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第五話(8)
ひきこもりは龍の傷を治せるか?
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長谷川君が言いました。
「あの~、これは僕がひとりで思っただけですけど、僕が幼稚園生だった頃、お腹をこわして、痛くて寝ていたら、お母さんが手のひらを、僕のお腹に当ててくれたんです。その手のひらが温かくてやさしくて、だんだんお腹の痛みが治ってきたんです。龍さんの傷に、同じように手を当てて、効き目があるかどうかはわかりませんけど、試してみることはできるんじゃないかなと思って……」
長谷川君が私に身の上話をしてくれた時、お母さんは小学六年の時に、病気で亡くなった、と聞いたから、長谷川君が話したことは、お母さんとの温かい思い出のひとつなんだろうなと、私は思いました。
龍は、
(そうじゃのう。今までそういうこと、をしてくれる人がいなかったから、わたしにもわからんが。手近なところの傷で、きみが試してくれるか?)
龍に言われた長谷川君は、足元を見て、いちばん近いところにある、ささくれへ向かいました。
長谷川君は、ささくれのそばにしゃがんだ姿勢をとると、両手のひらを龍の傷の上に、直接は触れないように、できるだけ近づけて、かざしました。
しばらく無言の時間が流れました。
長谷川君はしゃがんだ姿勢のまま、彫像になったように動きません。
このまま何も起こらないのでは、と、私が思いはじめたその時!!
長谷川君の手のひらと、龍の傷とのあいだに、ぽっ、と暖かい、だいだい色の明かりが灯りました。
明かりを見ていると、傷の内側から、新しい鱗(うろこ)が、少しずつ生えてきています。
「おお~っ!」
「やったぜ!」
私と関屋君は叫びました。
鱗が新しく生えると、ささくれの部分は自然にはがれ、漂って消えました。
「オレや中光にもできるかな?」
関屋君と私も、近くにある傷のところに行くと、長谷川君がしたように、しゃがんで手のひらをかざしました。
しばらく待つと、関屋君と私の手のひらの内にも明かりが灯りました!
関屋君の明かりは、黄色に近く白い輝きをやどしていて、私の明かりは、長谷川君のだいだい色より、赤に近い色でした。
その人の個性によって、色が異なるものなのだな、と考えているうちに、私の手のひらの下からも、新しい鱗が生えてきました。目の前で見る鱗は、いつか見た南の国の、二枚貝の内側のようにすべすべとして虹色に輝いていました。
関屋君もうまくいったらしく、
「おお~っ!オレ達って、すごいじゃん!」
と叫び、3人共夢中になって、手近なところの傷を治して回りました。
龍さんが、
(きみたちの、やさしいエネルギーがわたしを治している。ありがとう……)
と言いました。
やがて…
興奮していた関屋君が、はた、と真顔になって立ち上がり、
「オレ達3人じゃ、龍さんのすべての傷を治すのに、何万年かかるかわからんぜ。みんなを参加させないと!」
と言いました。
「あの~、これは僕がひとりで思っただけですけど、僕が幼稚園生だった頃、お腹をこわして、痛くて寝ていたら、お母さんが手のひらを、僕のお腹に当ててくれたんです。その手のひらが温かくてやさしくて、だんだんお腹の痛みが治ってきたんです。龍さんの傷に、同じように手を当てて、効き目があるかどうかはわかりませんけど、試してみることはできるんじゃないかなと思って……」
長谷川君が私に身の上話をしてくれた時、お母さんは小学六年の時に、病気で亡くなった、と聞いたから、長谷川君が話したことは、お母さんとの温かい思い出のひとつなんだろうなと、私は思いました。
龍は、
(そうじゃのう。今までそういうこと、をしてくれる人がいなかったから、わたしにもわからんが。手近なところの傷で、きみが試してくれるか?)
龍に言われた長谷川君は、足元を見て、いちばん近いところにある、ささくれへ向かいました。
長谷川君は、ささくれのそばにしゃがんだ姿勢をとると、両手のひらを龍の傷の上に、直接は触れないように、できるだけ近づけて、かざしました。
しばらく無言の時間が流れました。
長谷川君はしゃがんだ姿勢のまま、彫像になったように動きません。
このまま何も起こらないのでは、と、私が思いはじめたその時!!
長谷川君の手のひらと、龍の傷とのあいだに、ぽっ、と暖かい、だいだい色の明かりが灯りました。
明かりを見ていると、傷の内側から、新しい鱗(うろこ)が、少しずつ生えてきています。
「おお~っ!」
「やったぜ!」
私と関屋君は叫びました。
鱗が新しく生えると、ささくれの部分は自然にはがれ、漂って消えました。
「オレや中光にもできるかな?」
関屋君と私も、近くにある傷のところに行くと、長谷川君がしたように、しゃがんで手のひらをかざしました。
しばらく待つと、関屋君と私の手のひらの内にも明かりが灯りました!
関屋君の明かりは、黄色に近く白い輝きをやどしていて、私の明かりは、長谷川君のだいだい色より、赤に近い色でした。
その人の個性によって、色が異なるものなのだな、と考えているうちに、私の手のひらの下からも、新しい鱗が生えてきました。目の前で見る鱗は、いつか見た南の国の、二枚貝の内側のようにすべすべとして虹色に輝いていました。
関屋君もうまくいったらしく、
「おお~っ!オレ達って、すごいじゃん!」
と叫び、3人共夢中になって、手近なところの傷を治して回りました。
龍さんが、
(きみたちの、やさしいエネルギーがわたしを治している。ありがとう……)
と言いました。
やがて…
興奮していた関屋君が、はた、と真顔になって立ち上がり、
「オレ達3人じゃ、龍さんのすべての傷を治すのに、何万年かかるかわからんぜ。みんなを参加させないと!」
と言いました。
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