気遣ってくれたからだろう。彼の誠実さが垣間見られる。
彼のトップシークレットを聞いてしまった以上、受け入れるしかないだろう。
課長がこんなに真剣な顔をして、告白してくれたのだ。今の話が嘘だとは思わないし、思えない。
それだけ、私は杜乃龍臣という人間を信頼している。それに、大好きな人だからこそ、彼の苦悩を受け止めたい。そう素直に思う。
――ただ、受け止めきれるのかっていう問題は残されているんだけどね……。
そこが問題だけど、愛があれば乗り越えられる。そう信じている……、いや、信じたい。
今も彼は、欲望を抑えているのだろう。淫欲めいた目をしているが、顔を歪めて何かに耐えている表情がそれを物語っている。
そんな苦悩に揺れる彼の表情が、一瞬にして力が抜けて驚いたものに変化した。
私が彼の頬に手を伸ばしたからだ。
「課長、話してくれてありがとうございます」
「ハルミ?」
「言いづらかったでしょう?」
「っ!」
目を見開いたまま硬直する課長に、私は今の自分の気持ちをしっかりと伝えることにした。
手のひらから、彼のぬくもりが伝わってくる。とても温かい。
この体温と一緒で、課長は本当に心が温かくて素敵な男性だ。紳士で誠実な彼を、私はもっともっと好きになった。
それを、彼にどうしても伝えたくなる。
ゆっくりと彼の頬を撫でながら、私は頬を綻ばせた。
「好きです、課長」
「ハルミ……」
「課長のカミングアウト、全部聞いた上での気持ちです」
「っ!」
息を呑んで固唾を呑んでいる様子の彼に、私は彼がかわいいとよく言ってくれる笑顔を向けた。
「信じます。だって、課長が言ったことですよ? 信じるに決まっています!」
受け入れてくれるなんて信じられないという表情とともに、嬉しさを噛みしめている様子の課長を見て、良かったと胸を撫で下ろす。
好きな人に辛い顔をしていてほしくない。いつも笑っていてほしい。そう願う。
顎が外れてしまいそうなほど驚きに満ちたカミングアウトだったけど、「そうなのか」とすぐに対応している自分がいた。
戸惑うというより、課長がずっと一人で耐えていて大変だっただろうなと心配が先立つ。
辛いのに、ずっと耐えてくれていた。それが、すごく嬉しかった。
「我慢するのも大変だったのに、ずっと耐えてくれていたのは……私のためですよね? そう思っていていいですか?」
期待と不安を込めて見つめると、彼の頬に触れていた手をギュッと握られる。そして、真摯な目を向けられた。
「当たり前だ! 君を大事にしたいと思っているからこそ……!」
「……嬉しいです」
やっぱり課長は課長だ。さすがは私が好きになった人である。フニャと表情を柔らかくすると、彼は小さく息を吐き出した。
「俺の中にいる狼の血は、ようやく見つけたんだと思う。ハルミを初めて見たとき、直感でわかったから」
「え?」
「生涯で一人だけ。愛し抜く人を俺は見つけた」
「……っ」
「ハルミと出会えてよかった。もし、君に出会えなかったら……、俺はただ一人で人生を終えていたと思う」
「そんな大げさな!」
噴き出して笑ったのだが、彼は真剣な表情をして首を横に振る。そして、掴んでいた私の手に頬ずりをしてきた。
頬に私の手を当てたまま、彼は情熱的な視線を向けてくる。
その視線に、ドクンと大きく胸が高鳴った。
「ここ最近はどう押さえても、ハルミに発情している自分がいた」
「え?」
「気がつくと、ハルミにキスしたくなるんだ。この部屋に入ってきたときから、すでに箍が外れている。ふとすれば、すぐに君に触れたくなって……理性がぶっ飛びそうになっているんだ。かなり我慢をしている状況だとも言える」
「課長……」
「ハルミに対してだけ、発情期が続いている……んだと思う」
弱り切っている声なんて、今まで聞いたことがない。
ゆっくりと背けていた顔を戻し、課長を見上げる。
「だが、俺の秘密はキチンと話しておきたかった。何も言わずに君に無理を強いるのはフェアじゃない。それに……もしできることなら、俺のすべてを愛してもらいたい。受け入れてもらいたい。そう願っている」
彼は耳まで真っ赤だ。そして顔には陰りも見えるし、自身に対しても困惑している様子だ。本当に辛いんだろう。
私と付き合い出してから、そんな状況が続いているというのか。
かなり我慢をしていたということだ。それでも、ここまで超初心者の私に合わせてくれていた。そこに、彼の優しさと誠実さを感じて胸がジンとする。
恥ずかしさで顔を真っ赤にさせ、だけど隠しもせずに私にすべて打ち明けてくれた。それが嬉しい。
はっきり言って、夢物語みたいな内容だ。彼もおとぎ話みたいだと言っていたが、その通りだと思う。
神様の子孫などと言われれば、誰だって耳を疑う。その点は、課長だってわかっているはずだ。
それなのに、私にすべてを話してくれた。笑われて信じてもらえないかもしれない。そんな不安を抱きながら、それでも私に話してくれた。
そういえば、笑うことなく神妙な面持ちで聞いていた私に対して「幸せだ」と課長は言っていた。
信じてもらえないだろうと半ば諦めながらも、それでもハルミならと願いつつ告白してくれたはずだ。
だからこそ、「幸せだ」という言葉が彼の口から出てきたのだろう。信じてくれた、それが彼にとって嬉しかったのだ。
課長にとってはかなりの賭けのはず。話自体信じてもらえないこともあるだろうし、話を信じたとしても彼のそんな体質を受け入れてもらえるかわからない。
それでも彼は告白することを選んだ。そういうところが、課長らしい。
こんなこと、隠していたってわからなかったかもしれない。
私は処女だ。「エッチってこんなもんだよ」などと言って、うまく丸め込むことだって簡単だったはず。
それなのに、敢えて私にカミングアウトしてくれたのは、私を気遣ってくれたからだろう。彼の誠実さが垣間見られる。
彼のトップシークレットを聞いてしまった以上、受け入れるしかないだろう。
課長がこんなに真剣な顔をして、告白してくれたのだ。今の話が嘘だとは思わないし、思えない。
それだけ、私は杜乃龍臣という人間を信頼している。それに、大好きな人だからこそ、彼の苦悩を受け止めたい。そう素直に思う。
――ただ、受け止めきれるのかっていう問題は残されているんだけどね……。
そこが問題だけど、愛があれば乗り越えられる。そう信じている……、いや、信じたい。
今も彼は、欲望を抑えているのだろう。淫欲めいた目をしているが、顔を歪めて何かに耐えている表情がそれを物語っている。
そんな苦悩に揺れる彼の表情が、一瞬にして力が抜けて驚いたものに変化した。
私が彼の頬に手を伸ばしたからだ。
「課長、話してくれてありがとうございます」
「ハルミ?」
「言いづらかったでしょう?」
「っ!」
目を見開いたまま硬直する課長に、私は今の自分の気持ちをしっかりと伝えることにした。
手のひらから、彼のぬくもりが伝わってくる。とても温かい。
この体温と一緒で、課長は本当に心が温かくて素敵な男性だ。紳士で誠実な彼を、私はもっともっと好きになった。
それを、彼にどうしても伝えたくなる。
ゆっくりと彼の頬を撫でながら、私は頬を綻ばせた。
「好きです、課長」
「ハルミ……」
「課長のカミングアウト、全部聞いた上での気持ちです」
「っ!」
息を呑んで固唾を呑んでいる様子の彼に、私は彼がかわいいとよく言ってくれる笑顔を向けた。
「信じます。だって、課長が言ったことですよ? 信じるに決まっています!」
受け入れてくれるなんて信じられないという表情とともに、嬉しさを噛みしめている様子の課長を見て、良かったと胸を撫で下ろす。
好きな人に辛い顔をしていてほしくない。いつも笑っていてほしい。そう願う。
顎が外れてしまいそうなほど驚きに満ちたカミングアウトだったけど、「そうなのか」とすぐに対応している自分がいた。
戸惑うというより、課長がずっと一人で耐えていて大変だっただろうなと心配が先立つ。
辛いのに、ずっと耐えてくれていた。それが、すごく嬉しかった。
「我慢するのも大変だったのに、ずっと耐えてくれていたのは……私のためですよね? そう思っていていいですか?」
期待と不安を込めて見つめると、彼の頬に触れていた手をギュッと握られる。そして、真摯な目を向けられた。
「当たり前だ! 君を大事にしたいと思っているからこそ……!」
「……嬉しいです」
やっぱり課長は課長だ。さすがは私が好きになった人である。フニャと表情を柔らかくすると、彼は小さく息を吐き出した。
「俺の中にいる狼の血は、ようやく見つけたんだと思う。ハルミを初めて見たとき、直感でわかったから」
「え?」
「生涯で一人だけ。愛し抜く人を俺は見つけた」
「……っ」
「ハルミと出会えてよかった。もし、君に出会えなかったら……、俺はただ一人で人生を終えていたと思う」
「そんな大げさな!」
噴き出して笑ったのだが、彼は真剣な表情をして首を横に振る。そして、掴んでいた私の手に頬ずりをしてきた。
頬に私の手を当てたまま、彼は情熱的な視線を向けてくる。
その視線に、ドクンと大きく胸が高鳴った。
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