牢獄王女の恋

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 ガブリエルとコーデリアを乗せた馬車は、王都ワイエスにあるガブリエルの隠居の義母ミランダが住んでいるアディンセル侯爵家別邸に到着した。
 この日ミランダはダイアナに家を貸して欲しいと頼まれて宮廷にあるマイルスの住まいに居た。宮廷で話し辛いことがあるとたまにこんなことがあったので、理由も聞かずに家を貸した。
 アディンセル家別邸の家の者は使用人もすべて休暇を出し外に出され、念のためガブリエルの従者も先に領地へ帰され、すでにマイルスとダイアナがガブリエルたちの到着を待っていた。
 ガブリエルは黒いマントに包れたコーデリアをふたりの前に立たせる。
 
「この娘がコーデリアか……?」
 
 マイルスはゴクリと唾を飲んだ。
 ガブリエルがマントを取ってその姿を見せると、ダイアナは息を呑んだ。
 骨が浮き出るほどやせ細った十三歳にしては随分小さな身体は、牢獄での粗末な食事のせいで栄養失調なのだろう。薄汚れ全体的に茶色い肌では血色まではわからない。
 足首近くまで伸ばしっぱなしになっていた金色の髪はフケが出て脂っぽく湿っていて、櫛も通していないのか幾つかの束が絡まっている。
 グレーの瞳だけが印象的に大きく、自分を見下ろす初めて逢うふたりの大人をまじまじと見上げている。
 
「エロイーズ様と同じ瞳だわ」
「ああ、グレッグ王の面影もある。間違いない。この娘がコーデリアだ」
 
 ふたりの感嘆する様子を見て、ガブリエルはとりあえず安堵した。
 間違った娘を連れて来たわけではなさそうだ。
 この脱出を手伝った男はこの後も暫く看守として働きながらコーデリアがいなくなったことを隠し、手ごろな死体が出たらそれをコーデリアだとしてあの牢獄から出す。その後は看守を辞めて身を潜める手はずだ。
 コーデリアの為にダイアナは侍女を用意してあった。自分に長く使えた侍女をコーデリアの為に付けることに決めたのだ。
 信頼出来る忠実な老年のその女性はラリサと言った。
 
「ラリサ。とりあえずこの娘をお風呂に入れましょう。髪も適当な長さまで切って、清潔にすることが先決だわ」
 
 このままではこの屋敷に座らせられないほど汚れているコーデリアだったので、ラリサは腕を捲ってこれからの仕事を覚悟した。

 コーデリアはこれまで口をひとつも開いていない。
 自分の置かれている状況がまったくわかっていないのだ。
 当たり前だ。ガブリエルは馬車の中でもなにも説明しなかった。
 ただ現れて、あの薄寒く臭い場所から暗闇の外へ出してくれたガブリエルにただ連れてこられただけだ。
 こんなに明るく見たこともない美しい場所ではまさか天国かと勘違いしていしてしまうほどで声も出ない。自分の身になにが起こっているのかも、これから何が起こるのかも想像することすら出来ていない。

 コーデリアの放心状態を他所にダイアナとマイルスはラリサとコーデリアを清潔にする話を進めている。
 ガブリエルは本当に汚いコーデリアをどうにかすることを先決にするふたりの気持ちもわかる。放心のコーデリアの気持ちも、あの牢獄を見てここに来たからよくわかる。
 生まれてからあの部屋から出たことがないのだ、驚きしかないだろう。馬車の中でもコーデリアはずっと馬車の内装を見て、窓から外の街並みを見て、開いた口を閉じることも忘れていた。
 ガブリエルはコーデリアの前に屈んで膝を突いた。

 コーデリアは目の前まで降りて来たガブリエルの顔を見て、少しだけ息を吐いた。
 この場でコーデリアが縋れるのは、この場に連れてきたガブリエルだけなのだ。
 ガブリエルが天使なのかと思ったら違うというので、何者なのかはわかっていない。
 ただ、あの寒くて饐えた空気しかなかった部屋から出し、体温で温められたマント包み臭いの無い新鮮な空気を吸わせてくれたのはガブリエルだ。
 暗闇に慣れているせいもあったかもしれないが、不思議と怖くはなかった。初めての馬車という狭い空間も動き出し始めて感じた振動もスピードも。この新鮮な空気を吸えた感動に比べれば、感じる恐怖は小さく思うほどだ。
 それを吸わせてくれたのがガブリエルというだけでは信じるには足りないが、この場では縋れるただひとりの人間だ。
 
「怖いか?」
 
 ガブリエルの問にコーデリアは首を振った。
 モジモジをしながらどう答えていいかわからずにいると、決して優しくはないが回答を待つ瞳が静かに見つめ返してくれていることにコーデリアは発言してもいいことがわかった。
 
「わかんないです。どうすればいいですか?」
 
 口に出来ることはこれだけだ。
 何が起こっていて、自分がどうしたらいいのかわからないことをそのまま伝えた。
 ガブリエルはその答えにニコリともせず答えた。
 
「とりあえず何も言わずにこの大人たちのすることに従え。ここはお前を傷つけるものはない。安心は出来ないだろうが、全員がお前のために動いていることだけは理解しなさい」
 
 ガブリエルは安心させるような言い方をひとつもしなかった。
 それはガブリエル自身もどうしていいのかわからなかったからだ。
 本当のことを今説明してもコーデリアには理解出来ないだろうし、この小汚い娘を心から心配するほどマイルスのような思い入れもまだ持てない。
 押し付けられた面倒のせいで先行きが不安なのはガブリエルも同じだ。
 ただこの牢獄生まれの少女よりは状況を把握しているから声を掛けてやっただけだ。

 しかしコーデリアは頷いた。何もわからない現状で自分のために何かをしようとしてくれていることを理解しろと言われたので、そのままそうしようと思ったのだ。
 唯一縋れるガブリエルが言うのだから、そうしなければならないと思った。
 
「わかったのか?」
「明日のことを思いわずらうな。明日のことは、明日自身が思いわずらうであろう」
 
 ガブリエルが確認するとコーデリアがわからない事を言い出したのでガブリエルは眉間に皺を立てた。
 
「聖書を勉強していたのね。エロイーズ様がこの娘のために教えていらっしゃったのね」
 
 コーデリアの言葉に気が付いたダイアナが悲しそうにため息を吐いた。ここにエロイーズもいられたらと思ってしまったのだろう。
 娘のために最後まで教えを続けたのであろうエロイーズを想うと、マイルスも切なくなった。
 ふたりほどの感慨はないガブリエルだが、賢い母親に少なからず感動した。
 
「先のことを考えるなという意味だろう。今は我々のすることが解らずとも従うということを言っているのか?」
 
 マイルスがガブリエルの隣にしゃがんでコーデリアを覗き込んで聞いた。
 コーデリアはガブリエルに頷いた。
 聖書を学んでいるなら少しは扱い安だろうか? とりあえず今は黙って従いそうだとガブリエルもコーデリアに頷いて見せた。
 ラリサに連れられ風呂に行く少し不安そうな顔をしたコーデリアを見送り、マイルスとダイアナ、ガブリエルはやっとソファに座った。
 
 
 
「わたしは心から悔いている。なぜもっと早く出してやれなかったのかと……」
 
 マイルスが大きなため息と共に呟いた。
 存在を忘れてしまっていたことを本当に悔いているようだった。
 しかし仕方のないことだ。疑っては居ても罪人として投獄されたものをどうすることも出来ない。
 今回も簡単に出来たわけではない。万が一にも見つかっていれば宮廷に潜む反乱分子たちにどうされるかもわからない。
 マイルスも賭けのような状態でいるのだ。
 しかしコーデリアは無事に救出出来た。あとはこれからだ。
 大人たちはコーデリアのように明日のことは明日考えるという訳にはいかない。
 
「今日はここに泊まり、明日の早朝にはジーリに向かってもらう。暫くは表に出さず屋敷の中だけで過ごさせ、アディンセルの領地内から慣れさせて行こう」
 
 ジーリとはアディンセル領のある都市で今居る王都ワイエスからは三日の道程がある。
 そこへガブリエルとコーデリア、侍女のラリサと行くということだ。
 
「もう一度確認しますけど、本気でわたしに彼女を預けますか? あんな気の毒な娘をわたしでは扱いきれませんよ。先ほどの聖書の引用で思ったのですが、修道院に預ける方がいいとは思いませんか?」
 
 ガブリエルはふたりを説得しようとした。
 面倒なのが一番だが、とても責任を持てないと思った。幸せな暮らしをさせてやる自信がまったくない。
 子供は苦手だし、自分勝手に気ままに生きて来たガブリエルにはやはり適任になりたくないのだ。

「いつまで同じことを言うつもりですか。あなたも侯爵の身分なのだから国のために尽くしなさい」
「君だからこそ頼むのだ。五年、なんとかあの娘を普通の生活が出来るよう、そしてその先の運命を受け入れる前の穏やかな暮らしをさせてやってくれ」

 ガブリエルは黙って腕を組んだ。
 無駄なことだとはわかっていたが、やはり決定は覆らない。

「とにかくまずは隠すことだ」
「わかりました……。うちなら田舎ですし来客を遠ざけることも出来ますからそれは大丈夫でしょう」

 旅の途中も素性を隠して貴族の屋敷には寄らず、街の宿を取りラリサと同じ部屋にいれること。ガブリエルも貴族の身分を隠すので従者は先に帰らせたのだ。
 服装も平民のようなものを着せる予定をして用意をしてあったが。

「服のサイズが合わないかもしれないわ」
「思った以上に小さかったな」
「栄養が悪くて普通の十三歳のようには成長出来なかったのでしょう」

 とりあえずあるものを着せて、旅の途中で調達するしかなさそうだ。

「誰かに聞かれたら遠縁の娘とだけ言えばいいわ」
「どこの関係かしつこく聞かれそうですけどね」
「あら、あなたが遠縁だと押し切って答えなければ周りは勝手にあなたの隠し子だって誤解してしつこくはしないはずよ。あなたの日頃の行いから考えてきっとそういう結論になるわ。そこもわたしたちは狙っているのよ。その誤解はあの娘の身を守れるわ」

 ガブリエルは頭を抱えそうになった。
 隠し子なんて冗談じゃない。そんな無責任な男だと思われていたのかと。

「わたしはそんな失敗はしていませんよ。それになんですか、わたしの行いとは」
「来るものを拒まず浮名を流し続けていることはこの国の貴族なら誰でも知っているということですよ」
「最近はそんなこともしていません」

 一時期、確かにワイエスに来ては社交界で遊んでいたことは確かだが、それも仕方のないことだ。ガブリエルは女性が夢中になる物をすべて兼ね備えている。放ってはおかれなかったったうえに、ガブリエルも女性は嫌いではない。
 短くした黒髪を撫で付け出した額は清々しく、グリーンのアーモンド形の目は艶があり、高く整った鼻梁の下には色気のある唇が誘うように微笑みをたたえている。
 小さな顔に長身に見合う長い手足。さすが侯爵の仕草と身のこなし。女性には上っ面であっても紳士で優しい。
 こんな男なら女性に好まれるのは当たり前だ。いつどこにいてもガブリエルの周りには女性が纏わりついて順番を待っていた。
 ガブリエル自身も女性と遊ぶのが楽しかったし、そのまま受け入れてしまっていたことも確かだが、隠し子がいても疑われないとまで言われるとは。
 人並みの倫理観には欠けていても最低限の責任だけはきちんと持っているつもりだ。
 仕事も社交も持てる才能と勤勉さでこなし、実績を得ている。
 だからこそマイルスたちもガブリエルを適任としたのだ。
 ガブリエルが精神的疲労に頭を抱えそうになっていると、再び肉体的疲労がやってきた。

「奥様……コーデリア様が……」

 ラリサが腕まくりをしたままで情けない顔をして現れた。
 コーデリアを風呂に入れていたはずだが、コーデリアの姿はない。

「どうしたの? 風呂は終わったの?」

 あれだけ汚いコーデリアの全身を綺麗にするには少し早すぎる。
 それもそのはず。コーデリアはまだ風呂に入っていなかった。
 怖がってバスタブに入れないというのだ。
 では先に髪を切ろうとしても、切り始めの音に驚きバスルームの角で座り込んでしまったのだという。
 ダイアナがラリサに付いて様子を見に行き、そう言えばあんな牢獄ではまともに風呂も入れなかっただろうから初めての経験なのだろうとガブリエルは思った。
 暫くの時間が過ぎ、ダイアナが上手く入れられたかとマイルスとふたりで待っていると、困り顔のダイアナが現れた。

「ガブリエルに来て欲しいというのよ……」

 ガブリエルはマイルスと見合ってから本格的に頭を抱えた。
 まさか風呂に入れろなどということまでさせるつもりなのか?
 大人の女性なら喜んでするが、あの汚い少女を風呂にいれることまで仕事のうちなのか……。

「さすがに……。女の子の風呂の手伝いをガブリエルがするのは無理だろう」

 娘であっても父親が手伝う年齢ではない。マイルスもガブリエルに風呂場へ行かせるのを躊躇した。

「あの娘は赤ん坊のようなものよ。お願いガブリエル、あの娘を綺麗にしなくてはならないことはわかるでしょ?」

 綺麗にしなくてはならないのはわかるが、のっけから想像を超えすぎている。
 しかしダイアナに拝み倒され頼まれたらノーと言うのは難しい。
 とりあえず説得をするつもりでガブリエルはラリサとダイアナと共に風呂場に向かった。



 風呂場にはシャボンを混ぜ泡立てた湯から薔薇の香と湯気が立ち上っていた。
 その匂いに似つかわしくない汚れた少女コーデリアは、風呂場の角で来た時と同じ汚れた綿のワンピース姿のままでこれ以上ないほどに身を縮まらせていた。
 ガブリエルが姿を現すと大きな瞳で不安げに見上げた。
 ガブリエルはため息を吐きながらダイアナとラリサに見守られコーデリアの前にしゃがんだ。

「さっきは従うと決めたように見えたが、やっぱりやめたのか?」

 ガブリエルが聞くとコーデリアは首を振った。

「痛いのは。いやだから……」

 怯えるようにか細い声で言うのでガブリエルはラリサを振り返った。
 ラリサは自分がコーデリアに暴力を振るったと誤解されたのではないかと必死で首を振った。
 ガブリエルもダイアナの側にいたラリサを昔から知っているので、まさかそんなことをする女性だとは思っていない。
 再びコーデリアを向く。

「なにが痛かった?」
「わかんないけど、痛そうだから……」

 ラリサがコーデリアに痛みを与えたわけではなかった。コーデリアが勝手に怖がっているだけだ。
 そこでガブリエルが思い至る。
 あの牢獄で暖かい湯に触った事もないのではないかと。

「今までは風呂はどうしていた? 身体を拭いたりはしたことがないのか?」

 コーデリアは風呂というものを知らなかった。暖かいものに触ることもしたことがない。

「バケツに水をください。自分で身体を拭けるから……」

 ガブリエルは再び大きなため息を吐いた。
 コーデリアは動物だ。湯が怖い湯気が怖い刃物が怖い。本能的に動物が怖がるものをコーデリアも怖がっているのだ。

「野生のおおかみ少女か……」

 よく病気にならずにここまで生きていられたものだと思った。
 ガブリエルは頭を振って立ち上がり靴と靴下を脱いでズボンを捲った。

 こんなことまでしてやらなぎゃならないなんて勘弁してくれ……。

 泡の立った湯の中に捲った足を入れて浴槽の中に立つ。

「コーデリア、見て見ろ。オレは平気で入っているだろ? 痛くもないし熱くもない。気持ちがいい温度だ。おいで、一緒に入ってやるから。それなら怖くないだろ?」

 ガブリエルは浴槽に腰掛けコーデリアに向かって手を伸ばした。
 それでも立ち上がらないコーデリアにガブリエルが指でチョイチョイと手招きする。
 狼どころか野良猫でも扱っている気分がするガブリエルだったが、焦らずコーデリアが立って来るのを待つ。
 見守るダイアナとラリサも息を呑む。
 コーデリアが首をかしげてガブリエルを見つめる。ガブリエルはニコリともしないが手を伸ばして待つ。
 大人の女性には無条件で向ける微笑みをコーデリアにも向けてやればいいのだが、ガブリエル本人も気が付いてないが子供と小動物には嘘を吐かないタイプだったようだ。
 コーデリアはガブリエルのグリーンの瞳をじっと見つめてから、差し出された手に誘われるように立ち上がりガブリエルに手を伸ばした。
 ガブリエルはコーデリアの手を取ると腰に手を回しゆっくりと持ち上げた。

「暖かいのは熱いとも痛いともちがうからな? 足からゆっくり入れて行くぞ?」

 持ち上げた身体に浴槽を越えさせゆっくりと泡の中、湯の中へ降ろしておく。
 コーデリアはガブリエルの身体にしがみついたが、それがなお一層風呂を怖がる野良猫のようでガブリエルは再び心の中でつぶやいた。
 勘弁してくれ……と。
 ワンピースを着たままで湯の中に座らせると、コーデリアは痛くも熱くもなく気持ちがいいことに驚いた。
 浴槽の縁に座るガブリエルがラリサに手ではさみを取れと合図し、コーデリアの頭を撫でた。

「いいか、オレは絶対に痛いことはしないからな? このお前のひどい有り様を何とかするために髪を切る。少しジャキジャキ音がするが、頭が軽くなって楽になるからな。わかったか? 切るぞ?」

 ガブリエルの足の間に座り見上げるコーデリアに丁寧に説明をして、伸びっぱなしの長い髪を持ち上げて見せる。
 コーデリアは見下ろすガブリエルを見上げて小さく頷いた。
 さっさと終わらせたいガブリエルは乱暴ではないが遠慮なく、大体背中くらいだろうという長さで切り始めた。
 髪を切るはさみの音に背筋がゾッとするコーデリアだったが、痛みはないので黙って耐えた。
 なんとか切り終わり、さて、どうするか。

「おい。このあとお前は髪と身体を石鹸で洗わなくてはならないんだ。見ろ、泡の中にお前のカスが浮かんでいるだろ? 洗うのはあそこにいるラリサがやってくれる。もちろん彼女も痛いことはしないから大丈夫だ。黙ってラリサがしてくれることをされなさい。わかったか?」

 コーデリアはラリサを見る。穏やかそうな初老の女性だ。ガブリエルが言うなら痛いことはしないと思うのだが。
 コーデリアはガブリエルの足を掴んで見上げる。してもらうならガブリエルがいいと言おうとしたのだが、ガブリエルもさすがにそこまでは出来ない。
 足に絡むコーデリアの手を解いてから顔に顔を寄せて言った。
 
「オレと風呂に入るのはまだ早いよ」

 コーデリアには意味が解らなかったが、意味がわかったダイアナは目玉だけで天を仰いだ。
 大人になったからってあなたとは入れさせないわよ、と心の中で呟きながら。

 不安そうな顔はしていたがあとはラリサでなんとか出来るだろうと風呂から足を出して拭き、ガブリエルはダイアナと一緒にマイルスの元に戻った。

「どうだった? ちゃんと入れたか?」
「やっぱりガブリエルが適任でしたわ。ガブリエルがあの子を風呂に入れるようにしました」

 おお……と声に出しガブリエルを称えたマイルスだったが、ガブリエルはまた大きなため息を吐いた。

「あれは人の世話ではなく小動物の世話です。わたしはふたりから野良猫を預かったようですよ……」
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