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第五話(5)
集合的無意識のなかの断崖絶壁
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ある日、関屋くんが、また新しいことを言い出しました。
「オレさ、この間、この集合的無意識の中をひとりで行けるだけ遠くまで行って来たわけよ。」
「ふうん。それでしばらく、姿を見なかったんだね。身体の病気にでもなっているんじゃないかと心配したよ。」
長谷川君が、言いました。
「それで、何かあった?」
好奇心にかられた私がききました。
「おおありよ。」
関屋君が得意そうに話はじめました。
「みんなが集まるようになった場所から離れて泳ぐように進んでいったわけ。同じ方角へ進めるように、部屋から方位磁針を持って来た。それから時間の経過がわかるように、腕時計をした。これらはこの空間でも役に立ったぜ。
方位磁針が北を指す方向に、進んで行った。時々、座禅をしている坊さんや、瞑想したり、ヨガみたいことをしてる人達がいたけど、関わるのがめんどうなので、無視した。オレは途中で睡眠はとったけど、上(顕在意識のこと)へは帰らずに、北へ北へと進んだ。
腕時計の針が回るのを数えていたから、5日はたった頃、行く手に断崖絶壁が現れた。
この世界の底が、さらに急に落ち込んでいるんだ。そこまで着いて、のぞき込むと、底は見えないくらいに深い。
ここまで来たら、オレの性格として、底まで行かなきゃ帰れない。オレは絶壁に沿って潜っていった。
すると、何かにゴツンと当たったんだな。まだ底に着いたわけじゃない。何かがある。
目をこらしてよく見ると、何と言うか、縄文杉みたいな太っといものが、横になって続いているわけよ。まあオレ、縄文杉は雑誌でしか見たことないから、いい例えかどうかわかんないけど。
で、まあ、その縄文杉みたいなのに手で触ってみた。そしたらなんか、そいつが反応して、手を押し返してきたわけ。
それで思ったね。こいつは生き物だぞと。
この縄文杉みたいなのの太さと長さから見て、こいつが動き出したら、オレがやばいぞと感じて、そこから上へ戻ったけど、あいつの正体、確かめたいから、3人で行ってみないか?」
私と長谷川君は顔を見合わせました。
「なにビビッてんだよ。本当に危なくなったら、瞬時に上へ帰る技は身につけているんだろ?」
関屋君にそう言われると、私と長谷川君は従うしかありません。関屋君という人は、不思議と他の人を動かす力を持っているのです。
集合的無意識の中で働く法則のひとつに、行きたい所や、会いたい人を、意識を集中して思い浮かべれば、(もちろんその場所やその人が集合的無意識とつながっていれば、ですが、)瞬時にそこへ行くことが出来ます。
今回、関屋君は、これを私達3人で、同時にやってみようと提案してきました。具体的には、その断崖絶壁を知っているのは、関屋君だけなのですが、関屋君の片腕それぞれを、私と長谷川君がつかんで、関屋君が、断崖絶壁を思い浮かべれば、3人同時に、断崖絶壁に瞬時に行けるのでは、と、言うのです。
関屋君の指示で、私と長谷川君はそれぞれ、関屋君の片腕を、両腕でしっかりつかみました。
関屋君が言いました。
「オレが断崖絶壁を思い浮かべた時に、君らがほかの場所を思い浮かべたら、うまくゆかないかもしれない。オレが、1.2.3.と合図を言うから、その後は、頭ん中真っ白にしろよ。」
私と長谷川君はうなずきました。
関屋君が大きな声で言いました。
「いくぞ! いち、にい、さん!」
私は目を閉じていましたが、両腕には関屋君の腕の感覚がありました。
そっとまぶたを開くと、うまくいったようでした。隣に関屋君、その向こう側に長谷川君がいました。そして、3人のつま先から数センチ先に、まっすぐ底へ落ちる断崖絶壁がありました。
「行くぞ。」
関屋君が言い、今度は関屋君が、私と長谷川くんの、それぞれの片腕を自分の腕としっかり組み、意識体を前方へ倒して、頭から絶壁の下へ向けて、ゆっくりと降りてゆきました。
「オレさ、この間、この集合的無意識の中をひとりで行けるだけ遠くまで行って来たわけよ。」
「ふうん。それでしばらく、姿を見なかったんだね。身体の病気にでもなっているんじゃないかと心配したよ。」
長谷川君が、言いました。
「それで、何かあった?」
好奇心にかられた私がききました。
「おおありよ。」
関屋君が得意そうに話はじめました。
「みんなが集まるようになった場所から離れて泳ぐように進んでいったわけ。同じ方角へ進めるように、部屋から方位磁針を持って来た。それから時間の経過がわかるように、腕時計をした。これらはこの空間でも役に立ったぜ。
方位磁針が北を指す方向に、進んで行った。時々、座禅をしている坊さんや、瞑想したり、ヨガみたいことをしてる人達がいたけど、関わるのがめんどうなので、無視した。オレは途中で睡眠はとったけど、上(顕在意識のこと)へは帰らずに、北へ北へと進んだ。
腕時計の針が回るのを数えていたから、5日はたった頃、行く手に断崖絶壁が現れた。
この世界の底が、さらに急に落ち込んでいるんだ。そこまで着いて、のぞき込むと、底は見えないくらいに深い。
ここまで来たら、オレの性格として、底まで行かなきゃ帰れない。オレは絶壁に沿って潜っていった。
すると、何かにゴツンと当たったんだな。まだ底に着いたわけじゃない。何かがある。
目をこらしてよく見ると、何と言うか、縄文杉みたいな太っといものが、横になって続いているわけよ。まあオレ、縄文杉は雑誌でしか見たことないから、いい例えかどうかわかんないけど。
で、まあ、その縄文杉みたいなのに手で触ってみた。そしたらなんか、そいつが反応して、手を押し返してきたわけ。
それで思ったね。こいつは生き物だぞと。
この縄文杉みたいなのの太さと長さから見て、こいつが動き出したら、オレがやばいぞと感じて、そこから上へ戻ったけど、あいつの正体、確かめたいから、3人で行ってみないか?」
私と長谷川君は顔を見合わせました。
「なにビビッてんだよ。本当に危なくなったら、瞬時に上へ帰る技は身につけているんだろ?」
関屋君にそう言われると、私と長谷川君は従うしかありません。関屋君という人は、不思議と他の人を動かす力を持っているのです。
集合的無意識の中で働く法則のひとつに、行きたい所や、会いたい人を、意識を集中して思い浮かべれば、(もちろんその場所やその人が集合的無意識とつながっていれば、ですが、)瞬時にそこへ行くことが出来ます。
今回、関屋君は、これを私達3人で、同時にやってみようと提案してきました。具体的には、その断崖絶壁を知っているのは、関屋君だけなのですが、関屋君の片腕それぞれを、私と長谷川君がつかんで、関屋君が、断崖絶壁を思い浮かべれば、3人同時に、断崖絶壁に瞬時に行けるのでは、と、言うのです。
関屋君の指示で、私と長谷川君はそれぞれ、関屋君の片腕を、両腕でしっかりつかみました。
関屋君が言いました。
「オレが断崖絶壁を思い浮かべた時に、君らがほかの場所を思い浮かべたら、うまくゆかないかもしれない。オレが、1.2.3.と合図を言うから、その後は、頭ん中真っ白にしろよ。」
私と長谷川君はうなずきました。
関屋君が大きな声で言いました。
「いくぞ! いち、にい、さん!」
私は目を閉じていましたが、両腕には関屋君の腕の感覚がありました。
そっとまぶたを開くと、うまくいったようでした。隣に関屋君、その向こう側に長谷川君がいました。そして、3人のつま先から数センチ先に、まっすぐ底へ落ちる断崖絶壁がありました。
「行くぞ。」
関屋君が言い、今度は関屋君が、私と長谷川くんの、それぞれの片腕を自分の腕としっかり組み、意識体を前方へ倒して、頭から絶壁の下へ向けて、ゆっくりと降りてゆきました。
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