時翔る嫁 双子令嬢と身代わりの花婿

ささゆき細雪

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第二部 初恋輪舞 大正十二年文月~長月《夏》

歌劇場の控室に偽りの花嫁 04

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 資の榛色の右目が、半ば吊るされた状態の音寧を眇める。その間もスカートのなかの手は音寧の太ももを撫で回していて、彼女の身体の反応を確認している。下着を履かされていないことに気づいた音寧は、彼の指が和毛をかき分け蜜口を探り当て、濡れていることを知らされ羞恥に呻く。
 舐めるような彼の視線は、今までに見たことのない、獲物をいたぶる獣のよう。

「ほら、口づけだけでもう濡れている。生娘でもないくせに、そういうことを訊くんだな……初花を散らしたときも、そうやって無垢な顔をして男を誑かしたってことか」
「ち、違っ」
「今まで無知な俺を面白がって、性の手ほどきをしていたくせに……ここにきて、厭だと言うのか?」
「あぁっ!」

 スカートの奥からくちゅり、という淫らな音が生まれ、薄暗い部屋に響く。神聖な花嫁衣裳が、音寧の蜜で汚されていく。
 資のわざと傷つけるような言動を前に、音寧は硬直する。
 浅草十二階の展望台を降りてから、彼の態度はどこかおかしい。すこしずつ、愛情とは違う執着のようなものが顕になっている気がする。ちいさな違和感がここにきて膨れ上がり、音寧を困惑させる。
 有弦との関係を仄めかした音寧の言葉に過度に反応し、蒸し返してきたとき、彼はなんと言った?

 ――貴女はあの男に、どのように抱かれたのか?

 そう、彼は音寧が有弦の手でどのように初花を散らせたのか、興味深そうに訊いてきた。応える筋合いはないと突っぱねれば「ならば身体に訊くしかない」と強気の態度で言い放たれて。

「厭では、ないです……けど、こんなことやめてください。もっと、やさしく――……」

 初めての自分を怖がらせないよう、薬酒を飲ませて、丁寧な愛撫を施してきた有弦のことを思い出しながら、音寧は資に懇願する。
 双子の姉の身代わりで嫁いできたものだと思いこんで、やさしくしないでと口走ってしまった冬の日とは真逆の、切なる願い。

「……俺に抱かれるのは厭ではないのか?」
「厭だったら、口づけだって、身体にふれることだって許しません」
「残念だけど口先だけなら、なんだって言える」
「そんな……」
「だから俺は、姫の身体に訊くんだ……誰にも邪魔されないように、俺だけの花嫁を」

 偽りの花嫁姿にされた音寧をうっとりした視線で見つめ、資は呟く。
 自分のものにできないのならばここで壊して作り変えるのだと、不敵に嗤って。


「やさしく? それじゃあ物足りないくらい、俺が愛してやる――……」
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