Messiah~底辺召喚士の異世界物語~

小泉 マキ

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開闢の始まり

初任務5

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意識のあった者を尋問した結果、大男達のパーティは、ドレイムで荒業をこなし生活の基盤としていた底辺パーティらしい。
時には冒険者から金品を奪ったり等の犯罪にすら手を染めていた。
その中でいくつもの新米ハンター達も餌食になっていたそうだ。
これを看過できないとしたメイは、男達を縛りあげ、道の真ん中に放置して行く事にした。
勿論罪を事細かに記した書簡を側に置いてだ。

幸い学園都市周辺は魔物が少ない。
朝までには行商人やハンター等が通り彼等を見つけるだろう。
一応野良犬なんかに襲われても困るので、デミドランが簡単な結界を設置してある。


彼等を置き去りにして数十分後、開けた場所に出る。
早足で進んだ結果、ドレイムとワンの領界線に到着した様だ。
ここはワンとドレイムを行き来する者にとっての野営場所として周辺の住人には知られている。
前回メイ達が来た時には魔物が襲ってきたが、本来であれば平和な土地だ。


「よし、ここで一晩明かそうか。」


メイの号令に頷く3人。
空間魔法から沢山の野営セットを取り出した。

「改めて見ると凄いな。」

模擬戦でメイの空間魔法を見ているが、こんなにも沢山の容量を魔力消費無しで運べるのであれば商人からもハンター達からも引っ張りだこになるに違いない。
実際、メイは既に商人からの指名依頼を入学以前に確約されている。

まずはテント。
略式の物では無く、本格的なキャンプ用に作られたタープ付きテントだ。
それをデミドランが慣れた手つきで組み上げていく。
6畳1間の寝室の入り口に広いリビングルームがある。
そこに折りたたみ式のキャンプ用リクライニングチェアが4つと、比較的頑丈な折りたたみ式の長テーブルが置かれた。

「料理なら任せてくれ。」

フェイリスが進言する。
彼女は子爵家の令嬢。
料理程度は人並み以上に嗜んでいるのだ。

「何が必要?」

手持ちのメモ用紙に必要な食材と器具をリストアップし、メイに手渡す。
しかしそこには、メイの保持していない物があった。


「僕が狩ってきましょうか?」


メイが頷くのを確認すると、テンニーンは魔力を集中させる。
感知魔法で、周辺1000メートル以内を探知。

「それじゃ、行ってきます。」

獲物を見つけたテンニーンは、森の中へと消えた。


「じゃあ、準備しよっか。」

そう言ってメイが空間魔法から出したのはシステムキッチンそのもの。
流石にそれにはフェイリスも目を丸くした。

6口のガス式のビルトインコンロ。
そして調理するには広すぎない程度にスペースのある大理石の調理台。
更に銀色に光る大きなシンク。
コンロの下に付いている四角い扉はスチームコンベクションオーブンだ。

「店でも開くのか...?」

フェイリスは思わず突っ込んでしまった。
子爵家ですらこんなもの使っていない。
コンロが6口となると、完全に業務用だ。
しかも同じく業務用であろうコンベクションオーブン付き。
空間魔法の枠を完全に超えていた。

「ははは、まぁ備えあれば憂いなしって言うし!」

ニコッと笑うメイに、フェイリスも思わず笑みを零した。
規格外ながらも繊細で豪胆な性格に確かな信頼を感じた。

仲睦まじく調理を進める2人を眺めながら、デミドランは椅子に座る。
そして、テーブル上の黒瓶を手に取り栓を抜いた。
キュポンと子気味の良い音が響き、芳醇な葡萄の香りが広がる。

「またお酒ですか…。」

タープをくぐり、豚の魔物を担いでテンニーンが現れた。
彼が狩って来たのはこの辺の森に棲む『フォレストピッグ』で、ほぼ無害な食肉用の魔物だ。
その身は普通の豚よりも大きく、背中に生えた苔から幾つかのキノコが生えている。
そのキノコは一頭から数本しか取れない為に希少価値が高く、市場でも中々取引されない代物だ。

肉の部分はしっかりと身が締まっていて脂身も多すぎず美味とされている。
その為、どこの国でも酪農家により養殖生産されている割と普遍的な食材なのだ。
天然物の方が若干脂身が少なく、鍛えられた肉は柔らかい為に高級とされている。

「趣味くらい好きにさせろ。古龍にアルコールなんぞ殆ど効かねぇし別に良いだろ?」

「ここのところ夜は飲んでばかりじゃないですか。」

まぁ良いですけど、と何故かキンキンに冷えたグラスに赤ワインを注ぐデミドランを尻目にフォレストピッグを運んだ。



フェイリスは早速フォレストピッグを包丁で綺麗に解体し、その殆どをメイが収納する。
残った1割程度を今夜使うのだ。

まずは大きな鍋でお湯を沸かす。
そしてトントンと手馴れた手つきで切った香味野菜をフライパンで炒める。
そしてその横では手鍋を用意し、フォレストピッグを調理し始めた。

「料理人かよ…!」

思わずメイが突っ込む。
洗練された一つ一つの動きは一切の無駄が無く、見る物を魅了した。

「ははっ、幼き頃から母にこういうのを教え込まれていたからな。」

1時間も経たずに次々と料理が完成していく。
退屈したデミドランが欠伸を漏らす頃には、テーブルを料理が埋めつくしていた。

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