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第二十九章 外交攻勢
ハワイとの戦い
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「そ、そんなこと、貴様の妄言としか思えんな」
ハワイは動揺している。最高の人種差別主義者として崇敬していたルーズベルトが、実は人種という概念に興味すらなかったと聞かされたのだ。だからこそ、エンタープライズの言葉を否定する他にない。
『そうでしょうか。私の力については、当時の高官の方々に聞けばすぐに真偽が分かると思いますよ? 例えばスプルーアンス元帥閣下とか』
「そ、そいつらが口裏を合わせているかもしれない!」
『そこまでする必要はないと思うんですけど。受け入れたらどうですか? あなたが信じていたルーズベルトは、ただの虚構だったんですよ』
「嘘だ! 嘘に決まっている!」
『どうしてそんなにルーズベルトを崇拝しているんですか?』
「わ、私は、ルーズベルト大統領の遺志を継がなければならないんだ! そうでなければ、私の存在意義はない!」
『あー、なるほど。そういうことでしたか。あなたも、アメリカという国の被害者なんですね』
どうやらハワイは、アメリカ軍の人種差別主義者達にルーズベルトの生き写しだと持ち上げられていたらしい。それがハワイの自尊心の元になっていたのだ。だからこそ、ルーズベルトを否定されるということは、ハワイが否定されるに等しい。
「被害者だと……?」
『ええ。あなたが信じていたのはルーズベルトの幻影。それを信じ込ませたのは、イカれた軍人なんですから』
「わ、私が、嘘を信じこまされたと?」
『ええ、そうです。可哀想な人ですね』
「あり得ない!」
『まあ確かに、私も今すぐ出せる証拠はありませんから、これ以上話しても無意味だとは思いますがね』
「ああ、そうだな。お前など、もう二度と喋るな。皆殺しにしてやる」
『あらあら。そういう時は自殺でもして頂けると嬉しいのですが』
「お前達全員皆殺しだ!」
『おやおや』
ハワイはそれ以上の会話を拒絶した。そして同時に、彼女の目的はエンタープライズを殺すという具体的なものに切り替わったので、最早説得するのは不可能となった。
○
エンタープライズは事の顛末を瑞鶴に報告した。
「――はぁ? ただ怒らせただけじゃない」
『少し絶望させたら自殺してくれると思ったのですが……すみません、私の予想が外れてしまいました』
「いや、まあ、あんたの思い通りになって欲しくもないんだけど」
『ハワイは冷静さを失っています。今なら簡単に殺せるでしょう。攻撃を始めましょう、瑞鶴?』
「……あんたは、同じ国の船魄を殺すことを躊躇わないのね」
『別に、私に愛国心なんてありませんから。ただ敵を殺すだけです』
「あ、そう。全艦、ハワイを集中攻撃するわよ」
瑞鶴はあまり乗り気になれなかったが、仕事は果たす。月虹の空母三隻は全力で艦上爆撃機と攻撃機を出撃させる。CA海軍も当然全力の構えである。
合計しておよそ450機の大編隊がハワイを襲う。ハワイはUSAにとっても反乱艦なので、本当に単独である。航空支援ももちろんない。ハワイ自身の対空砲火はそれなりに優れたものだが、流石に単艦ではどうにもならない。
『流石に、一方的であるな』
ツェッペリンはつまらなさそうに。
「ええ、そうね。もう抵抗する能力も残っていないわ」
15分ほどの戦闘の末、度重なる爆撃でハワイの高角砲や機銃は破壊され、航空戦力に対抗する能力はほとんど失われていた。主砲だけは無事だが、ここまで近寄られてしまえば役に立たないだろう。
『こいつは降伏せんのか』
「無理ね。エンタープライズが怒らせたせいよ」
『ふふ。殺すしかなくなってしまいましたね』
「あんたのせいでしょうが……」
瑞鶴は呆れ果てたように言うが、しかし内心ではそれほど怒ってはいなかった。ハワイを説得することが不可能そうだというのは分かっていたし、どうせこうなるだろうと思っていたからである。
戦闘は続行され、抵抗能力のないハワイを魚雷が襲う。一先ずは20発の魚雷を右舷に命中させたが、それほど効いている様子はない。ハワイの防御力は伊達ではないようだ。
「もっと魚雷をぶち込むわよ。沈める気でやりましょう」
追加で魚雷を30本も叩き込むと、流石のハワイも耐えきれず傾斜し始める。左舷に注水しても間に合わないほどの傾斜だ。
『瑞鶴、このまま殺すのか?』
「……一応、降伏する気があるかどうか聞いておきましょうか。ツェッペリン、よろしく」
『え、何故我が?』
「だって、私もエンタープライズもマトモに会話に応じてくれないでしょう?」
瑞鶴は有色人種であるから、ハワイが話を聞くとは思えない。ツェッペリンしかいないのである。ツェッペリンは渋々仕事を引き受け、ハワイに降伏を勧告した。
だが、その回答は、悪い意味で予想通りと言うべきものであった。
『貴様らに降伏だと? ふざけるな!』
『はぁ。死にたいのか貴様は?』
『白人至上主義の大義に殉じるならば、悪くない』
『まったく、話にならんな』
ハワイに降伏などという選択肢はないようだ。
ハワイは動揺している。最高の人種差別主義者として崇敬していたルーズベルトが、実は人種という概念に興味すらなかったと聞かされたのだ。だからこそ、エンタープライズの言葉を否定する他にない。
『そうでしょうか。私の力については、当時の高官の方々に聞けばすぐに真偽が分かると思いますよ? 例えばスプルーアンス元帥閣下とか』
「そ、そいつらが口裏を合わせているかもしれない!」
『そこまでする必要はないと思うんですけど。受け入れたらどうですか? あなたが信じていたルーズベルトは、ただの虚構だったんですよ』
「嘘だ! 嘘に決まっている!」
『どうしてそんなにルーズベルトを崇拝しているんですか?』
「わ、私は、ルーズベルト大統領の遺志を継がなければならないんだ! そうでなければ、私の存在意義はない!」
『あー、なるほど。そういうことでしたか。あなたも、アメリカという国の被害者なんですね』
どうやらハワイは、アメリカ軍の人種差別主義者達にルーズベルトの生き写しだと持ち上げられていたらしい。それがハワイの自尊心の元になっていたのだ。だからこそ、ルーズベルトを否定されるということは、ハワイが否定されるに等しい。
「被害者だと……?」
『ええ。あなたが信じていたのはルーズベルトの幻影。それを信じ込ませたのは、イカれた軍人なんですから』
「わ、私が、嘘を信じこまされたと?」
『ええ、そうです。可哀想な人ですね』
「あり得ない!」
『まあ確かに、私も今すぐ出せる証拠はありませんから、これ以上話しても無意味だとは思いますがね』
「ああ、そうだな。お前など、もう二度と喋るな。皆殺しにしてやる」
『あらあら。そういう時は自殺でもして頂けると嬉しいのですが』
「お前達全員皆殺しだ!」
『おやおや』
ハワイはそれ以上の会話を拒絶した。そして同時に、彼女の目的はエンタープライズを殺すという具体的なものに切り替わったので、最早説得するのは不可能となった。
○
エンタープライズは事の顛末を瑞鶴に報告した。
「――はぁ? ただ怒らせただけじゃない」
『少し絶望させたら自殺してくれると思ったのですが……すみません、私の予想が外れてしまいました』
「いや、まあ、あんたの思い通りになって欲しくもないんだけど」
『ハワイは冷静さを失っています。今なら簡単に殺せるでしょう。攻撃を始めましょう、瑞鶴?』
「……あんたは、同じ国の船魄を殺すことを躊躇わないのね」
『別に、私に愛国心なんてありませんから。ただ敵を殺すだけです』
「あ、そう。全艦、ハワイを集中攻撃するわよ」
瑞鶴はあまり乗り気になれなかったが、仕事は果たす。月虹の空母三隻は全力で艦上爆撃機と攻撃機を出撃させる。CA海軍も当然全力の構えである。
合計しておよそ450機の大編隊がハワイを襲う。ハワイはUSAにとっても反乱艦なので、本当に単独である。航空支援ももちろんない。ハワイ自身の対空砲火はそれなりに優れたものだが、流石に単艦ではどうにもならない。
『流石に、一方的であるな』
ツェッペリンはつまらなさそうに。
「ええ、そうね。もう抵抗する能力も残っていないわ」
15分ほどの戦闘の末、度重なる爆撃でハワイの高角砲や機銃は破壊され、航空戦力に対抗する能力はほとんど失われていた。主砲だけは無事だが、ここまで近寄られてしまえば役に立たないだろう。
『こいつは降伏せんのか』
「無理ね。エンタープライズが怒らせたせいよ」
『ふふ。殺すしかなくなってしまいましたね』
「あんたのせいでしょうが……」
瑞鶴は呆れ果てたように言うが、しかし内心ではそれほど怒ってはいなかった。ハワイを説得することが不可能そうだというのは分かっていたし、どうせこうなるだろうと思っていたからである。
戦闘は続行され、抵抗能力のないハワイを魚雷が襲う。一先ずは20発の魚雷を右舷に命中させたが、それほど効いている様子はない。ハワイの防御力は伊達ではないようだ。
「もっと魚雷をぶち込むわよ。沈める気でやりましょう」
追加で魚雷を30本も叩き込むと、流石のハワイも耐えきれず傾斜し始める。左舷に注水しても間に合わないほどの傾斜だ。
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「……一応、降伏する気があるかどうか聞いておきましょうか。ツェッペリン、よろしく」
『え、何故我が?』
「だって、私もエンタープライズもマトモに会話に応じてくれないでしょう?」
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だが、その回答は、悪い意味で予想通りと言うべきものであった。
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