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第五話(6)
3人組が出会ったものは?
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そうして頭から、ゆっくり垂直に下って、何分くらい経ったでしょうか、なぜか、私の頭に、コンッ、と何かがぶつかり、
「いてっ!」
と、声を出してしまいました。
関屋君が、くちびるに人差し指をあて、❛ 静かに ❜というジェスチャーをしました。
関屋くんが、私の頭に当たったものに顔を近づけて、観察をはじめました。
私と長谷川君も、薄暗くて視界のきかない中で、意識を集中させて、何があるのか、把握しようとしました。
関屋君が縄文杉にたとえたように、確かにどでかい円柱を横倒しにしたような物が浮かんでいました。そして円柱の左右は、どこまでも薄暗い淵の中に伸びていて、その先を見定めることはできませんでした。
関屋君がポケットから巻いたひもを取り出し、ひもの先を私の手に握らせて、動かないように、というジェスチャーをしました。そして自分は、円柱の円に沿うように、泳いで向こう側に消えました。やがて円柱の下から出てきて私のそばに来ると、自分が持っていたひもと、私が持っていたひもの先を結びつけました。
(こうしておけば、降りて来た場所がわかるから)
関屋君は私と長谷川君にささやきました。
さすが、準備のよい関屋君です。
それから3人で、円柱の左手に向かって進んでみることにしました。(右手でもよかったのですが、関屋君が左利きなので、自然と左になりました。)
3人で泳ぐように進み、どれくらい時間がたったかわかりません。おそらく、数日の時間はかかっていたでしょう。
意識体なので腹は減りませんが、眠くはなります。3人で進んでいるので、1人が眠りだしても、手をつないで2人が引っぱって進み、眠っていた1人が目を覚ましたら、今度は他の1人が眠って、引っぱってもらうという調子で進み続けました。
円柱に沿って泳いでいるうちに、気付いたことがありました。例えれば木の幹の表面に、ナイフの刃を入れると、幹の表面は、ささくれみたいになりますよね。そうしたささくれ部分が、円柱のいたるところにあるのです。ささくれといっても、巨大な円柱のささくれですから、大きさも厚みもあります。断崖絶壁を降りて来た時に、私の頭にぶつかったのも、このささくれのひとつだったのだとわかりました。
そうして進んで、ある時、突然、長谷川君が、
「ぎゃっ!!」
と悲鳴を上げました。
「僕の体に、ヘビみたいなものが巻き付いてきた!!」
私と関屋君が長谷川君を見ると、確かに長谷川君の体に、大きな長いヘビみたいなものが巻き付いていました。ヘビみたいなものが動いて、長谷川君を、私と関屋君から引き離しました。
「ギャーッ!!助けてくれええ!!」
長谷川君は巻き付かれて絶叫し、そのまま上のほうへと持っていかれ、長谷川君を追う、私と関屋君の視線も上へと動きました。
私達の頭上にあったのは…
巨大な丸い2つの目。
長く伸びた鼻と、その先の、ふたつの鼻の
穴。
その下にぱっくり空いた口からのぞく、小山くらいの大きさの、鋭い歯の列。
口のわきから生えた、ヒゲと思われるものの一本に、長谷川くんは巻き取られていました。
それは、スケールが想像を超えて、どでかいものでしたけれども、お寺や神社の彫刻にある、または、掛け軸やふすま絵や、天井画に描かれている、日本の龍の顔でした。
「いてっ!」
と、声を出してしまいました。
関屋君が、くちびるに人差し指をあて、❛ 静かに ❜というジェスチャーをしました。
関屋くんが、私の頭に当たったものに顔を近づけて、観察をはじめました。
私と長谷川君も、薄暗くて視界のきかない中で、意識を集中させて、何があるのか、把握しようとしました。
関屋君が縄文杉にたとえたように、確かにどでかい円柱を横倒しにしたような物が浮かんでいました。そして円柱の左右は、どこまでも薄暗い淵の中に伸びていて、その先を見定めることはできませんでした。
関屋君がポケットから巻いたひもを取り出し、ひもの先を私の手に握らせて、動かないように、というジェスチャーをしました。そして自分は、円柱の円に沿うように、泳いで向こう側に消えました。やがて円柱の下から出てきて私のそばに来ると、自分が持っていたひもと、私が持っていたひもの先を結びつけました。
(こうしておけば、降りて来た場所がわかるから)
関屋君は私と長谷川君にささやきました。
さすが、準備のよい関屋君です。
それから3人で、円柱の左手に向かって進んでみることにしました。(右手でもよかったのですが、関屋君が左利きなので、自然と左になりました。)
3人で泳ぐように進み、どれくらい時間がたったかわかりません。おそらく、数日の時間はかかっていたでしょう。
意識体なので腹は減りませんが、眠くはなります。3人で進んでいるので、1人が眠りだしても、手をつないで2人が引っぱって進み、眠っていた1人が目を覚ましたら、今度は他の1人が眠って、引っぱってもらうという調子で進み続けました。
円柱に沿って泳いでいるうちに、気付いたことがありました。例えれば木の幹の表面に、ナイフの刃を入れると、幹の表面は、ささくれみたいになりますよね。そうしたささくれ部分が、円柱のいたるところにあるのです。ささくれといっても、巨大な円柱のささくれですから、大きさも厚みもあります。断崖絶壁を降りて来た時に、私の頭にぶつかったのも、このささくれのひとつだったのだとわかりました。
そうして進んで、ある時、突然、長谷川君が、
「ぎゃっ!!」
と悲鳴を上げました。
「僕の体に、ヘビみたいなものが巻き付いてきた!!」
私と関屋君が長谷川君を見ると、確かに長谷川君の体に、大きな長いヘビみたいなものが巻き付いていました。ヘビみたいなものが動いて、長谷川君を、私と関屋君から引き離しました。
「ギャーッ!!助けてくれええ!!」
長谷川君は巻き付かれて絶叫し、そのまま上のほうへと持っていかれ、長谷川君を追う、私と関屋君の視線も上へと動きました。
私達の頭上にあったのは…
巨大な丸い2つの目。
長く伸びた鼻と、その先の、ふたつの鼻の
穴。
その下にぱっくり空いた口からのぞく、小山くらいの大きさの、鋭い歯の列。
口のわきから生えた、ヒゲと思われるものの一本に、長谷川くんは巻き取られていました。
それは、スケールが想像を超えて、どでかいものでしたけれども、お寺や神社の彫刻にある、または、掛け軸やふすま絵や、天井画に描かれている、日本の龍の顔でした。
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