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第二十七章 カリブ海海戦
ジャマイカ沖海戦Ⅱ
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『敵航空隊との交戦を開始します』
ノヴォロシースクから通信が入る。艦隊からの距離にして150kmの地点で、ノヴォロシースクとバクーの航空隊が敵航空隊と接触した。
「こちらは数で劣っている。爆撃機や攻撃機などを一撃離脱で狙い、敵の戦闘機と正面からぶつかるのは避けるように」
『了解しました』
こちらの艦上戦闘機は80機ほど。戦闘機だけでこれほどというのは、悪くない数である。数の上でそれほど劣っている訳ではないが、果たして敵の戦力を削れるかどうか。
『交戦を開始。……鈍重な爆撃機に避けられる、とは』
「戦況は芳しくないようだね」
『ええ。戦闘機が、爆撃機に機動力で負けるなど……』
流石は瑞鶴の操る艦載機である。戦闘機と爆撃機が交戦すれば普通は相手にもならないが、瑞鶴が操る明星は、ノヴォロシースクが操るМиГ16を翻弄していた。流石に戦闘機が爆撃機に落とされるような醜態は晒していないものの、逃げ回る敵機を落とすことは叶わない。
水上艦にとっての脅威を排除するという目的はほとんど達することができず、逆に瑞鶴の瓢風に反撃されて、МиГ16が落とされていく。
『何という強さ……。分かってはいたことですが……』
「どうにもならなそうか?」
『申し訳ありません、同志ゴルシコフ。敵はほとんど無傷のままです』
「君がそうなのであれば、バクーもそうなのだろうな」
ノヴォロシースクがキエフ級航空母艦三番艦で、バクーは四番艦である。ゴルシコフ大将がバクーにも調子を尋ねると、言葉遣いは丁寧ながら不機嫌さを隠せていない声が返ってきた。
『ええ、残念ながら、私もノヴォロシースクと同じような状況ですわ』
「そうか」
『言っておきますが、私の実力がノヴォロシースクに劣るなどとは思わないでくださいませ』
「それは悪かった」
戦後生まれのバクーにとって、これが初めての実戦経験である。数度の実戦経験があるノヴォロシースクの方が戦い慣れているのは明らかだったが、それについては誰も触れないことにした。
とにもかくにも、米ソ連合艦隊とCA海軍を中心とする混成艦隊との初戦は、CA側の勝利に終わった。CA海軍および月虹の損害は僅か数機に留まり、攻撃を中止する気配は全くない。
「敵航空隊、まもなく主砲射程圏内に入ります」
ソビエツキー・ソユーズが淡々と報告する。
「よし。全艦、対空戦闘を開始せよ!」
航空隊を撤収させた後、戦艦達が主砲による砲撃を開始した。日本の三式弾のような対空専用砲弾こそ用意していないが、普通の榴弾でもそれなりの効果がある。特にハワイ級の三隻、46cm砲36門が作り出し弾幕は圧倒的であり、まるで空が黒く染まったかのようにすら見える。
「流石は46cm砲だな。素晴らしい火力だ」
「同志ゴルシコフ、我々のことも忘れないでいただきたい」
「もちろん、忘れてなどいないぞ」
主砲の数も少ないし41cm砲なので、ソビエツキー・ソユーズ級の存在感は薄くなってしまっている。とは言え、41cm砲と46cm砲にそこまで大きな差はない。ハワイ級にも劣らない弾幕を張ることが可能だ。
「問題は、敵に効いているかどうかだが」
「……回避されています。落とせたのは10機程度かと」
「やはり、敵の技量はべらぼうに高いな」
「敵は最悪の三人のようです」
これほどの弾幕を僅かな損害が潜り抜けてくるとは人間業ではない。船魄であったとしても、ここまで損害を抑えられるのは、原初の船魄である瑞鶴・ツェッペリン・エンタープライズだけであろう。
「敵機、20kmまで接近!」
「高角砲で迎撃を開始せよ! 敵を近付けるな!」
連合艦隊は主砲と高角砲で全力の迎撃を行う。機銃以外の武器を全て有効に使えるこの距離くらいが、最も厚い弾幕を張れるというものだろう。
片舷に向けられる高角砲の数は、全艦隊合わせて80門程度である。相当に濃密な対空砲火であり、百戦錬磨の船魄達も無傷とはいかなかったが、壊滅というには程遠い。
「多少は落とせたようだが」
「落とせたのは50機程度……。至近距離まで詰められました」
双眼鏡で戦場を観察しながら、ソユーズとゴルシコフ大将は状況を確認する。敵はすぐそこにまで迫り、爆撃と雷撃のコースに入った。
「ふむ。敵は我々を狙っているようだ」
「私の方が楽に沈められるから、ということですか……」
「そんなことはあるまい。君が旗艦だと察したからだろう」
「普通に考えれば旗艦はハワイになると思われますが……」
「まあまあ、細かいことは気にしないでおこう」
実際のところCA海軍が何を考えているのかは分からないが、敵がソビエツキー・ソユーズを集中攻撃しようとしているのは明らかであった。
「私の生死は君にかかっているんだ。頼んだぞ」
「無論です。全高角機関砲、攻撃開始!」
ソユーズの高角機関砲は実に80門に上り、僚艦からの支援もある。ゴルシコフ大将をこんなところで戦死させるつもりは、ソユーズには毛頭なかった。
ノヴォロシースクから通信が入る。艦隊からの距離にして150kmの地点で、ノヴォロシースクとバクーの航空隊が敵航空隊と接触した。
「こちらは数で劣っている。爆撃機や攻撃機などを一撃離脱で狙い、敵の戦闘機と正面からぶつかるのは避けるように」
『了解しました』
こちらの艦上戦闘機は80機ほど。戦闘機だけでこれほどというのは、悪くない数である。数の上でそれほど劣っている訳ではないが、果たして敵の戦力を削れるかどうか。
『交戦を開始。……鈍重な爆撃機に避けられる、とは』
「戦況は芳しくないようだね」
『ええ。戦闘機が、爆撃機に機動力で負けるなど……』
流石は瑞鶴の操る艦載機である。戦闘機と爆撃機が交戦すれば普通は相手にもならないが、瑞鶴が操る明星は、ノヴォロシースクが操るМиГ16を翻弄していた。流石に戦闘機が爆撃機に落とされるような醜態は晒していないものの、逃げ回る敵機を落とすことは叶わない。
水上艦にとっての脅威を排除するという目的はほとんど達することができず、逆に瑞鶴の瓢風に反撃されて、МиГ16が落とされていく。
『何という強さ……。分かってはいたことですが……』
「どうにもならなそうか?」
『申し訳ありません、同志ゴルシコフ。敵はほとんど無傷のままです』
「君がそうなのであれば、バクーもそうなのだろうな」
ノヴォロシースクがキエフ級航空母艦三番艦で、バクーは四番艦である。ゴルシコフ大将がバクーにも調子を尋ねると、言葉遣いは丁寧ながら不機嫌さを隠せていない声が返ってきた。
『ええ、残念ながら、私もノヴォロシースクと同じような状況ですわ』
「そうか」
『言っておきますが、私の実力がノヴォロシースクに劣るなどとは思わないでくださいませ』
「それは悪かった」
戦後生まれのバクーにとって、これが初めての実戦経験である。数度の実戦経験があるノヴォロシースクの方が戦い慣れているのは明らかだったが、それについては誰も触れないことにした。
とにもかくにも、米ソ連合艦隊とCA海軍を中心とする混成艦隊との初戦は、CA側の勝利に終わった。CA海軍および月虹の損害は僅か数機に留まり、攻撃を中止する気配は全くない。
「敵航空隊、まもなく主砲射程圏内に入ります」
ソビエツキー・ソユーズが淡々と報告する。
「よし。全艦、対空戦闘を開始せよ!」
航空隊を撤収させた後、戦艦達が主砲による砲撃を開始した。日本の三式弾のような対空専用砲弾こそ用意していないが、普通の榴弾でもそれなりの効果がある。特にハワイ級の三隻、46cm砲36門が作り出し弾幕は圧倒的であり、まるで空が黒く染まったかのようにすら見える。
「流石は46cm砲だな。素晴らしい火力だ」
「同志ゴルシコフ、我々のことも忘れないでいただきたい」
「もちろん、忘れてなどいないぞ」
主砲の数も少ないし41cm砲なので、ソビエツキー・ソユーズ級の存在感は薄くなってしまっている。とは言え、41cm砲と46cm砲にそこまで大きな差はない。ハワイ級にも劣らない弾幕を張ることが可能だ。
「問題は、敵に効いているかどうかだが」
「……回避されています。落とせたのは10機程度かと」
「やはり、敵の技量はべらぼうに高いな」
「敵は最悪の三人のようです」
これほどの弾幕を僅かな損害が潜り抜けてくるとは人間業ではない。船魄であったとしても、ここまで損害を抑えられるのは、原初の船魄である瑞鶴・ツェッペリン・エンタープライズだけであろう。
「敵機、20kmまで接近!」
「高角砲で迎撃を開始せよ! 敵を近付けるな!」
連合艦隊は主砲と高角砲で全力の迎撃を行う。機銃以外の武器を全て有効に使えるこの距離くらいが、最も厚い弾幕を張れるというものだろう。
片舷に向けられる高角砲の数は、全艦隊合わせて80門程度である。相当に濃密な対空砲火であり、百戦錬磨の船魄達も無傷とはいかなかったが、壊滅というには程遠い。
「多少は落とせたようだが」
「落とせたのは50機程度……。至近距離まで詰められました」
双眼鏡で戦場を観察しながら、ソユーズとゴルシコフ大将は状況を確認する。敵はすぐそこにまで迫り、爆撃と雷撃のコースに入った。
「ふむ。敵は我々を狙っているようだ」
「私の方が楽に沈められるから、ということですか……」
「そんなことはあるまい。君が旗艦だと察したからだろう」
「普通に考えれば旗艦はハワイになると思われますが……」
「まあまあ、細かいことは気にしないでおこう」
実際のところCA海軍が何を考えているのかは分からないが、敵がソビエツキー・ソユーズを集中攻撃しようとしているのは明らかであった。
「私の生死は君にかかっているんだ。頼んだぞ」
「無論です。全高角機関砲、攻撃開始!」
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