極上御曹司は仮面の怪盗令嬢の素顔を暴きたい

ささゆき細雪

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epilogue

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 美術館のエントランス前で大量の薔薇の花束とともに行われた求婚の後、九条はかつて更紗を監禁した私邸へ車で連れていった。108輪もある薔薇の花は玄関前に用意されていたおおきな花瓶におさまりきらず、急遽キッチンの棚に並んでいたグラスを取り出し他の部屋にも活けることに。
 ワイングラスやビアグラスへ鋏を使って器用に薔薇の花を活ける更紗を見て、九条が目をまるくしている。

「わたし、華道の資格持ってるんです。母が教室に通わせてくれて」
「へえ」

 まだまだ更紗の知らない部分がたくさんあるんだな、とどこか嬉しそうに九条が薔薇の花を手に微笑んでいる。求婚の返事をもらったからか、ふだんよりも子どもみたいな明るい雰囲気が漂っていて、黎さんも謎だらけですよと更紗も笑い返す。

「母は森鍵の人間だから、”虹”の行方を気にかけていたんです。病気で足を悪くしてからはひとり勝手に施設に入っていまは悠々自適な車椅子生活を送っています」

 更紗が悪びれることなく母親のことを話す姿を意外に思いながら、九条はこくりと頷く。更紗が森鍵に就職して一人暮らしをはじめたのを機に母親が終の棲家を決めたというはなしは調査済みである。

「ああ、今度結婚の挨拶に行こう。一緒に」
「黎さんのご両親にも挨拶、しないといけませんよね」
「心配しないで。うちの親は俺が選んだ女性なら歓迎するよ」

 仕事で忙しい九条の両親は国内外を行き来しているため、彼もなかなか顔を合わせることがないのである。結婚を知らせたら驚くだろうが、基本的に息子に甘い両親が反対することはないだろう。それよりも厳しい祖父母の反応が気がかりだ。なんせ彼らはかつて東金桜とのお見合いを持ち掛けた張本人だから。だが、清楚で美しい更紗を見たらきっと気に入ってくれるに違いない。
 ……などと九条が考えている横で、更紗が手早く花を活けていく。殺風景だった室内全体が薔薇の花に囲まれ、一気に華やかになった。
 真っ赤な薔薇に更紗の黒髪がよく映える。

「黎さん?」

 きょとんとした表情の更紗を前に、九条の身体が熱を持つ。鉱石による神経毒とは異なる、自分自身が彼女を本能で求めているという反応――欲情を認めて、思わず彼女を背中から抱きしめていた。

「……してもいい?」
「えっ」
「我慢できないんだ……」

 しどろもどろな九条の手は、服越しに更紗の胸を包み込んでいる。彼がブラウスのボタンをはずすと、シンプルなアイボリーのブラジャーが顔を出した。そのまま胸を揉みはじめると、更紗の身体がもどかしそうに反応する。

「あっ」
「更紗だって、期待していたくせに」
「黎さ……ン」

 肌を火照らせながら困惑する更紗を己の腕のなかへ引き寄せ、九条が唇を奪う。キスをしながらブラジャーのホックを外した彼はすでに自己主張をしている彼女の乳首を指先で捻ってその気にさせる。口腔へ舌を差し込み隅々を味わいながら九条は彼女が穿いていたスカートのチャックに手を伸ばす。すとん、と重力に逆らうことなく落下したスカートに気づいた更紗が恨めしそうに九条に視線を向けた。

「このままここで立ったまま、する?」
「……ベッドがいい」
「じゃあ、ここでぜんぶ、脱いで」
「――ん」

 薔薇の芳醇な香りが漂う室内で、九条に求められた更紗は素直に服を脱ぎ捨てていく。
 するするとストッキングを落とした更紗が恥ずかしそうにショーツに手をかけ、床に置いたところで、九条は全裸になった彼女を寝室の壁に押しつけた。
 驚く更紗を宥めながら、彼は優しく命令する。

「え」
「そのまま足を開いて立って。気持ちよくしてあげる」
「ゃ……っ! 待って、黎さ――あぁん!」

 九条は足をひろげた更紗の股のあいだに頭を入れ、秘処に舌を這わせていた。薔薇の香りに混じる更紗の蜜を味わった彼は、ビクビクと身体を震わせる彼女の腰をしっかり支えながら秘芽をも舐めしゃぶる。突然与えられた快感を前に更紗が声にならない声をあげている。九条の口淫ですっかり蕩けてしまった秘処は、彼が顔をあげたときにはすっかり愛蜜を太ももまで垂れ流していた。

「はぁ、ぁっ……黎さんの、えっち」
「更紗が美味しそうなのがいけない」

 そう言って、九条は活けられたばかりの薔薇を一輪引き抜き、彼女の蜜口へ茎を挿入する。ひんやりとした異物感に更紗の身体がぴくりと震える。

「じっとして……白い肌に真っ赤な薔薇がよく似合うよ」
「はぅん」

 更に一輪。彼が手にした薔薇が更紗の胸元を撫でていく。薔薇の花弁が乳頭を掠め、更紗が甘い啼き声をあげる。

「綺麗だ……一枚の絵画のようだよ。結婚したら毎日鑑賞したいくらい」
「もう……」

 ひとしきり薔薇の花で更紗を愛でた九条は彼女を抱き上げ、ベッドへ運ぶ。秘処に挿入した薔薇の花をそうっと抜くと、彼女の愛蜜で飴がかかったかのように艶めいていた。軽く達している更紗の肌はほんのり汗ばんでおり、九条の手にしっとり吸いつく。

「黎さん」
「更紗」
「はやく、挿入れて」

 ベッドのうえでねだる更紗を見下ろして、九条がごくりと喉を鳴らす。俺なしではいられない身体にすると言っておきながら、彼女なしではいられないのは自分の方だなと観念しながら服を脱ぎ、九条は更紗に覆いかぶさる。すっかり勃ちあがっている分身は更紗の潤った秘処へ難なく入っていった。

「ああっ……!」
「更紗のここ、すっかり蕩けているね。とても気持ちいいよ」
「わ、わたしも」

 素直に快楽を享受している更紗が愛おしい。九条は溶け合う感覚を味わいながら、彼女へ愛を囁く。

「すきだ、更紗……愛してる」
「――黎さん」
「俺ばっかり更紗を求めている……気がするけど」
「そんなこと、ないです」

 更紗はきっぱりと言い放つ。

「わたしだって、この先も黎さんと一緒にいたい! です」
「あぁ――嬉しいことを言うね」
「~~~!」

 九条は更紗の身体をきつく抱きしめ、腰の動きを早めていく。限界まで追い詰められた更紗は言葉にならない声をあげて彼に貫かれながら絶頂した。キュンと締まった彼女の最奥へ白濁を放ちながら、九条は更紗へキスをする。

「……ふぁあ、黎さ」
「結婚、するんだ。これからはぜんぶナカに注ぐから」
「ん……」

 達したばかりの更紗の身体を慈しむように愛撫して、九条は幸せに満ちた表情で彼女へ誓う。

「ひとりになんか、未来永劫させないから」


   * * *


 ジュエリーショップのショーケースにはさまざまなデザインの指輪が並んでいた。

「黎さんは、どんなものが好きですか?」
「……毎日つけられるもの」

 わくわくしながら指輪を吟味する更紗と異なり、どこか緊張した面持ちを九条は見せている。
 彼からの求婚を受けた後の最初の月曜日。休館になるため学芸員の仕事も休みになる更紗は、九条から「指輪を贈りたい」と言われたことを思い出し、「一緒に選びに行きましょう!」と誘っていた。仕事で忙しいはずの九条だが、更紗から誘われたのが嬉しかったのか、二つ返事で応じてくれた。

 画廊”キィ・フォレスト”からほど近い場所にあるジュエリーショップは平日の午前中ということもあり貸し切り状態だった。更紗は店員の説明をじっくり耳に入れながらマニアックな質問をしている。宝石も鉱石も更紗にとってみればミステリアスで綺麗な石に変わりないのだろう。

「婚約指輪と言えばやっぱりダイヤモンドですよね。どの宝石よりも傷がつきにくいから不変の愛の象徴として有名ですし」

 生活の一部になるであろう指輪を夢見て、更紗はシンプルな一粒ダイヤのリングを出してもらう。
 店員から受け取った九条が硬い表情で更紗の腕に手を添える。

「じっとして」
「じっとしてますよ? 黎さんの指が震えてるんです」
「……落としたら困るだろ」

 弱々しく呟く九条を見て、更紗の口元が緩む。己の右手を彼の手に重ねてそうっと左手薬指へ導いた更紗は、吸い込まれるようにぴたりとおさまった指輪を見せつけて、花が綻ぶような笑みを浮かべた。

「似合いますか?」
「……あ、ああ。とても」

 九条は一拍の間をおいて、こくこくと首を振る。
 彼の視線が指輪ではなく更紗に向いているのに気づいたのは、ふたりを見守る店員ただひとり。

「似合うよ」





The Heir of the Top Class Wants to Uncover the True Identity of the Masked Thief――fin.
感想 2

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みんなの感想(2件)

柚木ゆず
2026.02.21 柚木ゆず

02 過去との邂逅まで拝読しました。

まだ最初の頃。あのようなことが、あったのですね。
ですから出た、自分しか。
どうしても、気負ってしまいますよね。
こちらは、見守ることしかできませんので。今後も安全を願いながら、影ながら応援させていただきます。

2026.02.22 ささゆき細雪

お読みいただきありがとうございます。丁寧におはなしを追いかけていただけて嬉しいです。この先も見守っていただけると幸いです。

解除
柚木ゆず
2026.02.16 柚木ゆず

お見掛けしたタイトルとあらすじに惹かれ、本日展示会へ向けて、まで拝読しました。

とても本格的で、でも内容がすぅっと入って来る。洗練されたストーリー。
更紗さんと黎さんという、個性的であり『生きて』いらっしゃるキャラクター。
それらが絡み合った世界なのですが、あっという間に引き込まれまして。迷わずお気に入りとリストに追加させていただきました。

2026.02.18 ささゆき細雪

感想ありがとうございますm(_ _)m
現代を舞台にしつつも独特な物語なので、そうおっしゃっていただけて嬉しいです。
追う者と追われる者の物語、最後までお付き合いくださいませ。

解除

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