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第二十章 キューバ戦役
デモインの価値
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『やりましたね、妙高。上手く無力化できました』
「うん。こっちが撃たれる前に、軽巡を全部無力化したいところだけど……」
重巡洋艦にとっては現実的な交戦距離であるが、軽巡洋艦にとっては射程ギリギリである。現実的に命中を狙うことはできない筈だ。
『敵はもっと距離を詰めたいみたいだけど?』
「それは望ましくないですね。この距離を維持しましょう!」
重巡にとって最も都合がいい距離を維持するべく、妙高は敵艦隊から離れるように指示した。アメリカ側は距離を詰めたがっているが、それは許さない。デモイン級二隻を無視してクリーブランド級に集中砲火を行い続ける。
が、斉射を数回行った後のことであった。
『妙高ッ!!』
妙高の右舷前方に砲弾が命中し、火の手が上がった。初めてこちらが撃たれた。
「大丈夫、高雄。15cm砲弾だったみたいだから、被害は大したことない」
『よ、よかった……』
『流石に敵も狙いが定まって来たみたいね』
『こちらも早く当てなければ……』
誰の砲弾が当たったのかは分からないが、高雄と愛宕はクリーブランド級スプリングフィールドに集中砲火を浴びせ、一気に4発の砲弾を命中させた。その間に高雄が2発被弾したが、こちらも軽微な損害で済んだ。
スプリングフィールドは炎上し、先程のモントピリアと同じように機関を停止して、戦意がないことを示した。妙高は追撃などせず、最後に残ったヒューストンへの集中砲火を命じた。
しかしその時であった。またしても妙高の右舷を砲弾が貫き、高角砲が吹き飛ばされた。
『今度は痛そうね』
「そ、そうですね……。これは20cm砲弾かと……」
『だ、大丈夫なんですか!?』
「航行に支障はないけど……装甲は全然役に立ってない、かな……」
やはり重巡洋艦の装甲で重巡洋艦の主砲に耐えることは不可能なのだ。
『は、早くデモインを無力化しなければ!』
「落ち着いて、高雄。まずは、残りの軽巡からだよ」
『そうよ、お姉ちゃん。まあお姉ちゃんを傷付けた奴なんだから、私が沈めてやるけどね』
「愛宕さん……沈めはしないでください」
『保証はしかねるわ』
愛宕は最後に残ったヒューストンに主砲斉射を行い、見事に4発命中させた。当たり所によっては沈めかねない火力ではあったが、幸いにしてヒューストンは沈まず、主砲が2基吹き飛んで大破炎上で済んだ。まああれだけの被害であれば廃艦になる可能性もあるが、船魄は死なずに済む。
残るはデモインとニューポート・ニューズのみ。戦力は完全に逆転した。
「よし……。先頭にいる方の重巡に、全主砲で撃ち方始め!」
30門の主砲が先頭にいるデモイン級、つまりデモインに向かって斉射を始めた。双方の距離はおよそ20kmとなかなか離れているが、2回目の斉射で早くも8発ほどの命中弾を出した。
しかし、デモインは爆煙につつまれつつも、何ら被害は出していないようだった。
「装甲に、阻まれた……?」
『流石は弩級戦艦並の排水量の重巡、ですか……。噂通りの抗堪性です……』
『厄介な相手ねえ』
再びの斉射を行い、デモインに6発の砲弾を命中させる。流石に副砲などは破壊できるが、船体そのものへの損傷はほとんど認められない。そうこうしているうちに、高雄にデモインの砲弾が命中した。
『お姉ちゃんッ!!』
『だ、大丈夫です、愛宕……。4番と5番主砲が故障、ですが、それ以外の損傷は、ありません……』
高雄は平気な様子を見せたかったが、声に苦しさが乗るのは避けられなかった。それを聞いて、愛宕は冷静ではいられない。
『やっぱりやってられないわ、こんな仕事。帰りましょう、お姉ちゃん』
『い、いや、愛宕……』
『お姉ちゃんが死んだらどうするのよ!? 作戦は中止よ中止! 当たり前よね、妙高?』
「え、いや……ここで撤退したらキューバの人達が……」
『知らないわよそんなこと!』
『あ、愛宕、どうしてそんな……』
高雄が被弾することはあっても、愛宕がここまで激昂することはこれまでなかった。
『敵を沈めるには相当時間がかかるわ。でも私達は、敵に撃たれたら簡単に沈むかもしれない。お姉ちゃんが沈んだら私は耐えられない』
『愛宕……』
『で、でしたら、わたくしが下がればよいのでしょう?』
『え? ええ、まあ』
『そうしましょう。妙高、よろしいですよね?』
「う、うん。大丈夫」
主砲の5分の2が破壊された高雄では、元より大した戦力にならない。愛宕が高雄を気にせずに戦えるのならその方がよいだろう。高雄は戦列を離脱し、妙高と愛宕は戦闘を継続した。
○
「流石だ、デモイン。よくやってくれたね」
ケネディ少将はデモインに微笑みかけた。軍人らしからず、まるで親子のようである。
「でも、味方の軽巡が三隻、失われてしまった」
「軽巡洋艦は、最初から囮のようなものだ。気にしなくていい。君はこのまま、残りの重巡も撃退してくれ。数が同じなら負けないだろう?」
「うん。負けない」
デモインは傷付いているが、そんなことは意に介さない。だが、その時であった。
「閣下! 南西から接近する未確認の艦影を確認しました!」
「何? すぐに敵の正体を調べよ! 敵には違いないだろうが」
ケネディ少将はエンタープライズに偵察を要請した。
「うん。こっちが撃たれる前に、軽巡を全部無力化したいところだけど……」
重巡洋艦にとっては現実的な交戦距離であるが、軽巡洋艦にとっては射程ギリギリである。現実的に命中を狙うことはできない筈だ。
『敵はもっと距離を詰めたいみたいだけど?』
「それは望ましくないですね。この距離を維持しましょう!」
重巡にとって最も都合がいい距離を維持するべく、妙高は敵艦隊から離れるように指示した。アメリカ側は距離を詰めたがっているが、それは許さない。デモイン級二隻を無視してクリーブランド級に集中砲火を行い続ける。
が、斉射を数回行った後のことであった。
『妙高ッ!!』
妙高の右舷前方に砲弾が命中し、火の手が上がった。初めてこちらが撃たれた。
「大丈夫、高雄。15cm砲弾だったみたいだから、被害は大したことない」
『よ、よかった……』
『流石に敵も狙いが定まって来たみたいね』
『こちらも早く当てなければ……』
誰の砲弾が当たったのかは分からないが、高雄と愛宕はクリーブランド級スプリングフィールドに集中砲火を浴びせ、一気に4発の砲弾を命中させた。その間に高雄が2発被弾したが、こちらも軽微な損害で済んだ。
スプリングフィールドは炎上し、先程のモントピリアと同じように機関を停止して、戦意がないことを示した。妙高は追撃などせず、最後に残ったヒューストンへの集中砲火を命じた。
しかしその時であった。またしても妙高の右舷を砲弾が貫き、高角砲が吹き飛ばされた。
『今度は痛そうね』
「そ、そうですね……。これは20cm砲弾かと……」
『だ、大丈夫なんですか!?』
「航行に支障はないけど……装甲は全然役に立ってない、かな……」
やはり重巡洋艦の装甲で重巡洋艦の主砲に耐えることは不可能なのだ。
『は、早くデモインを無力化しなければ!』
「落ち着いて、高雄。まずは、残りの軽巡からだよ」
『そうよ、お姉ちゃん。まあお姉ちゃんを傷付けた奴なんだから、私が沈めてやるけどね』
「愛宕さん……沈めはしないでください」
『保証はしかねるわ』
愛宕は最後に残ったヒューストンに主砲斉射を行い、見事に4発命中させた。当たり所によっては沈めかねない火力ではあったが、幸いにしてヒューストンは沈まず、主砲が2基吹き飛んで大破炎上で済んだ。まああれだけの被害であれば廃艦になる可能性もあるが、船魄は死なずに済む。
残るはデモインとニューポート・ニューズのみ。戦力は完全に逆転した。
「よし……。先頭にいる方の重巡に、全主砲で撃ち方始め!」
30門の主砲が先頭にいるデモイン級、つまりデモインに向かって斉射を始めた。双方の距離はおよそ20kmとなかなか離れているが、2回目の斉射で早くも8発ほどの命中弾を出した。
しかし、デモインは爆煙につつまれつつも、何ら被害は出していないようだった。
「装甲に、阻まれた……?」
『流石は弩級戦艦並の排水量の重巡、ですか……。噂通りの抗堪性です……』
『厄介な相手ねえ』
再びの斉射を行い、デモインに6発の砲弾を命中させる。流石に副砲などは破壊できるが、船体そのものへの損傷はほとんど認められない。そうこうしているうちに、高雄にデモインの砲弾が命中した。
『お姉ちゃんッ!!』
『だ、大丈夫です、愛宕……。4番と5番主砲が故障、ですが、それ以外の損傷は、ありません……』
高雄は平気な様子を見せたかったが、声に苦しさが乗るのは避けられなかった。それを聞いて、愛宕は冷静ではいられない。
『やっぱりやってられないわ、こんな仕事。帰りましょう、お姉ちゃん』
『い、いや、愛宕……』
『お姉ちゃんが死んだらどうするのよ!? 作戦は中止よ中止! 当たり前よね、妙高?』
「え、いや……ここで撤退したらキューバの人達が……」
『知らないわよそんなこと!』
『あ、愛宕、どうしてそんな……』
高雄が被弾することはあっても、愛宕がここまで激昂することはこれまでなかった。
『敵を沈めるには相当時間がかかるわ。でも私達は、敵に撃たれたら簡単に沈むかもしれない。お姉ちゃんが沈んだら私は耐えられない』
『愛宕……』
『で、でしたら、わたくしが下がればよいのでしょう?』
『え? ええ、まあ』
『そうしましょう。妙高、よろしいですよね?』
「う、うん。大丈夫」
主砲の5分の2が破壊された高雄では、元より大した戦力にならない。愛宕が高雄を気にせずに戦えるのならその方がよいだろう。高雄は戦列を離脱し、妙高と愛宕は戦闘を継続した。
○
「流石だ、デモイン。よくやってくれたね」
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「閣下! 南西から接近する未確認の艦影を確認しました!」
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