攻撃力999、近接無双の回復術師 ~お前みたいな劣等遺伝子は絶対に孕みたくないと、恋人に奈落に突き落とされて10年が経過した~ ~

白石新

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幕間 ~色欲の性獣~

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 そのオークが力に目覚めたのは5日ほど前のことだった。

 彼の父は長年集落の長を務めていたオークの王であり、彼は王子だった。

 先日、彼は成人となる3歳となった。
 そして、父と共に人間の村を襲ったのだが……敗戦した。

 人間の集落を襲うのは一かバチか、騎士団や冒険者と呼ばれる連中がいればそこで終了なのは理解していた。

 だが、彼の父は運が良かった。

 故に、4年という歳月を前線に立つ王として彼の父は君臨し続けていたのだ。

 まさか……? と、思った。

 豪運を持つ父が、何故に冒険者に討たれている……? そう思った。

 父は亡くなり、戦線に立つ9割の同胞が亡くなった。 

 そして、自らは命からがらにその場から逃げ出し、隠れることしかできなかった。

 彼は森の茂みに身を隠し、ただただ人間が消えるのを振るえながらに待った。

 しかし、人間は戦場からは立ち去らずに……その場でオークの解体を始めたのだ。

「オオキナマセキダ」

「タカクウレル」

 その言葉が何を意味するのかは、当時の彼には良く分からなかった。

 だが、解体した後の肉を焼く段になって、その行為については彼は良くわかった。


 ――捕食


 オークは肉を食う時は生だが、人間は焼く。

 そのことは良く知っていた。

「ウメエブタニクダ」

「ヤッパリオークハヤクノガウマイ」

「イイヤナベニシテモウマイゾ」

「コレダケノカズダ、クンセイニクニスレバヒトモウケダナ」

 彼は、その場で悔しいと思った。

 仲間を殺されたことではない。

 仲間を食われたことに対してだ。

 しかし、親兄弟が食われて感傷的になったというわけではない。

 オークは悪食で知られ、何でも食べる。飢餓状態に陥れば、同族食いすらも禁忌ではない。

 ありふれた行動であり、習性である。

 つまり、仲間の肉が焼けるその時、彼が思ったこととは――


 
 ――俺に食わせろ。王の肉はずっと俺が狙っていたのだぞ……と、そういうことである



 しかし、それはあくまでも非常時の共食いであり、普通はそのような思考回路になることは極めて稀である。

 それは、幼少期に彼が頭を強く打ったことが原因かもしれないし、あるいは突然変異的な性格異常なのかもしれない。 

 と、その時、彼の耳に何かの声が聞こえた。



 ――全一の意思下位独立神性アバター:魔物の統括者の権限に介入……成功。

 ――現地生物:オーク種の中でも、とびきりの外道個体を確認しました

 ――カタストロフィイベント:原罪の禊にエントリー可能個体【七大罪:色欲の性獣】として登録されました

 ――原罪の禊まで残り時間は譁?ュ暦シ托シ難シ泌喧縺譁?ュ怜:喧縺となります。

 ――レギオンを率いて、プレイヤーに邪魔されないように人間種を滅ぼしてください




 そして、彼は気が付けば冒険者たちが仲間を解体している広場へと叫びながら躍り出ていた。

「何だこのオークは!? でけえ! オークキング!? いや……真っ黒のオークなんて聞いたことがねえぞ!」

「ど、どうするのよ!?」

「とりあえず、狩るしかないだろ!」

 人間たちの言葉がクリアーに聞こえる。
 今までは何を言っているのかほとんど理解できなかったが、その意味するところが何故か分かった。

 しかし、彼にとってはそんなことはどうでも良かった。

「ぎゃあああっ!」

「グホっ……!」

 手を振れば、人間の首が飛んだ。

 足を振れば、人間の胴体がひしゃげた。

 仲間を蹂躙した人間を、自分が蹂躙している。

 そんなことすらも、どうでも良かった。

 そうして彼は人間が解体していた同胞の肉にかぶりついた。そう――

 ――捕らえた女の魔術師を優しく握ったまま


「ファイアボール! ファイアボール! ファイアボール!」

 少し熱かったが、顔の回りに蜂が一匹飛んでいる程度にしか感じられない。

 ともかく、彼はガツガツと同胞の肉を食らう。

 何しろ、オークの種付けの時間は長い。
 最中、腹が減ってしまえば人間の女を頭から踊り食いしてしまう自信が彼にはあったのだ。
 そうして、腹ごしらえが終えたところで、彼は女魔術師がまとっていた布をはいで、地面へと投げ捨てた。

「や、や、辞めて……」

 女の蒼白な表情が、彼の性欲を刺激する。

 今、彼の頭の中にあることは、ただ二つだ。
 第2に食欲、そして第一は――

「辞めてええええええっ!」








 そうして数日後、彼は自身の繁殖能力が格段に上がっているに気が付いた。

 メスの生まれないオーク種は他種族交配によって数を増やすのだが、その受精率は極めて低い。

 冬眠の最中、攫ってきた他種族の女を犯して回してようやく子を為すということなのだが……あの魔術師も含め、他に捕えた女冒険者2名が全員妊娠していたのだ。

 そして、彼には確信があった。

 自らの子は……強いと。他のオークとはワケが違うと。


 ――犯して、増やせ

 ――女を、攫え

 ――軍団(レギオン)を、率いろ



 彼の頭の中に、命令にも似た声が響いていた。


 そして数日の後。
 地域最大のオークの集落を単独で武力制圧した彼は、仲間を率いてタイガの向かう村へと目をつけることになったのであった。
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