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1章 異世界で生活を始める
5話 冒険者ギルドに連行される男
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こんにちは、今回のシーナの扉は冒険者ギルドの扉になります。
扉を開いた先は真っ白な雪国……では勿論なく、とあるヤ○ザの事務所でした。
それでは、また来週っ!
完
冒険者ギルドの扉を開いて顔だけ覗かせて、扉が開くのに反応した紳士なおじ様達にニッコリと笑みを返し身を引いて静かに閉める。
ムリィ、ムリムリムリだから!!
こんな中に入って行ったらタマ取られるって!!
勿論、キャン玉じゃなくて命(タマ)の方が!!
オッサンが言ってた妖精がどうこう以前にヤバいのがいるからぁ!!
扉に手を置いて悩む事3秒、腹が決まる。
「よし、仕事の選択肢は他にもある」
うん、それがいい!
そう決まると早速とばかりに踵を返すと背後に扉が開き、舌舐めずりしているモヒカン頭の痩せ気味の男が顔を出して振り返った俺と目がバッチリと合う。
あ、あかん、暗殺拳法使いに指先で真っ先に殺されそうなヤツとエンカウントっっ!
顔から色んな物が噴き出しそうだぁ!
そんな俺に酒瓶片手で近寄ってきたモヒカンが肩に腕をまわしてくる。
「ヒャッハァ! テメェ、今、覗いてただろっ!?」
「うぇ? さあ、ボクは知らないです……」
ヒャッハァってマジで言いやがったぞ!
おでこをぶつけるようにして目を覗きこんでくるモヒカン、もろにヤンキーやん!
酒臭い息を肌で感じて泣きたくなってる俺にモヒカンが言う。
「訳がわからねぇー、話は事務所(ギルド)で聞くから入れや」
肩に腕を回されていて逃げれない俺は泣く泣く、回避したはずの冒険者ギルドの中に入店させられる。
うっうぅ、明日の早朝に冷たくなった俺が路地裏に……笑えねぇぇ!
気分はドナドナな感じでカウンターがある方向に連れて行かれる最中に熊のような大男が声をかけてくる。
あっ、良く見たら頭頂部に丸っこい耳がある熊の獣人ぽい。
「おう、モヒン、その小僧は何だ?」
「あっ、パイセン! それがクチャクチャと分からねぇ事言ってて、とりま、中に入れって感じっす」
モヒンってあんまりな名前……って笑ってる場合じゃない。
そんな事を考えてるのが漏れてるとは思えないが2人がジロっと睨んできてモヒカン、モヒンが威嚇するように聞いてくる。
「テメェはここにシノギしにきたのか、それともオキャクサマかぁ!」
この人、仕事をシノギって言っちゃってるぅぅ!!
どう言えば安全に回避出来る、と必死に頭を捻るがジリジリと迫るようにやってくるムサイ顔に負けて素直に答える事にする。
「ここでお仕事出来たらなぁ~ってちょっとおも……」
「おおっ!」
俺の言葉を遮ってモヒンが驚いた顔をするのを見てビクッと俺も驚く。驚いた俺を見た熊は口の端を上げて歯を見せて笑う。
そして、俺に背を向けると大声で叫ぶ。
「おい、テメェ等、新人が仲間入りしたぞ! よろしくしてやれや!」
「「「オウッ!」」」
飯食ってた奴等も完全に出来上がってる奴等も嬉しそうに叫んで乾杯するようにカップを持ち上げて騒ぐ。
野郎ばかりかと思えば、奥の方には女の子もいて歓迎するように拍手してくれているのが見える。
正直、照れ臭いし、嬉しい。ここ、見た目に反していいとこかも?
色々戸惑っている俺の横で下手すると俺より嬉しそうなモヒンが熊に興奮気味に話しかける。
「パイセン、俺についにコーハイが出来たっす!」
「おう、良かったな、ちゃんとお前が面倒を見てやるんだぜ?」
ウッス! と嬉しそうなモヒンから俺に視線を向ける熊が俺の肩に手を置く。
「俺の名はベア。一応、ここの筆頭冒険者のBランクだ」
「自己紹介が遅れました。シーナって言います、よろしくお願いします」
なんて残酷な名前だ、と思ったが多少気にしていたとしても今更だと思っているのかベアは気負いなく名を名乗っているので俺も顔に出さないように思い留まる。
しかし、Bランクってなんだろう? と思って聞くとモヒンが「登録の時に説明されっから」と言って俺の襟首を掴んで引きずる。
引きずられてたたら踏みつつ、連れて行かれながら落ち着いた状態で周りを見渡す。
外から見た時は役場のように見えたが中は俺が想像してたような酒場風で引きずられていく先にはバーのカウンターのような場所で事務処理をしてる受付嬢らしき姿があった。
そして、連れて行かれた俺は冒険者になるべくの手続きを始めた。
小一時間で手続きや説明が終わった。
先程言ってたランクはFから始まってAまであるそうだ。それが何かというとギルドにどれだけ功績があるかという目安であり、それだけの事を成す強さがあると判断される指針だそうだ。
そう考えたらBランクのベアは凄い事が分かる。
余談で名誉職みたいな感じでSランクというのがあるらしいが今はいないらしい。でもまあ、なんでAの上がSなんだろうな?
後、依頼を受ける条件や禁則事項などをほとんどをモヒンが説明してくれた。
受付嬢が説明する前に嬉しそうアレコレと言ってくる。相当、後輩が出来たのが嬉しいらしい。
受付嬢も苦笑しており、間違ってないと追従するぐらいでお話もしてない。
モヒンには悪いが俺も出来れば可愛い受付嬢との会話を楽しみたかったのでもう少し控えて欲しかったが何となく憎めないモヒンと知り合えたのは良かった。
一通り説明が終わったカウンターでモヒンに聞かれる。
「おう、コーハイ、どこの宿で泊ってる?」
「あっ、まだ決まってないんですよ。どこかいいとこありませんか、先輩」
俺が先輩と言うと嬉しそうに鼻を少しヒクヒクさせて得意そうに口を開く。
「安いとこなんだろうが、コーハイは気が抜けてそうだし、少し良いとこ泊った方がいいな。一泊、銅貨10枚イケるか?」
「えっと、銅貨10枚と言う事は10日で……」
計算が出来ない素振りを見せる。勿論、計算は出来るがまだ貨幣価値が分からないのでモヒンに教えて貰えたらという打算だ。
また嬉しそうに「銀貨1枚だろうが?」と得意げに言ってくる。どうやら100枚で次の貨幣になるらしく、調子に乗ってるモヒンにそれとなく貨幣の種類を聞き出すと鉄貨、銅貨、銀貨、金貨という種類があるようだ。
ついでに食べ物などから考えると自分の価値基準から考えると相場は1/3ぐらいの感覚のようだ。
例えばだが、100円ぐらいのパンであれば30円。ここでは鉄貨30枚らしい。
そう言う意味では銅貨10枚は3000円相当。地方の安い宿ならなくはない金額である。
ついでに安い武器防具を取り扱ってる場所などを聞き出していると後ろから俺の肩を掴んで押し退けられる。
不意を突かれたのでバランスを崩して尻モチを着いた俺が見上げた先には金髪の中途半端に男前という何となく残念な感じの男と妖艶な魔女といった装いの魔法使いらしい長くウェブのかかった茶髪の女がいた。
どうやら俺は金髪の男に押し退けられたらしい。
ビックリして反応が遅れたがこんな事される謂れはないと怒鳴ろうとしたが金髪の男と俺の間にモヒンが割って入る。
「ああん? サンセェよぉ、何、俺のコーハイちゃんに上等かましてくれてんだ!?」
「はっ、邪魔だったからだ。俺はお前の先輩なんだぜ、言葉使いを気を付けろよ?」
「テメェをパイセンと思った事、秒もねぇーよ!」
わざわざ顔をしたから見上げるようにしてガンを飛ばすモヒンを相手にしてられないとばかりに肩を竦めてスカしてくる金髪の男、サンセェの胸倉をモヒンが掴むのに合わせたかのようにギルド内にいる男達がガタっと椅子から立ち上がる。
完全に四面楚歌の状態に追い込まれたサンセェが舌打ちして降参と言うにはふざけた態度ではあったが両手を軽く上げる。
「そんなにイキリ立つなよ。悪かった、これでいいかよ」
「舐めんなよ、テメェ!」
掴んだ胸倉を持ち上げようとしたモヒン、いや、その場にいる者達に聞こえる声音で黙っていた妖艶な女が言う。
「いい加減、サンセェに難癖付けるの止めてくれない?」
ホクロのある口許に指を当てて妖艶な笑みを浮かべるが俺にもはっきりと分かった。
この女、男を馬鹿にして下に見てる。
それに対してモヒンがキレるかと思っていたらバツ悪そうに目を逸らす。同時に立ち上がった男達も苦虫を噛んだような顔をしていた。
何? この女、そんなに強いの?
事態を静観していると妖艶な女が髪を掻き上げながら言ってくる。
「サンセェと違って粗ちんだからって僻まないでよ? 大抵のギルドの男と寝てサンセェを選んだからってヤツ当たりよね?」
はっ? 何それ?
周りを見ると悔しそうにしてるがこの女が言うような理由で悔しがってるようには見えない。おそらく、そう言われてる状態で実力行使をしたら認めたみたいになるのが悔しいのだろう。
簡単に言うとデカチンでビッチに選ばれて男として一つ抜けた存在と調子に乗ってるカップルという事か……
確かに美人だし、巨乳だ。しかもスリットから見える足も綺麗と言える。
まあ、男だったら一度は誘うだろうし、誘われたら断らないだろう。
そして、女がビッチだったら全員と関係を持つのは簡単だったというのが現状のようだ。
離れた所にいる女の子達がビッチを見る目が汚いモノを見るようにしてる。男達にはそんな感じで見てない辺りは既に相互で解決済みなんだろうな。
そのビッチが俺に近づいてくる。
「まあ、貴方のは知らないけど……試す価値なさそうね?」
「有る訳ないだろ? 俺に勝てると思ったのかよ?」
笑い合う馬鹿達を見て心で嘆息する。
別に俺は処女厨って訳じゃないけどビッチはお断りだ。まあ、裸を見たいかと言われたらこれだけの美人だから素直に見たいが肉体関係はこちらから遠慮させて貰いたい。
サンセェにしな垂れかかるビッチは俺への興味がなくなったとばかりにさっさとカウンターで依頼完了させて報酬を受け取るとさっさとこの場を後にした。
去ったのを見送った俺が立ち上がると打ちひしがれた様子のモヒンが視線を逸らしながら言ってくる。
「すまねぇ、コーハイ。格好悪いところ見せちまった」
「しょうがないですよ、見てくれは間違いなく良いですから内面を知る前なら男だったらね……?」
俺がニッコリとそう言うと感激したとばかりに身を震わせるモヒンがガシと抱き締めてくる。
「コーハイ、オメェ、イイ奴だなっ!」
周りを見ると他の面子も嬉しそうに良い笑顔をしてるのが分かる。
離れた所にいる女の子の集団から声が上がる。
「新人君はあんなのにひっかかちゃ駄目だからね?」
「はぁーい!」
俺は元気良く声を張るとその場にいる者達から喝采が起きる。
それに手を振っていると受付嬢が声をかけてくれる。
「宿を取るつもりだったらゆっくりしてたら間に合わなくなるかもしれませんよ?」
「あっ、有難うございます。じゃ、先輩、今日は宿を取ってゆっくり休みますので明日からよろしくお願いします!」
「おうっ!」
嬉しそうに笑うモヒンに頷き返し、ギルドの中に人達に送られて俺は冒険者ギルドを後にした。
扉を開いた先は真っ白な雪国……では勿論なく、とあるヤ○ザの事務所でした。
それでは、また来週っ!
完
冒険者ギルドの扉を開いて顔だけ覗かせて、扉が開くのに反応した紳士なおじ様達にニッコリと笑みを返し身を引いて静かに閉める。
ムリィ、ムリムリムリだから!!
こんな中に入って行ったらタマ取られるって!!
勿論、キャン玉じゃなくて命(タマ)の方が!!
オッサンが言ってた妖精がどうこう以前にヤバいのがいるからぁ!!
扉に手を置いて悩む事3秒、腹が決まる。
「よし、仕事の選択肢は他にもある」
うん、それがいい!
そう決まると早速とばかりに踵を返すと背後に扉が開き、舌舐めずりしているモヒカン頭の痩せ気味の男が顔を出して振り返った俺と目がバッチリと合う。
あ、あかん、暗殺拳法使いに指先で真っ先に殺されそうなヤツとエンカウントっっ!
顔から色んな物が噴き出しそうだぁ!
そんな俺に酒瓶片手で近寄ってきたモヒカンが肩に腕をまわしてくる。
「ヒャッハァ! テメェ、今、覗いてただろっ!?」
「うぇ? さあ、ボクは知らないです……」
ヒャッハァってマジで言いやがったぞ!
おでこをぶつけるようにして目を覗きこんでくるモヒカン、もろにヤンキーやん!
酒臭い息を肌で感じて泣きたくなってる俺にモヒカンが言う。
「訳がわからねぇー、話は事務所(ギルド)で聞くから入れや」
肩に腕を回されていて逃げれない俺は泣く泣く、回避したはずの冒険者ギルドの中に入店させられる。
うっうぅ、明日の早朝に冷たくなった俺が路地裏に……笑えねぇぇ!
気分はドナドナな感じでカウンターがある方向に連れて行かれる最中に熊のような大男が声をかけてくる。
あっ、良く見たら頭頂部に丸っこい耳がある熊の獣人ぽい。
「おう、モヒン、その小僧は何だ?」
「あっ、パイセン! それがクチャクチャと分からねぇ事言ってて、とりま、中に入れって感じっす」
モヒンってあんまりな名前……って笑ってる場合じゃない。
そんな事を考えてるのが漏れてるとは思えないが2人がジロっと睨んできてモヒカン、モヒンが威嚇するように聞いてくる。
「テメェはここにシノギしにきたのか、それともオキャクサマかぁ!」
この人、仕事をシノギって言っちゃってるぅぅ!!
どう言えば安全に回避出来る、と必死に頭を捻るがジリジリと迫るようにやってくるムサイ顔に負けて素直に答える事にする。
「ここでお仕事出来たらなぁ~ってちょっとおも……」
「おおっ!」
俺の言葉を遮ってモヒンが驚いた顔をするのを見てビクッと俺も驚く。驚いた俺を見た熊は口の端を上げて歯を見せて笑う。
そして、俺に背を向けると大声で叫ぶ。
「おい、テメェ等、新人が仲間入りしたぞ! よろしくしてやれや!」
「「「オウッ!」」」
飯食ってた奴等も完全に出来上がってる奴等も嬉しそうに叫んで乾杯するようにカップを持ち上げて騒ぐ。
野郎ばかりかと思えば、奥の方には女の子もいて歓迎するように拍手してくれているのが見える。
正直、照れ臭いし、嬉しい。ここ、見た目に反していいとこかも?
色々戸惑っている俺の横で下手すると俺より嬉しそうなモヒンが熊に興奮気味に話しかける。
「パイセン、俺についにコーハイが出来たっす!」
「おう、良かったな、ちゃんとお前が面倒を見てやるんだぜ?」
ウッス! と嬉しそうなモヒンから俺に視線を向ける熊が俺の肩に手を置く。
「俺の名はベア。一応、ここの筆頭冒険者のBランクだ」
「自己紹介が遅れました。シーナって言います、よろしくお願いします」
なんて残酷な名前だ、と思ったが多少気にしていたとしても今更だと思っているのかベアは気負いなく名を名乗っているので俺も顔に出さないように思い留まる。
しかし、Bランクってなんだろう? と思って聞くとモヒンが「登録の時に説明されっから」と言って俺の襟首を掴んで引きずる。
引きずられてたたら踏みつつ、連れて行かれながら落ち着いた状態で周りを見渡す。
外から見た時は役場のように見えたが中は俺が想像してたような酒場風で引きずられていく先にはバーのカウンターのような場所で事務処理をしてる受付嬢らしき姿があった。
そして、連れて行かれた俺は冒険者になるべくの手続きを始めた。
小一時間で手続きや説明が終わった。
先程言ってたランクはFから始まってAまであるそうだ。それが何かというとギルドにどれだけ功績があるかという目安であり、それだけの事を成す強さがあると判断される指針だそうだ。
そう考えたらBランクのベアは凄い事が分かる。
余談で名誉職みたいな感じでSランクというのがあるらしいが今はいないらしい。でもまあ、なんでAの上がSなんだろうな?
後、依頼を受ける条件や禁則事項などをほとんどをモヒンが説明してくれた。
受付嬢が説明する前に嬉しそうアレコレと言ってくる。相当、後輩が出来たのが嬉しいらしい。
受付嬢も苦笑しており、間違ってないと追従するぐらいでお話もしてない。
モヒンには悪いが俺も出来れば可愛い受付嬢との会話を楽しみたかったのでもう少し控えて欲しかったが何となく憎めないモヒンと知り合えたのは良かった。
一通り説明が終わったカウンターでモヒンに聞かれる。
「おう、コーハイ、どこの宿で泊ってる?」
「あっ、まだ決まってないんですよ。どこかいいとこありませんか、先輩」
俺が先輩と言うと嬉しそうに鼻を少しヒクヒクさせて得意そうに口を開く。
「安いとこなんだろうが、コーハイは気が抜けてそうだし、少し良いとこ泊った方がいいな。一泊、銅貨10枚イケるか?」
「えっと、銅貨10枚と言う事は10日で……」
計算が出来ない素振りを見せる。勿論、計算は出来るがまだ貨幣価値が分からないのでモヒンに教えて貰えたらという打算だ。
また嬉しそうに「銀貨1枚だろうが?」と得意げに言ってくる。どうやら100枚で次の貨幣になるらしく、調子に乗ってるモヒンにそれとなく貨幣の種類を聞き出すと鉄貨、銅貨、銀貨、金貨という種類があるようだ。
ついでに食べ物などから考えると自分の価値基準から考えると相場は1/3ぐらいの感覚のようだ。
例えばだが、100円ぐらいのパンであれば30円。ここでは鉄貨30枚らしい。
そう言う意味では銅貨10枚は3000円相当。地方の安い宿ならなくはない金額である。
ついでに安い武器防具を取り扱ってる場所などを聞き出していると後ろから俺の肩を掴んで押し退けられる。
不意を突かれたのでバランスを崩して尻モチを着いた俺が見上げた先には金髪の中途半端に男前という何となく残念な感じの男と妖艶な魔女といった装いの魔法使いらしい長くウェブのかかった茶髪の女がいた。
どうやら俺は金髪の男に押し退けられたらしい。
ビックリして反応が遅れたがこんな事される謂れはないと怒鳴ろうとしたが金髪の男と俺の間にモヒンが割って入る。
「ああん? サンセェよぉ、何、俺のコーハイちゃんに上等かましてくれてんだ!?」
「はっ、邪魔だったからだ。俺はお前の先輩なんだぜ、言葉使いを気を付けろよ?」
「テメェをパイセンと思った事、秒もねぇーよ!」
わざわざ顔をしたから見上げるようにしてガンを飛ばすモヒンを相手にしてられないとばかりに肩を竦めてスカしてくる金髪の男、サンセェの胸倉をモヒンが掴むのに合わせたかのようにギルド内にいる男達がガタっと椅子から立ち上がる。
完全に四面楚歌の状態に追い込まれたサンセェが舌打ちして降参と言うにはふざけた態度ではあったが両手を軽く上げる。
「そんなにイキリ立つなよ。悪かった、これでいいかよ」
「舐めんなよ、テメェ!」
掴んだ胸倉を持ち上げようとしたモヒン、いや、その場にいる者達に聞こえる声音で黙っていた妖艶な女が言う。
「いい加減、サンセェに難癖付けるの止めてくれない?」
ホクロのある口許に指を当てて妖艶な笑みを浮かべるが俺にもはっきりと分かった。
この女、男を馬鹿にして下に見てる。
それに対してモヒンがキレるかと思っていたらバツ悪そうに目を逸らす。同時に立ち上がった男達も苦虫を噛んだような顔をしていた。
何? この女、そんなに強いの?
事態を静観していると妖艶な女が髪を掻き上げながら言ってくる。
「サンセェと違って粗ちんだからって僻まないでよ? 大抵のギルドの男と寝てサンセェを選んだからってヤツ当たりよね?」
はっ? 何それ?
周りを見ると悔しそうにしてるがこの女が言うような理由で悔しがってるようには見えない。おそらく、そう言われてる状態で実力行使をしたら認めたみたいになるのが悔しいのだろう。
簡単に言うとデカチンでビッチに選ばれて男として一つ抜けた存在と調子に乗ってるカップルという事か……
確かに美人だし、巨乳だ。しかもスリットから見える足も綺麗と言える。
まあ、男だったら一度は誘うだろうし、誘われたら断らないだろう。
そして、女がビッチだったら全員と関係を持つのは簡単だったというのが現状のようだ。
離れた所にいる女の子達がビッチを見る目が汚いモノを見るようにしてる。男達にはそんな感じで見てない辺りは既に相互で解決済みなんだろうな。
そのビッチが俺に近づいてくる。
「まあ、貴方のは知らないけど……試す価値なさそうね?」
「有る訳ないだろ? 俺に勝てると思ったのかよ?」
笑い合う馬鹿達を見て心で嘆息する。
別に俺は処女厨って訳じゃないけどビッチはお断りだ。まあ、裸を見たいかと言われたらこれだけの美人だから素直に見たいが肉体関係はこちらから遠慮させて貰いたい。
サンセェにしな垂れかかるビッチは俺への興味がなくなったとばかりにさっさとカウンターで依頼完了させて報酬を受け取るとさっさとこの場を後にした。
去ったのを見送った俺が立ち上がると打ちひしがれた様子のモヒンが視線を逸らしながら言ってくる。
「すまねぇ、コーハイ。格好悪いところ見せちまった」
「しょうがないですよ、見てくれは間違いなく良いですから内面を知る前なら男だったらね……?」
俺がニッコリとそう言うと感激したとばかりに身を震わせるモヒンがガシと抱き締めてくる。
「コーハイ、オメェ、イイ奴だなっ!」
周りを見ると他の面子も嬉しそうに良い笑顔をしてるのが分かる。
離れた所にいる女の子の集団から声が上がる。
「新人君はあんなのにひっかかちゃ駄目だからね?」
「はぁーい!」
俺は元気良く声を張るとその場にいる者達から喝采が起きる。
それに手を振っていると受付嬢が声をかけてくれる。
「宿を取るつもりだったらゆっくりしてたら間に合わなくなるかもしれませんよ?」
「あっ、有難うございます。じゃ、先輩、今日は宿を取ってゆっくり休みますので明日からよろしくお願いします!」
「おうっ!」
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