完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部

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オーガ

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「それじゃあ、案内してくれるかい!」

 グラシアスが促すと、ノルドは少し緊張した面持ちで答えた。

「はい。着替えてまいりますので、少々お待ちください」

 そう言うと、ノルドは自室へと姿を消した。

「分かった」

 グラシアスは短く応じると、空間魔法で武器を取り出した。

 彼の空間には多くのものは入っておらず、貴重品だけが収められている。彼の空間は、それほど大きくないからだ。

 その手に握られていたのは、彼の穏やかな雰囲気に似合わない、無骨な剣だった。

 盗賊に襲われた時に活躍する、長く愛用している丈夫な剣である。

 やがて、ノルドが戻ってきた。さっきまでの白衣から一転し、冒険者らしい装いに身を包んでいる。

「お待たせしました」

「ほう、似合っているじゃないか。セラ様の手作りかい?」

 グラシアスはノルドの服装が頑丈に作られていることに気づいた。

 腰回りにはナイフやダーツが備えられ、ポケットからは小さな瓶がちらりと見え隠れしている。

「はい。母さんが、森に行く時は必ず着なさいって言ってました」ノルドは照れくさそうに赤面し、下を向いた。

「ははは、羨ましいよ!」グラシアスは思わず笑いながら、商人らしく「誰に売れるかな?この服装はいくらで売れるかな?」と考えてしまった。

 しかし、すぐに気持ちを切り替えて行動を開始する。

「では、行こうか!」とヴァルが先頭に立ち、一行は森へと足を踏み入れた。

 小狼は元気よく跳ねながら、森の奥へと進んでいく。

「どちらへ向かいましょうか?」とノルドが少し困ったように尋ねると、グラシアスは少し考えて、「そうだな、ノルド君は普段、森で何をしているんだい?」と問いかけた。

「そうですね。薬草を集めたり、魔物を狩ったりしています」

「それなら、僕も手伝わせてもらうよ!」

「わかりました」

 一行は森の途中にある小屋に立ち寄り、罠を運び出す。

「へえ、面白いな。こんな罠があるのか!」

 グラシアスは興味津々で、罠を担いで運ぶことにした。

 ノルドは次々に罠を仕掛けていく。

「どうして、この場所に仕掛けるのだ?」

「ここが通り道だからですよ。あ?なんだ、オークじゃないのか」

 ノルドが何かに気づいたように足を止めた。

 グラシアスはノルドの表情に気づき、周囲の様子をうかがったが、特に異変は感じられなかった。

 しかし、索敵魔法を発動すると、何者かがこちらに向かってくる反応が映し出された。

「来ます。オーガです。数匹いるようです」

「おう、任せておけ!」グラシアスは自信たっぷりに剣を抜いた。

 オーガたちは隠れることもなく、周囲の草木を薙ぎ倒しながら堂々とこちらへ迫ってくる。

 その姿が見えてくると、敵の視線が自分たちに集まっているのがわかった。

 こちらはたった2人と1匹。それに、1人と1匹はどう見ても子供だ。

 ノルドは、手袋をはめると腰のポケットから丸玉を取り出し、オーガ達に向かって投げた。

 シューッ…パシャッ、バシャッ。見下して、避けようともしないオーガ達の顔や体に玉が次々と直撃する。

 玉は弾け、中の薬が撒き散らされる。催涙玉だ。オーガ達は敵を前にしながらも、思わず目をこすり、痒みでしゃがみ込んでしまった。

「どうだい?効果抜群だろう?」ノルドがヴァルに向けて得意げに話すと、ヴァルは酷く嫌な顔をして顔を背けた。

 催涙玉の開発で嫌というほど味わった経験があるからだ。

「おいおい、坊主、余裕だな。行くぞ!」

 グラシアスは普段とは違う機敏な動作で一匹のオーガに近づいていく。

「はい」ここでオーガ達が逃げてくれれば無駄な殺生は避けられるのだが、敵はまだ戦意は失っていない。

 ノルドは腰からダーツを取り出しひゅっと投げる。指に挟まれた3本のダーツが、オーガの足にすぱっ、すぱっと刺さる。

 一匹、もう一匹と次々に刺された箇所が変色し、オーガの顔には苦悶の表情が浮かぶ。

「どうだい?煮詰めた魔蜘蛛の毒は?」

 オーガ達がダーツを引き抜こうとすると、簡単にすぽっと抜けたが、先端の針の部分だけは体に残ったままだ。

「わざと簡単に取れるようにしてるんだ。取ろうとする力で、針先から体に毒が流れる仕掛けさ。あ、針には返しがついてるからね!」

 ノルドのダーツは、彼の手で改造され、非道な武器へと変化していた。

 ヴァルは露骨に嫌な顔をしている。

 小狼は青ざめているオーガ達の死角に回り、爪で傷をつけながら、どんどんと体力を奪っていく。

 ノルドは冷静にオーガ達の様子を伺い、ダガーナイフを手に取った。オーガは食糧にも金にもならず、皮膚も思ったより硬くない。

「これでどうだ!トドメだ!」ノルドが持つ軽く輝くダガーナイフを連続して投げる。

 ナイフは狙い通りオーガの体に当たるが、簡単に貫通してしまう。

「しまった。ヴァル!」

 セラからダガーナイフは消耗品だと言われ、プレゼントされたものだが、ノルドにとっては大切な宝物だ。

 彼は知らなかったが、そのダガーナイフはミスリル製で、1本数百ゴールドの高価な品だったのだ。

 ヴァルはナイフの持ち手を咥えて回収し、ノルドの元に運んだ。

「ありがとう!」ノルドは手袋を外し、満面の笑みでヴァルを撫でた。

 オーガの3体の死体が目の前に横たわっている。

 グラシアスはまだその群れのボスと斬り合いを続けていた。

 最初こそ余裕でノルドを横目で見る余裕があったが、途中からオーガの様子が変わり、力や速さが最初の倍近くになり、防戦一方に追い込まれている。

 オーガの目が赤く光り、何らかのスキルを発動しているようだ。ニヤリと笑い、戦いを楽しむ表情をしている。

「それじゃ、こっちも本気で行こうか!」

 グラシアスはスキルを発動し、剣を振りかざす。剣に魔力が通されたのがわかる。

「剣技!」「剣技!」「剣技!」

 やがてオーガの持つ棍棒が折れ、勝負がついた。

 逃げ出そうとしたオーガは、ノルドのダガーナイフに刺され、ばたりと顔から地面に崩れ落ちた。

「はぁはぁ」グラシアスは肩で息を整え、ノルドを見た。彼は何事もなかったかのように投げた武器を回収している。

「恐るべき子供だ」グラシアスは剣を綺麗に拭き、空間にしまった。



「はーい、お疲れ様!ご飯できたよ!」リコの声が森に響き、隣にはセラの姿があった。

【後がき】

 お時間を頂き、読んで頂き有難うございます。♡等で応援頂きますと、今後も励みになります。又、ご感想やレビュー等も一行でも頂けますと、飛び上がって喜びます。 引き続きよろしくお願いします!  織部
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