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魔術師たちのとんずら。人形姫のその後。
しおりを挟むリニフォニアの解呪に失敗し、永久幽閉の身となったスクノードの名はヘルミオネ王家から姿を消した。そしてリニフォニアへ自分の魔力を勝手に分け与えたリナリアは、ヘルミオネ王家の専属魔術師という称号を取りあげられ、国外追放処分になった。
「と、いうわけであたしもレンブラントに行こうと思うんです」
東塔のてっぺんに囚われたスクノードに向けて、薔薇格子の向こうからリナリアはすっきりした表情で告げる。
「ほんとうなら人形姫を連れ戻してスクノードさまが呪いを解けばよかったんでしょうけど」
それはなんかイヤだった。リナリアはインゼルとリニフォニアが手と手を取り合って呪いを解く一部始終を見た。そしてこの選択がたぶん間違いではないとようやく確信できたのだ。
「そうしたら人形姫が傷つきます。彼女は祖国の職人と身分違いの恋をしていたんです」
「――彼女にはすでに想う殿方がいた、と」
「ええ。だからあたしは手助けをしただけ。スクノードさまだって、あたしの手助けがなければ呪いを完全に解けない、でしょう?」
「だから彼女を助けたのですか」
「助ける? あたしはただ、面白くしただけですよ? 人形姫が自ら呪いを解いたことでヘルミオネとの関係は白紙になって、彼らは一から計画を建て直す……レンブラントの地を手に入れるため。そして人形姫もこの先さまざまな試練を身分違いの恋人とともに受けていくんです。呪いを解いたレンブラントの次期女王の器がどんなものか、自らを呪った魔力を手に入れたことで何が起こるか、魔術の研究をされているスクノードさまからしたら、とても興味深いことですよね?」
塔の上から素早く薔薇格子を破って侵入してきた楽しそうなリナリアに、スクノードも乾いた笑みを返す。そして。
「要するに、僕を誘っているんだね。リナリア」
「呪いを解くことに失敗したヘルミオネの第六皇子は代償として契約を交わした悪魔から魂を奪われるんです。けれど、魂を手に入れた悪魔はそれだけでは物足りないんですよ」
永久幽閉の身を甘んじるなんて許さない。リナリアは押し倒さんばかりの勢いでスクノードに抱きつき、囁きかける。
それはヘルミオネ王家から見棄てられた皇子に向けられた、悪魔のような誘惑だった。
「何をいまさら。僕はもう貴女だけのものですよ。貴女が僕の、道標なのですから」
そしてスクノードは指先でリナリアの顔を撫で、自分から啄ばむようにキスをする。
――ふたりがこの国をトンズラするのは、そう遠くないだろう。
* * *
鬱金香の呪い。それは大魔女べルフルールが戯れに編み出した人間を人形にする魔術。
自らを呪った魔力を手に入れたことで彼女は呪いを解くことに成功し、レンブラントへ帰還する。自分と同じ名前の鬱金香を運ぶインゼルとともに。
ふたり、手を繋いだその先に待ちうける未来が、明るいものであると信じて。
a tulip-sized doll princess falls in love with a craftsman――fin.
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