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第九章 大東亜戦争Ⅱ(戦中編)
サンフランシスコ沖海戦Ⅲ
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「閣下! コロラドの一番主砲が吹っ飛ばされました!」
「やはりアイオワ級の装甲は十分ではなかったか……」
「このままでは一方的にやられてしまいます!」
「かと言って、こんな射程ギリギリでは命中など期待できない。弱ったな、これは……」
スプルーアンス大将はどうやら日本の戦艦も船魄化されているらしいと悟った。尋常ならざる命中率は、大和を思い出させる。
「いや、そもそもそんなところまで私が指揮する必要はないか。現場の判断に任せよう」
「しかし、このままでは……」
「負けたら、我々はそれまでということだ」
「閣下……?」
「ここで負ければ、この戦争に幕を引くいい理由になるだろう」
スプルーアンス大将は勝利の可能性を見出せなかった。そして次に彼が考えるのは、犠牲を最小限にするにはどう負ければよいか、である。
○
長門は砲撃を続ける。砲撃の精度は斉射の度に増していき、コロラドに10発を超える命中弾を与えていた。
「敵もようやく撃ってくるか。とは言え、この距離では当てられまい」
コロラドとテネシーは全速前進を続けつつ、艦橋より前の主砲で砲撃を行う。それだけでも長門の主砲より多いのだが、長門は特に焦ることもなかった。
『ちょっとは危機感持ちなさいよ』
「元より回避も何もあるまい。余計なことを考えて心を乱す必要はない」
『あっそう。なら好きにしなさい』
「最初からお前の命令を受けているつもりはないが」
『一々煩い奴ねえ』
全速前進しながら正面に砲撃を行うなど、戦艦の本来的な運用法から大きく外れてる。そんな砲撃で命中を期待することなどできず、長門から遥かに離れた場所に水柱が上がった。長門はその場から全く動かず、砲撃を続行する。
主砲斉射でコロラドの左舷舷側を撃ち抜く。次の瞬間、コロラドの艦橋の後ろで大爆発が起こって、3番主砲塔が吹き飛んだ。
「どうやら弾薬庫でも撃ち抜いたようだ」
『流石に死んだわね。残りの一隻も頼むわ』
「言われなくとも」
コロラドは炎に包まれ完全に沈黙した。この様子だと主機関も吹き飛ばされているに違いない。長門は残るテネシーに砲撃を集中する。
『ちょっと、敵の狙いが精確になって来てるけど、大丈夫?』
テネシーの砲撃は精確さを増し、長門の周囲100mほどにまで水柱が迫って来ていた。
「だからどうしたと言うのだ。先に敵を沈めればいいだけのことだ」
『戦艦の主砲は痛いと思うけどねえ』
「私も戦艦だ。お前より遥かに撃たれ強い」
『ならいいけど』
双方砲撃戦を続行し、長門がテネシーに13発の命中弾を与えた時、長門もついに右舷に被弾してしまう。
「うっ……ぐっ……」
『大丈夫?』
「確かに、なかなか痛いものだな……。だが、動けなくなるほどではない!」
『それなら、いいのよ』
長門の損傷は軽微なものであった。そして次の斉射はテネシーの舷側装甲を撃ち抜き、ついに大破炎上させたのである。これでアメリカの戦艦は全滅し、長門を止められるものはいなくなった。
○
「戦艦部隊、壊滅しました……」
「分かった。これで我々の勝機は失われた。撤退する」
「ほ、本気ですか?」
「本気だ。我々には最早、敵に対抗し得る戦力がない。全艦に通達! 直ちに戦場を離脱せよ!!」
スプルーアンス大将は元から逃げる理由を探していた。勝ち目のない戦いにこれ以上付き合う義理はないのだ。
「私達がいるのに戦力がないなんて、酷いですね」
ミッドウェイは言う。
「瑞鶴を相手に押し切れない以上、勝ち目はない」
「確かに、その通りですが」
「まあ、そう悪く思わないでくれ。君達が瑞鶴を押さえてくれているからこそ、艦隊は無事に撤退できるのだ」
「そう思っておくことにします」
かくしてアメリカ最後の艦隊は反転し撤退を開始した。しかし日本軍はそれを見逃してはくれないようだ。
「閣下! 敵艦隊が我々を追って来ています! 速度、およそ27ノット!」
長門がアメリカ艦隊を殲滅するべく動き出したのだ。
「それならこちらの方が早い。全力で逃げるんだ」
「はっ!」
戦艦と比べれば空母の方が速いに決まっている。逃げ切ることは容易だろうと考えていたが、その程度のことを日本軍が想定していない訳もなかった。
「閣下! 敵機が一部、こっちに向かって来ています!」
「何? ミッドウェイ、敵に突破されたのか?」
「いえ、別方向から突如として現れました。すぐに対応に向かいたいですが……戦闘機を動かせる状態ではありません」
「クッ。対空砲火で何とかするしかないか」
ほんの3機ほどだったが、敵機がミッドウェイに向かって突撃してきている。艦載機は瑞鶴の相手で手一杯で動かせず、高角砲で応戦することとなった。しかしスプルーアンス大将はその敵機を見てすぐに違和感を持った。
「あれは……日本軍の艦載機ではないし、プロペラがないな」
「まさかドイツのジェット機ですか?」
「そのようだ」
「ジェット機だとすると、高角砲で落とすのは厳しいですね。頑張りますけど」
「敵機、急速に加速しています!」
「特攻する気か! ミッドウェイ、全力で撃ち落とすんだ!」
「やってみます」
ミッドウェイは全ての高角砲と機関砲で敵機を迎撃する。しかしジェット機の圧倒的な速度を捕捉するには性能が足りない。
「無理みたいですね」
「クソッ……全員衝撃に備えるんだ!!」
大将は艦長より早くそう命令した。次の瞬間、ミッドウェイの艦橋は大きく左右に揺さぶられた。
「やはりアイオワ級の装甲は十分ではなかったか……」
「このままでは一方的にやられてしまいます!」
「かと言って、こんな射程ギリギリでは命中など期待できない。弱ったな、これは……」
スプルーアンス大将はどうやら日本の戦艦も船魄化されているらしいと悟った。尋常ならざる命中率は、大和を思い出させる。
「いや、そもそもそんなところまで私が指揮する必要はないか。現場の判断に任せよう」
「しかし、このままでは……」
「負けたら、我々はそれまでということだ」
「閣下……?」
「ここで負ければ、この戦争に幕を引くいい理由になるだろう」
スプルーアンス大将は勝利の可能性を見出せなかった。そして次に彼が考えるのは、犠牲を最小限にするにはどう負ければよいか、である。
○
長門は砲撃を続ける。砲撃の精度は斉射の度に増していき、コロラドに10発を超える命中弾を与えていた。
「敵もようやく撃ってくるか。とは言え、この距離では当てられまい」
コロラドとテネシーは全速前進を続けつつ、艦橋より前の主砲で砲撃を行う。それだけでも長門の主砲より多いのだが、長門は特に焦ることもなかった。
『ちょっとは危機感持ちなさいよ』
「元より回避も何もあるまい。余計なことを考えて心を乱す必要はない」
『あっそう。なら好きにしなさい』
「最初からお前の命令を受けているつもりはないが」
『一々煩い奴ねえ』
全速前進しながら正面に砲撃を行うなど、戦艦の本来的な運用法から大きく外れてる。そんな砲撃で命中を期待することなどできず、長門から遥かに離れた場所に水柱が上がった。長門はその場から全く動かず、砲撃を続行する。
主砲斉射でコロラドの左舷舷側を撃ち抜く。次の瞬間、コロラドの艦橋の後ろで大爆発が起こって、3番主砲塔が吹き飛んだ。
「どうやら弾薬庫でも撃ち抜いたようだ」
『流石に死んだわね。残りの一隻も頼むわ』
「言われなくとも」
コロラドは炎に包まれ完全に沈黙した。この様子だと主機関も吹き飛ばされているに違いない。長門は残るテネシーに砲撃を集中する。
『ちょっと、敵の狙いが精確になって来てるけど、大丈夫?』
テネシーの砲撃は精確さを増し、長門の周囲100mほどにまで水柱が迫って来ていた。
「だからどうしたと言うのだ。先に敵を沈めればいいだけのことだ」
『戦艦の主砲は痛いと思うけどねえ』
「私も戦艦だ。お前より遥かに撃たれ強い」
『ならいいけど』
双方砲撃戦を続行し、長門がテネシーに13発の命中弾を与えた時、長門もついに右舷に被弾してしまう。
「うっ……ぐっ……」
『大丈夫?』
「確かに、なかなか痛いものだな……。だが、動けなくなるほどではない!」
『それなら、いいのよ』
長門の損傷は軽微なものであった。そして次の斉射はテネシーの舷側装甲を撃ち抜き、ついに大破炎上させたのである。これでアメリカの戦艦は全滅し、長門を止められるものはいなくなった。
○
「戦艦部隊、壊滅しました……」
「分かった。これで我々の勝機は失われた。撤退する」
「ほ、本気ですか?」
「本気だ。我々には最早、敵に対抗し得る戦力がない。全艦に通達! 直ちに戦場を離脱せよ!!」
スプルーアンス大将は元から逃げる理由を探していた。勝ち目のない戦いにこれ以上付き合う義理はないのだ。
「私達がいるのに戦力がないなんて、酷いですね」
ミッドウェイは言う。
「瑞鶴を相手に押し切れない以上、勝ち目はない」
「確かに、その通りですが」
「まあ、そう悪く思わないでくれ。君達が瑞鶴を押さえてくれているからこそ、艦隊は無事に撤退できるのだ」
「そう思っておくことにします」
かくしてアメリカ最後の艦隊は反転し撤退を開始した。しかし日本軍はそれを見逃してはくれないようだ。
「閣下! 敵艦隊が我々を追って来ています! 速度、およそ27ノット!」
長門がアメリカ艦隊を殲滅するべく動き出したのだ。
「それならこちらの方が早い。全力で逃げるんだ」
「はっ!」
戦艦と比べれば空母の方が速いに決まっている。逃げ切ることは容易だろうと考えていたが、その程度のことを日本軍が想定していない訳もなかった。
「閣下! 敵機が一部、こっちに向かって来ています!」
「何? ミッドウェイ、敵に突破されたのか?」
「いえ、別方向から突如として現れました。すぐに対応に向かいたいですが……戦闘機を動かせる状態ではありません」
「クッ。対空砲火で何とかするしかないか」
ほんの3機ほどだったが、敵機がミッドウェイに向かって突撃してきている。艦載機は瑞鶴の相手で手一杯で動かせず、高角砲で応戦することとなった。しかしスプルーアンス大将はその敵機を見てすぐに違和感を持った。
「あれは……日本軍の艦載機ではないし、プロペラがないな」
「まさかドイツのジェット機ですか?」
「そのようだ」
「ジェット機だとすると、高角砲で落とすのは厳しいですね。頑張りますけど」
「敵機、急速に加速しています!」
「特攻する気か! ミッドウェイ、全力で撃ち落とすんだ!」
「やってみます」
ミッドウェイは全ての高角砲と機関砲で敵機を迎撃する。しかしジェット機の圧倒的な速度を捕捉するには性能が足りない。
「無理みたいですね」
「クソッ……全員衝撃に備えるんだ!!」
大将は艦長より早くそう命令した。次の瞬間、ミッドウェイの艦橋は大きく左右に揺さぶられた。
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