白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

ささゆき細雪

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白鳥とアプリコット・ムーン 本編

ウィルバーとダドリーと狙われた灰色の白鳥

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 国王アイカラス暗殺の罪で花の離宮から怪盗アプリコット・ムーンとともに連行されてしまった憲兵団長ウィルバーは、彼女と引き離された後、王城の憲兵団詰所にて持ち物検査と称した粗探しを受けていた。

「なんだこのくっせえ鞄は! 胡散臭い薬ばっかり入ってら」

 ウィルバーの部下だった憲兵に呆れられながら荷物を荒らされた後、オリヴィアから渡された媚薬とともに鞄から出てきた見覚えのない黒い丸薬が入った小瓶が出てきた。
 その薬は、服用した人間を内側から蝕み確実に死に至らしめる特別な毒薬、またの名をリヴラの秘薬と呼ばれる貴重なものだった。
 リヴラの秘薬、という名称からもわかるように、媚薬をもらいに来たウィルバーがオリヴィアのところから盗んだものではないか、いや、オリヴィアがウィルバーの鞄にこっそり仕込んだんじゃないかとさまざまな憶測が生まれたため、オリヴィアも取り調べを受けることになった。
 その結果、皇太子妃オリヴィアはげんざいフェリックスの政務室にて謹慎処分を受けている。
 が。

「これは、東の塔でオリヴィア妃が調剤されたものではない。だが、リヴラの秘薬を知る何者かが調剤したものと思われる」

 フェリックスはそう言い切って、マイケルが疑っていた皇太子妃の容疑をはずさせた。
 なぜなら東の塔には秘薬を調剤するための材料が揃っていないからだ。そのため、この薬は妻のオリヴィア以外の何者かが用意したものだとフェリックスは判断、疑惑の目はウィルバーただひとりに向くことになったのである。

 東の塔で調剤することができない毒薬がウィルバーの鞄から出てきたことで、憲兵たちは勝ち誇った表情を見せる。あの美しい魔女、怪盗アプリコット・ムーンがウィルバーを誑かし、国王暗殺のための毒薬を手渡したに違いないとマイケルは断罪する。

「媚薬が入っているのは理解できるがなぜ毒薬が入っている。怪盗アプリコット・ムーンに国王陛下を害するよう唆されたのではあるまいか」

 でたらめだ、俺は仕組まれたんだ、と叫んで否定するウィルバーを前に、異母兄で国王名代となったフェリックスは冷たく宣言する。

「うるさい。西の塔にでも閉じ込めておけ」

 ゴドウィンとは温度差のある接し方は、国王アイカラス暗殺に関わった可能性がある異母弟を非難しているかのようだった。
 氷のような蒼の瞳がウィルバーに向けられる。お前には失望したとでも言いたげな彼のまなざしに、ウィルバーは屈することなく空色の瞳で睨み返す。

「フェリックスあにうえ、俺のはなしを……!」
「怪盗アプリコット・ムーンに骨抜きにされたお前の話など聞きとうないわ」

 頭を冷やしてからにしろと突き放され、憲兵団の詰所からひとり西の塔に連れていかれ長い螺旋階段の頂上に位置する部屋に閉じ込められたウィルバーは、うろうろと狭い部屋のなかを歩き回っていたが、やがて苛立ちを発散させるかのように虚空へ叫ぶ。

「俺じゃない! あんな毒薬、はじめから鞄のなかに入っていなかった……! 俺が東の塔でオリヴィアどのに調剤してもらった媚薬のなかに、丸薬はなかった……ましてや怪盗アプリコット・ムーンが俺を操ってなんてありえねぇ……」

 周囲で不安そうに舞っている風の精霊に気づくこともなく、ウィルバーは悲痛な声でローザベルの名を呼び、求める。

「あぁ……ローザベル、君はひどい取り調べを受けていないか。俺は鞄だけ取り上げられて西の塔に閉じ込められてしまったよ。俺も君みたいに魔法がつかえればいいのに……そうしたら」
「そうしたら、何?」
「うわっ!」

 独り言を遮って登場した声変わり前の少年の姿を確認したウィルバーは、腰を抜かさんばかりに驚き、声を荒げる。

「……皇太孫、ダドリーさま」
「ずいぶん女々しいことをしているんだね、憲兵団長のお兄ちゃん」

 くすくす笑いながら、扉の向こうでウィルバーを眺めるダドリーは、パリッとしたブラウスに濃紺のショートパンツというシンプルな装いで、憲兵服のまま塔の一室に押し込まれてしまったウィルバーの薄汚れた姿とは対照的だ。
 ふだんは使われていない王城の西の塔に、なぜダドリーが現れたのだろう。そう考えているウィルバーの心をあっさり読んだダドリーは、つまらなそうに応える。

「どうして現れたかって? 憲兵団長さんと話をしたかったからだよ?」
「だからってひとりでこんなところにいらっしゃるなんて、危ないです」
「風の精霊さんが傍にいるから大丈夫だよ。それに、僕は憲兵団長さんがおじいさまを害してないことを知っているから」

 にこやかに告げるダドリーに、ウィルバーがハッとする。

「そうだ、伯父上は!」
「生きているよ?」
「……は?」
「毒薬、毒薬って騒がれているけど、実際に口に入れたのは一時的に仮死状態になる睡眠薬の一種で、いまもぐーすか眠ってる」
「どういうことだ?」

 ウィルバーの鞄のなかから出てきたのはリヴラの秘薬と呼ばれる危険な毒薬だったはず。
 だというのに、アイカラスが飲んでいたのは別の薬だという。

「団長さんは知っているよね? 悪名高い僕の叔父さんのこと」
「たしか国外逃亡しているタイタス・スケイルのことか? それが……ぇ、ちょっと待て」
「うん。混乱する気持ちはよくわかるよ。僕もまさか叔父さんがこんな大それたことを考えるとは思わなくて」

 たどたどしくダドリーが教えてくれた情報を、ウィルバーは噛みしめ、そうか、とため息をつく。

「国王陛下もそのことは」
「たぶん、感づいていたと思うんだ。怪盗アプリコット・ムーンの騒動がひとまず落ち着いて、おじいさまが退位をほのめかしたでしょ? そこで、父上が次の王になるのを厭う古民族たちの動きが活発になりだして……」
「ゴドウィン兄上を擁立する一派が、第一皇太子妃であるオリヴィアどのを陥れるために画策した?」

 タイタス・スケイルはもともとタイタス・リヴラという名を持つ、リヴラ一族の男で、オリヴィアの弟にあたる。
 天秤座のリヴラ、という名から何事にも公平であれ平等であれという指針を持つ家との折り合いがうまくつけられず勘当され、極秘の調剤知識を盗んで国外へ逃げ出したという、一族の汚点的存在だ。
 国外逃亡した後、名をラーウスの読み方からアラヴスの言葉で「秤」という意味を持つ「スケイル」へと変え、違法薬物の調剤や密輸販売などさまざまな犯罪に手を染めたことで世界各国からも指名手配される極悪人へと進化を遂げている。
 彼ひとりが動かした金額はどこかの国の国家予算に相当し、彼の薬で死亡したり廃人と化した人間の数も計り知れない。
 いまはアラヴスの小国に隠れているとされていたが、彼がスワンレイク王国に戻ってきていると知って、ウィルバーは愕然とする。

「そうじゃないとあの薬の出所がわからないもの。それに、お兄ちゃんの鞄を持っていた人間は副団長さんだけなんでしょう?」
「そうだ……」

 王城から薬を処方してもらい、花の離宮へ戻ってきた際に、ゴドウィンが来ているとマイケルに言われたウィルバーは、深く考えもせず彼に鞄を預けていた。
 鞄に手を加えることができたのは彼しかいない。

「当初の筋書きはそうだったと思うんだ。だけど、ゴドウィン兄ちゃんはそのことに気づいていた。副団長さんがお兄ちゃんの鞄にリヴラの秘薬をいれたのは事実だけど、それはあくまでカモフラージュ」
「カモフラージュ?」
「うん。だって、怪盗アプリコット・ムーンとお兄ちゃんに罪を被せることを提案したのは」

 ――大切な宝物は二度と手放したらダメだよ。
 ウィルバーに残した忠告は、警告だったのだろうか。それとも……

「ゴドウィンお兄ちゃん本人だから」


   * * *


「怪盗アプリコット・ムーンになって、“稀なる石”を、盗め……ですって?」
「正確に言えば、“烏羽からすばの懐中時計”を盗んできてほしい。文字盤に“稀なる石”が鏤められていて、魔法具としてだけでなく美術品としても価値が高いものだ」
「“烏羽の懐中時計”って、烏の一族が持っているあれよね?」

 “星詠み”のノーザンクロスの分家筋である烏座のコルブスも、かつては時を操る魔術師を排出していたため、その名残として“烏羽の懐中時計”と呼ばれる家宝がある。部品に細かい“稀なる石”をつかっているが、その石に魔力が残っているかはわからない。

「それが、“烏羽の懐中時計”をいま持っているのは烏の一族じゃないんだ。いま、この国にタイタス・スケイルが潜入していてな」
「? それって、どういう……?」

 ローザベルの鋭い声に驚くこともなく、ジェイニーは苦笑を浮かべるだけ。

「国外逃亡中だった彼が、烏の一族を言いくるめて長老から奪い取ったらしい。マイケルが彼に従っているのも、“烏羽の懐中時計”を取られているからと考えられる」

 ローザベルは困惑しているが、ジェイニーは気にせずつづける。

「彼はあろうことかリヴラの秘薬を調合し、コルブスの一族を懐柔したらしい」
「黒き烏と手を組んだ?」
「そうとも言えるかな。タイタスが利用しているってのが正しいんだろうけど。折しも怪盗アプリコット・ムーンが捕まって平穏を取り戻した矢先の出来事だ。これが何を意味するかわかるかね」
「いえ全然」
「彼は時が来るのを待っていたんだよ。国王陛下が退位を宣言し、次の王が玉座に座ろうとするそのときを」

 怪盗アプリコット・ムーンによって国がざわめいていたときに潜入し、古一族と接触していた元リヴラの薬師タイタス。彼がオリヴィアに対抗して暗殺用の薬を処方したら、国家を混乱に陥れることなど容易いことだ。
 ジェイニーはローザベルに諭すように、ゆっくりと告げる。

「フェリックスどのは近い将来魔法との訣別を宣言するだろう。その際に利用されるのは君だ、怪盗アプリコット・ムーン。そのことを知ったタイタスは、国王陛下を早く表舞台から下がらせたいばっかりに、リヴラの秘薬を第二皇太子ゴドウィンに渡した」

 タイタスのことだ、ゴドウィンの手でアイカラスを殺させ、フェリックスの妻オリヴィアに罪を着せようとでも思ったのだろう、とジェイニーはつまらなそうに呟く。
 けれど、ゴドウィンはその薬をマイケルに渡し、あろうことか異母弟ウィルバーの鞄に入れるよう指示した。どうして、と不安そうに瞳を揺らすローザベルを見て、ジェイニーは微笑む。

「疑惑の魔女がいつまでも花の離宮でふたりの世界に浸られていても困るからね……ゴドウィン殿下はタイタスを捕らえるため、一芝居打ったんだよ」

 次期国王フェリックスが速やかに玉座に座れるよう、不穏分子を排除するため、ゴドウィンを傀儡とし次期国王に推している一族を炙り出した結果、マイケルと対話したジェイニーの透視術によってタイタスの影が暴かれたのだ。
 コルブスの一族がスワンレイク王家を憎んでいたのは知っていたが、まさかゴドウィンを傀儡に自分達が覇権を握ろうとまで画策しているとは考えていなかったよとジェイニーは嗤う。たぶん、タイタスに唆されたのだろう。ノーザンクロスのようになればいいとか言って……

 このことを知ったジェイニーは国王アイカラスとフェリックスへ報告。フェリックスはゴドウィンに事情を説明し、タイタスの尻尾を捕らえるよう彼に囮役を命じる。
 そしてアイカラスは仕組まれる前に自ら仮死状態となる薬を呷り、ぐーすか眠っているというわけだ。

「あの……そこでなんでわたしとウィルバーさまが」
「暗殺の実行犯役が必要だったの。オリヴィアさまに罪を着せたらタイタスの思う壺じゃない」

 国王アイカラス暗殺の実行犯としてゴドウィンが利用しようとしたのが異母弟ウィルバーと怪盗アプリコット・ムーンの存在だった。タイタスは姉を陥れることで溜飲を晴らしたいようだったが、オリヴィアひとりに罪を被せるとなると、フェリックスの疑いの目が自分達に向いてしまう。暗殺を実行させる人間は別に用意するとでも言って、納得させたのだろう。

「そこで駆り出されたのがコルブスの一族で国王陛下を崇拝しているマイケルってわけ」
「じゃあ、彼がウィルバーさまの鞄に」
「たぶんね。罪に問うことはできるだろうけど、いまはそれより裏で糸を引くタイタスをどうにかしたいんだ……彼はスワンレイク王家を憎んでいるから……」

 魔法をつかえる人間はローザベルやジェイニー以外にもいるが、“稀なる石”をつかった高位の魔法を扱えるものは殆どいない。怪盗アプリコット・ムーンなら“稀なる石”による召喚術で、タイタスを捕らえることができるはずだと力説し、ジェイニーはたたみかける。

「コルブスの一族はゴドウィン殿下を玉座に座らせるという野望を持っていた。そこをタイタスにつけ入れられ、“稀なる石”でつくられた一族の秘宝“烏羽の懐中時計”を奪われてしまった。彼は代わりにリヴラの秘薬を処方して暗殺の手引きを行ったことになっているが、彼はゴドウィン殿下を国王にするつもりもないだろう」

 そうじゃなければ彼がああも簡単にゴドウィンの意見に従うと思えない、とジェイニーは毒づく。

「フェリックス殿下でもゴドウィン殿下でもない?」
「傀儡の王に仕立てるのにちょうどいい人間がいるじゃないか。落ちこぼれの灰色の白鳥が……ね」
「落ちこぼれの、灰色の白鳥」

 思いがけない単語にぎょっとするローザベル。ジェイニーは真面目な顔でそうさ、と頷く。


「ウィルバー・スワンレイク。君の旦那のことだよ」
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