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chapter,4
02. 死に戻り王子の告白《2》
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ヒセラはデ・フロート家の加護精霊ミヒャエルと実際に会ったことはないが、ハーヴィックの“時”を見守る精霊たちのなかでも最上位にいることは知っていた。霊獣が“闇”の加護を持っていたことは当然知らなかったが、ミヒャエルを親とする以外の“時”の魔法が存在することの方が驚きだった。
「妖精王が王家に授けたのは“時”そのものを操るデ・フロート家の加護と異なり、“時”を操ることで“理”を糺せるちからだ」
「はあ」
ジゼルフィアがヒセラに教えてくれたミヒャエルの加護はデ・フロート家に連なる女児の寿命を削ることを代償に、未来を視て栄華を掴む“時”のちからである。“時”を司るとはいえ精霊たちはそう簡単に“時”を巻き戻さない。だが、加護している一族のためならば一時的に“時”を遅らせたり、“時”そのものを止めて未来を変えることくらいやってのけるのだと言っていた。
それならばジゼルフィアの寿命を取らずに生かして欲しかったと思うのだが、ミヒャエイールは「彼女には彼女の事情があったのだよ」とヒセラを諭すだけである。その事情を知りたいとヒセラが問い詰めても契約精霊は何も教えてくれない。自分が生み出される前にジゼルフィアとミヒャエルの間で起きた出来事だったため、どうやらミヒャエイール自身も干渉できず、ヒセラに仔細を伝えることができずにいるようだ。そのうえミヒャエイールが言うには加護している一族の人間以外姿を見せない“時”の上位精霊ミヒャエルはなぜかヒセラの存在を頑なに認めていないらしい。ヒセラは死んだジゼルフィアの代わりに身代わり聖女の役割を担っているというのに。
一度くらい顔を見せてくれてもいいではないかと文句を言いたくもなるが、いまはそれよりもリシャルトの話に集中しなくてはと心のなかのざわめきを押しとどめ、口を噤む。
リシャルトは黙り込んでしまったヒセラを宥めるように言葉を重ねる。
「“やりなおしの魔法”、“巻き戻しの魔法”、それらは“時”の精霊たちですら大いなるちからを消耗する秘術とされている。デ・フロート家は未来を詠み、時間を遅らせたり止めたりしてハーヴィックの中枢に公爵としての地位を築いたが、“時”を遡らせることだけは始祖王の命令でできなかったんだ。病を回避することはできても定められた死という運命を変えることはできないからね。だが、例外もある。王家の霊獣リクノロスだ」
「しっぽが九つある霊獣、ですね」
「外つ国では九尾と呼ばれる妖精王の僕だ。俺が産まれながらに受け継いだのは七つ、残る二つをシュールトが持っている。しっぽが揃っていない状態だとただの妖狐だが、王位を継承するとしっぽが統合され、霊獣として完全体になるらしい」
どこか他人事のように呟きながら、リシャルトはヒセラに伝える。
「それゆえいまの状態で霊獣を憑依召喚させると、不完全体ゆえ、魔法に制限がかかる。とはいえ俺の場合は七つあるから最初から魔力の量が多く、周囲に迷惑をかけていたがな」
それもヒセラが嫁いできてくれたことで中和でき、ようやく自由になれたとリシャルトは改めて彼女に礼を言う。
「妖精王が王家に授けたのは“時”そのものを操るデ・フロート家の加護と異なり、“時”を操ることで“理”を糺せるちからだ」
「はあ」
ジゼルフィアがヒセラに教えてくれたミヒャエルの加護はデ・フロート家に連なる女児の寿命を削ることを代償に、未来を視て栄華を掴む“時”のちからである。“時”を司るとはいえ精霊たちはそう簡単に“時”を巻き戻さない。だが、加護している一族のためならば一時的に“時”を遅らせたり、“時”そのものを止めて未来を変えることくらいやってのけるのだと言っていた。
それならばジゼルフィアの寿命を取らずに生かして欲しかったと思うのだが、ミヒャエイールは「彼女には彼女の事情があったのだよ」とヒセラを諭すだけである。その事情を知りたいとヒセラが問い詰めても契約精霊は何も教えてくれない。自分が生み出される前にジゼルフィアとミヒャエルの間で起きた出来事だったため、どうやらミヒャエイール自身も干渉できず、ヒセラに仔細を伝えることができずにいるようだ。そのうえミヒャエイールが言うには加護している一族の人間以外姿を見せない“時”の上位精霊ミヒャエルはなぜかヒセラの存在を頑なに認めていないらしい。ヒセラは死んだジゼルフィアの代わりに身代わり聖女の役割を担っているというのに。
一度くらい顔を見せてくれてもいいではないかと文句を言いたくもなるが、いまはそれよりもリシャルトの話に集中しなくてはと心のなかのざわめきを押しとどめ、口を噤む。
リシャルトは黙り込んでしまったヒセラを宥めるように言葉を重ねる。
「“やりなおしの魔法”、“巻き戻しの魔法”、それらは“時”の精霊たちですら大いなるちからを消耗する秘術とされている。デ・フロート家は未来を詠み、時間を遅らせたり止めたりしてハーヴィックの中枢に公爵としての地位を築いたが、“時”を遡らせることだけは始祖王の命令でできなかったんだ。病を回避することはできても定められた死という運命を変えることはできないからね。だが、例外もある。王家の霊獣リクノロスだ」
「しっぽが九つある霊獣、ですね」
「外つ国では九尾と呼ばれる妖精王の僕だ。俺が産まれながらに受け継いだのは七つ、残る二つをシュールトが持っている。しっぽが揃っていない状態だとただの妖狐だが、王位を継承するとしっぽが統合され、霊獣として完全体になるらしい」
どこか他人事のように呟きながら、リシャルトはヒセラに伝える。
「それゆえいまの状態で霊獣を憑依召喚させると、不完全体ゆえ、魔法に制限がかかる。とはいえ俺の場合は七つあるから最初から魔力の量が多く、周囲に迷惑をかけていたがな」
それもヒセラが嫁いできてくれたことで中和でき、ようやく自由になれたとリシャルトは改めて彼女に礼を言う。
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