攻撃力999、近接無双の回復術師 ~お前みたいな劣等遺伝子は絶対に孕みたくないと、恋人に奈落に突き落とされて10年が経過した~ ~

白石新

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はっきり言ってしまえば、ベテラン冒険者さんの動きは遅すぎるように見えました

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「フォギっ!?」

「ガブっ!」

「ヌワバっ!!!」


 奇声を挙げてオークが倒れる。

 見事な連携だと素直に思うが……ダメだ。やっぱこの人たち、頭上を全く気にしてない。

 と、そこで樹上のオーク2体がホフマンさんとCランクの剣士に向けて頭上から飛びかかろうとして――


「上です!」


 俺の叫びで二人は頭上を見て、自身に落ちてきているオークを視認し「あっ!」っと狼狽した。

 しかし、そこは歴戦の戦士だ。

 すぐに気持ちを切り替えて、二人は適切な動きでオークを迎撃した。

「ギャヒイイイーっ!」

 オークの断末魔と共に……まあ、これにて一件落着ってところか。

 が、4人は警戒を解かない。
 で、それから数分の間、周囲の様子を伺ってからDランク上位のシーフが「安全だ」と言って、ようやく安堵の溜息をついた。


「……最後のは危なかったが、まあ何となったな」


「しかしタイガ。見直したよ」

 と、言ってきたのは女魔術師だ。

「見直したとは?」

「マグレとは言え、さっきの頭上のオークのアドバイスは値千金よ。ここで私たちの要の剣士の二人が怪我でもしてればと思うと……ゾっとするもの」

 ホフマンさんも俺の背中をバンと叩いて「ガハハ」と気さくな笑みを浮かべている。

「いや、本当に助かったぜタイガ。お前の分け前に、色をつけることを検討しといてやるよ」

「馬鹿なのホフマン? 検討じゃなくて、色をつけとくって言い切りなさいよ……本当にケチ臭い男ね」

「冗談だよ冗談。貢献度に応じた割り当てをしないと、何がなんだか分からんからな」

「しかし、50の内の10体も私たちがやっちゃったわね」

「ああ、先行してる連中から、この討伐の功績で分け前をふんだくらんとな」

「ともかく、本番での数も減らして分け前も増えて一石二鳥ってとこね」

 そうして一同は笑ったんだけど、俺は素直には笑えなかった。
 
 と、言うのも森の中に……遠くて距離は良くわからないけれど、さっきのオークとは全く違う、強大なオーク種の気配を感じていたからだ。

 その気配は単独個体。

 他のオークに比べて、圧倒的にして理不尽なまでの戦力差があるように感じる。

 つまり、間違いなくこのオークの群れには――強大なボスがいる。

 それに、やっぱり遠くて良く分からないけど、ボスの周囲に、取り巻きのオークの気配を強く……そして、多く感じる。

 と、なると、今のオークは恐らくはただの斥候部隊だろうな。

 元々、オークの群れは50体程度と聞いている。
 が、斥候で9体を送り出すってことは、本隊は50の数じゃ余裕できかないだろう。 

 確かにこの4人と、村にいるという同程度の戦力なら、オーク50体なら十分対処できるだろうけど……。

 前提の条件や情報が違えば、事故が起きる。

 これも冒険者では常識のことで、俺は嫌な予感で背中に汗をかいていた。

「ホフマンさん、このまま野営するにしても……せめて位置を変えませんか? オークの仲間がいるかもしれません」

「まあ、そうだな。違う場所で野営……いや、予定を繰り上げて、警戒態勢を維持したままこのまま村に向かおう。夜通しの行軍にはなるが、みんな我慢してくれ」

 このあたりの判断はさすがにベテランと言ったところか。

 夜の行動は夜の行動で危険を伴うが、ベストな選択だと思う。

 まあ、これでとりあえず寝込みを襲われる心配はなくなった。

 けれど……と、俺の嫌な予感は止まらない。

 と、言うのもさっきの4人の連携を見て、思うところがあるんだ。

 確かに、中々の連携だったと思う。
 ホフマンさんたちの動きもオークに比べると格段に早いとも思った。

 けれど……と、俺は思う。


 ――遅すぎる
 

 あれが本当にCランクの動きなのか……と。

 いや、俺が強くなったからそう思うだけで、事実としてあれがCランクの動きなんだろう。

 けれど、恐らく、俺が今感じているオークのボスの気配からすると……。

 4人がソレと相対した場合、まず間違いなく何もできずに皆殺しにされる。

 それはもう、武装した大人が非武装の子供を蹂躙するかのように。

 と、敏捷の能力値で研ぎ澄まされた……俺の五感が――



 ――頭の中にけたたましいアラートを鳴らしていたのだった
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