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第二部 初恋輪舞 大正十二年文月~長月《夏》
禊で暴かれる身体 03
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* * *
――淫魔に魅入られた姫君、か。
浴室での禊を行い、自分の手と口でどうにか絶頂に導いた資は、そのままのぼせて意識を失ってしまった彼女を抱きかかえ、途方に暮れた表情をする。
綾音の縁戚にあたる異能持ちと言っていたが、まさか彼女を淫魔が狙っているとは。それも、あの男が関係している……?
「親父なのか? 姫の身体を淫らに調教したのは」
自慰で身体が昂ぶっていたとはいえ、女性経験のない自分の手であんなふうに呆気なく達するとは思わなかった資である。異母兄の傑と綾音が身体を重ねている姿を見たことがあったから、こうすれば女性は気持ちよくなれるのだろうなという想像で彼女を攻め立てたのだ。ただ、いくら承諾を得たからとはいえふだんとは異なる場所で異なる男にふれられたショックは大きいだろう。
「……ン」
「――姫。このままでは風邪をひくぞ」
湯船から気を失った彼女を抱き上げ、資は苦笑を浮かべながら浴室を後にする。
脱衣室に備え付けられていたタオル地のおおきなガウンを羽織らせて寝台へ横たえれば、すぅすぅと無防備な寝息が聞こえはじめる。
あどけない寝顔を見ていると先ほどまで資の手で恥じらいながら感じ入っていたのが嘘みたいだ。ようやく払魔の手袋を外した資は自分の手で、おそるおそる彼女の濡れた髪を撫で、微笑を浮かべる。
淫の気配はすっかり鳴りを潜めていたが、油断は禁物だ。ふだんなら魔を払った手袋が黒く変色するが、彼女の蜜に濡れた手袋は白いままで魔を払った形跡がないからだ。禊で一時期に悪しきモノが隠れただけで、内部に潜んでいる可能性が高い。彼女がはじめから魔に犯されていないことなど思いもよらない資は、きっとそうに違いないと悔しそうに唇を噛む。
そのうえ、資の下半身はいまも勃起したまま彼を翻弄させている。これは任務だと言っておきながら姫の痴態に興奮していた自分の分身の素直な反応に戸惑いながら、資はなおもふれたい欲を押し殺して、彼女の寝顔から顔を反らす。
「……綾音嬢や傑はこのことを知っていたってこと、だよな」
自慰をしながら岩波山の有弦の名を恋しそうに求めて叫んでいた彼女の蕩けるような表情を思い出し、資は嗤う。
資に愛撫されながら達したときに許しを乞うように口にしたのも自分ではない、あの男の名だった。
――淫魔に魅入られた姫君、か。
浴室での禊を行い、自分の手と口でどうにか絶頂に導いた資は、そのままのぼせて意識を失ってしまった彼女を抱きかかえ、途方に暮れた表情をする。
綾音の縁戚にあたる異能持ちと言っていたが、まさか彼女を淫魔が狙っているとは。それも、あの男が関係している……?
「親父なのか? 姫の身体を淫らに調教したのは」
自慰で身体が昂ぶっていたとはいえ、女性経験のない自分の手であんなふうに呆気なく達するとは思わなかった資である。異母兄の傑と綾音が身体を重ねている姿を見たことがあったから、こうすれば女性は気持ちよくなれるのだろうなという想像で彼女を攻め立てたのだ。ただ、いくら承諾を得たからとはいえふだんとは異なる場所で異なる男にふれられたショックは大きいだろう。
「……ン」
「――姫。このままでは風邪をひくぞ」
湯船から気を失った彼女を抱き上げ、資は苦笑を浮かべながら浴室を後にする。
脱衣室に備え付けられていたタオル地のおおきなガウンを羽織らせて寝台へ横たえれば、すぅすぅと無防備な寝息が聞こえはじめる。
あどけない寝顔を見ていると先ほどまで資の手で恥じらいながら感じ入っていたのが嘘みたいだ。ようやく払魔の手袋を外した資は自分の手で、おそるおそる彼女の濡れた髪を撫で、微笑を浮かべる。
淫の気配はすっかり鳴りを潜めていたが、油断は禁物だ。ふだんなら魔を払った手袋が黒く変色するが、彼女の蜜に濡れた手袋は白いままで魔を払った形跡がないからだ。禊で一時期に悪しきモノが隠れただけで、内部に潜んでいる可能性が高い。彼女がはじめから魔に犯されていないことなど思いもよらない資は、きっとそうに違いないと悔しそうに唇を噛む。
そのうえ、資の下半身はいまも勃起したまま彼を翻弄させている。これは任務だと言っておきながら姫の痴態に興奮していた自分の分身の素直な反応に戸惑いながら、資はなおもふれたい欲を押し殺して、彼女の寝顔から顔を反らす。
「……綾音嬢や傑はこのことを知っていたってこと、だよな」
自慰をしながら岩波山の有弦の名を恋しそうに求めて叫んでいた彼女の蕩けるような表情を思い出し、資は嗤う。
資に愛撫されながら達したときに許しを乞うように口にしたのも自分ではない、あの男の名だった。
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