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 最上階の窓から見渡せるきらびやかな夜景を見ることもなく、樹理は貴糸に求められるがまま身体を差し出していた。
 上品だがシンプルなホテルの寝台の床のうえにはお互いの脱ぎ捨てたグレイベージュとネイビーのスーツに、華やかなラズベリーピンクのランジェリー、下着やベルトが散らばっている。
 はだかになった樹理と貴糸は、お互いの身体にふれながら、時間をかけてひとつに重なりあう。

「ッ、キート、きぃとぉ…………!」
「ようやく、ひとつになれたな」

 じんじんする結合部の痛みに耐えながら、ぽろぽろと涙を流し、樹理は頷く。
 ずっと、ずっとこうしてみたかった。
 だいすきなキートにはじめてを捧げたかった。
 お互い大人になって、夢を見るのもいいかげんにしないといけない、そう思っていたけれど、信じたかった。

「ほんとに、十年ぴったりだったね」
「ああ……これから、たくさん愛してやるよ」

 ぐいっと腰を押し付けられ、樹理の下腹部がきゅんと疼く。彼がなかにいる。痛いけど気持ちいい不可思議な感覚。

 樹理は無意識に気持ちいい場所を拾おうと腰を浮かせる。その隙をつくように彼の楔は貫いていく。

「あっ……ああっ、あ…………んっ」
「ジュリ。もっともっと気持ちよくなれ。俺の色に染まれ」
「キートっ……ぁあぁ」
「かわいい声。もう、俺なしじゃいられない、か……そのまま蕩けてしまえ」
「っ、ひゃ……ああ――っ、~~~ッ!」

 はじめのうちは丁寧だった律動が、いつしか激しいものへと変わっていく。
 我慢できないと興奮しながら、貴糸は樹理の無垢な身体を貪っていた。
 熱い、身体が熱いと樹理は貴糸にしがみついたまま、未知なる快感を享受する――……
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