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Layer49 横槍
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真央のことを愛しいだなんて現を抜かしていると、いつの間にかお互いの顔の距離が縮まっていた。
いや、正確にはお互いの唇の距離がだ。
これは良いのか?
しても良いのか?
キスをしても良いのか!?
待て!
落ち着け!
真央の承認もなしにキスなんてしても良いのか?
それは駄目だ。
真央はキスをされることを嫌がるかもしれない。
だからと言って、この状況で「キスしても良いですか?」なんて聞いたら、せっかくの良い雰囲気が台無しだ。
どうすればいい?
そうだ!
目だ!
目が閉じていればキスをしても良いという合図なはずだ!
そう思って真央を見ると目は開いていた。
しかし、お互いの唇はゆっくりと着実に近づいていた。
どっちなんだ!?
目が開いているということはキスをしてはいけないということか?
だが、お互いの唇は近づいている。
となると、キスをする直前に目を閉じるという可能性もある。
これは一体どっちなんだ?
そうこう考えているうちに真央の唇はどんどんと迫ってくる。
もう考えている余裕はない。
……
ここでキスをしなかったら男が廃るだろう!
そう思い、俺は覚悟を決めた。
ゆっくりと近づいてくる真央の唇。
もう少しでお互いの唇が触れそうになった時、真央はそっと目を閉じた。
それを見て、俺もそっと目を閉じる。
心地の良い風が吹き、ふわっと膨らんだカーテンが俺と真央だけの世界になるように包み込んだ。
そして、俺達はキスをし――
ピロン♪
この状況で最も似つかわしくないメッセージの通知を告げる電子音が俺のスマホから大きく鳴り響いた。
そのせいで、悲しくも俺と真央は目を開けてしまい、近づいていた唇もそこで止まってしまった。
目を開けて見つめ合って数秒、俺達は諦めたようにギリギリまで近づけていた距離から一気に離れた。
「スマホ、見なくて良いの?」
微妙な空気の中、真央が聞いてきた。
「あぁ、そうだな」
この微妙な空気をどうにかしたくて、俺は自分のスマホを確認した。
「……八雲からだ。すぐに科学室に来て欲しいらしい!」
「えっ、八雲君から!? それって、あたしも行った方がいいの?」
「いや、真央は来なくて大丈夫だ。俺だけに来て欲しいみたいだ」
八雲からのメッセージは個チャで来ていた。
「悪い、真央。今から、ちょっと科学室に行って来る。八雲がすぐに来て欲しいって言うことは何か重要なことなのかもしれない。八雲の用事がどのくらい時間が掛かるかはわからないから、真央は先に帰っていてくれ」
「わかったって言いたくないけど、わかった。確かに八雲君がすぐ来て欲しいって言うなんて、よっぽどのことかもしれないしね。心優しいあたしは一人寂しく帰ってあげる!」
それは俺だって今日は真央と一緒に帰りたいさ!
しかも、大事なキスをする時に邪魔しやがって!
だが、八雲にこう言われちゃ仕方ないだろ!
「本当にごめんな! この埋め合わせは必ずどこかでするから、許してくれ真央!」
実はちょっと前から思っていたのだが、俺が真央と言う度に真央が少し嬉しそうにしている。
そういうのはやめてくれ!
可愛いだろ!
「いいよ、それで許してあげる! ほら、早く八雲君のとこに行ってあげな!」
「わかってる。ありがとうな、真央! じゃあ、またな!」
「うん、またね香六!」
真央に手を振られながら、俺は八雲のいる科学室へと駆け足で向かった。
--------------------------
放課後になってから、もうかなりの時間が経っているのに私は動けずにいました。
昼休みに姫石先輩と玉宮先輩にあんなに応援してもらったのに、いざ行こうとすると中々足が動きません。
それでも私は勇気を振り絞って、今、科学室の扉の前にいます。
大きく深呼吸をして心を落ち着かせます。
それでも心が落ち着かないので、もう一度大きく深呼吸をします。
一応念のため、さらにもう一度大きく深呼吸をします。
やっとの思いで心を落ち着かせて、私は科学室の扉を開けました。
「こ、こんにちは先輩!」
思わず叫んでしまった私は全然心が落ち着いていなかったことを知りました。
「やぁ、立花後輩。今日は珍しく来るのが遅かったな」
いつも通りの白い白衣を着た先輩、ではなく、いつもと違ってグレーの白衣を着た先輩がいました。
「白」に「衣」と書いて「白衣」と書くのにグレーの色の白衣だなんて、なんだか可笑しいですね。
と、いつもだったら考えないことを考えてしまうなんて、よほど私は緊張しているようです。
「そ、そうですか!?」
またしても私は変なテンションで叫んでしまいました。
「どうした、立花後輩? そんなにソワソワとして何かあったのか?」
私はソワソワするほど落ち着いていなかったみたいです。
「べ、別に何かあったとかじゃないんです! これからあるというか……何かあるわけではないんですけど、何かあるわけで、何かあるわけではないわけではなくて、何かあるわけではないわけではないわけではなくて、何かあるわけではないわけではないわけではないわけではなくて……」
「おい! 立花後輩、少し落ち着け! 途中から何を言っているのか全くもって理解できなかったぞ」
「あっ、す、すみません! つまりですね、私が言いたいのは……」
落ち着かなければ。
私は落ち着かなければなりません。
きっと、大丈夫です。
姫石先輩も玉宮先輩も絶対成功するって言ってくれたじゃないですか!
だから大丈夫です!
私は先輩に想いを伝えるんです!
先輩に想いを伝えるんです!
想いを伝えるんです!
伝えるんです!
伝えなきゃいけないんです!
私が先輩を好きだってことを!
伝えたいんです!
「あ、あの! 私! 実は先輩のことが――」
いや、正確にはお互いの唇の距離がだ。
これは良いのか?
しても良いのか?
キスをしても良いのか!?
待て!
落ち着け!
真央の承認もなしにキスなんてしても良いのか?
それは駄目だ。
真央はキスをされることを嫌がるかもしれない。
だからと言って、この状況で「キスしても良いですか?」なんて聞いたら、せっかくの良い雰囲気が台無しだ。
どうすればいい?
そうだ!
目だ!
目が閉じていればキスをしても良いという合図なはずだ!
そう思って真央を見ると目は開いていた。
しかし、お互いの唇はゆっくりと着実に近づいていた。
どっちなんだ!?
目が開いているということはキスをしてはいけないということか?
だが、お互いの唇は近づいている。
となると、キスをする直前に目を閉じるという可能性もある。
これは一体どっちなんだ?
そうこう考えているうちに真央の唇はどんどんと迫ってくる。
もう考えている余裕はない。
……
ここでキスをしなかったら男が廃るだろう!
そう思い、俺は覚悟を決めた。
ゆっくりと近づいてくる真央の唇。
もう少しでお互いの唇が触れそうになった時、真央はそっと目を閉じた。
それを見て、俺もそっと目を閉じる。
心地の良い風が吹き、ふわっと膨らんだカーテンが俺と真央だけの世界になるように包み込んだ。
そして、俺達はキスをし――
ピロン♪
この状況で最も似つかわしくないメッセージの通知を告げる電子音が俺のスマホから大きく鳴り響いた。
そのせいで、悲しくも俺と真央は目を開けてしまい、近づいていた唇もそこで止まってしまった。
目を開けて見つめ合って数秒、俺達は諦めたようにギリギリまで近づけていた距離から一気に離れた。
「スマホ、見なくて良いの?」
微妙な空気の中、真央が聞いてきた。
「あぁ、そうだな」
この微妙な空気をどうにかしたくて、俺は自分のスマホを確認した。
「……八雲からだ。すぐに科学室に来て欲しいらしい!」
「えっ、八雲君から!? それって、あたしも行った方がいいの?」
「いや、真央は来なくて大丈夫だ。俺だけに来て欲しいみたいだ」
八雲からのメッセージは個チャで来ていた。
「悪い、真央。今から、ちょっと科学室に行って来る。八雲がすぐに来て欲しいって言うことは何か重要なことなのかもしれない。八雲の用事がどのくらい時間が掛かるかはわからないから、真央は先に帰っていてくれ」
「わかったって言いたくないけど、わかった。確かに八雲君がすぐ来て欲しいって言うなんて、よっぽどのことかもしれないしね。心優しいあたしは一人寂しく帰ってあげる!」
それは俺だって今日は真央と一緒に帰りたいさ!
しかも、大事なキスをする時に邪魔しやがって!
だが、八雲にこう言われちゃ仕方ないだろ!
「本当にごめんな! この埋め合わせは必ずどこかでするから、許してくれ真央!」
実はちょっと前から思っていたのだが、俺が真央と言う度に真央が少し嬉しそうにしている。
そういうのはやめてくれ!
可愛いだろ!
「いいよ、それで許してあげる! ほら、早く八雲君のとこに行ってあげな!」
「わかってる。ありがとうな、真央! じゃあ、またな!」
「うん、またね香六!」
真央に手を振られながら、俺は八雲のいる科学室へと駆け足で向かった。
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放課後になってから、もうかなりの時間が経っているのに私は動けずにいました。
昼休みに姫石先輩と玉宮先輩にあんなに応援してもらったのに、いざ行こうとすると中々足が動きません。
それでも私は勇気を振り絞って、今、科学室の扉の前にいます。
大きく深呼吸をして心を落ち着かせます。
それでも心が落ち着かないので、もう一度大きく深呼吸をします。
一応念のため、さらにもう一度大きく深呼吸をします。
やっとの思いで心を落ち着かせて、私は科学室の扉を開けました。
「こ、こんにちは先輩!」
思わず叫んでしまった私は全然心が落ち着いていなかったことを知りました。
「やぁ、立花後輩。今日は珍しく来るのが遅かったな」
いつも通りの白い白衣を着た先輩、ではなく、いつもと違ってグレーの白衣を着た先輩がいました。
「白」に「衣」と書いて「白衣」と書くのにグレーの色の白衣だなんて、なんだか可笑しいですね。
と、いつもだったら考えないことを考えてしまうなんて、よほど私は緊張しているようです。
「そ、そうですか!?」
またしても私は変なテンションで叫んでしまいました。
「どうした、立花後輩? そんなにソワソワとして何かあったのか?」
私はソワソワするほど落ち着いていなかったみたいです。
「べ、別に何かあったとかじゃないんです! これからあるというか……何かあるわけではないんですけど、何かあるわけで、何かあるわけではないわけではなくて、何かあるわけではないわけではないわけではなくて、何かあるわけではないわけではないわけではないわけではなくて……」
「おい! 立花後輩、少し落ち着け! 途中から何を言っているのか全くもって理解できなかったぞ」
「あっ、す、すみません! つまりですね、私が言いたいのは……」
落ち着かなければ。
私は落ち着かなければなりません。
きっと、大丈夫です。
姫石先輩も玉宮先輩も絶対成功するって言ってくれたじゃないですか!
だから大丈夫です!
私は先輩に想いを伝えるんです!
先輩に想いを伝えるんです!
想いを伝えるんです!
伝えるんです!
伝えなきゃいけないんです!
私が先輩を好きだってことを!
伝えたいんです!
「あ、あの! 私! 実は先輩のことが――」
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