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第十五話
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間接照明だけの寝室には、チュッチュッという口づけの音が響く。
お互いがベッドに向かい合う形で座り、相宮は先ほどからずっと円香の指にキスをし続けている。
「あ、相宮……さん」
指先のキスだけでゾクリと背筋に甘い痺れが走り、円香の声が上擦った。
まだ一度も唇同士が触れあっていない。ただ、相宮は円香の指を愛撫し続ける。
まさか指先だけで感じるだなんて、と円香は驚きを隠せない。
だが、今はそれさえもどうでもいい。
ただ、相宮から与えられる甘美な刺激に酔いしれていたい。
指先に触れる相宮の唇の感触を味わいながら、指の愛撫だけでドキドキしてしまっている。そのことに羞恥が込みあげてきた。
円香は相宮を見て、そっと縋る。
もう、指先のキスだけじゃ物足りない。もっと、もっと相宮を感じたい。
円香は懇願するように、もう一度相宮に声をかける。
「相宮さ……んっ」
「どうしましたか?」
円香が何を言いたいのか。きっと分かっていてこの態度をしているのだろう。
相宮はとても意地悪だ。
ムッとして心の中で悪態をつく円香に対し、相宮はクスクスと楽しげに笑う。
「怒ったり、困ったり。木佐先生は負の感情だけは素直に出せるのですね」
「え?」
何度か瞬きをして不思議がる円香に対し、相宮は苦笑した。
「まったく。木佐先生は難しい人ですね」
「そ、そうでしょうか?」
ちょっとだけ不服だ。
円香は再び眉間に皺を寄せると、相宮は指摘してくる。
「ほら、今の木佐先生はとても素直だ」
「それって……あまり嬉しくないです」
「でしょうね。でも、私の身にもなってください。ずっと貴女のことが好きで、なんとかして振り向いて貰おうと強硬手段にでていたのに。木佐先生はなかなか本心を出してくれないのだから」
深くため息をついて、今までの苦労を語る相宮に、円香は目を瞬かせた。
「指に触れるのが強硬手段だったんですか?」
「ええ、そうですよ。一歩間違えれば木佐先生に嫌われる、仕事が出来なくなるかもしれない。そんな綱渡り的なことを考えながらでしたから」
相宮は困ったようにクツクツと笑う。
だが、言われた円香としては面白くはない。
ムスッと膨れている円香に、相宮は茶目っ気たっぷりにほほ笑んだ。
「今だって、木佐先生が不機嫌なことはすぐにわかる」
「もう! そんなに苛めないでください」
円香自身もよくわかっていることだ。
感情が表に出ずに勘違いされることもしばしば、だからこそなるべく気をつけるようにしているのだが……
相宮のことが好き。そんな感情は、意識的に隠していたのだろう。
いつものポーカーフェイスが役に立ったということだろうか。
いや、もっと表情に表れていれば、早くに相宮と両思いになることも可能だったのかもしれない。
そう考えると、やはり自分の欠点は直しておきたいと円香は心底思った。
この人が好き。相宮さんが好き。心の中で呟いても、なかなか相手には伝わらない。
相宮が円香の指に触れて想っていたように、相宮の熱を感じながら円香も相宮を想っていたのに……
言わなくても通じる。そんなことはなかなかあるものじゃない。
「貴女が好きです」
「っ!」
「想いは言葉に出さなくては、捕まえたいと思っても捕まえることはできない」
「相宮さん」
「基本的なことなのに、見落としていたようです。……なにより、年を重ねるごとに臆病になっていたのかもしれませんね。だから、貴女の指に触れるだけで何も言えなかった」
意気地なしですよね、と相宮は穏やかに笑う。
だが、すぐに表情を改める。
円香の顔を覗き込むように、相宮はグッと距離を詰めてきた。
まっすぐに円香を見つめる相宮の瞳は、いつもの穏やかさとはかけ離れたものだった。
熱を帯びた感情を抱いた瞳。円香の胸はドクンと一際大きく高鳴った。
「だから、私は貴女が呆れるまで言い続けます。そう、決めました」
「決めたって」
円香が戸惑っている様子を見ても、表情を和らげることはない。
真剣な面持ちで相宮は何度も言う。
「円香が好きだ」
いつもは"木佐先生”と呼ぶ相宮が、名前で呼んだ。
先生付けは止めてくれ、とお願いしているのにもかかわらず、毎回"先生付け”で呼んでいた相宮。
そんな彼が、腰にくるような低い声で円香の名前を呼ぶ。
それだけで涙が出るほど嬉しかった。
涙を滲ませた円香を見て、目を見開いた相宮。そして、彼は嬉しそうに目尻を下げる。
「やっと心を開いてくれましたね」
「え?」
「円香はなかなか感情を表に出さない。それは意図的じゃないとしても、私はいつもやきもきしていました」
「相宮さん?」
「もっと私に感情を見せてほしい。嬉しいときや楽しいとき。どんなことを考えているのかすべて話してほしい。貴女の指に触れながらそう願っていました」
柔らかくほほ笑む相宮に、円香は少しだけ意地悪なことを言う。
「相宮さんは、私の指に好意を抱いていただけではなかったのですか? 私はずっとそう思っていました」
だからこそ、相宮が自分に好意を向けてくれているなんて気が付かなかった。
そう円香が言うと、相宮はヤレヤレと肩を竦めて首を横に振る。
「それは私が指フェチだと言いたいのですか?」
「違うんですか?」
きっと他の女性の手にも触れているはずだ。想像しただけで、嫉妬してしまう。
円香は面白くないと正直に伝えると、相宮は格好を崩した。
「円香、ヤキモチですか?」
「ヤキモチです」
「おや? いつになく正直ですね?」
おどけた様子で言う相宮に、円香は顔を歪める。
「だって、私の感情が読めないって相宮さん言ったじゃないですか」
「ええ。円香の感情は読みにくいですね。負の感情だけは素直ですが」
「そうおっしゃるので、素直になってみました。もう、すれ違いたくないですから」
相宮に対しては正直に言う、と宣言する円香に、相宮は口元を綻ばせる。
「良い心がけですね。嬉しいですよ、円香」
「……相宮さん、話はぐらかしていません?」
「はて? 何のことでしょう?」
明らかに確信犯だ。円香が不機嫌なことを隠すことなく相宮を見つめる。
すると、相宮は円香の耳元に唇を寄せた。
そして、熱っぽい吐息とともに言う。
「貴女の指にしか興味はありません」
「っ!」
「私がキスしたいと思う指は……この指だけですよ」
嘘ですよね、そう円香は反論したかった。だが、その声は相宮の唇によって出すことができなかった。
ゆっくりと丁寧にキスをする相宮。そんなところにも人柄が出ていると円香は頭の片隅で思った。
だが、そんな悠長なことを言っていられたのはそれまでだった。
唇の感触を味わうような動きをしていた相宮だったが、トントンと舌で円香の唇をノックしてきた。
ここを開けて、そう言っているのだと理解した円香だったが、急に恥ずかしさが込みあげてきて唇を開くことができない。
すると、相宮の手が円香の背筋をさすった。
相宮の触れ方が官能めいていて、腰が震える。それと同時に身体の力が抜けた。
その瞬間、相宮の舌が円香の口内に入り込んだ。
「フッ……んん……ぁふあ」
「可愛いですね……っ……ぁあ、堪らない」
口内をゆっくりと舌で愛撫しつつ、時折唇を離して円香の羞恥を煽るようなことを言う。
目をギュッと瞑って、ただただ相宮の舌の動きに翻弄されていく。
歯列を辿り、円香の舌を見つけ出すとそれに絡みついてくる。
そのたびに円香の口からは甘ったるい吐息が漏れ、それが自分の声なのだと気付くと、より恥ずかしさに身悶えてしまう。
円香はただ相宮の舌での愛撫に蕩けてしまいそうになるのを、彼の服を握りしめて堪えた。
お互いがベッドに向かい合う形で座り、相宮は先ほどからずっと円香の指にキスをし続けている。
「あ、相宮……さん」
指先のキスだけでゾクリと背筋に甘い痺れが走り、円香の声が上擦った。
まだ一度も唇同士が触れあっていない。ただ、相宮は円香の指を愛撫し続ける。
まさか指先だけで感じるだなんて、と円香は驚きを隠せない。
だが、今はそれさえもどうでもいい。
ただ、相宮から与えられる甘美な刺激に酔いしれていたい。
指先に触れる相宮の唇の感触を味わいながら、指の愛撫だけでドキドキしてしまっている。そのことに羞恥が込みあげてきた。
円香は相宮を見て、そっと縋る。
もう、指先のキスだけじゃ物足りない。もっと、もっと相宮を感じたい。
円香は懇願するように、もう一度相宮に声をかける。
「相宮さ……んっ」
「どうしましたか?」
円香が何を言いたいのか。きっと分かっていてこの態度をしているのだろう。
相宮はとても意地悪だ。
ムッとして心の中で悪態をつく円香に対し、相宮はクスクスと楽しげに笑う。
「怒ったり、困ったり。木佐先生は負の感情だけは素直に出せるのですね」
「え?」
何度か瞬きをして不思議がる円香に対し、相宮は苦笑した。
「まったく。木佐先生は難しい人ですね」
「そ、そうでしょうか?」
ちょっとだけ不服だ。
円香は再び眉間に皺を寄せると、相宮は指摘してくる。
「ほら、今の木佐先生はとても素直だ」
「それって……あまり嬉しくないです」
「でしょうね。でも、私の身にもなってください。ずっと貴女のことが好きで、なんとかして振り向いて貰おうと強硬手段にでていたのに。木佐先生はなかなか本心を出してくれないのだから」
深くため息をついて、今までの苦労を語る相宮に、円香は目を瞬かせた。
「指に触れるのが強硬手段だったんですか?」
「ええ、そうですよ。一歩間違えれば木佐先生に嫌われる、仕事が出来なくなるかもしれない。そんな綱渡り的なことを考えながらでしたから」
相宮は困ったようにクツクツと笑う。
だが、言われた円香としては面白くはない。
ムスッと膨れている円香に、相宮は茶目っ気たっぷりにほほ笑んだ。
「今だって、木佐先生が不機嫌なことはすぐにわかる」
「もう! そんなに苛めないでください」
円香自身もよくわかっていることだ。
感情が表に出ずに勘違いされることもしばしば、だからこそなるべく気をつけるようにしているのだが……
相宮のことが好き。そんな感情は、意識的に隠していたのだろう。
いつものポーカーフェイスが役に立ったということだろうか。
いや、もっと表情に表れていれば、早くに相宮と両思いになることも可能だったのかもしれない。
そう考えると、やはり自分の欠点は直しておきたいと円香は心底思った。
この人が好き。相宮さんが好き。心の中で呟いても、なかなか相手には伝わらない。
相宮が円香の指に触れて想っていたように、相宮の熱を感じながら円香も相宮を想っていたのに……
言わなくても通じる。そんなことはなかなかあるものじゃない。
「貴女が好きです」
「っ!」
「想いは言葉に出さなくては、捕まえたいと思っても捕まえることはできない」
「相宮さん」
「基本的なことなのに、見落としていたようです。……なにより、年を重ねるごとに臆病になっていたのかもしれませんね。だから、貴女の指に触れるだけで何も言えなかった」
意気地なしですよね、と相宮は穏やかに笑う。
だが、すぐに表情を改める。
円香の顔を覗き込むように、相宮はグッと距離を詰めてきた。
まっすぐに円香を見つめる相宮の瞳は、いつもの穏やかさとはかけ離れたものだった。
熱を帯びた感情を抱いた瞳。円香の胸はドクンと一際大きく高鳴った。
「だから、私は貴女が呆れるまで言い続けます。そう、決めました」
「決めたって」
円香が戸惑っている様子を見ても、表情を和らげることはない。
真剣な面持ちで相宮は何度も言う。
「円香が好きだ」
いつもは"木佐先生”と呼ぶ相宮が、名前で呼んだ。
先生付けは止めてくれ、とお願いしているのにもかかわらず、毎回"先生付け”で呼んでいた相宮。
そんな彼が、腰にくるような低い声で円香の名前を呼ぶ。
それだけで涙が出るほど嬉しかった。
涙を滲ませた円香を見て、目を見開いた相宮。そして、彼は嬉しそうに目尻を下げる。
「やっと心を開いてくれましたね」
「え?」
「円香はなかなか感情を表に出さない。それは意図的じゃないとしても、私はいつもやきもきしていました」
「相宮さん?」
「もっと私に感情を見せてほしい。嬉しいときや楽しいとき。どんなことを考えているのかすべて話してほしい。貴女の指に触れながらそう願っていました」
柔らかくほほ笑む相宮に、円香は少しだけ意地悪なことを言う。
「相宮さんは、私の指に好意を抱いていただけではなかったのですか? 私はずっとそう思っていました」
だからこそ、相宮が自分に好意を向けてくれているなんて気が付かなかった。
そう円香が言うと、相宮はヤレヤレと肩を竦めて首を横に振る。
「それは私が指フェチだと言いたいのですか?」
「違うんですか?」
きっと他の女性の手にも触れているはずだ。想像しただけで、嫉妬してしまう。
円香は面白くないと正直に伝えると、相宮は格好を崩した。
「円香、ヤキモチですか?」
「ヤキモチです」
「おや? いつになく正直ですね?」
おどけた様子で言う相宮に、円香は顔を歪める。
「だって、私の感情が読めないって相宮さん言ったじゃないですか」
「ええ。円香の感情は読みにくいですね。負の感情だけは素直ですが」
「そうおっしゃるので、素直になってみました。もう、すれ違いたくないですから」
相宮に対しては正直に言う、と宣言する円香に、相宮は口元を綻ばせる。
「良い心がけですね。嬉しいですよ、円香」
「……相宮さん、話はぐらかしていません?」
「はて? 何のことでしょう?」
明らかに確信犯だ。円香が不機嫌なことを隠すことなく相宮を見つめる。
すると、相宮は円香の耳元に唇を寄せた。
そして、熱っぽい吐息とともに言う。
「貴女の指にしか興味はありません」
「っ!」
「私がキスしたいと思う指は……この指だけですよ」
嘘ですよね、そう円香は反論したかった。だが、その声は相宮の唇によって出すことができなかった。
ゆっくりと丁寧にキスをする相宮。そんなところにも人柄が出ていると円香は頭の片隅で思った。
だが、そんな悠長なことを言っていられたのはそれまでだった。
唇の感触を味わうような動きをしていた相宮だったが、トントンと舌で円香の唇をノックしてきた。
ここを開けて、そう言っているのだと理解した円香だったが、急に恥ずかしさが込みあげてきて唇を開くことができない。
すると、相宮の手が円香の背筋をさすった。
相宮の触れ方が官能めいていて、腰が震える。それと同時に身体の力が抜けた。
その瞬間、相宮の舌が円香の口内に入り込んだ。
「フッ……んん……ぁふあ」
「可愛いですね……っ……ぁあ、堪らない」
口内をゆっくりと舌で愛撫しつつ、時折唇を離して円香の羞恥を煽るようなことを言う。
目をギュッと瞑って、ただただ相宮の舌の動きに翻弄されていく。
歯列を辿り、円香の舌を見つけ出すとそれに絡みついてくる。
そのたびに円香の口からは甘ったるい吐息が漏れ、それが自分の声なのだと気付くと、より恥ずかしさに身悶えてしまう。
円香はただ相宮の舌での愛撫に蕩けてしまいそうになるのを、彼の服を握りしめて堪えた。
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