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第五話(7)
龍と語る。
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「ウアアアァァァァァァァ!!」
私も絶叫していました。
関屋君だけが、さすがに、唇は震えていましたけれども、声を上げずに、私の手を痛いほど、ぎゅっと握りました。
龍は、ヒゲに巻き取った長谷川君を、自分の目の前まで持って来ると、
(人間か。久しぶりよのう。)
というボソッとした声が、私の頭の中に響きました。私は関屋君の顔を見ましたが、関屋君も(聞こえた。)という意味でしょう、力強くうなずきました。
龍は、人の頭の中に、テレパシーのようなものを送って、話すらしいです。
(おまえらどこから来た?どこの国の者か?)
「集合的無意識の中を泳いで来ました。日本人です。」
関屋君が上を向いて、大声で言いました。
そのとたん!!
龍の巨大な目がうるんできて、ヒゲのちからが抜けて、長谷川君を離しました。長谷川君は急いで、私達のところまで、降りて来ました。
(日本人。わたしは守ってやれなんだ……)
涙が龍の丸い目をつたって、したたりました。
「日本人を守らなければいけなかったのですか?どうしてですか?」
いつも遠慮なくものを言う、関屋君が言いました。
(おまえらは、自分ら日本人が、龍族の子孫だということを知らんのか?)
私と関屋君と長谷川君はそろって、うなずきました。
(日本人の品性も落ちたものよのう。おまえらの始祖にあたる、
初代、神武天皇(じんむてんのう)、二代、綏靖天皇(すいぜいてんのう)、三代、安寧天皇(あんねいてんのう)、四代、懿徳天皇(いとくてんのう)、五代、孝昭天皇(こうしょうてんのう)、六代、孝安天皇(こうあんてんのう)、七代、孝霊天皇(こうれいてんのう)、八代、孝元天皇(こうげんてんのう)、九代、開化天皇(かいかてんのう)、十代、崇神天皇(すじんてんのう)、十一代、垂仁天皇(すいにんてんのう)、十二代、景行天皇(けいこうてんのう)、十三代、成務天皇(せいむてんのう)、十四代、仲哀天皇(ちゅうあいてんのう)、十五代、応神天皇(おうじんてんのう)
まで身体に龍の鱗(うろこ)があったり、龍の尻尾があったり、龍の角があったりしたことを知らんのか?)
関屋君が言った。
「すごい記憶力ですね。」
問題は、そこじゃないだろう~!
私は心の中で思いましたが、龍はほめられて悪い気はしなかったようでした。
龍は続けて言いました。
(初期の日本人は、地球の生活環境に適する身体になるまで、宇宙から来た龍族の特徴を残していたのだ。)
「初めて聞きました。」
私達は口々に言いました。
「それではあなたは?集合的無意識の底におられるあなたはどうしてここにおられるのですか?」
関屋君が聞きました。
(おまえらも、ここへこうして来れたということは、生命とは、物質である身体の部分と、目に見えないが、精神の世界にある魂の部分との結合体だということくらい理解できよう。わたしは身体を持って地上で暮らす龍族の、魂のよりどころ、魂の守りの役として、ここにおるのじゃ。
しかし…)
ここで龍は深く長いため息をつきました。
(しかし、今ではわたしは、その用に応えられていない。こうして集合的無意識の底の底で身を横たえているだけだ…)
「どうして具合が悪くなったのですか?」
私と関屋君は、びっくりして長谷川君を見ました。さきほど悲鳴をあげていた長谷川君が、龍に深い共感を寄せた声で尋ねたからです。
(長谷川君は弱い者や傷ついた者に、とてもやさしく敏感なんだ…)
と私は思いました。
龍は話はじめました。
(ここまで来る途中で、わたしの体を充分に見ただろう?あちらこちら、傷だらけであったろう?)
私達3人は、顔を見合わせ、確かめ合いました。あの無数の「ささくれ」は、龍の体の傷だったのか。なぜ、あれほどの傷を負ったのだろう?
関屋君が代表して尋ねました。
「おっしゃるとおり、数えきれないたくさんの傷を見てきました。どうしてあれほどの傷を負われたのですか?」
龍は、私達を見下ろしていた目玉を、少し上に向け、昔を思い出す表情になりました。
(あれは昭和19年から20年のこと、日本の国土が空襲や地上戦に襲われた。国民の阿鼻叫喚の声を聞いた。わたしは、国民の苦しみを助けたいと思うと、ここにいられなくなった。わたしは、集合的無意識から立ち昇り、顕在意識の世界に出た。
日本の各地が空襲を受けていた。わたしは襲いかかる戦闘機の群れに近づいて、立ち向かった。
顕在意識に現れても、霊眼が開けていない者には、わたしの姿は見えないが、わたしが飛び回ることで、相手に読めない風や雨を不意に作って、妨害をすることはできる。
しかし多勢に無勢、相手の戦闘機が多すぎた。妨害してもしても襲ってくる。都市の上で爆弾を落とす時、それが、わたしの体を突き抜けて、わたしの鱗を跳ね飛ばした。
おまえたちが見た、わたしの体の傷は、そうしてついた傷じゃよ。
わたしは、わたしにできる限りのことをしたが、どうにもならなかった。わたしはとうとう、空から落ちた。そしてそれ以来、飛び立つ力を失い、ここに体を横たえている。)
日本が戦場となった映像は、テレビで見ることはあったが、龍も戦っていたとは……
そして、飛べなくなるほど傷ついていたとは……
私達は、生まれて初めて聞いた話が、心の内に収まるまで、時間がかかり、3人共、しばらく押し黙っていました。
沈黙を破って、長谷川君が発言しました……
私も絶叫していました。
関屋君だけが、さすがに、唇は震えていましたけれども、声を上げずに、私の手を痛いほど、ぎゅっと握りました。
龍は、ヒゲに巻き取った長谷川君を、自分の目の前まで持って来ると、
(人間か。久しぶりよのう。)
というボソッとした声が、私の頭の中に響きました。私は関屋君の顔を見ましたが、関屋君も(聞こえた。)という意味でしょう、力強くうなずきました。
龍は、人の頭の中に、テレパシーのようなものを送って、話すらしいです。
(おまえらどこから来た?どこの国の者か?)
「集合的無意識の中を泳いで来ました。日本人です。」
関屋君が上を向いて、大声で言いました。
そのとたん!!
龍の巨大な目がうるんできて、ヒゲのちからが抜けて、長谷川君を離しました。長谷川君は急いで、私達のところまで、降りて来ました。
(日本人。わたしは守ってやれなんだ……)
涙が龍の丸い目をつたって、したたりました。
「日本人を守らなければいけなかったのですか?どうしてですか?」
いつも遠慮なくものを言う、関屋君が言いました。
(おまえらは、自分ら日本人が、龍族の子孫だということを知らんのか?)
私と関屋君と長谷川君はそろって、うなずきました。
(日本人の品性も落ちたものよのう。おまえらの始祖にあたる、
初代、神武天皇(じんむてんのう)、二代、綏靖天皇(すいぜいてんのう)、三代、安寧天皇(あんねいてんのう)、四代、懿徳天皇(いとくてんのう)、五代、孝昭天皇(こうしょうてんのう)、六代、孝安天皇(こうあんてんのう)、七代、孝霊天皇(こうれいてんのう)、八代、孝元天皇(こうげんてんのう)、九代、開化天皇(かいかてんのう)、十代、崇神天皇(すじんてんのう)、十一代、垂仁天皇(すいにんてんのう)、十二代、景行天皇(けいこうてんのう)、十三代、成務天皇(せいむてんのう)、十四代、仲哀天皇(ちゅうあいてんのう)、十五代、応神天皇(おうじんてんのう)
まで身体に龍の鱗(うろこ)があったり、龍の尻尾があったり、龍の角があったりしたことを知らんのか?)
関屋君が言った。
「すごい記憶力ですね。」
問題は、そこじゃないだろう~!
私は心の中で思いましたが、龍はほめられて悪い気はしなかったようでした。
龍は続けて言いました。
(初期の日本人は、地球の生活環境に適する身体になるまで、宇宙から来た龍族の特徴を残していたのだ。)
「初めて聞きました。」
私達は口々に言いました。
「それではあなたは?集合的無意識の底におられるあなたはどうしてここにおられるのですか?」
関屋君が聞きました。
(おまえらも、ここへこうして来れたということは、生命とは、物質である身体の部分と、目に見えないが、精神の世界にある魂の部分との結合体だということくらい理解できよう。わたしは身体を持って地上で暮らす龍族の、魂のよりどころ、魂の守りの役として、ここにおるのじゃ。
しかし…)
ここで龍は深く長いため息をつきました。
(しかし、今ではわたしは、その用に応えられていない。こうして集合的無意識の底の底で身を横たえているだけだ…)
「どうして具合が悪くなったのですか?」
私と関屋君は、びっくりして長谷川君を見ました。さきほど悲鳴をあげていた長谷川君が、龍に深い共感を寄せた声で尋ねたからです。
(長谷川君は弱い者や傷ついた者に、とてもやさしく敏感なんだ…)
と私は思いました。
龍は話はじめました。
(ここまで来る途中で、わたしの体を充分に見ただろう?あちらこちら、傷だらけであったろう?)
私達3人は、顔を見合わせ、確かめ合いました。あの無数の「ささくれ」は、龍の体の傷だったのか。なぜ、あれほどの傷を負ったのだろう?
関屋君が代表して尋ねました。
「おっしゃるとおり、数えきれないたくさんの傷を見てきました。どうしてあれほどの傷を負われたのですか?」
龍は、私達を見下ろしていた目玉を、少し上に向け、昔を思い出す表情になりました。
(あれは昭和19年から20年のこと、日本の国土が空襲や地上戦に襲われた。国民の阿鼻叫喚の声を聞いた。わたしは、国民の苦しみを助けたいと思うと、ここにいられなくなった。わたしは、集合的無意識から立ち昇り、顕在意識の世界に出た。
日本の各地が空襲を受けていた。わたしは襲いかかる戦闘機の群れに近づいて、立ち向かった。
顕在意識に現れても、霊眼が開けていない者には、わたしの姿は見えないが、わたしが飛び回ることで、相手に読めない風や雨を不意に作って、妨害をすることはできる。
しかし多勢に無勢、相手の戦闘機が多すぎた。妨害してもしても襲ってくる。都市の上で爆弾を落とす時、それが、わたしの体を突き抜けて、わたしの鱗を跳ね飛ばした。
おまえたちが見た、わたしの体の傷は、そうしてついた傷じゃよ。
わたしは、わたしにできる限りのことをしたが、どうにもならなかった。わたしはとうとう、空から落ちた。そしてそれ以来、飛び立つ力を失い、ここに体を横たえている。)
日本が戦場となった映像は、テレビで見ることはあったが、龍も戦っていたとは……
そして、飛べなくなるほど傷ついていたとは……
私達は、生まれて初めて聞いた話が、心の内に収まるまで、時間がかかり、3人共、しばらく押し黙っていました。
沈黙を破って、長谷川君が発言しました……
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