ステータス表記を変えて貰ったら初期設定に戻ってたー女神公認のハーレム漫遊記ー

ささやん

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2章 危険を冒す者である事を知る

23話 男は幸せになろうよ、と言った

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 目を覚ますと俺を覗き込むパメラの顔があった。

 俺が目を覚ました事を知ると一瞬、嬉しそうにするがすぐに泣きそうな顔に変わる。

 そんなパメラの頬に手を添えるとその上から手を添えられる。

「心配かけたみたいだな」
「心配した。ティテールを一旦、ここに連れて来て、寝かせてすぐ戻ったらゴブリン神の傍で倒れてるシーナを発見……発見した時、私は……」

 目を瞑り、後頭部の柔らかさから俺は膝枕をされているらしい。こうしてずっと看病してくれてたんだろう。

 本当にパメラには悪い事をした。

 手を添えられてない空いてる手をパメラの後頭部に当てて引き寄せると優しいキスをする。

「本当にすまない」
「ん、いい。無事なら」

 涙目だったパメラが柔らかく笑ってくれるのを見て、頑張って良かったと思う。

 もう1人の嫁のターニャはどうなったか、気になった俺は探査を使う。

 探査結果でターニャの反応は無事にあり、みんなと一緒に集落を調査をしているようだ。

 それをパメラに告げると誇らしげに笑みを浮かべ、膝枕されている俺に詰め寄る。

「よし、みんなと合流してプリットの英雄のお披露目に……」
「わりぃ、パメラ、それ秘密にしてくれないか?」
「ど、どうしてだ? シーナは胸を張って自分の偉業を誇っていいんだぞ?」

 パメラにそう言われて正直、ムズ痒い。

 だけど、俺は正直言う事にした。俺は身内、俺の嫁にだけ事実を知られているだけでいいと。

 この話をする時にターニャも嫁にする約束をしている事とそれ以前にも1人居る事を告げる。その人物が女神でシズクである事は今度にしようと思う。さすがに情報過多でパメラに信用されない気がしたからである。

 パメラ以外にもいるとはっきりと告げた時の少し拗ねたような顔が堪らなくキュートだったのでからかうと拗ねられた。

 拗ねられたのを下手に対応するとこじれると思った俺は、遠まわしに対応する事にした。

「それに俺がゴブリン神を倒したとなると言い寄る女の子が増えるかも……増えると思うんだ。確かに俺は嫁を沢山貰うつもりでいる。だが、見目麗しければ誰でも良い訳じゃない。分かるだろ、パメラ?」
「し、知らん!」

 俺は言外にパメラは見た目だけでなく魅力的だと告げたい裏の言葉を汲み取ったようだ。

 そっぽ向いている口の端がピクピク震わせて口許がだらしなくなるのを我慢してるのがまた可愛い。

 ニマニマと笑みを浮かべたいのを我慢してる俺をチラリと見て言ってくる。

「本当にいいのか? 君は英雄になれる機会を捨てようとしてるんだぞ?」
「ああ、それでいい。それに俺がゴブリン神を倒したと証明すると素材から報酬までほとんどが俺のモノに……この戦いで少なからず犠牲が出た傷ついた者も沢山いるだろう。命を落とした者も、そして、残された者も誕生しているんじゃないかな?」

 探査に表示されている数が、ゴブリン神と戦う前と比べて少なからず数を減らしている。つまり、亡くなった人がいるという事だ。

 俺がしようとしている事は、本当に偽善で相手次第では余計なお世話だと怒鳴る人もいるかもしれない。自己責任でやった事だと、プライドを傷つけるかもしれない。

 そんな事をわざわざ馬鹿正直に話す必要がどこにあるだろうか?

 誰かやったか言及出来ないなら参加した者達で均等割り、怪我した者への見舞金、残された遺族に失った人を悼んで泣いてあげられる時間の猶予を与えてあげられる。

 それで、いいじゃないか。

「シーナ、君って人は……」
「たはは……本当は面倒事を押し付けられたら嫌だけだったり?」
「君は嘘吐きだな……いいさ、騙されておいてあげる」

 そう優しげな笑みで見つめるパメラに苦笑いしながら身を起こすと足下が覚束ない俺をパメラが支えてくれる。

 寝てる時には気付かなかったが、どうやら疲弊していたらしい俺はヒールをかけながら辺りを見渡す。

「あれ? ティテールは?」
「シーナをここに連れてくる間に姿をくらましたよ」

 パメラに気になるのか? と問われて、少しな、と頷く。

 ゴブリン神に挑む時、そして俺に地面に叩きつけられながらも俺を睨み返すティテールの瞳が気になっていた。

 余りに余裕がなく、我が身を省みる気がない自己犠牲に囚われている、そんな瞳が気になった。

 とはいえ、いない者の心配より、仲間達の対応を急がなきゃ!

「とりあえず、先にみんなと合流しよう」

 そう言うとパメラが肩を貸そうとしてくるが、ヒールをしてもう大丈夫と告げて俺達はゴブリンの集落へと歩き出した。



 ゴブリンの集落に到着すると真っ先にターニャが俺の存在に気付いてやってきてくれた。

 無事を喜んだのも束の間、俺とパメラとの距離感に眉を顰めると「話は聞いてあげる」と俺に笑いかけてくれる。

 いいか? あれだぞ? 造形的には目茶苦茶可愛いが、ガン飛ばしてくる不良に「金を貰ってやる、ジャンプしてみろ?」みたいな感じだからな、俺限定だろうけど!

 第三者的にはいちゃつきやがってと睨む野郎達がいるが、これは当人にしか分からないプレッシャーが凄いのよ!

 良く見ると俺の心情を理解してくれてるらしい人達を発見。絶対、あの人達、妻帯者だ! 同士よっ!!

 なんで、分かったって? ソッと目を逸らしたからだよ。

 怖々と説明をして、精一杯、可愛く「節操なくてゴメンね? てへぺろ」とするがノータイムで俺の鳩尾を抉るような拳が貫く。

 勿論、ターニャの拳である。

 足が宙に浮く強打を受けた俺は「ターニャ、お前の拳は世界が取れる。ダン○イからスカウトくるかもな……」掠れる声だったのでターニャの耳に届かなかった事が俺の寿命を長くしたと数年後、俺が気付くのはまた別の話であった。

 ターニャの頭の横に縛ったポニーテールのようにされた髪が、機嫌の悪いネコの尻尾のように揺れるのを眺めながら蹲る。

 しまった……ターニャに身体強化のスキルを与えたのはミスった……

 数時間前とは反対の事を思うのは人の業ではないかと俺は都合の悪い事から顔を背けて嘯く。

「ウチはターニャ、実家は『どら焼き亭』で手伝いしてたけど、シーナが危なっかしいから冒険者になりました。よろしくね!」
「あ、ああ、よろしく。確かにアレは本当に危なっかしい。君のようなしっかり者が見てると思うといくらか安心だ。だが、君だけに任せる事はしない。私に出来る事ならば何でも言ってくれ」
「仲良くしましょうね?」
「ああ」

 どうやら女の子同士は円満に片付いたようだ。

 いいさ、男は泥を被ってナンボだよ、マジで!

 えっ? 俺の顔を下の地面に出来てる水溜りは何かって? 水が滲みだしたんじゃね?

 俺の頬にはいつ流れが止まるとしれない水が地面の水面に落ちて波紋を作った。


 ターニャにゴブリン神などの対応の説明をして口止めをすると俺は集落を周り、最後にゴブリン神を始末した場所にくると腕を組んで難しい顔をするザンギエフと遭遇する。

 俺に気付くとザンギエフが話しかけてくる。

「おう、兄ちゃん。コイツを倒したヤツを捜しているんだが知らないか?」
「さあ?」

 そう惚ける俺だが、ザンギエフは、そうか、とは言うが俺の瞳を覗き込んだままである。

 ああ、オッサンにはある程度ばれてるぽいな。

 だって、ゴブリン神はパメラが言うように軍隊のようなモノであり、そのゴブリン神、単体でも地竜なみと言っていた。そんな奴を倒した相手を聞き出すのであれば「コイツを倒したヤツ」ではなく、「コイツを倒した奴等」であるべきである。

 ヤレヤレと頭を掻く俺にザンギエフが言ってくる。

「このまま名乗り上げがないとこの素材と討伐した功績、報酬はプールされて分配されるが……本当に良いのだろうか?」
「いいんじゃねぇ? 欲しいなら自己アピールしてくるし、そうしていいと思ってるから言わないんじゃないか? 生き残った者で、そして、生き残れなかった人の大事な人へと……色々と入り用だろ?」

 そう言う俺と見つめ合う形になるザンギエフが難しい顔をするのでヘラッと笑う。

「みんなでより幸せな選択をしようよ?」
「……ふぅ、本当に馬鹿な奴もいるもんだ。目の前にある報酬だけでなく、利権を全部捨てる選択肢するそんな馬鹿の顔を拝んでみたいもんだ」

 その言葉に肩を竦めた俺は「俺もさ、オッサン」と言うと鼻で笑われる。

 ザンギエフが俺から視線を切って振り返ると部下達に他の冒険者達に解体を手伝わせる為に呼びに行かせる。

 転がるゴブリン神達を見て、これは大仕事だと腕まくりをする。

 さあ、俺の解体スキルが唸るぜぇ……最初に取得したスキルなのに一番使ってないような気がする……気にしたら負け!

 俺は顔を被り振ると気を取り直して目の前にあるゴブリン神の解体をテキパキと始めた。



 解体を終えてプリットに戻ってきた俺達は、素材を冒険者ギルドに運ぶと真っ先にある準備に奔走した。

 そう、宴会の準備だ。

 今回の素材の資金の一部を苦しい時を共有した者達、警備隊と冒険者達が慰労の為に開催される事になった。

 疲れと恐怖、そして悲しみを酒で流してしまう為、先立った仲間を酒の力を借りて笑って見送る為に。

 無礼講と騒ぎ倒す。

 酒が進み、しばらくすると叫ぶ奴等が現れる。

「ザンギエフ隊長のアホタレ――!!」
「ハゲギエフ隊長にけいれーい!!」

 ザンギエフの事を罵倒する酒に酔った警備隊の男達の姿があった。

「オッサン言われたい放題だな?」
「……気持ちは分かる。今日は無礼講だ……聞き流す」

 ブスッとした顔しながら杯を煽るザンギエフを見て、好意的な笑みが浮かぶ。

 オッサンは警備隊は職務でしたので、報酬は国から支給されたもの、危険手当は国に申請するからゴブリン神の報酬は受け取らない、と公言したからだ。

 モヒンに聞いたところ、それを黙って受け取っても国からお叱りを受ける事はないらしい。一々、そんなところまでチェックできるほど国も暇じゃないの事。

 まったく、馬鹿はオッサンもだよな。

「隊長はぁ~先週、お小遣いを上げて欲しいと奥さんに土下座してましたぁ~」
「――ッ!! 誰から聞いた!!」

 一瞬で怒りで顔を真っ赤にさせたザンギエフは、持ってた杯を叩きつけて割ると叫んだ隊員に向かって走り出す。

 鬼の形相のザンギエフを見た隊員達は、一気に酔いが醒めたのか、真っ青な顔になると脱兎の如く逃げ出す。

 吐けっ! と怒鳴りながら追うザンギエフを見て呆れる溜息を零す。

 オッサン、カッコワル。

 ケラケラと笑っていると俺の肩に腕を回される。

「コーハイ、飲んでっか~」
「うっす、飲んでます!」

 やってきたのはモヒンで既に出来上がっていた。

 胡乱な瞳で俺の杯と周りの様子を見て、酒瓶を持つと杯に注いでくる。

「足りてねぇーぞ、コーハイ! もっと飲めぇ~」
「先輩、溢れてます、溢れてます」

 酒瓶が空になるまで注ぐとモヒンは俺に目の前に座れと指示してくる。

「いいかぁ~、どうせ、コーハイはまた馬鹿やってんじゃねぇーか?」
「いえいえ、今回は……」
「誰が口応えしていいって言ったよ? ああ、黙ってありがてぇー話を聞きやがれ!」
「うっす、すんませんでしたっ!」

 分かればいいんだぁ、と言って俺の杯を奪うと一気に煽る。

 そして、ああでもない、こうでもないと説教をされ、俺は3ループまでは数えていたがそこからは無心になってモヒンが酔い潰れるのを祈って酌を続けるという苦行がスタートした。

 この宴会は一昼夜続き、その次の日、無事な者は居らず、プリットの防衛機能が死んだ。

 そして、この失態を踏まえて教訓がプリットで語られる事になった。


『酒は飲んでも、飲まれるな』


 異世界であろうともこれは真理なんだ、と思わず感心してしまった。
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