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肆 その三
しおりを挟むなんとも奇妙な都落ちだ。
義経は郎党と行家、そして十二人もの妻を連れて京都を出発したのだから。
静は禅と顔を見合わせ、はぁと溜め息をつく。名前でしかきいたことのなかった女が自分の前や後ろをのそのそ歩いている。それもみな、義経が連れて行きたいと駄々をこねた結果、仕方なく、だ。
「……どう考えてもわたしたち足手まといじゃない?」
「義経さまは情のおあつい方なのですよ」
「いくら情があついからって十二人の女を連れ出すかしら……」
禅のほかに、義経が愛した白拍子は四人ほどいるらしい。顔見知りなのか、禅とも気さくに会話をしている。そしていつの間にか静もその輪の中に組み込まれていた。
「だけど義経さま、京都にいた二十五人の女からこれでも半分にしたんだから頑張ったと思わない? まあこの先どこまであたいらがご一緒できるかは神のみぞ知るってことなんでしょうけど」
「大宰府で梅の花が見たいわあ」
「まだ梅が咲く時期じゃなくてよ」
喧しい。
こんなんでほんとうに頼朝を討てるのだろうかと不安になる。それ以前に義経は頼朝と戦をする気などてんでないように感じる。
鎌倉にも京都にもいられないからとりあえず九州に行こう、きっとその程度でしか物事を考えてないのだろう。頼朝の追っ手がいつきてもおかしくはないというのに。
禅は頭の悪そうな白拍子たちと気さくに会話を続けているが、静はその気力すらない。
気分でも悪いのかと侍女の秀足が首を傾げているが、静はそうじゃないと苦笑を浮かべ、歩みをすすめる。とりあえず、先へすすまなくては。
「難波の浦で、船に乗るのよ!」
禅はそう言って、だらけてきた女どもを統括する。
けれど、摂津河尻の地で、彼ら一行を待っていたのは、頼朝を慕う大和源氏、太田頼基による容赦ない攻撃で。
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